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「……■■■■ロックバレット」
すぐそばにリンがいるので、一応、ちゃんと呪文を唱えてみた。
四つの岩が僕の正面に現れて、それぞれが四匹の大ネズミの頭部に当たると、大ネズミは吹き飛んでそのまま消えた。
「できた」
「できた、じゃないのですよ。なんなんですかあの威力は。しかも全部頭に命中させるとか、フトーの魔法はどうなってるのです?」
僕はリンに教えてもらった通り、呪文を発動する時に四個の岩を飛ばすイメージをしてみた。するとちゃんと四個の岩が現れたのだ。
呪文自体は同じなのに効果(個数)が変わるというのは不思議な話だ。
魔法というのは、呪文を正しく発することで、それを魔法として設定された仕様通りに効果を発現するめなんじゃないのか?
いや、僕は呪文を省略できるし、口に出さなくても発現させられるのだから、そもそもルールはアバウトなものだったか。
ん~、よく分からないなあ。
「フトー! 聞いてるのですか!?」
「え? あ、なに?」
「んもう!」
考えていたからリンの話を聞けていなかった。僕は並列思考でサイコキネシスとかを並列処理できるけど、戦闘以外のことではあまりそれができないらしい。
どうやらリンを怒らせてしまったようだ。
「すみません。でも、教えてくれたおかげで複数の魔法を同時に撃てました。リンのおかけです。ありがとう」
「べ、別にいいのですよ! い、一回で成功させたフトーが凄いのです!」
リンは顔を真っ赤にしている。まだ起こってるんだろうか。「ふん!」と言ってそっぽを向かれてしまった。
「話終わった? フトーさん、やっぱ凄いじゃん。流石わたしのカレシだね!」
後ろから、エナさんがおんぶをするように抱き着いてきた。
「なっ、また抱き着いてっ! エナはどうしてそうフトーにくっつきだかるのですか!」
「彼氏じゃないですよ。エナさん、離れてください。付き合ってもないのにこういうのはちょっと」
「ほら! フトーもこう言ってるから離れるのです!」
「え~、同期なんだからいいじゃ~ん」
「なら熊野君に抱き着いておいてくださいよ」
「真司は杏子ちゃん一筋だからね~」
「い~から離れるのです! ほ、ほっぺ同士をくっつけるなんてダメなのです~!」
リンがエナさんを僕から引き剥がそうとして引っ張ってるらしく、僕まで引っ張られて後ろに二、三歩下がってしまう。
なんなんだ、このカオスな状況は。
「隅に置けないね~」
「まったくだわね。なんで男爵はこんな規格外の子を放り出したのかしらねぇ」
「そりゃ、白だったからだろうぜ?」
「はあ? 白なの? だって魔法使ってるじゃないの」
「知らんよ。エナとフトーはあと他に二人と一緒にハズレと言われて館から出されたんだと。実際、ここにいるんだから間違いねえ話だと思うぜ?」
「ふ~ん、そうなの。そうなると有料物件よぇ、彼。あたしも参加しちゃおうかしら」
「やれやれ。ダンジョンは出会いの場じゃねえぞ?」
「冗談よ。うふふ」
「ちくしょう、俺もモテて~なぁ」
そんなこんなで、一人の時とはまったく違う、わいわいガヤガヤとしたノリのままボスエリアまで到達した。
ここまでの戦いで、大ネズミや大モグラ、大ミミズ、そしてコボルトなら、彼らは力負けすることなく戦えるようだ。エナさんがちょっと心配だけど。
「エナさんてレベル4でしたっけ?」
「エ、ナ、でしょ?」
「ああ、はい。で、あってますか?」
「うん。4だよ」
「ギフ達は?」
「俺は7だぜ。他も7から5だな」
「一緒くたにしないでよ。まあ、あたしは5なんだけどね」
「魔物を自分の手で倒したかどうかがレベルアップに影響してるみたいでさ。やっぱり前で戦えないとレベルは上がりにくいんだよ。俺は6な」
「なるほど」
「フトーは?」
「僕は9です」
