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それを 少しの隙間から見ていたサンドラ
「何よ ちゃんと見えないわ でもあいつの持ち物なの?そんなところにしまって置くくらいに大事な物なのね」
悔しそうに顔を歪める
「こんな物に包まれていたなんて
私は貧乏だから捨てられていた訳では ないのでしょうか」
「分からないけれど ここに名前まで縫われているの」
院長先生がおくるみと産着の1箇所ずつを指差す
「シャーロット」
確かに名前が縫われている
今度こそ恐れずに それらを手に取り
自分の物と抱きしめた
「実はね 教会の扉の前で拾ったのは私なの」
「院長先生が?」
「えぇ それでね その時あなた凄く泣いていたのよ でもね話しかけながら抱き上げると ピタッと泣き止んでねぇ 泣き止んでその青い目で私をじっと見たのよ」
「ご…ご迷惑を…」
「いいえ その目が凄く綺麗で
そのまま教会の中に入って 祭壇にあなたを置いて 女神様にお祈りしたわ
この子に精霊の力をって」
「そうなのですか…」
「するとね 窓から一筋の光があなたに差したのよ 精霊様を女神様が遣わしてくださったのかしらと思うくらいに 綺麗な情景だったの」
(じゃあ その時にディーちゃんとサーちゃんが来てくれたのかな?)
『そうだよ~女神様が行きなさいって』
『うん シャル赤ちゃんだった』
『でもシャルの側に行ったら 凄く私も気持ちよくて』
『そうそう 赤ちゃんなのに 魔力があってそれを貰うと気持ちいいんだよ~』
院長先生はシャルに精霊様がついてるのを
知らない シャルに魔力があるのを知らない
この国で魔力を持つものは本当に少くて
その殆どが王族 公爵家だけである
一応10歳になれば 全国民が教会で魔力を持っているか検査があるのだが
やはり持っているものは ほぼ現れない
シャルも検査では 魔力無しと測定された
二人の精霊は見えない魔力を感じ取るのだろう
「それでね あなたも半年後は16歳になるわね」
「はい」
「私もあなたを手放したくなくて
教会の上の方に相談したの このままシスターとして雇っていただけないかとね」
「まぁ 嬉しいです 院長先生」
もしかしたら…淡い歓喜が滲み出る
「でも 意外なことを仰られたの」
不思議そうな顔をされる院長先生
その言葉と表情に不安を感じながら
「どのようなことでしょうか」
頑張って言葉を呟いた
「あなたに ある男爵家から侍女見習いの申し出が来ているらしいのです」
「え?」
言われた事を理解できなくて
ぐるぐる考えてみたが やはり理解できなかった
「それで16歳には早いのですが 来週から来てほしいと言われています 準備は全てあちらで 男爵家で持たれるそうです お迎えの馬車も出していただけるそうですよ」
シャルの頭をよぎるのは……
「そんないい条件なんてあるのでしょうか……もしかして 男爵様の愛人……」
それしか考えられなかった
愛人というものがどんな仕事をするのかは
キチンとわかっていないが 余り良い印象は持っていなかった 町に買い物に行ったときに おば様達がよく世間話をしているので それを聞きかじっただけ でも
悪口を言われる存在なんだくらいの 認識はある
「あらあら その男爵様は ブラウン男爵と言って 周りの評判は非常に良いのですよ 愛妻家としても知られておりますし
奥様もお優しい方です 男爵家といっても 領地経営や多方面のお仕事をされていて
資産としてはかなりお持ちなのです 男爵家といえども伯爵家以上のお力をお持ちですよ 心配することはないわ」
「ですが…いえ では尚更なぜ私なんか…どこかでお会いした記憶もありません」
なぜ自分で良いのか謎は深まるばかりで…
『シャル その人いい人だから
大丈夫だよ』
『うん 心配しないでいいよ』
ディーちゃんとサーちゃんの二人の精霊が
オッケーサインを出している
(二人が言うなら 大丈夫なのかも
それ以外に良い仕事は見つからないかもしれないし お受けしよう)
「院長先生 そのお話お受けします」
意を決して院長先生にお返事をした
「えぇ 私もその方があなたの為になると思うわ おめでとう」
「ありがとうございます」
「では これはあなたに 返しておくわね 大切にするのよ 自分の身の証になるかもしれないから」
おくるみと産着をもう一度布に包んで
渡してくれた
「はい 大事にします ありがとうございました」
そういって 扉を閉めて出た
「何よ ちゃんと見えないわ でもあいつの持ち物なの?そんなところにしまって置くくらいに大事な物なのね」
悔しそうに顔を歪める
「こんな物に包まれていたなんて
私は貧乏だから捨てられていた訳では ないのでしょうか」
「分からないけれど ここに名前まで縫われているの」
院長先生がおくるみと産着の1箇所ずつを指差す
「シャーロット」
確かに名前が縫われている
今度こそ恐れずに それらを手に取り
自分の物と抱きしめた
「実はね 教会の扉の前で拾ったのは私なの」
「院長先生が?」
「えぇ それでね その時あなた凄く泣いていたのよ でもね話しかけながら抱き上げると ピタッと泣き止んでねぇ 泣き止んでその青い目で私をじっと見たのよ」
「ご…ご迷惑を…」
「いいえ その目が凄く綺麗で
そのまま教会の中に入って 祭壇にあなたを置いて 女神様にお祈りしたわ
この子に精霊の力をって」
「そうなのですか…」
「するとね 窓から一筋の光があなたに差したのよ 精霊様を女神様が遣わしてくださったのかしらと思うくらいに 綺麗な情景だったの」
(じゃあ その時にディーちゃんとサーちゃんが来てくれたのかな?)
