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スタンピード
9 宴会
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ベイガーたちと顔を合わせた数時間後、一眠りした俺らは半日掛けて1112の管理局支店に到着した。
そこにはおっさんもヤマヤーサさんの姿もどこにもなかった。
とは言え嫌な話があったわけではない。
単に別の小隊に交替していただけの事だ。
俺ら3人が顔を出すことはちゃんと伝えられており、新たな管理局の面々から地上の話を聞きながら、出してもらった食事を食べることにした。
赤小魔石は通常通り1人2個ずつ取られた。
地上では大きな動きは今のところ特にないとのことだった。
何組かのパーティーやギルドに近辺の警戒や調査をお願いしているらしいが、魔物の痕跡は見られないそうだ。
イナワシロレイクサイドについて聞いてみると、「なんだ、そんな情報まで知ってるのか」と驚かれたが、知ってるのなら、とイナワシロレイクサイドにも管理局と探索者の混合パーティーが調査に出ていることを教えてくれた。
食後に(小屋は借りずに)少し休憩し、それから管理局のみんなと別れて地上を目指して移動を開始した。
今後を考えて『気配を薄くする効果』のあるペンダントは外したままだ。
そのまま、隠密行動のように音を立てず、息を潜めて気配を殺しながら、一気に地上まで数時間ほどで駆け抜けた。
ちなみに管理局に買い取ってもらう用に、途中で見つけた魔物は全て倒していった。
「これじゃダンジョンランナーズ」と言ったマヨイに、「音も無く魔物を倒すのってランナーよりもニンジャとかアサシンみたいでかっこいいですね!」なんて小声で答えるヌーコ。
二人ともホントに強く、図太くなったなぁ。
無事に外に出て、管理局の買取所で小魔石31個、赤小魔石50個、黃小魔石42を70万千円に換金した。
更に上の赤魔石、黄魔石、青小魔石もあったが、それは俺が《付与術師》で使うので売らないでおいた。
その事は事前に二人には相談済みだ。
それから25万円ずつをヌーコとマヨイに渡し、20万と千円は俺が貰うことにした。
売らなかった魔石の値段を考えると20万は貰い過ぎなんだが、魔法石になれば結局はパーティーの物になるんだから、寧ろ均等割にして欲しいと言われてしまったのだ。
まあ、今回は計算が面倒くさくて、こんな感じでの分配を受け入れてくれたわけだけど。
「じゃあ、その分食事をごちそうしますね!」
「じゃあ、あたしは明日ごちそうする」
ということで、もう20時近かったので風呂には行かず、俺の《清浄》で身体や装備をスッキリさせて、久し振りにレインボートラウトに向かったのだった。
「あ、ヌコちゃん、マヨちゃん、コイルが来たー」
店に入るなり、俺らを見つけた凛子ちゃんがレイギスさんに大きな声で呼びかけた。
俺は呼び捨てか……少し寂しい気持ちになった。
「ああ久しぶりだね! いつ帰って来たんだい!?」
「今さっき」
「ついさっき出てきたばっかりなんですよー。今から3人、大丈夫ですか?」
「おっ、真っ直ぐ来てくれたのかい? 嬉しいねー、ってあんたらついさっき出てきた割には随分小綺麗じゃないか」
「ふふ。ダンジョンランナーズは雑魚の返り血は浴びない」
「はははっ、いうねー! でもまあ、あんたらのこないだの活躍はみんなから聞いてるからね。満更嘘でもないんだろうよ。ほら、そっちの席を開けさせるから座んな」
満席でテーブルが空いてなかったのだが、四人掛けのテーブルを使ってた二人のおっさんが大テーブルの方に移動してくれて席を開けてくれた。
「なんだか申し訳ない」
俺が素直に彼らに謝ると、いーっていーって、と笑顔で言ってくれた。
「いやな? 覚えてないかも知んねーけどさ。こないだの魔物のスタンピードん時な、お前ら三人が来てくれて助かったうちの一人なんだよ、俺。こっちこそ申し訳ないっちゅーか、ありがとうってことだよ」
「俺も俺も! 俺もあんたらには助けられたんだわ。ありがとない!」
ああ、言われてみればあの時、この二人を見かけたかもかもしれない。
「いや、俺らは最後ギリギリで戦いに間に合ったってだけだから……最初から防衛に参加してたんなら疲れてて危険な目にあってるのは当たり前だよ。逆にこっちがお礼を言いたいくらいだ。ありがとう」
「っほい! じゃあこれで乾杯でもあげな!」
レイギスさんが俺らの席と、席を開けてくれた二人にビールのジョッキを持ってきてくれた。
なんてタイミングのいいことだ。
いや、席を移動させたお詫びとして最初から出すつもりだったのかな?
