初恋は倒錯的

2.初めての縄

2-1

　嘘をついてしまった。
　しかし、なんとか繋がりを持ちたいと思った。
「蓮さんみたいになりたいです。教えてください。」
　そう言って頭を下げた僕に、SNSのフレンド登録をしてくれた。そして、縄の練習会兼交流会を開いているから一度きてみないかと誘ってくれたのだ。終電の時間が迫っており、詳しくは聞くことができなかったが、詳細は後日SNSを通して教えてくれると約束してくれた。
 
―――
 
　終電に乗ってもテンションはなかなか平常に戻らない。興奮が冷めやらないまま蓮さんに今日のお礼のメッセージを入れる。
　下宿先へ帰ったが、寝付くことはできなかった。何度も何度も蓮さんに叩かれるところや縛られるところ、言葉攻めをされる場面を思い浮かべては抜いた。それでも、なかなか収まらない。まるで自慰を覚えたばかりの中学生に戻ったようだった。
 
　しかし、明日も授業がある。何とか区切りをつけてシャワーを浴びて布団に入る。それでも思い出して反応する体に、これはお預けをされていると妄想して寝床についた。
 
　朝が来ると、昨日はあれほど非日常の世界に居たにも関わらず、当たり前のように日常がやってきた。学校に行き、授業を受け、バイトに行く。大学はまだ本格的な専門科目はなく、教養科目や専門の基礎固めの授業ばかりだ。今の僕には、少しでも授業内容に余裕があると昨日のことが思い出されて大変だった。
　僕の集中力を削っているのはそれだけではない。蓮さんがいつ連絡をくれるのか、気になって仕方がなかった。授業中でも関係なく何度もスマホを確認した。度々スマホを確認して、上の空の僕を友達が心配して声をかけてくれるほどだった。
 
　今日一日、何度もスマートフォンを確認したが、一向に蓮さんから連絡がこないまま夜になった。もしかしたら、昨日の約束が忘れられているのではないかという不安が過る。僕は不安を散らそうと頭を振るとシャワーを浴びに浴室へと向かう。

　気分転換がしたかったのに、シャワーに打たれているとなんだか不安が増してきた。お近づきになりたいと思った人に嘘をついてしまった後悔。勝手に妄想して、その人で抜いてしまった罪悪感。しばらくシャワーに打たれたまま物思いに耽っていた。
　シャワーから上がると、課題を進めなければと思い机に向かうが一向進まない。仕方なく勉強を切り上げ、半額のお惣菜を食べる。なんだかいつも通りの生活が送れずに2日間モヤモヤとした気持ちで過ごした。

　今日もスマホを確認するがやはり連絡は入っていない。ため息をつき、アプリのカードゲームを始める。少しでも気を紛らわせたかった。