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スタンピード
15 防衛戦
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「あと10分ほどで魔物が来ます! ボフゴブリンの他にゴブリンキャスター、ウォリアーがいるようです!」
斥候が帰ってきて、全員に聞こえる大きさの声でこの混合隊のリーダーである管理局員に伝えた。
「先に話した作戦通り、この広場に呼び込んでから叩く事を心がけてくれ!」
「なあ、もう一回聞くが、入ってきた瞬間を叩くんじゃなくてここまで呼び込む理由はなんだ?」
そのリーダーの指示に疑問をぶつけたのは神剣のヒグティだ。
確かにリーダーの言っていることを実践すれば乱戦になる可能性が高い。
「我が隊には広範囲攻撃魔法《ファイアボール》と《ロックレイン》を使える者がいるからだ。呼び込んで魔法で一気に叩く」
「そいつらの魔法でホブゴブリンを倒しきれるんだな?」
「その為の君たちだ。生き残りを叩いてほしい」
「……まあ、最初のニ、三発か。乱戦になったらでかい魔法は打たせんなよ?」
「もちろんだ。そもそもがこの作戦は参戦してくれたみんなを守るためのものだからな」
「魔物が来ます! 会敵、会敵ー!」
やり取りの途中で報告が入った。
まあ結局は乱戦になるんだろうし適宜現場判断だよなぁ。
ちら、と馬車の方を見るとカズとグッチ、それと他に6人が街に向かって出発していくのが見えた。
「おう、ダンジョンウォーカー、何匹倒せるか勝負しようぜ」
「だな。今日は負けねーよ? 昨日は油断してただけだかんな」
「いや、あんたらいい加減にしときなさいよ。悪いねダンジョンウォーカー、バカばっかりで」
「んだと?」
なんか隣のパーティーが騒がしい。
昨日、俺がハッ倒したおっさんやらあんちゃんやらが突っかかってきているが、別に恨みつらみを引きずりまくってるわけではない様子だ。
昨日のことは本当に実力の分からない新人への力試しだったのかも知れない。
しかしあれだな。もうすぐそこに魔物が来てるというのに随分と余裕があるもんだ。
「どうする?」
「《ファイアボール》とかに巻き込まれたくないですからねー。管理局の人が言ったように最初は待ちですかね?」
「と言うか。こんな広い範囲に広がる《ファイアボール》なんてホントにある、の?」
マヨイもヌーコも全然気負いがないようだった。と言うか、昨日から引き続き随分と機嫌がいいらしい。
心当たりが無いわけではないが、それを肯定するのはなんだか悔しい。
昨日、俺はこの二人にも騙されてたわけだし。
一応というか、二人からはちゃんと謝ってはもらってる。
おっさんの話に乗ったのは、俺が馬鹿にされて軽く見られてるのが悔しかったからだそうだ。
その結果、俺の力を見せつけることができたし、自分たちのピンチに駆けつけてくれたことも、本気で怒ってくれたことも嬉しかったとも言われた。
機嫌がいいのはそれのせいなんだろう。
ただ、俺はあんまり目立ちたくないんだよ。
変な柵が増えるくらいなら、バカにされて軽く見られてるくらいで丁度いいんだよ。
俺の力量なんて、俺が知っておいてほしいと思ってる人だけが知っててくれたらいいんだ。
そう言ったら、しゅんと落ち込むか「そんなのはダメだ」と言ってくるかのどちらかかとおもったのだが、嬉しそうな顔で「ごめんなさい」と謝ってくるんだからお手上げだった。
謝ってはいるけど反省はしてないよな、二人とも。
と。
とうとう、魔物が俺らが待っている広場のような場所に入り込んできた。うだうだ考えるのは終わりだ。
管理局、警備隊、探索者の全員が動かずに魔物の突撃を見守っている。
身勝手なヤツが多そうだったが、取り決めを破って仲間を危険に晒すようなバカはいないようだ。
広場に50体くらいの敵が入ってきて、先頭のヤツがそろそろ警備隊に手が届きそうな距離まで来たその時だった。
「《ファイアボール》!」
「《ストーンレイン》!」
二つの魔法が発動された。
放物線を描いた火の玉が広場の真ん中に落ちる。
そこから一気に直径10メートルほどの炎が爆発したようにボウッと広がっていった。
また、管理局員たちがいる方の何もない空中から大粒の石礫が現れ、ガツガツと音を立てながら魔物に降り注いだ。
それは《ファイアボール》と同じくらいの範囲、つまり直径10メートル程の範囲内にいる魔物を打ち倒していった。
「はっ、全然じゃねーか!」
神剣のヒグティが自分に襲いかかってきたホブゴブリンを斬り捨てながら吠えた。
俺たちも魔法の範囲外にいた無傷の魔物の相手をし始める。
広場は多分縦横50メートル以上の広さがある。
本当に魔法でこの範囲にやって来た魔物を一網打尽にできるのか気になっていたが、やはりというか、残念な結果に終わってしまったと言う他ない状態だった。
彼方此方で戦いが始まっていた。
管理局側のリーダーは「中央付近はまだ魔法を打ち込むつもりだから近寄るな」と言ってるが、「そもそも《ファイアボール》ならうちの術師だって使えんだよ! ノディーダ、やっちまえ!」という探索者の声に続いて、魔物が広場に入ってくる入口付近に火の玉が飛んでいって、先程よりも大きな炎が吹き広がったのだった。
「メンツとか言ってる場合じゃねーだろ!?」
「おらっ、5千削るとか半端なこと言ってねーでここで1万殲滅させっぞ!」
