12 / 19
Y200
しおりを挟む
200日ぶり……199日ぶり? に侵入者たちがやって来た。
遠慮というものが全くないらしく、16人もの大所帯だ。
彼らがやって来た部屋はかなり大きめに造っておいたのだけど、4階層くらいまでの魔物がひしめき合う状態になっていたので侵入者たちはかなり慌てていた。
侵入者6人と、魔物60匹くらいが刺し違えた形だ。
死んでしまった6人のうち3人は復活したようだ。
それで残った数が16人だから、本当なら19人の団体だったわけだ。
16人という数は迷宮の1階層攻略にしてはかなり多い人数だ。と思う。そんなことを執事が言っていたから。
つまり、迷宮から魔物が溢れ出る事態が、どんな理由で起きたものか理解してる可能性が高い。
まあ、大人数への対策はしてあるから別にいいんだけどな。
実は、彼らが現れたのは外界扉のある部屋ではない。遥か彼方とまでは行かないけど、外界扉からも階層主部屋からもかなり距離が離れた場所だ。
1マス5×5メートルの中に、1メートル幅の通路をうねうねと蛇行させて、1マスで15メートルくらいは歩かせるようにしたマスを100マスほど。
途中途中に安全地帯を設定して迷宮点を稼ぎ、さらに何個かの条件付き門を設置してある。
「この扉から次の扉までに入れる残り人数は五人です?」
「なんだそれ?」
「どうしたー? 何があったー?」
「おーい、こんなことで魔物と会ったらたまんねーよ? なんで動かねーんだよ!?」
「バックだバック! なんか変なドアがあんだよ!」
「ばっか! おまっ、来た道戻れってのかよ!?」
「ぷふっ」
見ていて、つい吹き出してしまった。
そりゃそうだよなぁ、と。
20マス近く。つまり300メートルくらいの距離を、狭くてうねった穴の中を歩かされて、後退を余儀なくされるとか、後ろを歩いてる人からしたらたまったもんじゃないだろう。
まあ、前を歩いてる人だって嫌だろうけど。
これが俺が組み込んだ大人数対策だ。
迷宮の仕様の話になるんだけど、2階層以降に進むための階層扉は、同時に扉をくぐれるのが5人までになっている。
で、誰かが階層扉をくぐる度に出先がランダムに変わってしまうという鬼畜仕様なのだ。
まあ、出た先が違っても合流することはできるわけだから、しようと思えば、侵入者は結果的に6人以上での行動をできてしまうのだが。
それにしても、1階層はそういった縛りがないので、1階層では最初から最後まで大人数で行動することができてしまう。
これは迷宮側としては迷惑で恐ろしい話なわけだ。
だから、わざわざ5点も消費して条件付き門を設置した。
本当なら一人ずつ行動させたいくらいだったのだが、それは弾かれてしまった。
昔のパソコンのエラー音みたいに「ブッ」って音が鳴って門を設置できなかったのだ。
で、二人、三人、四人、五人と人数を増やしながら試していって、ようやっと「この扉から次の扉までに入れる残り人数は五人です」という条件付き門を設置できたのだった。
ちなみにこの扉の向こうには、ここまでと同じようなうねうねした通路と、魔物部屋と罠と崖罠が用意してある。
正直、1階層にここまで仕掛けるのはコスト的に見合わないのかも知れないとは思う。
でも、だからと言ってすんなりと階層主部屋に辿り着かせたくなかったし、長い準備期間とスタンピードがあったおかげで、こうするだけの迷宮点が溜まっていたのだからいいんだ。
「ヤマト様。三人ほど連絡係がいたようですが、半蔵と才蔵がすべて片付けたとのことです」
「執事、報告ありがとう。休んでてくれ」
執事からの報告にそう返して、俺は引き続きモニターに映る侵入者たちの動向を見守った。
見守りながら考える。
執事、が彼の名前になってしまっている事を少々申し訳なく思わなくもない。だが、名付けてしまったものは仕方ない。開き直ってソレを彼の名前と認識して呼びかけるようにしている。
それにしても執事も半蔵も才蔵も日本語での会話が随分と滑らかになったものだ。
硬さが取れて本当の人間と話しているようだ。
ちなみに、これまでに造ったのはおじさん傀儡人形3体だけだ。
いずれも美形と呼べるナイスダンディ。
別にそっちの気がある訳じゃないんだが、なんとなく女型の傀儡人形を造るのを避けてきた。
だってなんか嫌じゃないか?
造るとしたらまた美形になるだろ?
俺の趣味が出るだろ? きっと。
それで出来上がるのは、その名の通り傀儡人形だろ?
