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「アッキーまだ行ける!?」
「ごめん、もう魔力がないかもー!」
「くううっ! ダダルーヤは?」
「あいつはとっくに逃げてったわよ!」
「ええ? マジで!? あいつ、女の子を置いて逃げ出したってゆーの? サイッテーね!」
私たちには5階層はまだ早かったみたい。
ゴブリンとゴブリンキャスターのたった2匹に、いいようにやられてしまっていた。
「ヌーコは? 生きてるよねっ?」
ヌーコの返事がない。
アッキーは精神力切れ。
マヨイは息切れ気味。
ダダルーヤは逃げ出した。
そして私は満身創痍。
もう生命力はあと4点だけだ。
5階層を舐めてた。
ゴブリンキャスターの《マジックミサイル》がこんなにも強力だなんて知らなかった。
同じ魔法なのに、4階層の奴とは全然と言ってもいいほど威力が違う、正に文字通り1つ上のランクの魔物だ。
でも、私はこのパーティーの守護者だ。
みんなを守ることが私の役目だ。
私が諦めたら、倒れてしまったら、みんなが倒されてしまう可能性が高くなってしまう。
これ以上はダメージを受けないようにしないと。
「マヨイ! ゴブリンは私が足止めしとくからゴブリンキャスターの方をお願い!」
「《マジックミサイル》は?」
2発目の《マジックミサイル》を撃ったあとは、ゴブリンの少し後ろ、ちょっと遠目の間合いから棍棒を振り回してるだけになったから、もう弾切れなんだと思う。
そうやってこっちを油断させる程賢くないと思いたい!
「弾切れだと思う! この階層のゴブリンキャスターは初めて見るから違うかもだけど!」
「ちぇっ、雑な分析だねぇ!」
そう言いながらもマヨイは後ろにジャンプしてゴブリンとの距離を一旦開けた。
そしてゴブリンの右から回り込むようにゴブリンキャスターに突撃して行った。
ゴブリンがそのマヨイの動きに反応して私から目線を切った隙に大盾ごとゴブリンに突っこむ。
「《シールドバッシュ》!」
ドカっと音を立てて、私の大盾がゴブリンに命中した。
その衝撃で数歩後ろに下がったゴブリンの動きに合わせて、ゴブリンキャスターも慌てて後ろに下がる。
それにマヨイが回り込みながら追いついて、突きを繰り出しながら身体ごと突っ込んでいった。
私もマヨイももう余裕が無くて敵に突っこむだけっていう、なんとも無謀な戦い方だ。
幸いにもマヨイの突きはゴブリンキャスターの喉を貫いてくれたようだった。あれならさすがにもう倒れるだろう。
なんて、私にはマヨイを見てる余裕はなかったはずだ。
ゴブリンの足止めをするって言ったのは私自身だったのになんて馬鹿なんだろう。
《シールドバッシュ》を喰らっても、後ろに下がるだけで倒れなかったゴブリンが、私の大盾を狙って下から上に剣を振り抜いた。
ガツンと強い衝撃を受けて、私の左腕は大盾ごと跳ね上げられ、無防備な体勢をゴブリンに晒してしまった。
そこにゴブリンが肩でタックルをしてきた。
タックルを胸で受けた私は、吹き飛び、地面に倒れてしまう。
もう駄目だ。
ゴブリンが私に向かってジャンプするのが見えた。
その後ろで悲痛な悲鳴を上げるマヨイの姿が見えた。
ごめんね。
マヨイたちは生き残ってね。
最後の最後、私はとうとう諦めて、目を閉じた。
「どっ……せいっ!」
へえ、ゴブリンって日本語喋れたんだ。
気合の入った力強い声を聞いて、そんなことを考えていた。
