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最後の迷宮拡張で迷宮が外界と繋がってから、初日に一度だけ、三人組の侵入者がやって来た。
壁に表示されたのは三つの赤紫の点だった。
拡大するとワイヤーアートのように赤紫の線で人型が表示された。
彼らの顔までは分からなかったが、そのシルエットからヘルメット、肩当てなどの防具と、剣、ツルハシ、ハンマーを装備してることが見て分かった。
壁に表示される迷宮地図は線画で2D表示なのだが、拡大縮小の他に、XY軸の回転をさせることができた。
初期表示は真上からの地図表示だったが、今は回転させて横から見ている。
その線で描画された三人は何か話しているようだったが、その音声は聞こえない。
「音声は流せないのか?」
必要かもよ。迷宮主強化。
あ、そう。
迷宮主強化って……ああ10点も必要なやつか。
俺自身の腕力的なものを強くするのかと思ってたけど、迷宮主としての機能を強化するものなのか。
まあ、持ち点に余裕ができたらいつか取得してみよう。
おっ、動き出した。
どうするか相談が終わったようだ。
外界扉がある部屋はかなり広い。
25メートル四方くらいあるだろうか。
にも関わらず、この部屋から進む道は一本の通路しかない。
進む決断をするのはなかなか勇気がいるかもしれないな。
短めの剣を持った人が先頭になって通路に入っていった。その後ろをそれぞれ2メートルくらい間隔を開けて残りの二人が続いていく。
通路は登り坂になっている。
そういう風に俺がデザインした。
迷宮拡張は5平方メートルじゃなくて、5立方メートルの範囲を追加する事ができたのだ。
迷路と考えると平面で設計しそうになってしまったが、慌てて造らずに、壁に色々と質問してみて良かった。
迷宮拡張的に言うならば平面的には4マス分は約30から40度くらいの急勾配の登り坂が続く。
この為に7個分の迷宮拡張が必要だった。
マスの区切り部分で1メートルから3メートルの段差がつくようにしてある。
なかなか体力が必要な迷宮にできたんじゃないだろうか。
通路の幅は3メートルだ。
それより幅を狭くすると、そこは魔物が戦えないゾーンになってしまうのだそうだ。
だから、俺が一番最初に造った幅1メートルの通路は、安全地帯の設定をしなくても安全地帯と同じ意味を持つ通路になってしまった。
だから、階層主の部屋に続く最後の5メートルではあるが、そこを安全地帯に設定することにした。
通路と通路は高低差が1マスまでなら繋ぐことができる。
つまり、最高で5メートルの落差を付けることができるわけだ。
頂上部分の平坦な部屋は5メートル幅の通路を2個繋げて5×10メートルの部屋にしている。
ようやっと侵入者たちがこの頂上まで登ってくるとーーとは言っても入り口からの高低差は15メートルしかないけどーーそこにはお待ちかねの魔物がいるわけだ。
迷宮が外界と繋がってからあまり時間が経ってないから、まだ2回しか湧いてない。
とはいえ、脅威度2の動物系の魔物が6体いる。
ちなみに魔物たちは黄緑色の線で描画されている。
ジャイアントバットは大型の吸血コウモリだ。天井に2匹ぶら下がっているが、侵入者たちはまだ気付いてないようだ。
ブラックドックは暗闇に潜んで獲物を狩る目の無い魔犬だ。これが4匹。侵入者たちの持つランタンの光が照らす範囲にいたらしく、こちらは気付かれてしまったようだ。
侵入者たちは逡巡したようだが、犬程度ならなんとかできると思ったのか、それとも坂道を戻って逃げ切るのが無理だと思ったのか。
そのどちらが理由なのかは分からなかったが、三人ともこの平坦なエリアで戦うことをに決めたようだ。
飛び道具を持たないらしい三人は、下がって後ろの段差に落ちることを嫌ったのかジリジリと前に出てきた。
ブラックドックは等間隔に扇型に展開して侵入者の攻撃を待ち構えているようだ。
それなりに知能が高いのかね。
侵入者たちが部屋の真ん中あたりまでジリジリ進むと、ブラックドックたちはそれに合わせて少しずつ後退していった。
そして天井にぶら下がっていたジャイアントバット2匹が侵入者たちの背後から襲い掛かった。
直後にブラックドックたちも侵入者に飛びかかる。
先頭にいた短剣を持つ侵入者にはブラックドック2匹が突っ込んでいった。1匹は短剣を刺されて殺られてしまったようだ。地面に倒れて動かなくなった。
もう一匹はうまく脇腹に噛みつけたようだった。
少し後方にいたハンマーとツルハシの侵入者は、それぞれジャイアントバットとブラックドックに挟み撃ちを受けていた。
ジャイアントバットの強襲で慌てていたのか、大きな武器を振るう間もなく噛みつかれ、よろめいて、そして地面に倒れていった。
短剣の侵入者は脇腹に噛み付いたブラックドックまでも倒したようだ。
これはまずい。
かなり強い奴なのかも知れない。
階層主のところまで来られたらアウトなんだが。
ただ、こちらの魔物はあと4匹もいる。
倒れた侵入者を描画する線が点滅し始めた。
これは死亡状態になったことを表すのだそうだ。
ジャイアントバットが死亡した侵入者から離れ、再度宙を飛び天井付近まで舞い上がる。
ブラックドックも短剣の侵入者に向き直る。
侵入者は首を上下して、ジャイアントバットとブラックドックの両方に注意を向けながら少しずつ後ろに下がる。
そして……
「うわぁ」
そんな声が聞こえたような気がした。
腕をぐるぐると振り回しながら、短剣の侵入者は15メートル下の通路に落ちていったのだった。
