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「っはぁ~~」
結果的に言えば、ドアノブには電流は流れてなかったし、ドアも普通に開いたし、ドアを開いた先には廊下があって、右手側の壁には小さなキッチンと冷蔵庫があり、左手側にはドアが二つ付いていて、一つは脱衣場に、一つはここ、トイレに繋がっていた。
じょぼじょぼという音が止み、俺は短い竿を軽く振ってから立ち上がり、パンツとズボンを同時に持ち上げた。
洋式便器なら、俺はおしっこでも座る男だ。
タンクの脇のつまみをクイッとすると、ちゃんと水が流れて安心した。
まあ、そんなことはどうでもいい。
どうでもいいんだが、ただ、トイレで用を足せたことで、日常的な感覚と平常心が少し戻ってきた気がした。
ルーチンワークというか、最近流行りの言い方ならルーティーンとか言うやつか。
いつもやってる事をやると、確かに落ち着くものだな。
こんな所でどうやって普段通りのパフォーマンスを何に対して発揮すればいいのかは分からないけど。
さて。
落ち着いたところで冷蔵庫を開けてみた。
上三分の一が冷凍庫で、残りは冷蔵室か。
冷えてはいるが、残念ながら何も入っていなかった。
シンクの所にある蛇口を撚ると水が出てきた。
混合水栓らしく、赤と青のゲージがあるつまみを赤側に撚ると、一秒もかからないでお湯が出てきた。
コンロは電気コンロのようだった。
鍋があったので水を入れてお湯を沸かしてみた。
スイッチを押すと、火は出ないものの、変わりに魔法陣のようなものが一瞬光って消えたあと、ちゃんと水を沸騰させることができた。
電気コンロのように見えるけど、電気コンロじゃないのかも知れない。
脱衣場、そこに置いてある洗濯機、お風呂場、シャワーを確認した。
どれも問題なく使えそうだった。
となると、あとは玄関ドアだけだ。
下駄箱はない。
そして靴もない。
ドアには外を見るための除き穴もないし、郵便受け用の穴もない。
まあ、穴系はあったらあったで見るのが怖いんだが。
サッ、サッ、と触って、ドアにもドアノブにも電気が流れていないことを確認する。
手のひらをドアに付けるとひんやりとしていた。
ただ、外からの振動は特に感じない。
少し考えたが、ここにずっといるわけにもいかない。
ドアに鍵が掛かっていなかったら外に出てみよう。
そう思い、ドアノブを音が鳴らないようにそっと回した。
残念なことに(?)、何に引っかかることもなくドアノブは半回転してしまった。
そっと力を入れて前に押してみれば、ドアは音も無く数センチほど開き、その隙間からは獣臭い匂いが入ってきた。
慌てたものの、何とか我を忘れることなくドアをそっと閉めた。
外に何か生き物がいる?
犬?
豚?
牛?
さっきの匂いは結構な獣臭だった。
近くで嗅いだことはないが、猪や熊といった野生味のある生き物なんじゃないかと思える匂いだった。
事ここに来て、ドッキリ系のなんかなんじゃないかと嫌な想像が再び頭に浮かんできた。
部屋に戻り、テーブルの上に放置してた紙を手に取りながらベッドにダイブする。
仰向けになって紙を両手で持ち上げ、その内容をもう一度読んでみる。
ここに来ることになったきっかけだと思われる「迷宮創造 0点」の行はやはりなくなっている。
これが何かのドッキリ企画だとして、ストーリー性があるものだと考えて見ることにする。
その場合、ここは何らかのルールに則って用意されたゲームの世界観の中だと言うことになる。
つまり、ここは迷宮の中と言うことになるんじゃないだろうか。
この部屋は迷宮には見えないけど、さしずめ管理室的な場所なんだろうと決めつける。
俺の持ち点は98点。
これが多いのか少ないのかは分からない。
とりあえず、2点でできる迷宮拡張を試してみようか。
ここに来た時と同じように声に出して言えばいいのかね。
「迷宮拡張」
何がどうなってるのか分からないのに、どこをどう拡張するんだか。
そんなことを思いながらも、そう口にしてみると。
真っ白な壁がぼんやりと光り、そこに白い四角と黒い四角が表示されたのだった。
ベッドを降りて壁に近付いてそれを見る。
白と黒の四角は繋がっている。
どうやら、黒の四角の、白の四角と接してない面に迷宮拡張ができるようだ。
白と黒の四角の中には青い点と緑の点が一つずつ光っていて、何故だかその青い点は自分なんじゃないかと思ったのだった。
壁から離れてみると、白い四角の線のそばにあった青い点も線から離れた。
ああやっぱり。
これは俺だ。
じゃあ緑の点は?
