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それぞれ

緊張感

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 あちゃー。

 どうすんべっか。

 うんこのついでに水汲んできたらあちしの部屋が乗っ取られてるっき。

 あちしの荷物の横にどっかりと座っちまって……油断しすぎだばな?

 魔物避けの線香はまだ生きてんかんね。すこっしくれぇ音ば出してもだいじょぶがんな。

 あちしは《気配影混》で自分の存在感を無くしだ。

 そーっとそーっと近づいち、あど3メートくらいん時に《危機感知3》ば全力で頭ん中で警報を鳴らしだ。

「やっばりダンジョンの中でステータス見るのは一人だと危ないかぁ」

 そいつはそー言ってこっちに振り返って来だ。

 もしかすっと、あちしがいるごどに気付いてんかい?

「この荷物の人?」

 あちゃー……さっき焦ったんでん気配が戻ったんがねえ。

 あちしは正面から敵と戦えんがらなぁ。

 ここまでなんがなぁ。

 とりあえず聞かれてんだがら応えとくっがねぇ。

「…………はい。それは私の荷物です」
 
「そう……勝手に使って悪かったよ。そっちから攻撃してこないんなら俺も何もしないでここを立ち去るけど、どうする?」

「…………私は、見逃してもらえるのですか?」

「いや、キミ、人間だろ? 人を襲うようなヤツじゃない限り俺から攻撃したりはしないって。でも、さっき俺のこと殺ろうとしてただろ? だから聞いてみただけ」

 バレてだー。

 なんなんこん人は。

「…………はい。…………私も、私を殺さない人なら何もしないです」

「な、なんだか間が長いな。ま、いいか。ともかく勝手に場所借りちゃって悪かったよ」

「いいえ」

 あちしは、あちしの棲家っから出てきだ男となんるべく離れっるよに壁際に体を寄せだんだわ。

 男はあちしの《危機感知3》がやべえっで言っだ辺りでしゃがんで何がひらってがら帰ってっだんだば。

「ふぅーーーーーーーーー」

 男が離れっだことを《エコー2》で確認しでがら、長ーぐ息を出しで固まってだ体から緊張をば追い出した。

 危なかったなぁ。

 と言うか、悪い人じゃなくてよかったよ。

 そ、それより、私、ちゃんど喋れでだかな?

 あちゃー。

「すぅーーーーーー……ふぅーーーーーー」

 もう一度深呼吸する。
 緊張しすぎはダメ。
 リラックスリラックス。

 私はアカメリダン、22歳です。
 訳あって一人でダンジョン暮らしをしています。

 え? いえ、1ヶ月に1回くらいは外に出て買い出しをしています。

 はい。水はダンジョン内で確保できますから。

「はぁ……今ならちゃんと言えるのに……」

 緊張すると言葉がおかしくなっちゃうから、人にあった時のシミュレーションと準備はちゃんとしてるはずなのに……

 いざとなると、やっぱり言葉がうまく話せなくなってしまう。

 誰も来ないこの場所で、もっと修行が必要ね。

 でも、さっきの人、なんで隠蔽してたこの場所に来ることができたのかなぁ。

 また来るかな。

 同じ人で2回目なら、なんとかできそうな気がするし、来てくれないかな。

 あぁぁ、でも、また来てって言える状況じゃながったしなぁ。

 そっと暗殺しようとしてたんバレてだしなぁ。

「はぁ」

 あちしは、溜息をついて、そーして自分のコミュニケーション不全を嘆いて、んで、無くなってる物が無いかサッと確認してから、隠蔽を強化して、そして一眠りすることにした。



 なんか不思議な人だったな。
 というかあの人、感知式の火炎壁魔法石に感づいてたよな。
 《危機感知》なのか《魔力感知》なのか、それとも素で勘がいいのか。
 まあ、気が付いてくれて良かった。
 元々、対魔物用に仕掛けておいたものだったし。
 人に対して発動してたら火傷させるところだった。

 でも、一人でずっとここに潜ってる感じだったよな。まとめられてた携帯食の残骸は何日分もあったし、ザックに入ってたのも感触的に食べ物ばっかりっぽかったし。

 それに、俺が仕掛けた魔法石に気付いたのもそうだし、そこに近付くまでまったく気配を感じさせなかったのもそうだし、何より、長期間ダンジョンの9階層に居続けてることから考えると。

 暗殺者とか、逃亡中の盗賊とかなのかね。

 話すのも凄く考えながら、無感情に、個性が出ないように丁寧に言ってた風だったし。
 まあ、それが逆に個性的だったから俺は覚えちゃったけど。
 なんとなくだけど、マヨイやヌーコに似た雰囲気があったから尚更かな。
 自分自身を前面に出してない感じ。
 まあ、あんまり知った風に言うのはよくないか。

 それにしても、やっぱり敵に回って怖いのは、正面から来ないで隙をついてくるヤツだよなぁ。
 もっと《付与術師》で装備の強化をしておかないとな。
 よし、決めた。
 帰ったら《付与術師》のレベルを上げて、検証と強化をしよう。
 うん。
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