「「「「「おおーーー!」」」」」
そんなこんなで、戦場は一気に乱戦状態に移行したのだった。
斥候が帰ってきて、全員に聞こえる大きさの声でこの混合隊のリーダーである管理局員に伝えた。
「先に話した作戦通り、この広場に呼び込んでから叩く事を心がけてくれ!」
「なあ、もう一回聞くが、入ってきた瞬間を叩くんじゃなくてここまで呼び込む理由はなんだ?」
そのリーダーの指示に疑問をぶつけたのは神剣のヒグティだ。
確かにリーダーの言っていることを実践すれば乱戦になる可能性が高い。
「我が隊には広範囲攻撃魔法《ファイアボール》と《ロックレイン》を使える者がいるからだ。呼び込んで魔法で一気に叩く」
「そいつらの魔法でホブゴブリンを倒しきれるんだな?」
「その為の君たちだ。生き残りを叩いてほしい」
「……まあ、最初のニ、三発か。乱戦になったらでかい魔法は打たせんなよ?」
「もちろんだ。そもそもがこの作戦は参戦してくれたみんなを守るためのものだからな」
「魔物が来ます! 会敵、会敵ー!」
やり取りの途中で報告が入った。
まあ結局は乱戦になるんだろうし適宜現場判断だよなぁ。
ちら、と馬車の方を見るとカズとグッチ、それと他に6人が街に向かって出発していくのが見えた。
「おう、ダンジョンウォーカー、何匹倒せるか勝負しようぜ」
「だな。今日は負けねーよ? 昨日は油断してただけだかんな」
「いや、あんたらいい加減にしときなさいよ。悪いねダンジョンウォーカー、バカばっかりで」
「んだと?」
なんか隣のパーティーが騒がしい。
昨日、俺がハッ倒したおっさんやらあんちゃんやらが突っかかってきているが、別に恨みつらみを引きずりまくってるわけではない様子だ。
昨日のことは本当に実力の分からない新人への力試しだったのかも知れない。
しかしあれだな。もうすぐそこに魔物が来てるというのに随分と余裕があるもんだ。
「どうする?」
「《ファイアボール》とかに巻き込まれたくないですからねー。管理局の人が言ったように最初は待ちですかね?」
「と言うか。こんな広い範囲に広がる《ファイアボール》なんてホントにある、の?」
マヨイもヌーコも全然気負いがないようだった。と言うか、昨日から引き続き随分と機嫌がいいらしい。
心当たりが無いわけではないが、それを肯定するのはなんだか悔しい。
昨日、俺はこの二人にも騙されてたわけだし。
一応というか、二人からはちゃんと謝ってはもらってる。
おっさんの話に乗ったのは、俺が馬鹿にされて軽く見られてるのが悔しかったからだそうだ。
その結果、俺の力を見せつけることができたし、自分たちのピンチに駆けつけてくれたことも、本気で怒ってくれたことも嬉しかったとも言われた。
機嫌がいいのはそれのせいなんだろう。
ただ、俺はあんまり目立ちたくないんだよ。
変な柵が増えるくらいなら、バカにされて軽く見られてるくらいで丁度いいんだよ。
俺の力量なんて、俺が知っておいてほしいと思ってる人だけが知っててくれたらいいんだ。
そう言ったら、しゅんと落ち込むか「そんなのはダメだ」と言ってくるかのどちらかかとおもったのだが、嬉しそうな顔で「ごめんなさい」と謝ってくるんだからお手上げだった。
謝ってはいるけど反省はしてないよな、二人とも。
と。
とうとう、魔物が俺らが待っている広場のような場所に入り込んできた。うだうだ考えるのは終わりだ。
管理局、警備隊、探索者の全員が動かずに魔物の突撃を見守っている。
身勝手なヤツが多そうだったが、取り決めを破って仲間を危険に晒すようなバカはいないようだ。
広場に50体くらいの敵が入ってきて、先頭のヤツがそろそろ警備隊に手が届きそうな距離まで来たその時だった。
「《ファイアボール》!」
「《ストーンレイン》!」
二つの魔法が発動された。
放物線を描いた火の玉が広場の真ん中に落ちる。
そこから一気に直径10メートルほどの炎が爆発したようにボウッと広がっていった。
また、管理局員たちがいる方の何もない空中から大粒の石礫が現れ、ガツガツと音を立てながら魔物に降り注いだ。
それは《ファイアボール》と同じくらいの範囲、つまり直径10メートル程の範囲内にいる魔物を打ち倒していった。
「はっ、全然じゃねーか!」
神剣のヒグティが自分に襲いかかってきたホブゴブリンを斬り捨てながら吠えた。
俺たちも魔法の範囲外にいた無傷の魔物の相手をし始める。
広場は多分縦横50メートル以上の広さがある。
本当に魔法でこの範囲にやって来た魔物を一網打尽にできるのか気になっていたが、やはりというか、残念な結果に終わってしまったと言う他ない状態だった。
彼方此方で戦いが始まっていた。
管理局側のリーダーは「中央付近はまだ魔法を打ち込むつもりだから近寄るな」と言ってるが、「そもそも《ファイアボール》ならうちの術師だって使えんだよ! ノディーダ、やっちまえ!」という探索者の声に続いて、魔物が広場に入ってくる入口付近に火の玉が飛んでいって、先程よりも大きな炎が吹き広がったのだった。
「メンツとか言ってる場合じゃねーだろ!?」
「おらっ、5千削るとか半端なこと言ってねーでここで1万殲滅させっぞ!」
「「「「「おおーーー!」」」」」
そんなこんなで、戦場は一気に乱戦状態に移行したのだった。
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