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職業スキル
1 《守護戦士》
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「あのね、少し前からなんだけど……取れるスキルの中に『守護戦士』っていうのが増えててね。でも字が灰色になってて選べなくて。これってたぶん、職業スキルってやつだと思うんだけど、コイル、何か知ってないかなー、って思って」
他人に聞かれたくない相談事がある、とダンジョンの1階層の奥、安全地帯と呼ばれる癒やしの部屋まで連れて来られて、シュゴリンが口にしたのは、まあ、確かに結構大きめの話題だった。
「実は私も……灰色の『薬術師』と『占術師』というのがあります」
「私は『戦術士』と『剣術士』、それと『魔法剣士』がある」
おっと……職業スキルって誰でも取れるもんなのか。自分の付与術師を隠してるのが恥ずかしくなってきたな。
「み、みんな凄いな……いや、とは言っても、俺も『占術師』が灰色表示されてたりするんだが……」
一先ず、付与術師についてはだまったまま、ヌーコと被っている占術師について、自分も同じ様な状況だと伝えてみた。
その上で、同じ状況だからなんとも言えないんだが、と言いながら自分の取得可能スキルの一覧を確認してみると。
「あれ? 『占術師』が取れる状態になってる。技能点5点でいいらしいぞ?」
「えっ?」
そう言ってからすぐにヌーコも確認したらしいが、「私のは灰色のままです。技能点が足りてないからですかね? でも、いつもよりも白っぽい灰色になってる、かな? あ、確かに『薬術師』よりも明るい色になってますね」と言ってきた。
取れるなら取った方がいい、いや、5点は大きいから慎重に考えて取得した方がいい、とかわいわいしてる内に。
「あっ、また灰色になった……」
そう、話をしている間に、占術師の色がまた灰色になり、必要技能点の表示も消えてしまったのだった。
「あ、私の方も、《薬術師》と同じ灰色になりました」
どうやらヌーコの方でも変化があったらしい。
「そういう話なら、私も『戦術士』だけ色が白っぽいかもしれない。技能点があったら取れる?」
未だに慣れないツインテバージョンのマヨイがそんなことを言った。
「マヨイは何点残ってるんだっけ?」
「3点」
2レベル上げれば『戦術士』が取れるかも知れない状況なんだろうか。
でも、20レベルから2レベル上げるのはそんなに簡単な話じゃない。
でも、12階層ならなんとかなるか?
ただ、流石に12階層だと3人を守りながら戦うのは無理だよな……でも9階層なら。
「今から9階層に行ってみるか?」
「えっ、いいの?」
「行きたいです!」
「お願いする」
たまにステータス画面を確認してもらいながら4人で一気に9階層を目指した。
レベル20になった彼女たちは十分に戦えていた。
俺が守ってやろうなんて考える必要はなかったようだ。
シュゴリンがしっかりと壁役を努めてくれ、マヨイと俺のハンマーが、足が止まった敵を一撃一殺で倒していく。
それに、ヌーコの《危機感知2》や《罠感知2》がしっかりと仕事をしてくれるので、かなりのスピードで一気に9階層に辿り着くことができた。
「まだ色が違ったままだよ」
テンションが上がってきてるのか、マヨイの口調も少しずつダンジョンモードになってきていた。
何匹目かのオークを倒したところで、マヨイ達のレベルが21になった。
あと一つ。
ここに来るまでに、職業スキルについてみんなと話していたが、このスキルは取れるタイミングが決まってるか、それか人数制限があるんじゃないか、という予想を立てていた。
職業スキルに適正のある人間は複数人、それこそ数え切れないほどいるのかも知れない。
何故なら、こんな身近に『占術師』が表示されている人間が二人もいるんだから。
タイミング、人数制限、どちらにしても時間との戦いだ。
そうなるとどうしても慌ててしまう。
敵が見つからないことに少しイライラしてしまう。
4人でレベル上げをすることの効率の悪さが気になってしまう。
俺が一人でやってた時はこんなに敵を倒さなくてもレベルが上がったのに。
