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5 クラススキル
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図書館に入って最初に見に行くのは黒石版だ。
この地域に持ち込まれるニュースを確認することができる。
管理局からの情報も見ることができるし、週に一回くらいの頻度で他の地域の情報も記載される。
ほぅ。リュウセンダンジョンから20センチを超える魔石が出たのか……何階層から持ち帰られたのかは書かれていないが、持ち帰ったのは有名なララミーという探索者のパーティーだそうだ。クラン名やギルド名は書かれてないから、まだ元々の5人で潜ってるのかね。
おっ、中央警備隊にあの『ケルベロスキラー』が入隊したのか。
ケルベロスキラーとはシンジュクダンジョン活動しているパーティーで、双頭の火吹き魔犬を倒したことで有名になったパーティーだ。
どのくらい強いのか見てみたい気もするけど、アブクマにはそんな強い奴が配属された警備隊は来ないんだろうな。
アブクマはそんなにあくどい奴もいないみたいだし、探索者たちも、どちらかと言えば治安が維持されてるほうがやり易いと思ってるのが多いみたいだし。
この間も何とかいう神を信仰しない人間は地獄に落ちる、とか言って周る集団が、聞く耳を持たない住人に対して切れて暴れ出した時も、ある程度名のあるパーティーが対応して抑え込んでたしな。
それ以外には特に目を引く話題はなかったので、漫画や小説を読み耽って夕方まで過ごした。
図書館は安くない入館料がかかるので人は少ない。おかげでちゃんと椅子に座ってゆったりと本を読めるんだけど、館内での飲食ができないのが辛い。一回外に出たら再入館にはまた金かかるし。
でも、さすがに喉が渇いてきたし四、五時間は経ってるしで、諦めて夕飯を食うために外に出ることにした。
蕎麦屋で注文して待っていると肩を叩かれた。
振り返るとそこにはグッチがいて、俺のほっぺにグッチの指が深々と突き刺さった。
「キミも夕飯に蕎麦を選ぶとはねー。奇遇奇遇」
そう言いながら右の席にグッチが座った。
店員さんにざる蕎麦4枚盛りを頼むとこっちに向き直って話し始める。
グッチと俺は実はそんなに仲がいいわけじゃない。
まあ、店に入って相手を見つけたら声をかけて隣に座るぐらいはする、という程度の付き合いだ。
高校を卒業してから、ここに来る時に三人と偶然合うまでは連絡をとったこともなかったし、ここに来てからも休養日に一緒に行動することもなかった。
カズも同じようなものだけど、彼はああ見えて結構気ぃ使いなので、彼がいる時は飲みに行ったりもするけど。
順番に運ばれてきた蕎麦を啜って、探索についてや、戦闘時の流れについてを軽く話してから店を出た。
グッチも俺も片手を上げて、じゃまた明日の探索で、と言って別れた。
カズがいない時のグッチは相変わらず淡白だな。
このパーティーはもう長くないかな、と思う。
俺は前々から狙ってるスキルがあるから、それが手に入るまでは解散してほしくないんだけど。
部屋に戻った俺はスキルボードを表示して、まだ未取得のスキル一覧を確認する。
そこにはグレーアウトされているスキルが2つあって、それぞれ取得できない状態になっている。
それは、今までにも何人かが取得したと噂されている『職業スキル』と言うやつだ。
『職業スキル』を取ると、その職業に関連したスキルがまとめて使えるようになるらしい。
フジフウケツダンジョンで40階層到達を果たした『英雄』ガザミー。これは本人が《英雄》スキルを取得したことを公言してるらしい。さすがに取得方法や、その効果についての情報は一切言わないらしいけど。
さっきボードに載ってたララミーは《賢者》じゃないかという噂だ。攻撃魔法も回復魔法も多彩で、それだけの魔法を覚えるにはガザミーの『英雄』のような職業スキルがあるはずだ、と言われてるんだそうだ。
そして俺のボードに載っているのはこれだ。
《付与術師》
《占術師》
どちらも非戦闘系の職業のようだけど、それでもいいんだ。
ダンジョンに入ろうと思ったきっかけは、この2つの選択できないスキルが気になったからだし、金は欲しいけど、深層にそれほど興味があるわけでもないし、探索者として有名になりたいわけでもない。
ただ、おかしくなってしまったこの世界で、自分一人でも生きていける力がほしいと思うだけだ。
そのためにもレベルアップは必要だし、強力と思われる職業スキルは獲得しときたい。
レベルアップ。
そう、レベルアップだ。
明日はちゃんと潜ってレベルを上げなければ。
今の技能点は6点。
予想ではキリのいいところで、10点で職業スキルが取れるんじゃないかと思っている。
あと4レベル。
打算的でホントに悪いとは思ってるんだけど、カズとグッチは、俺が新しいスキルを取らないことを見逃してくれるだろうから、そこまでは技能点を使わずにいきたい。
この間の感じからして、4階層で1日中探索できれば、たぶん2レベルは上げられるだろうと思う。
みんなが15レベルになれば、3人で45レベルだ。そうなればカズが5階層に行くと言い出すだろう。
4階層で二日か三日でレベル15。
5階層でもやれそうなら一日で16レベルになれるかも知れない。
そう考えるとドキドキしてきた。
もう少しだ。
だからこそ、安全第一で立回らなければ。
特に、今の俺は前衛だ。
茶髪もいなくなってから回復役は回復薬だけだし、無理はしないようにしなければ。
明日も万全の体調で挑もう。
