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レイドモンスター ファイアドレイク
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ワッキーの《魔力供給》と《魔力回復》は希少なスキルだと思う。もちろん、今では僕もそのスキルを使えるんだけど、普段使うのは《魔力回復》だけだ。
《魔力供給》は自分の魔力を他人に渡してあげるスキルだ。ほぼ等価値の魔力を渡すことができる。
《魔力回復》は、自分の魔力の回復速度を急激に上げるスキルだ。これを使うと一時的に魔力上限が下がるというデメリットもあるんだけど、使い切った魔力が数十秒で満タンまで回復するのは非常にありがたい。
さてさて。
僕の《再生機》の話なんだけどね。
最初の頃に、使う度に巻き戻る時間が長くなってくな、とは思ってたんだけどさ。今では何と二時間以上も戻ってしまうんだよね。
だから、直近の戦いを再生して復習したい時にも、個人的には何回も二時間前からの場面を繰り返す事になってしまうから、復習をする場合はタイミングを合わせて再生するようにしている。
もちろん、今回のように死亡者が出た時は悠長なことは言ってられないから、なるべく早めに再生するんだけど。
みんなには《再生機》の事は話してないから、前振りをしながら進んで行かないといけないし、なるべく時間が多い方が助かるしね。
「今までにも五竜とか、巨大骨蛇みたいな大きい敵が出てきたときにさ、ザイアン達タンカーでも一人一人だと少しだけ押し込まれたり跳ね飛ばされることがあったでしょ」
「うむ」
ドラコニアンを倒した僕達は、少し休んで息を整えてからまた歩き始めた。
そして僕は唐突に話し始める。
いきなりで変な会話の流れのはずなんだけど、彼らは慣れたもので、またソルトの予言が始まったぞ、程度の感じでスッと話を聞いてくれる。
「そういう時にさ、二人か三人で盾を並べて衝撃に耐えたりとかってできないのかな」
「ふむ……そうであるな。そういった連携も今後必要になってくるかも知れぬな」
「ただ、それを試す程の大型の魔物となるとレイドモンスターくらいですな」
「まあ、我等なら即席でも可能であろう。マーモ、ムゴール、次の戦闘では我の隣に来て試してみようぞ」
「はい師匠」
「了解です」
僕が唐突に何かを言い出す時は、その先で役に立つ事が多い。
いや、僕は何が起こるか分かってて話してるから当たり前のことなんだけど、みんなからしたら不思議な現象に感じるわけだ。
何度もそれを繰り返してるおかけで、これは僕に備わった「スキルではない予知能力」何じゃないか、と思われているらしいんだよね。
予知能力や予言能力がある、なんて話が拡がってしまったら、それはそれで困るんだけど、そこは流石に上位探索者の集まりなだけあって、スキルや等の能力を他人に漏らさないようにはしてくれている。ただ、このクラン内では「また予言か」とか「オラクルオラクル!」とか言われてると言う状況だ。
その後はカインとミレニアにもそれとなく、様子見の大事さについて話してみた。
二人とも一気に攻撃して、一気に敵を撃破したいタイプの人だからね。釘を刺すとまでは言わないけど、針で縫い留めるくらいでもいいので、ちょっとでも敵の脅威度を正しく測る方に意識を向けてほしいなと思う。
「ミレニアカインッ! 今だ!」
「あいよ! あたしに合わせな!」
「何をっ? 君が俺に合わせるんだよ!」
「はっ! バカ言ってんじゃないよお!」
「くらえ! これがカイン様の一撃だあ!」
ザイアン、ドルム、マーモの三人が、《挑発》《鉄壁》を使って火竜の突進を止め、火竜が一瞬硬直する。
そのタイミングでミレニアの《野生の剛力》による全力の一撃と、カインの《英雄の一撃》が太い尻尾の付け根に振り下ろされた。
その前までの攻撃で、三分の一くらいまで切れていた尻尾は、火竜の本体から切り離された。
切り離された尻尾は、まるで蜥蜴の尻尾を切り離した時のようにバチンドスンとのたうち回る。
僕は大き目に創った《水弾》を火竜の顔に撃ち込み、ワインが《雹雨》を体全体に降り注がせる。
硬直が解けた火竜がそれを嫌がり、切られた尻尾を嘆くように大きく咆哮した。
その間にワッキーから魔力を貰ったスーが、僕に親指を立てて見せた。《石壁》を連発する準備が整ったみたいだ。
「ザクアス、グファーダ、お願い!」
「「おう!」」
ザクアスとグファーダが火竜の気を引く為に前脚に大盾で突撃して気を引きつつ、僕とワインと火竜の間に割り込むように移動する。
火竜が敵意をぶつける相手がコロコロと変わっていく。
