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Dungeon Walkers
4 純粋な勇者
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「私はベイガーくんをパーティーに入れてもいいと思う」
シュゴリンは予想通りの回答を口にした。
ベイガーの表情がぱっと明るくなる。
「あたしも」
マヨイもそれに合意、と。
ベイガーの表情が更に嬉しそうになる。
だが、ヌーコがシュゴリンを見て、それから俺を見て、少し困った顔を見せた。
ベイガーは一気に不安顔になる。
それを見て、俺は「顔に出すぎだろ」、とつい吹き出しそうになってしまう。
そして、こんな素直すぎる彼に《センスイービル》を使ってた自分の疑り深さに嫌気がさす。
「ヌーコ、どうしたの?」
シュゴリンがヌーコに、何かあるなら言って欲しいと促す。
ヌーコはうーんと少し唸ってから、よし、と顔を上げて発言する覚悟を決める。
「あのね。ベイガーくんは強いし、これからレベルが上がればもっともっと強くなると思う、んですけど……」
やっぱりな。ヌーコはちゃんと分かってそうだ。
ここで言ってくれれば俺も切り出しやすくなる。
「先に言っておきますけど、私達のパーティーにベイガーくんが入ったら確実にパーティーはかなり強くなると思います。でも、そうなると魔法と治癒系の補強ができないままになっちゃうんですよ」
シュゴリンが「あっ」という顔を見せる。
マヨイの表情は特に変わらない。
ベイガーくんの顔色はもはや薄青色だ。
「だから、もっと深層を目指すことを考えるならベイガーくんじゃな……」
「大丈夫だろ?」
俺はヌーコの発言に割って入った。
「俺は基本ソロで、キミらと正式なパーティーを組んでるわけじゃないんだ。だからキミらはベイガーのほかにもう一人入れられるんだぜ?」
悪ぶって言うつもりはなかったのだが、何故か語尾が「ぜ?」になってしまった。
まあ、それはともかくとして、俺の言葉に3人が「なんてことをっ」という顔付きで、俺の方にバッと顔を向ける。
それどころか、ベイガーまで驚きの顔付きで俺を見てきた。
本当、素直でいいやつだな。
「俺はベイガーは信用できるいいヤツだと思うよ? それに、《勇者》の職業スキルの効果も凄いと思う。俺の予想だとレベル10、それか15……いや20かな。ともかく、そのくらいまでレベルが上がれば、多分だけど技能点も入るようになると思うんだよ。そうなればもっと凄いヤツになると思う。打算ばかりで話すわけじゃないけど、ベイガーはこれからの3人に必要な戦力だと思う」
技能点については適当だけど、あながち外れたことを言ってるわけでもないと思っている。
技能点を後払いで《勇者》が与えられたんじゃないかと、俺はそう予想してるんだ。
《勇者》生命力、精神力をレベル✕4点増加・すべての能力度をレベル✕3点増加・すべての武具の扱いにレベル+2補正
スキルレベル✕4、✕3、+2。
つまり、《付与術師》や《戦術士》と同じように、《勇者》も必ずレベルが上げられるはずなんだ。
その為には技能点が必要なわけだし。
ただ、《付与術師》よりも必要技能点が高そうだとは思ってる。
それだけ強力なスキルなわけだから。
ベイガーとしては身に覚えのない勝手に付けられた借金のようなものだけど、それさえ返済し終えれば、晴れて自由の身だ。
《勇者》のレベルを上げたり、《長剣》なんかを派生狙いで強化するのもいいだろう。
《勇者》の資質があるくらいなんだから、もしかしたら魔法も強力なものを覚えられるかも知れない。
「私たちの気持ちは無視するの?」
「まともなパーティー構成を考えたら選択肢は少ないって話だよ」
「返事になってない」
「ヌーコはどう思う? 俺は間違ったことを言ってるか?」
「……間違ってはないです。でも、私はコイルともっと探索したいんです」
「まあ、スペルキャスターとか回復役がすぐに見つかるわけでもないだろ? それまでは、たまになら、一緒に潜らせてもらうから」
まあ、ベイガーのレベルがシュゴリンたちに追い付くまでには新メンバーを確定しておいた方がいいとは思うけど。
「コイル……分かったわ。じゃあその方向で。ベイガーくんもそれでいい?」
シュゴリンがまとめてそう言った。
俺なんかがいるせいで、ベイガーのパーティー加入にケチを付けてしまって申し訳ない気持ちになる。
「コイルさん。僕もあなたと一緒にもっと探索がしたいです。今日、一緒に戦わせてもらって、なんか凄い頼り甲斐があって……死んじゃった兄ちゃんみたいな感じがして……僕、スキルボードに《ヒール》があるから、だから技能点が入るようになったら」
「おいおい。ベイガー、キミは火力を上げることに力を入れた方がいいと思うよ? ……あっ、いや、どんな風にスキルを取るかは個人の自由だよな。余計な事を言ったわ、ごめん、忘れてくれ」
「ズルい。あたしにもアドバイスしてよ?」
「いや、そんなことより、キミらの新しいメンバーが増えた話で盛り上がりなって」
「キミらのじゃないですよ。コイルも含めて私たちの、ですよっ」
「そうよっ! これから帰ってレインボートラウトでパーティー結成のお祝いするわよっ!」
「はいっ!」
「そうしましょー!」
「あたしは唐揚げにする」
「じゃあ、そこで私にもアドバイスしてね」
