プレーヤープレイヤー

もずく

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ヴァイオレットレイン

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 六度目の挑戦は、ヴァイオレットレインの五人と共に進む事にした。
 僕一人ではどうにもならない可能性が高いので、アークリッチ迂回を試す前に、数の暴力でアークリッチを一気に倒してしまおうと言う考えだ。
 本当は、敵意を集めて敵を引き留める事ができる重戦者隊の力も欲しいところだけど、彼らの装備だとかなり無理を強いる事になるから、スマッシャーズと一緒に後から最短ルートを進んでもらう事にした。

 今回の作戦はこうだ。
 まず、僕とヴァイオレットレインの六人がアークリッチと会うまで全力で進む。
 戦いは状況を見て臨機応変になるだろうけど、基本的には僕がアークリッチを押さえてる間に、ヴァイオレットレインの五人には超巨大空洞に先に向かって行ってもらうつもりでいる。
 まあ、それもこれも、アークリッチと戦う位置次第になると思うんだけどね。早めに会敵すればスマッシャーズと重戦者隊も合流できるかも知れないから、その場合は戦いが楽になって早く終わらせられると思う。
 もちろん、死霊相手の戦いだから、精神耐性の高い盾や護符を持ってるザイアンと、光魔法の使えるグファーダ以外には無理はさせられないけど。
 ある程度進んでから会敵した場合は、ミレニア達の判断次第だけど、僕が一人でアークリッチを倒すつもりだ。

 そんな風に、難敵が複数現れるような予感・・がしたのだと、僕は道中でミレニア達に話した。

「オラクルね~」
「考えものですよね。予言めいたものに振り回されるとか」
「予言っつーか、ヒントっすよね。ぜーんぶ、ソルっちとかクランのプラスになってるっすし」
「そうね」
「確かにね。あんたのは予言のレベルじゃあないわな。初見の敵の弱点さえもピンポイントで看破したりとか。ま、それで助かってるからいいんだけどね」
「敵がそんな力持ってたらやだよね~」
「っすねー」
「おっと、オラクルだ!」
「オラクルですわね」
「ですね」
「「オラクルオラクルー!」」

 正面の天井から、天使が舞い降りるかのように、ふわりと降りてきた漆黒のローブを着た大きな骸骨が、空洞のはずの目を紫色に暗く光らせた。

「《五竜火柱ヒュドラピラー》!」
「《暴風ストーム》!」

 ミレニアが即座に、彼女の最強火魔法を発動した。五本の極太の火柱が地面から、高い天井まで吹き上がる。
 そこにレッティの風魔法が合わせ掛けされると、五本の火柱がまるであの五竜ヒュドラの首のようにうねり動き、アークリッチに絡みつく様に、咬み付くように襲いかかった。
 見事に二人の魔法が融合し、強大な一つの魔法になっている。
 アークリッチは予想外・・・にも複数の位置から攻撃を受けた事で「ボオオ」と怒りに吠えるような、痛みに泣くような、声とは呼べない声を上げた。

 彼女達は肉弾戦が好きだが、それしかできない訳じゃない。むしろ、レッティの風魔法を中心にして、ミレニアワインスーの魔法を合体させて威力を強化したり、イリヤの光魔法で防御、回復をしつつ、手の空いてる者が高い物理攻撃力で叩くと言う、臨機応変にロールを入れ替えて戦う頭脳派野生の勘の持ち主なのだ。

「ここはあたしらが引き受けたよ!」
 ミレニアが高らかに宣言する。
 彼女の勘が働いたのか、何か確信を持って「ここが自分の持ち場」だと決めたようだ。

「わたしはソルト一人を先に行かせたくないけどね~」
「まったくです」
 レッティとイリヤが苦虫を噛み潰したような顔を作って言う。

「私も我慢しますわ。ですからお二人も気持ちよく送り出してあげては?」
「っすね」
 ワインがウインクしながら《雹雨》を掌の上に準備して、スーがVサインをしながら《瞬歩》でアークリッチの背後に移動していった。
 僕の勝手な予定では、彼女達に先に行ってもらうはずだったけど、何か野生の勘が働いたのならそれに乗っかってしまった方がいい、と言うのが彼女達と数年過ごしてきた僕の経験則だ。

「分かった。絶対に死なないで」
「誰に言ってんだい」
「きゃ~、ソルトが心配してくれた~」
「ソルト君こそ無茶しないでね」

 僕は彼女達に頷くと、全速力で駆けてその場をあとにした。
「絶対に死なないで」欲しいと言う気持ちは本物だ。
 死んで欲しくないのはマルメルとミツキだけじゃない。ミレニアやカイン、ザイアン達にも大怪我をせずに生き残って欲しい。
 できることなら、全員が助かるまで何度でもやり直したいと思う。
 でも、今回はちょっと話が違う。
 アークリッチと言う魔物は、やり直せばやり直すほど、色々な情報を手に入れてしまうから。
「どうやっても敵わない」と思わせる事ができれば、もしかしたら僕らの前に現れなくなるかも知れないけど、アークリッチに《観覧者スキル》で憑依して永遠の命を手に入れるような気狂いだからね。もし倒されても、数年後にはアークリッチとして再び復活する事が分かってるらしいから、死を恐れてないみたいだし、できればここいら辺で終わりにしておきたい。

「はぁ……」
 不意に出てしまった溜息に、僕は自分の頬を叩いて気合を入れ直した。
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