壁に表示されたのは三つの赤紫の点だった。
拡大するとワイヤーアートのように赤紫の線で人型が表示された。
彼らの顔までは分からなかったが、そのシルエットからヘルメット、肩当てなどの防具と、剣、ツルハシ、ハンマーを装備してることが見て分かった。
壁に表示される迷宮地図は線画で2D表示なのだが、拡大縮小の他に、XY軸の回転をさせることができた。
初期表示は真上からの地図表示だったが、今は回転させて横から見ている。
その線で描画された三人は何か話しているようだったが、その音声は聞こえない。
「音声は流せないのか?」
必要かもよ。迷宮主強化。
あ、そう。
迷宮主強化って……ああ10点も必要なやつか。
俺自身の腕力的なものを強くするのかと思ってたけど、迷宮主としての機能を強化するものなのか。
まあ、持ち点に余裕ができたらいつか取得してみよう。
おっ、動き出した。
どうするか相談が終わったようだ。
外界扉がある部屋はかなり広い。
25メートル四方くらいあるだろうか。
にも関わらず、この部屋から進む道は一本の通路しかない。
進む決断をするのはなかなか勇気がいるかもしれないな。
短めの剣を持った人が先頭になって通路に入っていった。その後ろをそれぞれ2メートルくらい間隔を開けて残りの二人が続いていく。
通路は登り坂になっている。
そういう風に俺がデザインした。
迷宮拡張は5平方メートルじゃなくて、5立方メートルの範囲を追加する事ができたのだ。
迷路と考えると平面で設計しそうになってしまったが、慌てて造らずに、壁に色々と質問してみて良かった。
迷宮拡張的に言うならば平面的には4マス分は約30から40度くらいの急勾配の登り坂が続く。
この為に7個分の迷宮拡張が必要だった。
マスの区切り部分で1メートルから3メートルの段差がつくようにしてある。
なかなか体力が必要な迷宮にできたんじゃないだろうか。
通路の幅は3メートルだ。
それより幅を狭くすると、そこは魔物が戦えないゾーンになってしまうのだそうだ。
だから、俺が一番最初に造った幅1メートルの通路は、安全地帯の設定をしなくても安全地帯と同じ意味を持つ通路になってしまった。
だから、階層主の部屋に続く最後の5メートルではあるが、そこを安全地帯に設定することにした。
通路と通路は高低差が1マスまでなら繋ぐことができる。
つまり、最高で5メートルの落差を付けることができるわけだ。
頂上部分の平坦な部屋は5メートル幅の通路を2個繋げて5×10メートルの部屋にしている。
ようやっと侵入者たちがこの頂上まで登ってくるとーーとは言っても入り口からの高低差は15メートルしかないけどーーそこにはお待ちかねの魔物がいるわけだ。
迷宮が外界と繋がってからあまり時間が経ってないから、まだ2回しか湧いてない。
とはいえ、脅威度2の動物系の魔物が6体いる。
ちなみに魔物たちは黄緑色の線で描画されている。
ジャイアントバットは大型の吸血コウモリだ。天井に2匹ぶら下がっているが、侵入者たちはまだ気付いてないようだ。
ブラックドックは暗闇に潜んで獲物を狩る目の無い魔犬だ。これが4匹。侵入者たちの持つランタンの光が照らす範囲にいたらしく、こちらは気付かれてしまったようだ。
侵入者たちは逡巡したようだが、犬程度ならなんとかできると思ったのか、それとも坂道を戻って逃げ切るのが無理だと思ったのか。
そのどちらが理由なのかは分からなかったが、三人ともこの平坦なエリアで戦うことをに決めたようだ。
飛び道具を持たないらしい三人は、下がって後ろの段差に落ちることを嫌ったのかジリジリと前に出てきた。
ブラックドックは等間隔に扇型に展開して侵入者の攻撃を待ち構えているようだ。
それなりに知能が高いのかね。
侵入者たちが部屋の真ん中あたりまでジリジリ進むと、ブラックドックたちはそれに合わせて少しずつ後退していった。
そして天井にぶら下がっていたジャイアントバット2匹が侵入者たちの背後から襲い掛かった。
直後にブラックドックたちも侵入者に飛びかかる。
先頭にいた短剣を持つ侵入者にはブラックドック2匹が突っ込んでいった。1匹は短剣を刺されて殺られてしまったようだ。地面に倒れて動かなくなった。
もう一匹はうまく脇腹に噛みつけたようだった。
少し後方にいたハンマーとツルハシの侵入者は、それぞれジャイアントバットとブラックドックに挟み撃ちを受けていた。
ジャイアントバットの強襲で慌てていたのか、大きな武器を振るう間もなく噛みつかれ、よろめいて、そして地面に倒れていった。
短剣の侵入者は脇腹に噛み付いたブラックドックまでも倒したようだ。
これはまずい。
かなり強い奴なのかも知れない。
階層主のところまで来られたらアウトなんだが。
ただ、こちらの魔物はあと4匹もいる。
倒れた侵入者を描画する線が点滅し始めた。
これは死亡状態になったことを表すのだそうだ。
ジャイアントバットが死亡した侵入者から離れ、再度宙を飛び天井付近まで舞い上がる。
ブラックドックも短剣の侵入者に向き直る。
侵入者は首を上下して、ジャイアントバットとブラックドックの両方に注意を向けながら少しずつ後ろに下がる。
そして……
「うわぁ」
そんな声が聞こえたような気がした。
腕をぐるぐると振り回しながら、短剣の侵入者は15メートル下の通路に落ちていったのだった。
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