「レイギスさんたちも生き残っててくれてありがとう……じゃあ、生き残れたことに乾杯」
「「「「「「「乾杯!!」」」」」」」
いつの間にか、店にいた全員が俺らのやり取りを聞いていたようだった。
俺らしくない俺の乾杯の言葉に、みんながジョッキを掲げて乾杯の声をあげてくれたことにビックリしてしまった。
ヌーコもマヨイも物凄い笑顔でジョッキを持ち上げていた。
そして誰かが言った。
「ダンジョンウォーカーに!」
「「「「「「「乾杯!!」」」」」」」
「ダンジョンウォーカーズに!」
「「「「「「「乾杯!!」」」」」」」
「生き残れたことに!」
「「「「「「「乾杯!!」」」」」」」
「うまい飯に!」
「「「「「「「乾杯!!」」」」」」」
いえーい、よーよー、レイギスさん好きだー、だったら俺はマヨイちゃんが好きだー、なんてノリでみんなが乾杯を繰り返し、色々な人と酒を注ぎ合いながらの宴会に巻き込まれていったのだった。
ヌーコもマヨイも楽しそうに他のパーティーの探索者のお姉さんらと語らっているようだった。
時々俺と視線が合うとニッコリと笑いながら、今日はこのまま楽しみましょう、三人の食事はまた明日で、なんて言ってきた。
二人も楽しんでるならいいか。
たまには同じアブクマの街に住む人たちとこんな風に過ごすのも悪くない、か。
でも、深酒だけはしないようにしないとな。
と、この間の反省をしつつ、唐突に始まった宴会を楽しんだのだった。
そこにはおっさんもヤマヤーサさんの姿もどこにもなかった。
とは言え嫌な話があったわけではない。
単に別の小隊に交替していただけの事だ。
俺ら3人が顔を出すことはちゃんと伝えられており、新たな管理局の面々から地上の話を聞きながら、出してもらった食事を食べることにした。
赤小魔石は通常通り1人2個ずつ取られた。
地上では大きな動きは今のところ特にないとのことだった。
何組かのパーティーやギルドに近辺の警戒や調査をお願いしているらしいが、魔物の痕跡は見られないそうだ。
イナワシロレイクサイドについて聞いてみると、「なんだ、そんな情報まで知ってるのか」と驚かれたが、知ってるのなら、とイナワシロレイクサイドにも管理局と探索者の混合パーティーが調査に出ていることを教えてくれた。
食後に(小屋は借りずに)少し休憩し、それから管理局のみんなと別れて地上を目指して移動を開始した。
今後を考えて『気配を薄くする効果』のあるペンダントは外したままだ。
そのまま、隠密行動のように音を立てず、息を潜めて気配を殺しながら、一気に地上まで数時間ほどで駆け抜けた。
ちなみに管理局に買い取ってもらう用に、途中で見つけた魔物は全て倒していった。
「これじゃダンジョンランナーズ」と言ったマヨイに、「音も無く魔物を倒すのってランナーよりもニンジャとかアサシンみたいでかっこいいですね!」なんて小声で答えるヌーコ。
二人ともホントに強く、図太くなったなぁ。
無事に外に出て、管理局の買取所で小魔石31個、赤小魔石50個、黃小魔石42を70万千円に換金した。
更に上の赤魔石、黄魔石、青小魔石もあったが、それは俺が《付与術師》で使うので売らないでおいた。
その事は事前に二人には相談済みだ。
それから25万円ずつをヌーコとマヨイに渡し、20万と千円は俺が貰うことにした。
売らなかった魔石の値段を考えると20万は貰い過ぎなんだが、魔法石になれば結局はパーティーの物になるんだから、寧ろ均等割にして欲しいと言われてしまったのだ。
まあ、今回は計算が面倒くさくて、こんな感じでの分配を受け入れてくれたわけだけど。
「じゃあ、その分食事をごちそうしますね!」
「じゃあ、あたしは明日ごちそうする」
