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魔導王の死霊
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「悪いんだけどここからは急がないとダメみたいだ」
カイン達にそう言うと、僕は一人で全力で走り出した。
彼らはきっと「またいつものやつか」と理解してくれることだろう。
僕が時々、唐突な行動に出ることや、やたら的確な指示を出す事を、彼らは「予言」や「天啓」などとと呼んでいて、その行動や言葉の先には良い結果が多い(今の所、百発百中)ことから、僕の奇行は彼らにとっても天恵に近しいものになっているから。
四階層の超巨大空洞で、鷲獅子の死霊に倒されてしまったと思われるミツキとマルメルを見つけた僕は、《再生機》を即座に発動した。
そこで観たものは鷲獅子の死霊の特性と戦い方、それと、まだ息のあったマルメルの数時間の記憶だ。
マルメルが王女だったことや、ミツキが隷属魔法と言うやつで奴隷なっていたこと、その他にも僕がこっそり聞いてはいけないような二人の話など、を知った。
マルメルの想いも、ミツキが苦しんでいたことも知らなかった。僕は自分で自分を殴りつけたい衝動にかられたけど、今はそれよりも先にやるべき事がある。
全力で超大空洞に向かう。
そしてグリフォンレイスをぶっ倒す。
一人でなら回避できる戦闘もあったし、あの場所に着くまで、クラン全員で動くよりも一時間は短縮できるはずだ。
熱くなって頭を使わずに全力で突進した結果、僕は更に二回もミツキの死に顔を見ることになった。
一度目の挑戦では、回避できると思った戦いは、壁をすり抜ける事のできるレイスに追い縋られ、大量の魔物や魔獣に囲まれて、結果的に余計に時間が掛かってしまった。
かと言って、二度目の挑戦では、瞬殺を目指しつつ、出てくる敵を全部倒していったら、最初には湧かなかった魔導王の死霊とか言うのが出てきて、危なく死ぬ所だった。
僕は《再生機》の力で、いくつもの危機を回避してきた。それはつまり、本来腕を失う場面だった所を無傷で切り抜けたり、死ぬはずだった仲間を死なさずに済ませたりと、未来を変えて来た。
だから、今、僕はミツキが死なない未来、マルメルが瀕死にならない未来を迎える為に、三度目の挑戦をしているのだけど、ちょっとおかしな事になっていた。
《再生機》で過去からやり直す場合は、基本的に「僕以外は、僕が動きを変えない限り、一度目と同じ動きをする」はずなんだ。
それなのに、今、僕の目の前には「二度目の挑戦」の時よりも早いタイミングでアークリッチが出てきた。
確かに、やり直す時に僕が違う動きをすれば、それに対応する為に敵の動きが変わる事は今までもあった。
だけど、僕が同じ行動をしている場合は、敵も仲間も、その他の人も、一度目と同じ行動をするはずなのに……しかも、アークリッチは僕が《超断魔剣》の構えをした瞬間に横方向に逃げたんだ。
《超断魔剣》はトーヤの必殺技で、後方下段に構えた剣を、自分の真上を通して半円を描く様にして前方にいる敵を斬る攻撃だ。
二度目の挑戦の時には、僕の火の魔力を乗せた魔法剣・白竜の白金の長剣の《超断魔剣》でアークリッチにとどめを刺したんだけど、その時には横に避ける様な動きはしなかったのに。
僕が逡巡したを見て、ローブの中の骸骨の顔がニヤッと嗤ったような気がした。
この魔物、アークリッチはもしかしたら僕と似たようなスキルを隠し持ってるんだろうか。
《隠蔽》されているステータスやスキルが見れないのは、僕のように相手のスキルを見る事ができる人間にとっては逆に罠になってしまう事もある。
とにかく、出てきてしまったものは倒すしかないし、相手が学習してしまうなら、なるべく新しい手を見せないで戦わないといけない。
二度目の時と同じく、僕は火の魔力を白金の白竜の長剣に乗せて、既に見破られている一撃必殺ではなく、高頻度で単純な《連撃》を使いながら削り倒した。《連撃》は単純に手数を増やすだけな分、このスキルだけでも多彩な攻撃が繰り出せるので、何度使っても、敵に《連撃》を使っている事が見破られてもあまり問題はない。実力差で追い込みやすい有能なスキルだ。
でも、やっぱり《超断魔剣》で倒した時よりも五分か十分以上も時間が掛かってしまった。
その後は更にスピードを上げて全力で走った。
アークリッチ以降の魔物は二度目とほとんど同じだったと思う。
でも、結局、到着までにそれほど時間を短縮することは出来ず、僕がグリフォンレイスにとどめを刺した時には、ミツキは死んでしまっていた。
マルメルの記憶を辿ると、あと五分早く着くことができれば、グリフォンレイスの死の氷息が出る前になんとかできそうなんだけど……
四度目はアークリッチをひたすらに無視して、現れる魔物や魔獣は、手の届く相手だけを一蹴しながら超巨大空洞を目指した。
なんとかギリギリで、ミツキが生きてる内に超巨大空洞に着いたんだけど、壁をすり抜けて追い掛けてきたアークリッチとレイスの群れがやって来てしまい、グリフォンレイスと挟み撃ちになったことで、僕は《再生機》を使わざるを得ない状況になってしまった。
