ダンジョンマスター喜怒哀楽

もずく

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 200日ぶり……199日ぶり? に侵入者たちがやって来た。
 遠慮というものが全くないらしく、16人もの大所帯だ。
 彼らがやって来た部屋はかなり大きめに造っておいたのだけど、4階層くらいまでの魔物がひしめき合う状態になっていたので侵入者たちはかなり慌てていた。
 侵入者6人と、魔物60匹くらいが刺し違えた形だ。
 死んでしまった6人のうち3人は復活したようだ。
 それで残った数が16人だから、本当なら19人の団体だったわけだ。

 16人という数は迷宮の1階層攻略にしてはかなり多い人数だ。と思う。そんなことを執事が言っていたから。
 つまり、迷宮から魔物が溢れ出る事態が、どんな理由で起きたものか理解してる可能性が高い。
 まあ、大人数への対策はしてあるから別にいいんだけどな。

 実は、彼らが現れたのは外界扉のある部屋ではない。遥か彼方とまでは行かないけど、外界扉からも階層主部屋からもかなり距離が離れた場所だ。
 1マス5×5メートルの中に、1メートル幅の通路をうねうねと蛇行させて、1マスで15メートルくらいは歩かせるようにしたマスを100マスほど。
 途中途中に安全地帯を設定して迷宮点を稼ぎ、さらに何個かの条件付き門を設置してある。


「この扉から次の扉までに入れる残り人数は五人です?」

「なんだそれ?」
「どうしたー? 何があったー?」
「おーい、こんなことで魔物と会ったらたまんねーよ? なんで動かねーんだよ!?」
「バックだバック! なんか変なドアがあんだよ!」
「ばっか! おまっ、来た道戻れってのかよ!?」


「ぷふっ」

 見ていて、つい吹き出してしまった。

 そりゃそうだよなぁ、と。

 20マス近く。つまり300メートルくらいの距離を、狭くてうねった穴の中を歩かされて、後退を余儀なくされるとか、後ろを歩いてる人からしたらたまったもんじゃないだろう。
 まあ、前を歩いてる人だって嫌だろうけど。

 これが俺が組み込んだ大人数対策だ。

 迷宮の仕様の話になるんだけど、2階層以降に進むための階層扉は、同時に扉をくぐれるのが5人までになっている。
 で、誰かが階層扉をくぐる度に出先がランダムに変わってしまうという鬼畜仕様なのだ。
 まあ、出た先が違っても合流することはできるわけだから、しようと思えば、侵入者は結果的に6人以上での行動をできてしまうのだが。
 それにしても、1階層はそういった縛りがないので、1階層では最初から最後まで大人数で行動することができてしまう。
 これは迷宮側としては迷惑で恐ろしい話なわけだ。

 だから、わざわざ5点も消費して条件付き門を設置した。
 本当なら一人ずつ行動させたいくらいだったのだが、それは弾かれてしまった。
 昔のパソコンのエラー音みたいに「ブッ」って音が鳴って門を設置できなかったのだ。
 で、二人、三人、四人、五人と人数を増やしながら試していって、ようやっと「この扉から次の扉までに入れる残り人数は五人です」という条件付き門を設置できたのだった。

 ちなみにこの扉の向こうには、ここまでと同じようなうねうねした通路と、魔物部屋と罠と崖罠が用意してある。
 正直、1階層にここまで仕掛けるのはコスト的に見合わないのかも知れないとは思う。
 でも、だからと言ってすんなりと階層主部屋に辿り着かせたくなかったし、長い準備期間とスタンピードがあったおかげで、こうするだけの迷宮点が溜まっていたのだからいいんだ。

「ヤマト様。三人ほど連絡係がいたようですが、半蔵と才蔵がすべて片付けたとのことです」

「執事、報告ありがとう。休んでてくれ」

 執事からの報告にそう返して、俺は引き続きモニターに映る侵入者たちの動向を見守った。

 見守りながら考える。

 執事、が彼の名前になってしまっている事を少々申し訳なく思わなくもない。だが、名付けてしまったものは仕方ない。開き直ってソレを彼の名前と認識して呼びかけるようにしている。
 それにしても執事も半蔵も才蔵も日本語での会話が随分と滑らかになったものだ。
 硬さが取れて本当の人間と話しているようだ。

 ちなみに、これまでに造ったのはおじさん傀儡人形ゴーレム3体だけだ。
 いずれも美形と呼べるナイスダンディ。
 別にそっちの気がある訳じゃないんだが、なんとなく女型の傀儡人形を造るのを避けてきた。
 だってなんか嫌じゃないか?
 造るとしたらまた美形になるだろ?
 俺の趣味が出るだろ? きっと。
 それで出来上がるのは、その名の通り傀儡人形だろ?
 ……ほら、やっぱやな感じになるじゃないか。
 微妙って言うよりも、変態寄りだよ、俺からしたら。

 でも、そろそろ華やかさが欲しい気はするんだよなぁ。
 ただやっぱり1体だけだと趣味が現れすぎて恥ずかしいし……何体かまとめて造るか。

 よしっ。

 今回の侵入者をなんとかする事ができたら女型の傀儡人形を造ろう。
 だからそろそろちゃんとしないと。仕掛けギミックが動くかどうかちゃんと集中して見ておかないとな。

 休んでていいと言ったのに、執事が持ってきてくれたロイヤルミルクティーを啜りながら、次はコーヒーでも買おうかな、などと、やはり集中し切れないままにモニターを見るのだった。
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