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変化

8 おこもりさま

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 この間一人で潜った時も少し感じたのだけど、アブクマダンジョンはレベル20超えのパーティーが随分と増えてきたようだ。
 10から13階層で、今まで見かけたことのない探索者の姿を結構見かけたのだ。
 例の宝箱産の魔法の武具の効果かもしれない。
 パーティーで一人でも飛び抜けたヤツがいれば、パーティー全体のレベル上げも早くなるだろうし、効率がかなり良くなるだろうから。

 でも、さすがに14階層以降は一気に探索者の姿が減るようだ。
 マップも自前で用意しなきゃならないし、力押しだけじゃ進めない場面が増えてくるからなんだと思う。

 ということで、大量の水と食糧をバックパックに詰め込んだ俺たちは、人気のある階層をパスして、一気に18階層にやってきていた。
 今回はしばらくの間、地上にも11階層にも戻らない予定だ。
 長期間戻らない事で死亡認定されてしまってもいいくらいの気持ちでいる。



 で、ダンジョンで生活するようになってあっと言う間に一週間が経った。

 18階層の魔物に対しては、刀で複数と戦うのはまだ少し厳しいようだ。
 タイミングが噛み合わないと刃を通せない時が多々ある。
 まだまだ刀の扱いが下手で、刃を折ってしまうこともあった。
 修復できるからなんとかなってる感じだ。

 ただ、単体であればミノタウロス相手でも勝てるようになってきてはいる。
 メイスであれば全然余裕で倒せるようになった。

「ミノタウロス師匠は既に超えた」

 マヨイも一人でミノタウロスに勝てるようになっていた。
 俺が刀を使い始めたことに対して、かなりのライバル心を持っているようだ。
 いや、俺の立ち回りのまずい点については、言葉少ないものの、相変わらず的確なアドバイスをくれているのだけど。
 でも、俺が《日本刀》のスキルを取らないままで刀の鍛錬を続けている点をもの凄く気にしているようだった。

 ヌーコにはまだミノタウロスは厳しいようだ。
 というか、ヌーコはそそも一人でミノタウロスに戦いを挑むようなポジションじゃないんだから、あまり無理をしてほしくはない。
 でも、黒刀を手に入れたことで、今までよりも前に出たがるようになってるんだよな。
 大怪我をする前に、自分のベストなポジションがどこか思い出してほしい。
 ……いや、前衛をやりたいっていうなら、それも視野に入れて話し合いをするべきか。
 俺が偉そうに役割を語ったらダメだよな。
 うん。後でこれからの戦闘スタイルについて、ヌーコとマヨイと話し合ってみよう。



「そろそろ次に行こう」

 戦闘スタイルについて話し合ってみたところ、ヌーコは後方支援を続けるつもりだと答えてくれた。
 ただ、バックアタックや不意打ちなんかで自分が襲われた時に、守ってもらうだけなのは嫌だし、それは危険だから魔物相手の接近戦の訓練をしておきたかったんだそうだ。
 俺やマヨイとの対人訓練は続けているけど、やっぱり魔物は動きが違う部分があるから、と。
 うん。頭ごなしに何か口にする前にちゃんと話しを聞けてよかったよ。

 で、その話の中で、マヨイからは先程のフレーズが飛び出したわけだ。
 確かに、この階層ではパーティーとして活動するならもう敵になりそうな魔物はいなくなってるからな。
 そんなマヨイの提案に乗って、俺たちは19階層に進むことにしたのだった。



 19階層も18階層と同じで、森の中にいるように感じる、木の幹が密集して壁を作ってできたような階層だった。
 通路も空洞も慎重に確認しながらマッピングをしていく。
 さすがに探索速度はガクッと落ちるが、ここで雑にふらついて罠に掛かったり不意討ちを受けるのは絶対に避けなければならない。
    慎重に移動し、戦闘が終わる度にしっかりと《休息》してから行動した。

 魔物に気付かれる前に攻撃ができる時などは、非道にも通路から《ファイアボール》を打ち込んだりもしてみた。
 とうとう念願の魔法使いらしい魔法使いになれた訳だけど、ズルした感が強くて、この勝ち方になかなか慣れない。
《ファイア5》の恩恵で、威力は1.5倍だし、消費精神力は一発につき4点だけだ。
 18階層にいた間に、ヌーコに言われて《ファイアボール》5発の一気撃ちを試してみたけど、空洞内を埋め尽くす爆発と爆炎は、ナパーム弾で森と森に生きる全てを燃やし尽くす無慈悲な業火という言葉が思い浮かんだ。
 自分でやっておきながら酷い、非道いと思ったものだ。

 ……まあ、ハンマーで潰そうが、刀で斬ろうが、魔物の命を奪うのには変わりがないんだけどな。

 そんな感じで更に約一週間を過ごし、俺たちは19階層のマッピングを完了させた。

 何もない長めの通路でも、こまめに《ストーンオブエコー》を発動させながら歩き回ったのだが、18階層の時のようなミノタウロス部屋は見つからなかった。

 なので、俺たちはとうとう、大台である20階層に進むことにしたのだった。
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