イライラしたって敵が湧かないのは分かってるんだが、どうしてもネガティブな気持ちが出てきてしまう。
「まだ大丈夫。それにコイルが私のことで慌ててくれてるのは嬉しい、けどもうちょっと落ち着いて?」
歳下のマヨイに、そう諭されてしまった。
確かに。
検証したい気持ちはあるけど、自分のことじゃなくてマヨイの話なんだよな。
なんでこんなに慌ててたんだか……とは言っても、知り合いが職業スキルを取れる可能性があるなら、できれば取らせてやりたい、かな。
でも、マヨイの言うとおり、もう少し落ち着こう。
「私の時もこんな風に手伝ってね?」
シュゴリンがそんなことを言ってくる。
そのタイミングで焦らなくていいように、今から技能点を残しておいた方がいいんだが、そうなると強化が疎かになってしまうんだよな。
それは先に進むのに対して、間違いなくマイナスな行為だと言える。
それに、なんとなくだけど、『守護戦士』は5点じゃなくて10点のような気がするんだよなぁ。『付与術師』と同じで。
いや、もしかしたらもっと必要かもしれない。
「私もあと一つ上がれば技能点が5点になるので、それは使わないで取っておくことにします」
ヌーコまでもがそんなことを言い出した。
だから、技能点を使わないでいることのデメリットについて話をしたのだが、そんなのは分かりきったことです、と返されてしまった。
そのデメリットに耐えることで、職業スキルが手に入れられるなら、それは意味のあることだと。
まあ、そりゃそうなんだけどな。
……んー、そもそも、俺が彼女達のスキルについて何かを語ること自体が間違いなんだよな。
なるべく関わらないようにしてたのに、このレベル上げも俺から声をかけたりして何やってんだか。
なんか目が覚めたっていうか、自分のやってるチグハグな行動に呆れたっていうか、少し脱力してしまった。
とはいえ、自分から声をかけてダンジョンに来ておいて、彼女達を放り出して帰ることはできないし、ここまで来たらマヨイが職業スキル持ちになるところにも立ち会ってみたい。
「マヨイ、色はまだ大丈夫か?」
マヨイに声をかけ、彼女の頷きに「よし」と頷き返す。
それから、シュゴリンとヌーコとも目を見合わせて頷きあったのだった。
他人に聞かれたくない相談事がある、とダンジョンの1階層の奥、安全地帯と呼ばれる癒やしの部屋まで連れて来られて、シュゴリンが口にしたのは、まあ、確かに結構大きめの話題だった。
「実は私も……灰色の『薬術師』と『占術師』というのがあります」
「私は『戦術士』と『剣術士』、それと『魔法剣士』がある」
おっと……職業スキルって誰でも取れるもんなのか。自分の付与術師を隠してるのが恥ずかしくなってきたな。
「み、みんな凄いな……いや、とは言っても、俺も『占術師』が灰色表示されてたりするんだが……」
一先ず、付与術師についてはだまったまま、ヌーコと被っている占術師について、自分も同じ様な状況だと伝えてみた。
その上で、同じ状況だからなんとも言えないんだが、と言いながら自分の取得可能スキルの一覧を確認してみると。
「あれ? 『占術師』が取れる状態になってる。技能点5点でいいらしいぞ?」
「えっ?」
そう言ってからすぐにヌーコも確認したらしいが、「私のは灰色のままです。技能点が足りてないからですかね? でも、いつもよりも白っぽい灰色になってる、かな? あ、確かに『薬術師』よりも明るい色になってますね」と言ってきた。
取れるなら取った方がいい、いや、5点は大きいから慎重に考えて取得した方がいい、とかわいわいしてる内に。
「あっ、また灰色になった……」
そう、話をしている間に、占術師の色がまた灰色になり、必要技能点の表示も消えてしまったのだった。
「あ、私の方も、《薬術師》と同じ灰色になりました」
どうやらヌーコの方でも変化があったらしい。
「そういう話なら、私も『戦術士』だけ色が白っぽいかもしれない。技能点があったら取れる?」
未だに慣れないツインテバージョンのマヨイがそんなことを言った。
「マヨイは何点残ってるんだっけ?」
「3点」
2レベル上げれば『戦術士』が取れるかも知れない状況なんだろうか。
でも、20レベルから2レベル上げるのはそんなに簡単な話じゃない。
でも、12階層ならなんとかなるか?