壁を触って見るが何も反応がない。
「触ったら情報出すくらいの機能付けとけばいいのに……」
その呟きに反応したのか、青い点と緑の点から線が伸びて、その先にはそれぞれの情報が表示されたのだった。
迷宮主
名前 ヤマト
水準 1
持点 98点
評価 1
装備 なし
技能 なし
1階層階層主
名前 ゴブリンリーダー
種族 ゴブリン族
水準 2
装備 ショートソード
装備 レッドレザーヘルム
装備 レザーアーマー
技能 なし
なるほど。
何がなるほどなんだか……いや、二つの事が分かったか。
一つは声に出すと反応があるということ。
紙に書いてあること以外にも反応するものがあるようだ。
もう一つは青い点が俺で、緑の点がゴブリンリーダーだということ。
俺は迷宮主で、ゴブリンリーダーは1階層の階層主なんだそうだ。
よくできたゲームだなと思う。
「拡大表示」
出来るかどうかは別にして、そう口にしてみると、壁に描かれた四角い線が拡大された。
俺のいる白い部屋は、ワンルームマンションの間取り図のようにドアや家具、キッチン、トイレ、風呂場……どんな作りでどんな配置なのかが分かるくらいの情報量になった。
そして、玄関と繋がっている黒い四角の部屋は、どうやら実際には楕円形をしているらしく、玄関のすぐ近くにゴブリンリーダーがいるらしい事が分かった。
結果的に言えば、ドアノブには電流は流れてなかったし、ドアも普通に開いたし、ドアを開いた先には廊下があって、右手側の壁には小さなキッチンと冷蔵庫があり、左手側にはドアが二つ付いていて、一つは脱衣場に、一つはここ、トイレに繋がっていた。
じょぼじょぼという音が止み、俺は短い竿を軽く振ってから立ち上がり、パンツとズボンを同時に持ち上げた。
洋式便器なら、俺はおしっこでも座る男だ。
タンクの脇のつまみをクイッとすると、ちゃんと水が流れて安心した。
まあ、そんなことはどうでもいい。
どうでもいいんだが、ただ、トイレで用を足せたことで、日常的な感覚と平常心が少し戻ってきた気がした。
ルーチンワークというか、最近流行りの言い方ならルーティーンとか言うやつか。
いつもやってる事をやると、確かに落ち着くものだな。
こんな所でどうやって普段通りのパフォーマンスを何に対して発揮すればいいのかは分からないけど。
さて。
落ち着いたところで冷蔵庫を開けてみた。
上三分の一が冷凍庫で、残りは冷蔵室か。
冷えてはいるが、残念ながら何も入っていなかった。
シンクの所にある蛇口を撚ると水が出てきた。
混合水栓らしく、赤と青のゲージがあるつまみを赤側に撚ると、一秒もかからないでお湯が出てきた。
コンロは電気コンロのようだった。
鍋があったので水を入れてお湯を沸かしてみた。
スイッチを押すと、火は出ないものの、変わりに魔法陣のようなものが一瞬光って消えたあと、ちゃんと水を沸騰させることができた。
電気コンロのように見えるけど、電気コンロじゃないのかも知れない。
脱衣場、そこに置いてある洗濯機、お風呂場、シャワーを確認した。
どれも問題なく使えそうだった。
となると、あとは玄関ドアだけだ。
下駄箱はない。
そして靴もない。
ドアには外を見るための除き穴もないし、郵便受け用の穴もない。
まあ、穴系はあったらあったで見るのが怖いんだが。
サッ、サッ、と触って、ドアにもドアノブにも電気が流れていないことを確認する。
手のひらをドアに付けるとひんやりとしていた。
ただ、外からの振動は特に感じない。
少し考えたが、ここにずっといるわけにもいかない。
ドアに鍵が掛かっていなかったら外に出てみよう。
そう思い、ドアノブを音が鳴らないようにそっと回した。
残念なことに(?)、何に引っかかることもなくドアノブは半回転してしまった。
そっと力を入れて前に押してみれば、ドアは音も無く数センチほど開き、その隙間からは獣臭い匂いが入ってきた。
慌てたものの、何とか我を忘れることなくドアをそっと閉めた。
外に何か生き物がいる?