死ぬ間際ってスローモーションになるって本当だったんだね。
なかなかやって来ない痛みにそんなことを思いながら、私は暗闇に落ちていった。
なかなか戦闘が終わらないな。
待ってる時間が勿体なくて、ソロリソロリと、少しずつ戦う音と声が響く空洞に近づいて行ってみれば。
あー、これってピンチなのかね。
んー、一人は倒れてて、一人はオロオロしてるだけ。戦ってるのは大きい盾を持った人と長剣の子だけのように見える。
手を出しても怒られないパターンのやつだよな。なんか押されてるっぽいし。
「《シールドバッシュ》!」
おっ、でも二人だけでも片付けられそうかな。《シールドバッシュ》ね。初めて見たけどなかなかいいかもな。俺のスキルボードにも載ってはいるんだけど、実際に使ってるところを見ると効果が分かりやすいな。
あっ。
「ちっ!」
あっ、と思ったのに口から出たのは舌打ちだった。
なんか感じ悪いな、俺。
なんて考えてる間にも俺はゴブリンに向かって走り出した。
一撃で終わらせる。
索敵が成功して先制攻撃を仕掛ける時と同じだ。
左足でブレーキを掛け、その反動を利用して両手で持ったハンマーを右から左に振り抜いた。
「どっ……せい!」
いつもの掛け声に被るように、パアン! という音が響いてゴブリンの頭が粉々になって消える。
《鎚鉾・衝撃》が仕事するとやっぱり威力凄いな。
衝撃の効果で、ハンマーが動きを逆再生するように、振り子が戻るかのように、振ったのと反対方向に力が働く。
勢い余って倒れてる盾の人を踏みそうになって、慌ててハンマーの遠心力を使ってジャンプした。そのまま2回転半くらいスピンしながらその人を飛び越えた。
着地点がちょっと先にあったゴブリンキャスターの上だったもんだからバランスを崩してゴロゴロと転がってしまった。
かっこわりぃな。
顔を上げた俺と、長剣の女の子の目が合ってしまい、俺は情けなく苦笑いをしてみせた。
『レベルアップしました。強化する能力を選択してください』
そんな俺の頭の中で、無機質で機械的な音声が鳴り響いたのだった。
「ごめん、もう魔力がないかもー!」
「くううっ! ダダルーヤは?」
「あいつはとっくに逃げてったわよ!」
「ええ? マジで!? あいつ、女の子を置いて逃げ出したってゆーの? サイッテーね!」
私たちには5階層はまだ早かったみたい。
ゴブリンとゴブリンキャスターのたった2匹に、いいようにやられてしまっていた。
「ヌーコは? 生きてるよねっ?」
ヌーコの返事がない。
アッキーは精神力切れ。
マヨイは息切れ気味。
ダダルーヤは逃げ出した。
そして私は満身創痍。
もう生命力はあと4点だけだ。
5階層を舐めてた。
ゴブリンキャスターの《マジックミサイル》がこんなにも強力だなんて知らなかった。
同じ魔法なのに、4階層の奴とは全然と言ってもいいほど威力が違う、正に文字通り1つ上のランクの魔物だ。
でも、私はこのパーティーの守護者だ。
みんなを守ることが私の役目だ。
私が諦めたら、倒れてしまったら、みんなが倒されてしまう可能性が高くなってしまう。
これ以上はダメージを受けないようにしないと。
「マヨイ! ゴブリンは私が足止めしとくからゴブリンキャスターの方をお願い!」
「《マジックミサイル》は?」
2発目の《マジックミサイル》を撃ったあとは、ゴブリンの少し後ろ、ちょっと遠目の間合いから棍棒を振り回してるだけになったから、もう弾切れなんだと思う。
そうやってこっちを油断させる程賢くないと思いたい!
