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パワーレベリング
2 ゴミとクズ
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今日の予定では4階層は通り抜けるだけだ。
出れた所も運良く5階層への扉に近いので、寄り道せずに最短ルートで進んだ。
魔物には出会わなかったけど、扉のある空洞には男三人組のパーティーが休憩していた。
確か、俺と同じ時期に訓練所にいた子たちだ。
4人パーティーだったと思ったけど……もう一人、紅一点だった女の子がいないな。
高校生くらいの彼らは、訓練所時代はいつもうるさかったけな。まあ、カズと茶髪もトムとジェリーみたいな感じでうるさかったからおあいこだったんだけどさ。
1分くらい待ってみたけど彼らが動く気配がないので、ちょっと他の空洞に行って魔物を探すことにした。
30分ほどで4匹の魔物を倒すことができた。
その後、再度、扉の空洞に戻ってみるとさっきの彼らの姿はなかった。
彼らが5階層に行ったのかどうかは分からない。
でもあれだな、彼らは彼らでここに来れるくらいまでレベルを上げてるんだな。
張り合うわけじゃないけど、俺も頑張ろうって気持ちになった。
『レベルアップしました。強化する能力を選択してください』
5階層を8時間ほど徘徊しながら魔物と戦い続けた。
今ので今日3回目のレベルアップだ。
やっぱり、ソロは経験値の稼ぎがいいんだと思う。
このレベル帯になっても1日で3つもレベルを上げられるなんて。
特に俺にとって、この階層はやり易くなってきているってこともあるんだけど。
今までは脅威と言えたゴブリンキャスターも、ストーンオブエコーで魔物を感知できるようになった俺には楽な相手になってきていた。
その分、ストーンオブエコーの魔法石の消費が激しくなってるんだけど。《エコー》の消費精神力が1点ってことを考えると、ストーンオブエコーは6倍のコストなんだよな……悩む。
まあしかし、先に敵を発見できる、というのは本当に凄いアドバンテージになる。
奇襲をかけられるようになって、ゴブリンキャスターが《マジックミサイル》を発動するには少し時間がかかるのを学んだ俺は、ノーマルなゴブリンは無視してゴブリンキャスターを先に叩く戦法に変えた。
大きな空洞で、4匹組のゴブリンパーティーがいたこともあったけど、ゴブリンキャスターの同時出現数は今のところ、最大一匹だ。
普通のゴブリンの攻撃は10回くらいまでなら全部弾けるようになっている。
だからと言って回避が疎かにならないように気をつけてはいるけど、《マジックミサイル》を食らうよりは剣や斧で殴られる方が全然ましなので、まずは物理打撃は当たってもいい、くらいの気持ちで特攻している。
そうする理由は、この階層のゴブリンキャスターの使う《マジックミサイル》が当たると、まだ2点ものダメージを食らってしまうからだ。
2点というと少なく感じるけど、俺の生命力の最大値は20点しかない。2点は1割だから、10回食らえば俺は倒れることになるわけだ。
だから、2点という数字を過小評価することなんかできないわけ。
しかし、そろそろ次の階層に行くべきなのかもしれない。
レベルアップまでにかかる戦闘回数、時間が少しずつ伸びてきているからだ。
ただ、今日はもう帰ることにしよう。
明日はゴミを捨てに行かないとだし。
帰りも気を抜くことなく、他の探索者に遭遇しないように注意しながら地上に戻ったのだった。
「あっ、カズっち、あいつだよ」
「ん?」
「だからあいつだって! 追いかけないと」
「え? だから誰のことっしょ……って、ああ、コイルか」
僕ら二人だけだと、3階層の探索さえきつい。
僕の短剣やナイフだと倒すまでに時間がかかるし、敵の攻撃を一撃でも食らうとかなりのダメージを受けてしまう。
カズっちの《マジックミサイル》なら、3階層までの敵なら1発か2発で倒せるけど、数が多い場合には精神力が足らなくなるし、探索にも魔法を使ってもらうことがあるから、カズっちばかりを頼るわけにも行かない。
《エコー》はなるべく僕が使うようにしてるけど、あの「事故」以降、やたらと心配性になってしまったカズっちは、やたらと《ロケーション》を使うようになってしまった。
だから、魔物との戦闘時には僕が踏ん張らないといけない場面が増えてしまった。
で、考えたのはあのハンマーをもう一回使ってやるってことだった。
流されやすいあいつのことだ、僕らが魔物と戦ってる場面に遭遇すれば……それか、あいつが戦ってる所に僕らが「助け」に入ってってやれば、また暫くは僕らの盾になってくれるだろう。
でも、その作戦はうまく行かなかった。
あいつが突然走り出して、4階層の扉の部屋に向かったからだ。
《エコー》で次の部屋にはワーム系の敵がいるのが分かってたから、そこで巻き込むつもりだったのに、あいつは魔物と戦わずに扉の部屋に行ってしまったみたいだった。気配を感じられなくなったのは、突然のことだった。
まだ扉の部屋で階層渡り前の準備をしてるかもしれない。それにあいつがスルーできたんなら、僕らもワームに気づかれずに通り抜けられるかも知れない。そう思って部屋に入ったんだけど、そこにはジャイアントワームじゃなくて、ジャイアントヴァイパーが2匹もいたんだ。
結局、僕らはアイツに魔物を「擦り付けられた」せいでアイツを見失ってしまった。
ホント、クソだよアイツは。
ジャイアントヴァイパーとの戦いのせいでナマポを使い果たした僕らは、それ以上の探索を諦めて地上に帰った。