カイン達にそう言うと、僕は一人で全力で走り出した。
彼らはきっと「またいつものやつか」と理解してくれることだろう。
僕が時々、唐突な行動に出ることや、やたら的確な指示を出す事を、彼らは「予言」や「天啓」などとと呼んでいて、その行動や言葉の先には良い結果が多い(今の所、百発百中)ことから、僕の奇行は彼らにとっても天恵に近しいものになっているから。
四階層の超巨大空洞で、鷲獅子の死霊に倒されてしまったと思われるミツキとマルメルを見つけた僕は、《再生機》を即座に発動した。
そこで観たものは鷲獅子の死霊の特性と戦い方、それと、まだ息のあったマルメルの数時間の記憶だ。
マルメルが王女だったことや、ミツキが隷属魔法と言うやつで奴隷なっていたこと、その他にも僕がこっそり聞いてはいけないような二人の話など、を知った。
マルメルの想いも、ミツキが苦しんでいたことも知らなかった。僕は自分で自分を殴りつけたい衝動にかられたけど、今はそれよりも先にやるべき事がある。
全力で超大空洞に向かう。
そしてグリフォンレイスをぶっ倒す。
一人でなら回避できる戦闘もあったし、あの場所に着くまで、クラン全員で動くよりも一時間は短縮できるはずだ。
熱くなって頭を使わずに全力で突進した結果、僕は更に二回もミツキの死に顔を見ることになった。
一度目の挑戦では、回避できると思った戦いは、壁をすり抜ける事のできるレイスに追い縋られ、大量の魔物や魔獣に囲まれて、結果的に余計に時間が掛かってしまった。
かと言って、二度目の挑戦では、瞬殺を目指しつつ、出てくる敵を全部倒していったら、最初には湧かなかった魔導王の死霊とか言うのが出てきて、危なく死ぬ所だった。
僕は《再生機》の力で、いくつもの危機を回避してきた。それはつまり、本来腕を失う場面だった所を無傷で切り抜けたり、死ぬはずだった仲間を死なさずに済ませたりと、未来を変えて来た。
だから、今、僕はミツキが死なない未来、マルメルが瀕死にならない未来を迎える為に、三度目の挑戦をしているのだけど、ちょっとおかしな事になっていた。
《再生機》で過去からやり直す場合は、基本的に「僕以外は、僕が動きを変えない限り、一度目と同じ動きをする」はずなんだ。
それなのに、今、僕の目の前には「二度目の挑戦」の時よりも早いタイミングでアークリッチが出てきた。
確かに、やり直す時に僕が違う動きをすれば、それに対応する為に敵の動きが変わる事は今までもあった。
だけど、僕が同じ行動をしている場合は、敵も仲間も、その他の人も、一度目と同じ行動をするはずなのに……しかも、アークリッチは僕が《超断魔剣》の構えをした瞬間に横方向に逃げたんだ。
《超断魔剣》はトーヤの必殺技で、後方下段に構えた剣を、自分の真上を通して半円を描く様にして前方にいる敵を斬る攻撃だ。
二度目の挑戦の時には、僕の火の魔力を乗せた魔法剣・白竜の白金の長剣の《超断魔剣》でアークリッチにとどめを刺したんだけど、その時には横に避ける様な動きはしなかったのに。
僕が逡巡したを見て、ローブの中の骸骨の顔がニヤッと嗤ったような気がした。
この魔物、アークリッチはもしかしたら僕と似たようなスキルを隠し持ってるんだろうか。
《隠蔽》されているステータスやスキルが見れないのは、僕のように相手のスキルを見る事ができる人間にとっては逆に罠になってしまう事もある。
とにかく、出てきてしまったものは倒すしかないし、相手が学習してしまうなら、なるべく新しい手を見せないで戦わないといけない。
二度目の時と同じく、僕は火の魔力を白金の白竜の長剣に乗せて、既に見破られている一撃必殺ではなく、高頻度で単純な《連撃》を使いながら削り倒した。《連撃》は単純に手数を増やすだけな分、このスキルだけでも多彩な攻撃が繰り出せるので、何度使っても、敵に《連撃》を使っている事が見破られてもあまり問題はない。実力差で追い込みやすい有能なスキルだ。
でも、やっぱり《超断魔剣》で倒した時よりも五分か十分以上も時間が掛かってしまった。
その後は更にスピードを上げて全力で走った。
アークリッチ以降の魔物は二度目とほとんど同じだったと思う。
でも、結局、到着までにそれほど時間を短縮することは出来ず、僕がグリフォンレイスにとどめを刺した時には、ミツキは死んでしまっていた。
マルメルの記憶を辿ると、あと五分早く着くことができれば、グリフォンレイスの死の氷息が出る前になんとかできそうなんだけど……
四度目はアークリッチをひたすらに無視して、現れる魔物や魔獣は、手の届く相手だけを一蹴しながら超巨大空洞を目指した。
なんとかギリギリで、ミツキが生きてる内に超巨大空洞に着いたんだけど、壁をすり抜けて追い掛けてきたアークリッチとレイスの群れがやって来てしまい、グリフォンレイスと挟み撃ちになったことで、僕は《再生機》を使わざるを得ない状況になってしまった。
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