ということで、もう20時近かったので風呂には行かず、俺の《清浄》で身体や装備をスッキリさせて、久し振りにレインボートラウトに向かったのだった。
「あ、ヌコちゃん、マヨちゃん、コイルが来たー」
店に入るなり、俺らを見つけた凛子ちゃんがレイギスさんに大きな声で呼びかけた。
俺は呼び捨てか……少し寂しい気持ちになった。
「ああ久しぶりだね! いつ帰って来たんだい!?」
「今さっき」
「ついさっき出てきたばっかりなんですよー。今から3人、大丈夫ですか?」
「おっ、真っ直ぐ来てくれたのかい? 嬉しいねー、ってあんたらついさっき出てきた割には随分小綺麗じゃないか」
「ふふ。ダンジョンランナーズは雑魚の返り血は浴びない」
「はははっ、いうねー! でもまあ、あんたらのこないだの活躍はみんなから聞いてるからね。満更嘘でもないんだろうよ。ほら、そっちの席を開けさせるから座んな」
満席でテーブルが空いてなかったのだが、四人掛けのテーブルを使ってた二人のおっさんが大テーブルの方に移動してくれて席を開けてくれた。
「なんだか申し訳ない」
俺が素直に彼らに謝ると、いーっていーって、と笑顔で言ってくれた。
「いやな? 覚えてないかも知んねーけどさ。こないだの魔物のスタンピードん時な、お前ら三人が来てくれて助かったうちの一人なんだよ、俺。こっちこそ申し訳ないっちゅーか、ありがとうってことだよ」
「俺も俺も! 俺もあんたらには助けられたんだわ。ありがとない!」
ああ、言われてみればあの時、この二人を見かけたかもかもしれない。
「いや、俺らは最後ギリギリで戦いに間に合ったってだけだから……最初から防衛に参加してたんなら疲れてて危険な目にあってるのは当たり前だよ。逆にこっちがお礼を言いたいくらいだ。ありがとう」
「っほい! じゃあこれで乾杯でもあげな!」
レイギスさんが俺らの席と、席を開けてくれた二人にビールのジョッキを持ってきてくれた。
なんてタイミングのいいことだ。
いや、席を移動させたお詫びとして最初から出すつもりだったのかな?
「レイギスさんたちも生き残っててくれてありがとう……じゃあ、生き残れたことに乾杯」
「「「「「「「乾杯!!」」」」」」」
いつの間にか、店にいた全員が俺らのやり取りを聞いていたようだった。
俺らしくない俺の乾杯の言葉に、みんながジョッキを掲げて乾杯の声をあげてくれたことにビックリしてしまった。
ヌーコもマヨイも物凄い笑顔でジョッキを持ち上げていた。
そして誰かが言った。
「ダンジョンウォーカーに!」
「「「「「「「乾杯!!」」」」」」」
「ダンジョンウォーカーズに!」
「「「「「「「乾杯!!」」」」」」」
「生き残れたことに!」
「「「「「「「乾杯!!」」」」」」」
「うまい飯に!」
「「「「「「「乾杯!!」」」」」」」
いえーい、よーよー、レイギスさん好きだー、だったら俺はマヨイちゃんが好きだー、なんてノリでみんなが乾杯を繰り返し、色々な人と酒を注ぎ合いながらの宴会に巻き込まれていったのだった。
ヌーコもマヨイも楽しそうに他のパーティーの探索者のお姉さんらと語らっているようだった。
時々俺と視線が合うとニッコリと笑いながら、今日はこのまま楽しみましょう、三人の食事はまた明日で、なんて言ってきた。
二人も楽しんでるならいいか。
たまには同じアブクマの街に住む人たちとこんな風に過ごすのも悪くない、か。
でも、深酒だけはしないようにしないとな。
と、この間の反省をしつつ、唐突に始まった宴会を楽しんだのだった。
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