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番外編
20歳の誕生日(1)
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今日は僕の誕生日だ。表向き僕の誕生日は12月25日ということになっているが、今日はそれとは関係のない、本当に僕が生まれてから20年が経つ日だ。にもかかわらず、僕はとても憂鬱だった。なんでって、今日はニカさんからの性的接触が解禁される日でもあるからだ。ほぼ生まれてからずっと付き合ってきて20年、僕は「子供だから」という理由でニカさんからの接触を禁じていた。だからキスしたことは、何もわからなかった一度きりしかないし、セックスだってしたことがないのだ。
しかもあろうことか、ニカさんは端的に言って好色なのだ。誰でもいいわけではないらしいが、とにかくエッチなことが大好きなのを、神の権限で知っている。なのに20年間もセックスレスの状態で待たせてしまった分、今日僕はニカさんを満たさなければならないのだ。それが楽しみとか一切なくてマジで憂鬱だった。
そのせいで僕はとうに目が覚めていたが、ベッドの上から出られずにモゾモゾ蠢いていたのだった。
しかし今日は平日。天使たちは普通に職務があるし、僕もニカさんも仕事をしなければならない日だ。いつまでもこうしてはいられない。僕は観念してベッドから出て、朝食を食べに居間へと移動したのだった。
「おはようコンさん、お誕生日おめでとう。」
出会い頭にそう告げるニカさんの顔は晴れやかで、いつもより少しだけ嬉しそうだった。
そらそうだよなぁこの時を20年待ち望んだんだもんなぁ!と、言葉に出さない期待を勝手に汲んでしまって、僕は顔が引きつった。
「お、おはようございます。……そうですね、今日は僕の誕生日です。」
「おおっぴらにお祝いが出来ないのが残念だが……例年通り、何か食べたいものはあるか?何でも作るぞ。」
ニカさんは僕に笑顔を向ける。その顔の下に、底なしの期待がないと想定するのはあまりに甘すぎるだろう。
「んー、特に思いつかないですね、簡単なものでいいですよ。」
「そうか?なら、コンさんの好きな鮭のムニエルにしよう。簡単で美味しいしな。」
今夜は長くなるでしょうからね!と内心で突っ込んで、僕はトースターにパンを二枚入れてスイッチを回す、モーニングルーティンに取り掛かった。
ニカさんが本当は待ちきれなくてうずうずしているのは自明なのだ。なのにそれをおくびにも出さないのが、かえってどれほどの期待を抱いているか測れなくて恐ろしかった。
その後はさっさと支度を済ませ、逃げるようにそれぞれの仕事場へ向かっていったのだった。
しかもあろうことか、ニカさんは端的に言って好色なのだ。誰でもいいわけではないらしいが、とにかくエッチなことが大好きなのを、神の権限で知っている。なのに20年間もセックスレスの状態で待たせてしまった分、今日僕はニカさんを満たさなければならないのだ。それが楽しみとか一切なくてマジで憂鬱だった。
そのせいで僕はとうに目が覚めていたが、ベッドの上から出られずにモゾモゾ蠢いていたのだった。
しかし今日は平日。天使たちは普通に職務があるし、僕もニカさんも仕事をしなければならない日だ。いつまでもこうしてはいられない。僕は観念してベッドから出て、朝食を食べに居間へと移動したのだった。
「おはようコンさん、お誕生日おめでとう。」
出会い頭にそう告げるニカさんの顔は晴れやかで、いつもより少しだけ嬉しそうだった。
そらそうだよなぁこの時を20年待ち望んだんだもんなぁ!と、言葉に出さない期待を勝手に汲んでしまって、僕は顔が引きつった。
「お、おはようございます。……そうですね、今日は僕の誕生日です。」
「おおっぴらにお祝いが出来ないのが残念だが……例年通り、何か食べたいものはあるか?何でも作るぞ。」
ニカさんは僕に笑顔を向ける。その顔の下に、底なしの期待がないと想定するのはあまりに甘すぎるだろう。
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