ただ、流石に12階層だと3人を守りながら戦うのは無理だよな……でも9階層なら。
「今から9階層に行ってみるか?」
「えっ、いいの?」
「行きたいです!」
「お願いする」
たまにステータス画面を確認してもらいながら4人で一気に9階層を目指した。
レベル20になった彼女たちは十分に戦えていた。
俺が守ってやろうなんて考える必要はなかったようだ。
シュゴリンがしっかりと壁役を努めてくれ、マヨイと俺のハンマーが、足が止まった敵を一撃一殺で倒していく。
それに、ヌーコの《危機感知2》や《罠感知2》がしっかりと仕事をしてくれるので、かなりのスピードで一気に9階層に辿り着くことができた。
「まだ色が違ったままだよ」
テンションが上がってきてるのか、マヨイの口調も少しずつダンジョンモードになってきていた。
何匹目かのオークを倒したところで、マヨイ達のレベルが21になった。
あと一つ。
ここに来るまでに、職業スキルについてみんなと話していたが、このスキルは取れるタイミングが決まってるか、それか人数制限があるんじゃないか、という予想を立てていた。
職業スキルに適正のある人間は複数人、それこそ数え切れないほどいるのかも知れない。
何故なら、こんな身近に『占術師』が表示されている人間が二人もいるんだから。
タイミング、人数制限、どちらにしても時間との戦いだ。
そうなるとどうしても慌ててしまう。
敵が見つからないことに少しイライラしてしまう。
4人でレベル上げをすることの効率の悪さが気になってしまう。
俺が一人でやってた時はこんなに敵を倒さなくてもレベルが上がったのに。
イライラしたって敵が湧かないのは分かってるんだが、どうしてもネガティブな気持ちが出てきてしまう。
「まだ大丈夫。それにコイルが私のことで慌ててくれてるのは嬉しい、けどもうちょっと落ち着いて?」
歳下のマヨイに、そう諭されてしまった。
確かに。
検証したい気持ちはあるけど、自分のことじゃなくてマヨイの話なんだよな。
なんでこんなに慌ててたんだか……とは言っても、知り合いが職業スキルを取れる可能性があるなら、できれば取らせてやりたい、かな。
でも、マヨイの言うとおり、もう少し落ち着こう。
「私の時もこんな風に手伝ってね?」
シュゴリンがそんなことを言ってくる。
そのタイミングで焦らなくていいように、今から技能点を残しておいた方がいいんだが、そうなると強化が疎かになってしまうんだよな。
それは先に進むのに対して、間違いなくマイナスな行為だと言える。
それに、なんとなくだけど、『守護戦士』は5点じゃなくて10点のような気がするんだよなぁ。『付与術師』と同じで。
いや、もしかしたらもっと必要かもしれない。
「私もあと一つ上がれば技能点が5点になるので、それは使わないで取っておくことにします」
ヌーコまでもがそんなことを言い出した。
だから、技能点を使わないでいることのデメリットについて話をしたのだが、そんなのは分かりきったことです、と返されてしまった。
そのデメリットに耐えることで、職業スキルが手に入れられるなら、それは意味のあることだと。
まあ、そりゃそうなんだけどな。
……んー、そもそも、俺が彼女達のスキルについて何かを語ること自体が間違いなんだよな。
なるべく関わらないようにしてたのに、このレベル上げも俺から声をかけたりして何やってんだか。
なんか目が覚めたっていうか、自分のやってるチグハグな行動に呆れたっていうか、少し脱力してしまった。
とはいえ、自分から声をかけてダンジョンに来ておいて、彼女達を放り出して帰ることはできないし、ここまで来たらマヨイが職業スキル持ちになるところにも立ち会ってみたい。
「マヨイ、色はまだ大丈夫か?」
マヨイに声をかけ、彼女の頷きに「よし」と頷き返す。
それから、シュゴリンとヌーコとも目を見合わせて頷きあったのだった。
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