「弾切れだと思う! この階層のゴブリンキャスターは初めて見るから違うかもだけど!」
「ちぇっ、雑な分析だねぇ!」
そう言いながらもマヨイは後ろにジャンプしてゴブリンとの距離を一旦開けた。
そしてゴブリンの右から回り込むようにゴブリンキャスターに突撃して行った。
ゴブリンがそのマヨイの動きに反応して私から目線を切った隙に大盾ごとゴブリンに突っこむ。
「《シールドバッシュ》!」
ドカっと音を立てて、私の大盾がゴブリンに命中した。
その衝撃で数歩後ろに下がったゴブリンの動きに合わせて、ゴブリンキャスターも慌てて後ろに下がる。
それにマヨイが回り込みながら追いついて、突きを繰り出しながら身体ごと突っ込んでいった。
私もマヨイももう余裕が無くて敵に突っこむだけっていう、なんとも無謀な戦い方だ。
幸いにもマヨイの突きはゴブリンキャスターの喉を貫いてくれたようだった。あれならさすがにもう倒れるだろう。
なんて、私にはマヨイを見てる余裕はなかったはずだ。
ゴブリンの足止めをするって言ったのは私自身だったのになんて馬鹿なんだろう。
《シールドバッシュ》を喰らっても、後ろに下がるだけで倒れなかったゴブリンが、私の大盾を狙って下から上に剣を振り抜いた。
ガツンと強い衝撃を受けて、私の左腕は大盾ごと跳ね上げられ、無防備な体勢をゴブリンに晒してしまった。
そこにゴブリンが肩でタックルをしてきた。
タックルを胸で受けた私は、吹き飛び、地面に倒れてしまう。
もう駄目だ。
ゴブリンが私に向かってジャンプするのが見えた。
その後ろで悲痛な悲鳴を上げるマヨイの姿が見えた。
ごめんね。
マヨイたちは生き残ってね。
最後の最後、私はとうとう諦めて、目を閉じた。
「どっ……せいっ!」
へえ、ゴブリンって日本語喋れたんだ。
気合の入った力強い声を聞いて、そんなことを考えていた。
死ぬ間際ってスローモーションになるって本当だったんだね。
なかなかやって来ない痛みにそんなことを思いながら、私は暗闇に落ちていった。
なかなか戦闘が終わらないな。
待ってる時間が勿体なくて、ソロリソロリと、少しずつ戦う音と声が響く空洞に近づいて行ってみれば。
あー、これってピンチなのかね。
んー、一人は倒れてて、一人はオロオロしてるだけ。戦ってるのは大きい盾を持った人と長剣の子だけのように見える。
手を出しても怒られないパターンのやつだよな。なんか押されてるっぽいし。
「《シールドバッシュ》!」
おっ、でも二人だけでも片付けられそうかな。《シールドバッシュ》ね。初めて見たけどなかなかいいかもな。俺のスキルボードにも載ってはいるんだけど、実際に使ってるところを見ると効果が分かりやすいな。
あっ。
「ちっ!」
あっ、と思ったのに口から出たのは舌打ちだった。
なんか感じ悪いな、俺。
なんて考えてる間にも俺はゴブリンに向かって走り出した。
一撃で終わらせる。
索敵が成功して先制攻撃を仕掛ける時と同じだ。
左足でブレーキを掛け、その反動を利用して両手で持ったハンマーを右から左に振り抜いた。
「どっ……せい!」
いつもの掛け声に被るように、パアン! という音が響いてゴブリンの頭が粉々になって消える。
《鎚鉾・衝撃》が仕事するとやっぱり威力凄いな。
衝撃の効果で、ハンマーが動きを逆再生するように、振り子が戻るかのように、振ったのと反対方向に力が働く。
勢い余って倒れてる盾の人を踏みそうになって、慌ててハンマーの遠心力を使ってジャンプした。そのまま2回転半くらいスピンしながらその人を飛び越えた。
着地点がちょっと先にあったゴブリンキャスターの上だったもんだからバランスを崩してゴロゴロと転がってしまった。
かっこわりぃな。
顔を上げた俺と、長剣の女の子の目が合ってしまい、俺は情けなく苦笑いをしてみせた。
『レベルアップしました。強化する能力を選択してください』
そんな俺の頭の中で、無機質で機械的な音声が鳴り響いたのだった。
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