尻尾を切り落としたミレニアとカインは左右に別れて距離を取り、二十メートルくらい離れた所から魔法で攻撃する僕とマインを睨んだ火竜は、次に足元のザクアスとグファーダに視線を移した。
そして、火竜の最後の高速散歩が始まったのだった。
《魔力供給》は自分の魔力を他人に渡してあげるスキルだ。ほぼ等価値の魔力を渡すことができる。
《魔力回復》は、自分の魔力の回復速度を急激に上げるスキルだ。これを使うと一時的に魔力上限が下がるというデメリットもあるんだけど、使い切った魔力が数十秒で満タンまで回復するのは非常にありがたい。
さてさて。
僕の《再生機》の話なんだけどね。
最初の頃に、使う度に巻き戻る時間が長くなってくな、とは思ってたんだけどさ。今では何と二時間以上も戻ってしまうんだよね。
だから、直近の戦いを再生して復習したい時にも、個人的には何回も二時間前からの場面を繰り返す事になってしまうから、復習をする場合はタイミングを合わせて再生するようにしている。
もちろん、今回のように死亡者が出た時は悠長なことは言ってられないから、なるべく早めに再生するんだけど。
みんなには《再生機》の事は話してないから、前振りをしながら進んで行かないといけないし、なるべく時間が多い方が助かるしね。
「今までにも五竜とか、巨大骨蛇みたいな大きい敵が出てきたときにさ、ザイアン達タンカーでも一人一人だと少しだけ押し込まれたり跳ね飛ばされることがあったでしょ」
「うむ」
ドラコニアンを倒した僕達は、少し休んで息を整えてからまた歩き始めた。
そして僕は唐突に話し始める。
いきなりで変な会話の流れのはずなんだけど、彼らは慣れたもので、またソルトの予言が始まったぞ、程度の感じでスッと話を聞いてくれる。
「そういう時にさ、二人か三人で盾を並べて衝撃に耐えたりとかってできないのかな」
「ふむ……そうであるな。そういった連携も今後必要になってくるかも知れぬな」
「ただ、それを試す程の大型の魔物となるとレイドモンスターくらいですな」
「まあ、我等なら即席でも可能であろう。マーモ、ムゴール、次の戦闘では我の隣に来て試してみようぞ」
「はい師匠」
「了解です」
僕が唐突に何かを言い出す時は、その先で役に立つ事が多い。
いや、僕は何が起こるか分かってて話してるから当たり前のことなんだけど、みんなからしたら不思議な現象に感じるわけだ。
何度もそれを繰り返してるおかけで、これは僕に備わった「スキルではない予知能力」何じゃないか、と思われているらしいんだよね。
予知能力や予言能力がある、なんて話が拡がってしまったら、それはそれで困るんだけど、そこは流石に上位探索者の集まりなだけあって、スキルや等の能力を他人に漏らさないようにはしてくれている。ただ、このクラン内では「また予言か」とか「オラクルオラクル!」とか言われてると言う状況だ。
その後はカインとミレニアにもそれとなく、様子見の大事さについて話してみた。
二人とも一気に攻撃して、一気に敵を撃破したいタイプの人だからね。釘を刺すとまでは言わないけど、針で縫い留めるくらいでもいいので、ちょっとでも敵の脅威度を正しく測る方に意識を向けてほしいなと思う。
「ミレニアカインッ! 今だ!」
「あいよ! あたしに合わせな!」
「何をっ? 君が俺に合わせるんだよ!」
「はっ! バカ言ってんじゃないよお!」
「くらえ! これがカイン様の一撃だあ!」
ザイアン、ドルム、マーモの三人が、《挑発》《鉄壁》を使って火竜の突進を止め、火竜が一瞬硬直する。
そのタイミングでミレニアの《野生の剛力》による全力の一撃と、カインの《英雄の一撃》が太い尻尾の付け根に振り下ろされた。
その前までの攻撃で、三分の一くらいまで切れていた尻尾は、火竜の本体から切り離された。
切り離された尻尾は、まるで蜥蜴の尻尾を切り離した時のようにバチンドスンとのたうち回る。
僕は大き目に創った《水弾》を火竜の顔に撃ち込み、ワインが《雹雨》を体全体に降り注がせる。
硬直が解けた火竜がそれを嫌がり、切られた尻尾を嘆くように大きく咆哮した。
その間にワッキーから魔力を貰ったスーが、僕に親指を立てて見せた。《石壁》を連発する準備が整ったみたいだ。
「ザクアス、グファーダ、お願い!」
「「おう!」」
ザクアスとグファーダが火竜の気を引く為に前脚に大盾で突撃して気を引きつつ、僕とワインと火竜の間に割り込むように移動する。
火竜が敵意をぶつける相手がコロコロと変わっていく。
尻尾を切り落としたミレニアとカインは左右に別れて距離を取り、二十メートルくらい離れた所から魔法で攻撃する僕とマインを睨んだ火竜は、次に足元のザクアスとグファーダに視線を移した。
そして、火竜の最後の高速散歩が始まったのだった。
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