プレーヤープレイヤー

もずく

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レイドモンスター

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 超広大な五階層に入るようになって早三ヶ月。僕らはようやっとレイド部屋らしき大空洞を見つけた。
 数年以上もの間、三階層から先に進んでいなかったことを考えたら、三階層、四階層の突破と、五階層の最奥に着くまでに掛かった時間はかなり短いと言えるんじゃないかな。

 もちろん、これは全部僕達の手柄だ。

 なんて事は言わないよ。
 この快進撃は、僕らの他に勇者マサキ達の活躍もあっての事だ。
 マサキ達ブレイカーズも人数が増えて九人で探索をしている。
 なんで僕らとブレイカーズが一つのクランにならないかと言うと……

「カイン様。あの奥の通路は下層へ降りる道で間違いなさそうです」
「そうか、その目の良さは流石だな、ケイシャ」

 ケイシャが言うには、どうやらこの奥に下層に降りる(おそらく螺旋状の)通路があるらしい。
 つまり、その手前にある大空洞はレイド部屋である可能性が高いわけだ。

「どうするソルト」
「あんまり疲れてないし、あたしは一気に行っちまいたいね」
「我々もいつでも行けるぞ」
「うん、じゃあいつものフォーメーションで行ってみようか」
「「「了解」」」

 レイド部屋に何が出るか分からない以上、基本的にはいつもやってるようにしか戦えない。
 とりあえず、僕がやる事は「一撃死しないこと」だ。
 普通に戦って無傷で勝てればそれが一番いいけど、そんなことはありえない。
 未知のレイドモンスターと戦う時は、いつも誰かしらが大怪我をしたり、死んだりしている。
 正直な話、《再生機プレーヤー》がなければ、僕らはここまで来れてない。
 そう考えると、僕らと同じように誰一人欠けることなく五階層まで来ている勇者マサキ達の強さは異常なんだと思う。



「今回も頼むぜソルト!」
「カイン様?」
「もちろんお前たちの活躍も期待してるぞ。ラナ、ケイシャ、デンドルッフ、ワッキー!」
「「「「はい!」」」」
「マーモとムゴールはザイアンに従ってくれ!」
「「はい!」」

「我らは我らの役目を果たすぞ。マーモとムゴールも続け!」
「「「おう」」」
「「はい、師匠!」」

「あたしらはいつも通り魔法陣が出たら距離をとって周りを囲むよ」
「は~い」
「うん(がんばる)」
「オッケーっす」
「がんばります」

 いつものように六人のタンカーが程よい間隔で大空洞に入り込む。彼らは基本的に重装備だけど、《重戦士》の五人は普通の人が歩くより速いくらいのスピードで駆けていく。ムゴールだけは《戦士》なので多少軽装だから速い。彼はタンクにしては装備が少し薄いんだけど、《盾術》を生かして上手いこと立ち回ってくれる。

 遅れてミレニア達ヴァイオレットレインの五人が入り、壁から少し離れた所を走る。
 それとほとんど同時に、大空洞の中央部に、赤黒く光る大きな魔法陣が浮き上がり始める。

 そしてスマッシャーズの残りのメンバーと僕が最後に中に入る。

 カインは「英雄」である事を一旦辞めた。あんまり意味が分からないんだけど、とにかく今は英雄じゃないんだそうだ。で、横柄な性格は多少は残ってるものの、それなりに謙虚に、真面目に、周りを見て動けるようになっている。

 大人数になったことで回復役のラナの負担が増えてしまっているけど、手が足りないときは《治癒士》のワインと回復魔法の使えるイリヤとグファーダにも支援に回ってもらうようにしてる。

 ケイシャとワッキーの二人だけでは遠距離攻撃の手が足りない時は、ミレニア、レッティ、スーにも魔法攻撃に切り替えて参加してもらっている。

 六人のタンカーのポジションだけがほぼ固定で決まってて、その他のメンバーは二種類くらいの特性を持ってるから、それに合わせて柔軟な対応ができる。我ながらなかなかいいレイドパーティー、いいクランだなと思う。

 ……っと。
 今回は随分と大きな……地竜型の魔物が相手のようだ。
 首は太いのが一本。
 足は六本あって、短いけど千年樹のように太い。
 申し訳程度に付いている小さな翼では絶対に飛べないだろう。
 見た目だけで言うなら。
 巨体で翼が無くても飛ぶ奴は飛ぶし、大きな翼を持ってたって飛ばない奴は飛ばない。
 怖いのは自分の持ってる固定概念で相手の脅威度を測ってしまって、予想外の攻撃をまともに受けてしまう事だ。

「こいつは随分と鈍重そうだな。俺があの太い首をスパッと切り落としてやろう」
「「流石カイン様です!」」

 何度痛い目にあっても迂闊な考え方が治らない人もいるけど……
 まあ、失敗する度に《再生機プレーヤー》で失敗する前に戻してるから、彼的には反省点がないんだよね。
 まあ、明るいと言うか、考え無しで前向きなのは彼の長所なんだろうし、彼が調子いい時は親衛隊ラナとケイシャの調子もいいから、プラス方面に考える事にしてるけど………


 ただ、毎回、彼が死ぬ姿を見させられるこっちの気持ちも少し考えて欲しいなぁ、とか。
 そんな風に思わなくもなくもない。
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