犬?
豚?
牛?
さっきの匂いは結構な獣臭だった。
近くで嗅いだことはないが、猪や熊といった野生味のある生き物なんじゃないかと思える匂いだった。
事ここに来て、ドッキリ系のなんかなんじゃないかと嫌な想像が再び頭に浮かんできた。
部屋に戻り、テーブルの上に放置してた紙を手に取りながらベッドにダイブする。
仰向けになって紙を両手で持ち上げ、その内容をもう一度読んでみる。
ここに来ることになったきっかけだと思われる「迷宮創造 0点」の行はやはりなくなっている。
これが何かのドッキリ企画だとして、ストーリー性があるものだと考えて見ることにする。
その場合、ここは何らかのルールに則って用意されたゲームの世界観の中だと言うことになる。
つまり、ここは迷宮の中と言うことになるんじゃないだろうか。
この部屋は迷宮には見えないけど、さしずめ管理室的な場所なんだろうと決めつける。
俺の持ち点は98点。
これが多いのか少ないのかは分からない。
とりあえず、2点でできる迷宮拡張を試してみようか。
ここに来た時と同じように声に出して言えばいいのかね。
「迷宮拡張」
何がどうなってるのか分からないのに、どこをどう拡張するんだか。
そんなことを思いながらも、そう口にしてみると。
真っ白な壁がぼんやりと光り、そこに白い四角と黒い四角が表示されたのだった。
ベッドを降りて壁に近付いてそれを見る。
白と黒の四角は繋がっている。
どうやら、黒の四角の、白の四角と接してない面に迷宮拡張ができるようだ。
白と黒の四角の中には青い点と緑の点が一つずつ光っていて、何故だかその青い点は自分なんじゃないかと思ったのだった。
壁から離れてみると、白い四角の線のそばにあった青い点も線から離れた。
ああやっぱり。
これは俺だ。
じゃあ緑の点は?
壁を触って見るが何も反応がない。
「触ったら情報出すくらいの機能付けとけばいいのに……」
その呟きに反応したのか、青い点と緑の点から線が伸びて、その先にはそれぞれの情報が表示されたのだった。
迷宮主
名前 ヤマト
水準 1
持点 98点
評価 1
装備 なし
技能 なし
1階層階層主
名前 ゴブリンリーダー
種族 ゴブリン族
水準 2
装備 ショートソード
装備 レッドレザーヘルム
装備 レザーアーマー
技能 なし
なるほど。
何がなるほどなんだか……いや、二つの事が分かったか。
一つは声に出すと反応があるということ。
紙に書いてあること以外にも反応するものがあるようだ。
もう一つは青い点が俺で、緑の点がゴブリンリーダーだということ。
俺は迷宮主で、ゴブリンリーダーは1階層の階層主なんだそうだ。
よくできたゲームだなと思う。
「拡大表示」
出来るかどうかは別にして、そう口にしてみると、壁に描かれた四角い線が拡大された。
俺のいる白い部屋は、ワンルームマンションの間取り図のようにドアや家具、キッチン、トイレ、風呂場……どんな作りでどんな配置なのかが分かるくらいの情報量になった。
そして、玄関と繋がっている黒い四角の部屋は、どうやら実際には楕円形をしているらしく、玄関のすぐ近くにゴブリンリーダーがいるらしい事が分かった。
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