俺は腰掛けていたベッドに仰向けで倒れ混んだ。そして期待でドキドキする鼓動を抑えるようにしながら、目を閉じた。
この地域に持ち込まれるニュースを確認することができる。
管理局からの情報も見ることができるし、週に一回くらいの頻度で他の地域の情報も記載される。
ほぅ。リュウセンダンジョンから20センチを超える魔石が出たのか……何階層から持ち帰られたのかは書かれていないが、持ち帰ったのは有名なララミーという探索者のパーティーだそうだ。クラン名やギルド名は書かれてないから、まだ元々の5人で潜ってるのかね。
おっ、中央警備隊にあの『ケルベロスキラー』が入隊したのか。
ケルベロスキラーとはシンジュクダンジョン活動しているパーティーで、双頭の火吹き魔犬を倒したことで有名になったパーティーだ。
どのくらい強いのか見てみたい気もするけど、アブクマにはそんな強い奴が配属された警備隊は来ないんだろうな。
アブクマはそんなにあくどい奴もいないみたいだし、探索者たちも、どちらかと言えば治安が維持されてるほうがやり易いと思ってるのが多いみたいだし。
この間も何とかいう神を信仰しない人間は地獄に落ちる、とか言って周る集団が、聞く耳を持たない住人に対して切れて暴れ出した時も、ある程度名のあるパーティーが対応して抑え込んでたしな。
それ以外には特に目を引く話題はなかったので、漫画や小説を読み耽って夕方まで過ごした。
図書館は安くない入館料がかかるので人は少ない。おかげでちゃんと椅子に座ってゆったりと本を読めるんだけど、館内での飲食ができないのが辛い。一回外に出たら再入館にはまた金かかるし。
でも、さすがに喉が渇いてきたし四、五時間は経ってるしで、諦めて夕飯を食うために外に出ることにした。
蕎麦屋で注文して待っていると肩を叩かれた。
振り返るとそこにはグッチがいて、俺のほっぺにグッチの指が深々と突き刺さった。
「キミも夕飯に蕎麦を選ぶとはねー。奇遇奇遇」
そう言いながら右の席にグッチが座った。
店員さんにざる蕎麦4枚盛りを頼むとこっちに向き直って話し始める。
グッチと俺は実はそんなに仲がいいわけじゃない。
まあ、店に入って相手を見つけたら声をかけて隣に座るぐらいはする、という程度の付き合いだ。
高校を卒業してから、ここに来る時に三人と偶然合うまでは連絡をとったこともなかったし、ここに来てからも休養日に一緒に行動することもなかった。
カズも同じようなものだけど、彼はああ見えて結構気ぃ使いなので、彼がいる時は飲みに行ったりもするけど。
順番に運ばれてきた蕎麦を啜って、探索についてや、戦闘時の流れについてを軽く話してから店を出た。
グッチも俺も片手を上げて、じゃまた明日の探索で、と言って別れた。
カズがいない時のグッチは相変わらず淡白だな。
このパーティーはもう長くないかな、と思う。
俺は前々から狙ってるスキルがあるから、それが手に入るまでは解散してほしくないんだけど。
部屋に戻った俺はスキルボードを表示して、まだ未取得のスキル一覧を確認する。
そこにはグレーアウトされているスキルが2つあって、それぞれ取得できない状態になっている。
それは、今までにも何人かが取得したと噂されている『職業スキル』と言うやつだ。
『職業スキル』を取ると、その職業に関連したスキルがまとめて使えるようになるらしい。
フジフウケツダンジョンで40階層到達を果たした『英雄』ガザミー。これは本人が《英雄》スキルを取得したことを公言してるらしい。さすがに取得方法や、その効果についての情報は一切言わないらしいけど。
さっきボードに載ってたララミーは《賢者》じゃないかという噂だ。攻撃魔法も回復魔法も多彩で、それだけの魔法を覚えるにはガザミーの『英雄』のような職業スキルがあるはずだ、と言われてるんだそうだ。
そして俺のボードに載っているのはこれだ。
《付与術師》
《占術師》
どちらも非戦闘系の職業のようだけど、それでもいいんだ。
ダンジョンに入ろうと思ったきっかけは、この2つの選択できないスキルが気になったからだし、金は欲しいけど、深層にそれほど興味があるわけでもないし、探索者として有名になりたいわけでもない。
ただ、おかしくなってしまったこの世界で、自分一人でも生きていける力がほしいと思うだけだ。
そのためにもレベルアップは必要だし、強力と思われる職業スキルは獲得しときたい。
レベルアップ。
そう、レベルアップだ。
明日はちゃんと潜ってレベルを上げなければ。
今の技能点は6点。
予想ではキリのいいところで、10点で職業スキルが取れるんじゃないかと思っている。
あと4レベル。
打算的でホントに悪いとは思ってるんだけど、カズとグッチは、俺が新しいスキルを取らないことを見逃してくれるだろうから、そこまでは技能点を使わずにいきたい。
この間の感じからして、4階層で1日中探索できれば、たぶん2レベルは上げられるだろうと思う。
みんなが15レベルになれば、3人で45レベルだ。そうなればカズが5階層に行くと言い出すだろう。
4階層で二日か三日でレベル15。
5階層でもやれそうなら一日で16レベルになれるかも知れない。
そう考えるとドキドキしてきた。
もう少しだ。
だからこそ、安全第一で立回らなければ。
特に、今の俺は前衛だ。
茶髪もいなくなってから回復役は回復薬だけだし、無理はしないようにしなければ。
明日も万全の体調で挑もう。
俺は腰掛けていたベッドに仰向けで倒れ混んだ。そして期待でドキドキする鼓動を抑えるようにしながら、目を閉じた。
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