なんだか、この子たちとなら、裏切られるとか、切り捨てられるとか考えずに一緒にやってけるのかな、とか勘違いしそうになるな。
…………本格的に、回復系について《付与術師》でどうにかできないか研究してみるかな。
シュゴリンは予想通りの回答を口にした。
ベイガーの表情がぱっと明るくなる。
「あたしも」
マヨイもそれに合意、と。
ベイガーの表情が更に嬉しそうになる。
だが、ヌーコがシュゴリンを見て、それから俺を見て、少し困った顔を見せた。
ベイガーは一気に不安顔になる。
それを見て、俺は「顔に出すぎだろ」、とつい吹き出しそうになってしまう。
そして、こんな素直すぎる彼に《センスイービル》を使ってた自分の疑り深さに嫌気がさす。
「ヌーコ、どうしたの?」
シュゴリンがヌーコに、何かあるなら言って欲しいと促す。
ヌーコはうーんと少し唸ってから、よし、と顔を上げて発言する覚悟を決める。
「あのね。ベイガーくんは強いし、これからレベルが上がればもっともっと強くなると思う、んですけど……」
やっぱりな。ヌーコはちゃんと分かってそうだ。
ここで言ってくれれば俺も切り出しやすくなる。
「先に言っておきますけど、私達のパーティーにベイガーくんが入ったら確実にパーティーはかなり強くなると思います。でも、そうなると魔法と治癒系の補強ができないままになっちゃうんですよ」
シュゴリンが「あっ」という顔を見せる。
マヨイの表情は特に変わらない。
ベイガーくんの顔色はもはや薄青色だ。
「だから、もっと深層を目指すことを考えるならベイガーくんじゃな……」
「大丈夫だろ?」
俺はヌーコの発言に割って入った。
「俺は基本ソロで、キミらと正式なパーティーを組んでるわけじゃないんだ。だからキミらはベイガーのほかにもう一人入れられるんだぜ?」
悪ぶって言うつもりはなかったのだが、何故か語尾が「ぜ?」になってしまった。
まあ、それはともかくとして、俺の言葉に3人が「なんてことをっ」という顔付きで、俺の方にバッと顔を向ける。
それどころか、ベイガーまで驚きの顔付きで俺を見てきた。
本当、素直でいいやつだな。
「俺はベイガーは信用できるいいヤツだと思うよ? それに、《勇者》の職業スキルの効果も凄いと思う。俺の予想だとレベル10、それか15……いや20かな。ともかく、そのくらいまでレベルが上がれば、多分だけど技能点も入るようになると思うんだよ。そうなればもっと凄いヤツになると思う。打算ばかりで話すわけじゃないけど、ベイガーはこれからの3人に必要な戦力だと思う」
技能点については適当だけど、あながち外れたことを言ってるわけでもないと思っている。
技能点を後払いで《勇者》が与えられたんじゃないかと、俺はそう予想してるんだ。
《勇者》生命力、精神力をレベル✕4点増加・すべての能力度をレベル✕3点増加・すべての武具の扱いにレベル+2補正
スキルレベル✕4、✕3、+2。
つまり、《付与術師》や《戦術士》と同じように、《勇者》も必ずレベルが上げられるはずなんだ。
その為には技能点が必要なわけだし。
ただ、《付与術師》よりも必要技能点が高そうだとは思ってる。
それだけ強力なスキルなわけだから。
ベイガーとしては身に覚えのない勝手に付けられた借金のようなものだけど、それさえ返済し終えれば、晴れて自由の身だ。
《勇者》のレベルを上げたり、《長剣》なんかを派生狙いで強化するのもいいだろう。
《勇者》の資質があるくらいなんだから、もしかしたら魔法も強力なものを覚えられるかも知れない。
「私たちの気持ちは無視するの?」
「まともなパーティー構成を考えたら選択肢は少ないって話だよ」
「返事になってない」
「ヌーコはどう思う? 俺は間違ったことを言ってるか?」
「……間違ってはないです。でも、私はコイルともっと探索したいんです」
「まあ、スペルキャスターとか回復役がすぐに見つかるわけでもないだろ? それまでは、たまになら、一緒に潜らせてもらうから」
まあ、ベイガーのレベルがシュゴリンたちに追い付くまでには新メンバーを確定しておいた方がいいとは思うけど。
「コイル……分かったわ。じゃあその方向で。ベイガーくんもそれでいい?」
シュゴリンがまとめてそう言った。
俺なんかがいるせいで、ベイガーのパーティー加入にケチを付けてしまって申し訳ない気持ちになる。
「コイルさん。僕もあなたと一緒にもっと探索がしたいです。今日、一緒に戦わせてもらって、なんか凄い頼り甲斐があって……死んじゃった兄ちゃんみたいな感じがして……僕、スキルボードに《ヒール》があるから、だから技能点が入るようになったら」
「おいおい。ベイガー、キミは火力を上げることに力を入れた方がいいと思うよ? ……あっ、いや、どんな風にスキルを取るかは個人の自由だよな。余計な事を言ったわ、ごめん、忘れてくれ」
「ズルい。あたしにもアドバイスしてよ?」
「いや、そんなことより、キミらの新しいメンバーが増えた話で盛り上がりなって」
「キミらのじゃないですよ。コイルも含めて私たちの、ですよっ」
「そうよっ! これから帰ってレインボートラウトでパーティー結成のお祝いするわよっ!」
「はいっ!」
「そうしましょー!」
「あたしは唐揚げにする」
「じゃあ、そこで私にもアドバイスしてね」
なんだか、この子たちとなら、裏切られるとか、切り捨てられるとか考えずに一緒にやってけるのかな、とか勘違いしそうになるな。
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