『そうだよ~女神様が行きなさいって』
『うん シャル赤ちゃんだった』
『でもシャルの側に行ったら 凄く私も気持ちよくて』
『そうそう 赤ちゃんなのに 魔力があってそれを貰うと気持ちいいんだよ~』
院長先生はシャルに精霊様がついてるのを
知らない シャルに魔力があるのを知らない
この国で魔力を持つものは本当に少くて
その殆どが王族 公爵家だけである
一応10歳になれば 全国民が教会で魔力を持っているか検査があるのだが
やはり持っているものは ほぼ現れない
シャルも検査では 魔力無しと測定された
二人の精霊は見えない魔力を感じ取るのだろう
「それでね あなたも半年後は16歳になるわね」
「はい」
「私もあなたを手放したくなくて
教会の上の方に相談したの このままシスターとして雇っていただけないかとね」
「まぁ 嬉しいです 院長先生」
もしかしたら…淡い歓喜が滲み出る
「でも 意外なことを仰られたの」
不思議そうな顔をされる院長先生
その言葉と表情に不安を感じながら
「どのようなことでしょうか」
頑張って言葉を呟いた
「あなたに ある男爵家から侍女見習いの申し出が来ているらしいのです」
「え?」
言われた事を理解できなくて
ぐるぐる考えてみたが やはり理解できなかった
「それで16歳には早いのですが 来週から来てほしいと言われています 準備は全てあちらで 男爵家で持たれるそうです お迎えの馬車も出していただけるそうですよ」
シャルの頭をよぎるのは……
「そんないい条件なんてあるのでしょうか……もしかして 男爵様の愛人……」
それしか考えられなかった
愛人というものがどんな仕事をするのかは
キチンとわかっていないが 余り良い印象は持っていなかった 町に買い物に行ったときに おば様達がよく世間話をしているので それを聞きかじっただけ でも
悪口を言われる存在なんだくらいの 認識はある
「あらあら その男爵様は ブラウン男爵と言って 周りの評判は非常に良いのですよ 愛妻家としても知られておりますし
奥様もお優しい方です 男爵家といっても 領地経営や多方面のお仕事をされていて
資産としてはかなりお持ちなのです 男爵家といえども伯爵家以上のお力をお持ちですよ 心配することはないわ」
「ですが…いえ では尚更なぜ私なんか…どこかでお会いした記憶もありません」
なぜ自分で良いのか謎は深まるばかりで…
『シャル その人いい人だから
大丈夫だよ』
『うん 心配しないでいいよ』
ディーちゃんとサーちゃんの二人の精霊が
オッケーサインを出している
(二人が言うなら 大丈夫なのかも
それ以外に良い仕事は見つからないかもしれないし お受けしよう)
「院長先生 そのお話お受けします」
意を決して院長先生にお返事をした
「えぇ 私もその方があなたの為になると思うわ おめでとう」
「ありがとうございます」
「では これはあなたに 返しておくわね 大切にするのよ 自分の身の証になるかもしれないから」
おくるみと産着をもう一度布に包んで
渡してくれた
「はい 大事にします ありがとうございました」
そういって 扉を閉めて出た
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