クソッ、なんだかんだ言って2階層までの生活探索者なんかやってやれないぞ。
なんとかして仲間を集めないと。
出れた所も運良く5階層への扉に近いので、寄り道せずに最短ルートで進んだ。
魔物には出会わなかったけど、扉のある空洞には男三人組のパーティーが休憩していた。
確か、俺と同じ時期に訓練所にいた子たちだ。
4人パーティーだったと思ったけど……もう一人、紅一点だった女の子がいないな。
高校生くらいの彼らは、訓練所時代はいつもうるさかったけな。まあ、カズと茶髪もトムとジェリーみたいな感じでうるさかったからおあいこだったんだけどさ。
1分くらい待ってみたけど彼らが動く気配がないので、ちょっと他の空洞に行って魔物を探すことにした。
30分ほどで4匹の魔物を倒すことができた。
その後、再度、扉の空洞に戻ってみるとさっきの彼らの姿はなかった。
彼らが5階層に行ったのかどうかは分からない。
でもあれだな、彼らは彼らでここに来れるくらいまでレベルを上げてるんだな。
張り合うわけじゃないけど、俺も頑張ろうって気持ちになった。
『レベルアップしました。強化する能力を選択してください』
5階層を8時間ほど徘徊しながら魔物と戦い続けた。
今ので今日3回目のレベルアップだ。
やっぱり、ソロは経験値の稼ぎがいいんだと思う。
このレベル帯になっても1日で3つもレベルを上げられるなんて。
特に俺にとって、この階層はやり易くなってきているってこともあるんだけど。
今までは脅威と言えたゴブリンキャスターも、ストーンオブエコーで魔物を感知できるようになった俺には楽な相手になってきていた。
その分、ストーンオブエコーの魔法石の消費が激しくなってるんだけど。《エコー》の消費精神力が1点ってことを考えると、ストーンオブエコーは6倍のコストなんだよな……悩む。
まあしかし、先に敵を発見できる、というのは本当に凄いアドバンテージになる。
奇襲をかけられるようになって、ゴブリンキャスターが《マジックミサイル》を発動するには少し時間がかかるのを学んだ俺は、ノーマルなゴブリンは無視してゴブリンキャスターを先に叩く戦法に変えた。
大きな空洞で、4匹組のゴブリンパーティーがいたこともあったけど、ゴブリンキャスターの同時出現数は今のところ、最大一匹だ。
普通のゴブリンの攻撃は10回くらいまでなら全部弾けるようになっている。
だからと言って回避が疎かにならないように気をつけてはいるけど、《マジックミサイル》を食らうよりは剣や斧で殴られる方が全然ましなので、まずは物理打撃は当たってもいい、くらいの気持ちで特攻している。
そうする理由は、この階層のゴブリンキャスターの使う《マジックミサイル》が当たると、まだ2点ものダメージを食らってしまうからだ。
2点というと少なく感じるけど、俺の生命力の最大値は20点しかない。2点は1割だから、10回食らえば俺は倒れることになるわけだ。
だから、2点という数字を過小評価することなんかできないわけ。
しかし、そろそろ次の階層に行くべきなのかもしれない。
レベルアップまでにかかる戦闘回数、時間が少しずつ伸びてきているからだ。
ただ、今日はもう帰ることにしよう。
明日はゴミを捨てに行かないとだし。
帰りも気を抜くことなく、他の探索者に遭遇しないように注意しながら地上に戻ったのだった。
「あっ、カズっち、あいつだよ」
「ん?」
「だからあいつだって! 追いかけないと」
「え? だから誰のことっしょ……って、ああ、コイルか」
僕ら二人だけだと、3階層の探索さえきつい。
僕の短剣やナイフだと倒すまでに時間がかかるし、敵の攻撃を一撃でも食らうとかなりのダメージを受けてしまう。
カズっちの《マジックミサイル》なら、3階層までの敵なら1発か2発で倒せるけど、数が多い場合には精神力が足らなくなるし、探索にも魔法を使ってもらうことがあるから、カズっちばかりを頼るわけにも行かない。
《エコー》はなるべく僕が使うようにしてるけど、あの「事故」以降、やたらと心配性になってしまったカズっちは、やたらと《ロケーション》を使うようになってしまった。
だから、魔物との戦闘時には僕が踏ん張らないといけない場面が増えてしまった。
で、考えたのはあのハンマーをもう一回使ってやるってことだった。
流されやすいあいつのことだ、僕らが魔物と戦ってる場面に遭遇すれば……それか、あいつが戦ってる所に僕らが「助け」に入ってってやれば、また暫くは僕らの盾になってくれるだろう。
でも、その作戦はうまく行かなかった。
あいつが突然走り出して、4階層の扉の部屋に向かったからだ。
《エコー》で次の部屋にはワーム系の敵がいるのが分かってたから、そこで巻き込むつもりだったのに、あいつは魔物と戦わずに扉の部屋に行ってしまったみたいだった。気配を感じられなくなったのは、突然のことだった。
まだ扉の部屋で階層渡り前の準備をしてるかもしれない。それにあいつがスルーできたんなら、僕らもワームに気づかれずに通り抜けられるかも知れない。そう思って部屋に入ったんだけど、そこにはジャイアントワームじゃなくて、ジャイアントヴァイパーが2匹もいたんだ。
結局、僕らはアイツに魔物を「擦り付けられた」せいでアイツを見失ってしまった。
ホント、クソだよアイツは。
ジャイアントヴァイパーとの戦いのせいでナマポを使い果たした僕らは、それ以上の探索を諦めて地上に帰った。
クソッ、なんだかんだ言って2階層までの生活探索者なんかやってやれないぞ。
なんとかして仲間を集めないと。
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