……ほら、やっぱやな感じになるじゃないか。
微妙って言うよりも、変態寄りだよ、俺からしたら。
でも、そろそろ華やかさが欲しい気はするんだよなぁ。
ただやっぱり1体だけだと趣味が現れすぎて恥ずかしいし……何体かまとめて造るか。
よしっ。
今回の侵入者をなんとかする事ができたら女型の傀儡人形を造ろう。
だからそろそろちゃんとしないと。仕掛けが動くかどうかちゃんと集中して見ておかないとな。
休んでていいと言ったのに、執事が持ってきてくれたロイヤルミルクティーを啜りながら、次はコーヒーでも買おうかな、などと、やはり集中し切れないままにモニターを見るのだった。
遠慮というものが全くないらしく、16人もの大所帯だ。
彼らがやって来た部屋はかなり大きめに造っておいたのだけど、4階層くらいまでの魔物がひしめき合う状態になっていたので侵入者たちはかなり慌てていた。
侵入者6人と、魔物60匹くらいが刺し違えた形だ。
死んでしまった6人のうち3人は復活したようだ。
それで残った数が16人だから、本当なら19人の団体だったわけだ。
16人という数は迷宮の1階層攻略にしてはかなり多い人数だ。と思う。そんなことを執事が言っていたから。
つまり、迷宮から魔物が溢れ出る事態が、どんな理由で起きたものか理解してる可能性が高い。
まあ、大人数への対策はしてあるから別にいいんだけどな。
実は、彼らが現れたのは外界扉のある部屋ではない。遥か彼方とまでは行かないけど、外界扉からも階層主部屋からもかなり距離が離れた場所だ。
1マス5×5メートルの中に、1メートル幅の通路をうねうねと蛇行させて、1マスで15メートルくらいは歩かせるようにしたマスを100マスほど。
途中途中に安全地帯を設定して迷宮点を稼ぎ、さらに何個かの条件付き門を設置してある。
「この扉から次の扉までに入れる残り人数は五人です?」
「なんだそれ?」
「どうしたー? 何があったー?」
「おーい、こんなことで魔物と会ったらたまんねーよ? なんで動かねーんだよ!?」
「バックだバック! なんか変なドアがあんだよ!」
「ばっか! おまっ、来た道戻れってのかよ!?」
「ぷふっ」
見ていて、つい吹き出してしまった。
そりゃそうだよなぁ、と。
20マス近く。つまり300メートルくらいの距離を、狭くてうねった穴の中を歩かされて、後退を余儀なくされるとか、後ろを歩いてる人からしたらたまったもんじゃないだろう。
まあ、前を歩いてる人だって嫌だろうけど。
これが俺が組み込んだ大人数対策だ。
迷宮の仕様の話になるんだけど、2階層以降に進むための階層扉は、同時に扉をくぐれるのが5人までになっている。
で、誰かが階層扉をくぐる度に出先がランダムに変わってしまうという鬼畜仕様なのだ。
まあ、出た先が違っても合流することはできるわけだから、しようと思えば、侵入者は結果的に6人以上での行動をできてしまうのだが。
それにしても、1階層はそういった縛りがないので、1階層では最初から最後まで大人数で行動することができてしまう。
これは迷宮側としては迷惑で恐ろしい話なわけだ。
だから、わざわざ5点も消費して条件付き門を設置した。
本当なら一人ずつ行動させたいくらいだったのだが、それは弾かれてしまった。
昔のパソコンのエラー音みたいに「ブッ」って音が鳴って門を設置できなかったのだ。
で、二人、三人、四人、五人と人数を増やしながら試していって、ようやっと「この扉から次の扉までに入れる残り人数は五人です」という条件付き門を設置できたのだった。
ちなみにこの扉の向こうには、ここまでと同じようなうねうねした通路と、魔物部屋と罠と崖罠が用意してある。
正直、1階層にここまで仕掛けるのはコスト的に見合わないのかも知れないとは思う。
でも、だからと言ってすんなりと階層主部屋に辿り着かせたくなかったし、長い準備期間とスタンピードがあったおかげで、こうするだけの迷宮点が溜まっていたのだからいいんだ。
「ヤマト様。三人ほど連絡係がいたようですが、半蔵と才蔵がすべて片付けたとのことです」
「執事、報告ありがとう。休んでてくれ」
執事からの報告にそう返して、俺は引き続きモニターに映る侵入者たちの動向を見守った。
見守りながら考える。
執事、が彼の名前になってしまっている事を少々申し訳なく思わなくもない。だが、名付けてしまったものは仕方ない。開き直ってソレを彼の名前と認識して呼びかけるようにしている。
それにしても執事も半蔵も才蔵も日本語での会話が随分と滑らかになったものだ。
硬さが取れて本当の人間と話しているようだ。
ちなみに、これまでに造ったのはおじさん傀儡人形3体だけだ。
いずれも美形と呼べるナイスダンディ。
別にそっちの気がある訳じゃないんだが、なんとなく女型の傀儡人形を造るのを避けてきた。
だってなんか嫌じゃないか?
造るとしたらまた美形になるだろ?