咄嗟に嘘をついてしまった。実は僕のレベルは既に12になっている。でも、ここで正直に言うのは不味いような気がしたのだ。
まあ、どちらにしても騒がれたんだけど。
「9だと!? まだここに来て一ヶ月も経たないお前さんが!?」
「確か、聖騎士アルヴァンと賢者チュエイが9レベルじゃなかったっけ? 男爵のとこの最強赤レアの二人」
「確かそうなのですよ。賢者チュエイと同じレベルだなんて、フトーは凄いのです。だからストーンバレットもロックバレットもあんなに強いのです。私もレベルを上げるのです! どーやってそんなに強くなりましたか? フトー!」
どうやら、二年、三年どころか、十年経ってもレベル7の壁を越えられない者が多いのだそうだ。
これは、魔鉱窟ダンジョンの地下九階に辿り着けるものが少ないからだ、という理屈がまことしやかに噂されているのだそうだ。
確かに、思い当たる節が無い訳じゃない。
ボスエリアにいる敵を倒すと、レベルが上がるし、レベルの上限も上がってる気がする。
魔鉱窟の最高到達階層は9階層で最高レベルが9。魔鉱窟の9階層は大根の三階くらい……同じ理屈で考えれば、僕が9レベルを越えられたのはこれが理由になるか。
でも、今はまだ地下三階までしか行けてない僕が、何故レベル12まで上がることができているのか……それはもしかして、僕がギフの言っていたコボルトナイトやコボルトキングに出会ってないことが関係してるんじゃないのか。
つまり……
「おい、フトー? お前さん、その考え込む癖なんとかした方がいいぜ?」
「え?」
どうやら、僕は皆に話しかけられていたようだけど、考えに耽っていて気が付かないでいたようだ。
僕はいつの間にか地面に座っていて、何故かエナとリンの二人に抱きつかれていた。僕の前後を挟むように抱きついている二人は、ぎゃあぎゃあと何かを言い合っていた。
この騒ぎに気づかない程集中して考え込んでいたなんて……ギフの言う通り、ちょっと気を付けるようにした方がいいのかも知れないな。
すぐそばにリンがいるので、一応、ちゃんと呪文を唱えてみた。
四つの岩が僕の正面に現れて、それぞれが四匹の大ネズミの頭部に当たると、大ネズミは吹き飛んでそのまま消えた。
「できた」
「できた、じゃないのですよ。なんなんですかあの威力は。しかも全部頭に命中させるとか、フトーの魔法はどうなってるのです?」
僕はリンに教えてもらった通り、呪文を発動する時に四個の岩を飛ばすイメージをしてみた。するとちゃんと四個の岩が現れたのだ。
呪文自体は同じなのに効果(個数)が変わるというのは不思議な話だ。
魔法というのは、呪文を正しく発することで、それを魔法として設定された仕様通りに効果を発現するめなんじゃないのか?
いや、僕は呪文を省略できるし、口に出さなくても発現させられるのだから、そもそもルールはアバウトなものだったか。
ん~、よく分からないなあ。
「フトー! 聞いてるのですか!?」
「え? あ、なに?」
「んもう!」
考えていたからリンの話を聞けていなかった。僕は並列思考でサイコキネシスとかを並列処理できるけど、戦闘以外のことではあまりそれができないらしい。
どうやらリンを怒らせてしまったようだ。
「すみません。でも、教えてくれたおかげで複数の魔法を同時に撃てました。リンのおかけです。ありがとう」
「べ、別にいいのですよ! い、一回で成功させたフトーが凄いのです!」
リンは顔を真っ赤にしている。まだ起こってるんだろうか。「ふん!」と言ってそっぽを向かれてしまった。
「話終わった? フトーさん、やっぱ凄いじゃん。流石わたしのカレシだね!」
後ろから、エナさんがおんぶをするように抱き着いてきた。
「なっ、また抱き着いてっ! エナはどうしてそうフトーにくっつきだかるのですか!」
「彼氏じゃないですよ。エナさん、離れてください。付き合ってもないのにこういうのはちょっと」
「ほら! フトーもこう言ってるから離れるのです!」
「え~、同期なんだからいいじゃ~ん」
「なら熊野君に抱き着いておいてくださいよ」
「真司は杏子ちゃん一筋だからね~」
「い~から離れるのです! ほ、ほっぺ同士をくっつけるなんてダメなのです~!」
リンがエナさんを僕から引き剥がそうとして引っ張ってるらしく、僕まで引っ張られて後ろに二、三歩下がってしまう。
なんなんだ、このカオスな状況は。
「隅に置けないね~」
「まったくだわね。なんで男爵はこんな規格外の子を放り出したのかしらねぇ」
「そりゃ、白だったからだろうぜ?」
「はあ? 白なの? だって魔法使ってるじゃないの」
「知らんよ。エナとフトーはあと他に二人と一緒にハズレと言われて館から出されたんだと。実際、ここにいるんだから間違いねえ話だと思うぜ?」
「ふ~ん、そうなの。そうなると有料物件よぇ、彼。あたしも参加しちゃおうかしら」
「やれやれ。ダンジョンは出会いの場じゃねえぞ?」
「冗談よ。うふふ」
「ちくしょう、俺もモテて~なぁ」
そんなこんなで、一人の時とはまったく違う、わいわいガヤガヤとしたノリのままボスエリアまで到達した。
ここまでの戦いで、大ネズミや大モグラ、大ミミズ、そしてコボルトなら、彼らは力負けすることなく戦えるようだ。エナさんがちょっと心配だけど。
「エナさんてレベル4でしたっけ?」
「エ、ナ、でしょ?」
「ああ、はい。で、あってますか?」
「うん。4だよ」
「ギフ達は?」
「俺は7だぜ。他も7から5だな」
「一緒くたにしないでよ。まあ、あたしは5なんだけどね」
「魔物を自分の手で倒したかどうかがレベルアップに影響してるみたいでさ。やっぱり前で戦えないとレベルは上がりにくいんだよ。俺は6な」
「なるほど」
「フトーは?」
「僕は9です」
咄嗟に嘘をついてしまった。実は僕のレベルは既に12になっている。でも、ここで正直に言うのは不味いような気がしたのだ。
まあ、どちらにしても騒がれたんだけど。
「9だと!? まだここに来て一ヶ月も経たないお前さんが!?」
「確か、聖騎士アルヴァンと賢者チュエイが9レベルじゃなかったっけ? 男爵のとこの最強赤レアの二人」
「確かそうなのですよ。賢者チュエイと同じレベルだなんて、フトーは凄いのです。だからストーンバレットもロックバレットもあんなに強いのです。私もレベルを上げるのです! どーやってそんなに強くなりましたか? フトー!」
どうやら、二年、三年どころか、十年経ってもレベル7の壁を越えられない者が多いのだそうだ。
これは、魔鉱窟ダンジョンの地下九階に辿り着けるものが少ないからだ、という理屈がまことしやかに噂されているのだそうだ。
確かに、思い当たる節が無い訳じゃない。
ボスエリアにいる敵を倒すと、レベルが上がるし、レベルの上限も上がってる気がする。
魔鉱窟の最高到達階層は9階層で最高レベルが9。魔鉱窟の9階層は大根の三階くらい……同じ理屈で考えれば、僕が9レベルを越えられたのはこれが理由になるか。
でも、今はまだ地下三階までしか行けてない僕が、何故レベル12まで上がることができているのか……それはもしかして、僕がギフの言っていたコボルトナイトやコボルトキングに出会ってないことが関係してるんじゃないのか。
つまり……
「おい、フトー? お前さん、その考え込む癖なんとかした方がいいぜ?」
「え?」
どうやら、僕は皆に話しかけられていたようだけど、考えに耽っていて気が付かないでいたようだ。
僕はいつの間にか地面に座っていて、何故かエナとリンの二人に抱きつかれていた。僕の前後を挟むように抱きついている二人は、ぎゃあぎゃあと何かを言い合っていた。
この騒ぎに気づかない程集中して考え込んでいたなんて……ギフの言う通り、ちょっと気を付けるようにした方がいいのかも知れないな。
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