俺の趣味が出るだろ? きっと。
それで出来上がるのは、その名の通り傀儡人形だろ?
……ほら、やっぱやな感じになるじゃないか。
微妙って言うよりも、変態寄りだよ、俺からしたら。
でも、そろそろ華やかさが欲しい気はするんだよなぁ。
ただやっぱり1体だけだと趣味が現れすぎて恥ずかしいし……何体かまとめて造るか。
よしっ。
今回の侵入者をなんとかする事ができたら女型の傀儡人形を造ろう。
だからそろそろちゃんとしないと。仕掛けが動くかどうかちゃんと集中して見ておかないとな。
休んでていいと言ったのに、執事が持ってきてくれたロイヤルミルクティーを啜りながら、次はコーヒーでも買おうかな、などと、やはり集中し切れないままにモニターを見るのだった。
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】初級魔法しか使えない低ランク冒険者の少年は、今日も依頼を達成して家に帰る。
アノマロカリス
ファンタジー
少年テッドには、両親がいない。
両親は低ランク冒険者で、依頼の途中で魔物に殺されたのだ。
両親の少ない保険でやり繰りしていたが、もう金が尽きかけようとしていた。
テッドには、妹が3人いる。
両親から「妹達を頼む!」…と出掛ける前からいつも約束していた。
このままでは家族が離れ離れになると思ったテッドは、冒険者になって金を稼ぐ道を選んだ。
そんな少年テッドだが、パーティーには加入せずにソロ活動していた。
その理由は、パーティーに参加するとその日に家に帰れなくなるからだ。
両親は、小さいながらも持ち家を持っていてそこに住んでいる。
両親が生きている頃は、父親の部屋と母親の部屋、子供部屋には兄妹4人で暮らしていたが…
両親が死んでからは、父親の部屋はテッドが…
母親の部屋は、長女のリットが、子供部屋には、次女のルットと三女のロットになっている。
今日も依頼をこなして、家に帰るんだ!
この少年テッドは…いや、この先は本編で語ろう。
お楽しみくださいね!
HOTランキング20位になりました。
皆さん、有り難う御座います。


魅了が解けた貴男から私へ
砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。
彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。
そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。
しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。
男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。
元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。
しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。
三話完結です。

器用貧乏の底辺冒険者~俺だけ使える『ステータスボード』で最強になる!~
夢・風魔
ファンタジー
*タイトル少し変更しました。
全ての能力が平均的で、これと言って突出したところもない主人公。
適正職も見つからず、未だに見習いから職業を決められずにいる。
パーティーでは荷物持ち兼、交代要員。
全ての見習い職業の「初期スキル」を使えるがそれだけ。
ある日、新しく発見されたダンジョンにパーティーメンバーと潜るとモンスターハウスに遭遇してパーティー決壊の危機に。
パーティーリーダーの裏切りによって囮にされたロイドは、仲間たちにも見捨てられひとりダンジョン内を必死に逃げ惑う。
突然地面が陥没し、そこでロイドは『ステータスボード』を手に入れた。
ロイドのステータスはオール25。
彼にはユニークスキルが備わっていた。
ステータスが強制的に平均化される、ユニークスキルが……。
ステータスボードを手に入れてからロイドの人生は一変する。
LVUPで付与されるポイントを使ってステータスUP、スキル獲得。
不器用大富豪と蔑まれてきたロイドは、ひとりで前衛後衛支援の全てをこなす
最強の冒険者として称えられるようになる・・・かも?
【過度なざまぁはありませんが、結果的にはそうなる・・みたいな?】

凡人がおまけ召喚されてしまった件
根鳥 泰造
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。
仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。
それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。
異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。
最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。
だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。
祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

スキル【レベル転生】でダンジョン無双
世界るい
ファンタジー
六年前、突如、異世界から魔王が来訪した。「暇だから我を愉しませろ」そう言って、地球上のありとあらゆる場所にダンジョンを作り、モンスターを放った。
そんな世界で十八歳となった獅堂辰巳は、ダンジョンに潜る者、ダンジョンモーラーとしての第一歩を踏み出し、ステータスを獲得する。だが、ステータスは最低値だし、パーティーを組むと経験値を獲得できない。スキルは【レベル転生】という特殊スキルが一つあるだけで、それもレベル100にならないと使えないときた。
そんな絶望的な状況下で、最弱のソロモーラーとしてダンジョンに挑み、天才的な戦闘センスを磨き続けるも、攻略は遅々として進まない。それでも諦めずチュートリアルダンジョンを攻略していたある日、一人の女性と出逢う。その運命的な出逢いによって辰巳のモーラー人生は一変していくのだが……それは本編で。
小説家になろう、カクヨムにて同時掲載
カクヨム ジャンル別ランキング【日間2位】【週間2位】
なろう ジャンル別ランキング【日間6位】【週間7位】
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる