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4 みんなのおかげでアッタかい
4_④
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冬の雨は寒さを一段と厳しく感じさせたが、行く先に思いを馳せて、進んでいけた。雨が止んで、ぬかるんだ道を踏みしめる。今歩いている所は、寒村ダルに近い辺り。山道ほどではないが、起伏がある。道の脇、小高くなった場所には、木の根が雨に洗われて剥き出しになった部分も見られた。木々の枝を伝って落ちる雫が、雨の余韻として耳に届き、そこに時々、歌が混じった。町をあといくつか南下すれば、僕の工房があるヘミオラだ。日数で言えば短い間でも、長く離れていた感じがする。これまで以上に、前髪が視界に入る。
行き先のことばかり考えていて、何度か泥に滑って転びそうになった。ユッポも同じく滑っていたから、色々、考え事をしていたのかもしれない。
散漫だった注意の中で、何が起きたかを理解するには、時間がかかった。ほんの一瞬かもしれないし、何十秒かもしれないけれど、僕は地面に投げ出されたまま、こうなった理由を探していた。泥がマフラーに染みていく。
「ユッポ」
名前を呼んで起き上がる動作は、僕が今まで生きてきた中で、一番早かったと思う。駆け寄る一歩ごとに、ついさっきの光景がページ送りに浮かぶ。
雫の合間に聞こえた、不穏な音。
根が剥き出しになった木が、傾いてきていた。
転がってくる石。
倒れる木。支えを失った土と共に、押し寄せてくる。
避けられないと知り、足がすくんだ。
「あぶない!」
声と一緒に、背中を押されたのを覚えている。手袋に包まれた、木製の小さな手に。
木が倒れると同時に、土砂崩れが起きていた。
痛みを知ってから、ユッポの行動には、わずかにためらいが出てきていた。子どもにしては力が強いけど、重いものを長い間持っていれば手が痛くなるし、ずっと立ったままでいれば足も痛くなる。そんなの、辛いから誰だって嫌だ、当たり前だ。
それでも、とっさに僕を庇って突き飛ばした。
「ユッポ!」
僕が元いた辺りに倒れたユッポは、動かない。ひざから下が木の枝や石で埋まっている。やっぱり、逃げ切れなかったんだ。
「うぅ……」
声が聞こえた。よかった、生きている。
「セコ……大丈夫?」
他人の心配をしている場合か? 無理に笑った声を出すなよ……そうだ、この大きさの石なら僕でも動かせる。早く、ユッポを助け出さないと。
「僕は大丈夫だよ。ありがとう」
言いながら、石を拾っては捨てていった。怖くなかったかとか、足は痛むかとか、わかりきったことでも語りかけた。
半分は、ユッポの気が紛れればと思って。あとの半分は、自分の動揺を抑えるためだった。
頭の中では、繰り返し土砂崩れの光景が浮かんでくる。ああ、僕はなんで、あの場所で足を止めたんだ。くそっ
石や枝が減って、泥にまみれたブーツが見えてきた。
「あと少しだ」
だが、気を抜くには早い。足はどうなっているだろう。
固まってしまった自分に腹が立つ。僕が危機に気付いて早く逃げれば、こんな無茶をさせることもなかったんだ。旅を手伝うつもりで、いつも助けられてばかりだなんて。本当に情けない。
泣きたいような気持ちだけど、それは石と一緒に投げ捨てた。ユッポが黙って耐えているのに、ただ悔やんでなんかいられるか? ごちゃごちゃ考える暇があるなら、手を動かすんだよ!
僕は、まだ混乱しているんだろう。頬を伝った血が落ちて初めて、自分もあちこちに細かい傷を負っていると気が付いた。痛みも疲れも忘れて、次々に石をどける。
残りが小石と泥くらいになった。ここまで軽くなれば。
「ユッポ、つかまって。引っ張り出すよ」
声をかけてから、ユッポの両脇を抱えて持ち上げる。僕の袖を掴む手には、しっかり力が入っているのでほっとした。自分の膝に座らせて、挟めていた足を見るが、泥に汚れてよくわからない。ブーツがクッションになって、折れてはいないようだけど。
「痛む?」
「うん……でも、へいきだよ。セコが、助けてくれたもん。ありがとう」
掠れた声は苦しげだ。自分で立とうとまでするから、「無理はするな」と慌てて止めた。
素直に頷いたユッポを片腕に抱えて、立ち上がる。腕に座って襟首を掴んでいてもらえば、落ちはしないだろう。空いた手で地面に落ちた荷物を集めながら、周囲を見回した。
確か、川が近かったはずだ。流れが激しいかもしれないけど、泥だらけでは手当ても出来ない。水は冷たいだろうが、傷を洗えるのはそこだけだ。
僕はここまで力持ちだったっけ。ふたり分の荷物と、全部のカガミと、抱えたユッポを一度に運べるなんて。泥が染みていくことやら何やら、考えたらひとつも置いていけなかった。
追い込まれると思いがけない程の力を発揮できるものだ。自分を傍観する目線があるから、少しは冷静さが戻ってきたみたいだ。足を滑らせぬように気をつけつつ、急いで川辺へ歩く。
川の増水は、さほどじゃない。どうやら、上流では雨が降らなかったようだ。川辺に平らな岩を見つけて荷物を置き、その傍にユッポを座らせた。
「どこが痛む?」
聞きながら、自分の手を見て驚いた。手袋が破けて、指も掌もすりむいている。割れて血のにじんだ爪もあった。とりあえず、ボロきれと化した手袋を外す。
「ここ……」
ユッポが指差したのは足首だった。すると、布張りをしていない所だな。直せる望みはある。
「靴、自分で脱げるかな」
「うん」
頷くのを確かめてから、僕は川へ手を洗いに行った。泥を落として、作業用に持ち歩いている、薄手の布手袋をはめる。自分の手指を手当てはできないから、ユッポの応急処置が済むまでは、これでいい。
素足になったユッポと目を合わせて、僕は自信を持ってこう言った。
「すぐに直るよ。心配しないで」
ユッポの足首は、僕の工房に来た時と同じく、関節を成す球状の部品が、ずれた状態だった。足首より上と足先との間を、つっかえ棒する形になっている。土砂の重みで間隔が広がり、球状の部品が飛び出してしまったのだろう。たぶん、人間に例えたら脱臼に近いと思う。工具やニスはいらない、すぐに直せるのは本当だけど、この前とは違う。両足とも関節がずれているし、何より、今のユッポは痛みがわかるんだ。瞬間、直すことをためらった。
「痛いかもしれないけど、大丈夫かい?」
「うん」
今だって十分痛い。迷っている余裕はないな。足先を引っ張って、関節を広げる。球状の部品は、中を通る糸に引かれて元の位置に収まった。
「ひゃあっ」
「ご、ごめん」
悲鳴が上がったので、慌てて手を離す。ユッポの足には力が入っていなくて、振り子のようにぶらんと下がる。勢いで、座っている岩に踵をぶつけてしまった。
「だ……だいじょうぶ……」
震える声は、全然、大丈夫じゃなさそうだ。ちらっと顔を見ると、固く目を閉じていた。
とにかく、直さなくちゃしょうがない。
「あっ!」
ふと思いついて、驚いた振りをして明後日の方向を指差してみた。僕が珍しく大声を出したから、ユッポは「え?」と首を回して虚空に気をとられる。
その隙に、もう一方の足先を引っ張って、関節を戻した。球が元通り収まる。
「わわっ」
部品が収まる音より、何倍も大きな悲鳴が上がった。
ごめん。少しは感覚をごまかせるかと期待したが、だめだったみたいだ。
痛みの余韻で、ユッポはしばらくうなだれて沈黙したが、そのうち顔を上げた。
「……セコ、ありがとう! もう、イタくないよ!」
無理をした笑い声ではなくなっていた。それで、やっと肩から力が抜ける。
ほっとしたのも束の間、ユッポの表情はすぐに曇った。目が、真っ直ぐに僕の頬を見ていた。
その目線が染みたかな。緊張が解けたせいかな。にわかに傷が痛み始めた。
「いや、こんなの大した傷じゃない……」
言って、手で頬を拭ったのがまずかった。
「わわわ」
ユッポが、おろおろしている。作業用の手袋は薄くて、早くも手の傷からにじんだ血が、顔に赤い筋を作っていた。
行き先のことばかり考えていて、何度か泥に滑って転びそうになった。ユッポも同じく滑っていたから、色々、考え事をしていたのかもしれない。
散漫だった注意の中で、何が起きたかを理解するには、時間がかかった。ほんの一瞬かもしれないし、何十秒かもしれないけれど、僕は地面に投げ出されたまま、こうなった理由を探していた。泥がマフラーに染みていく。
「ユッポ」
名前を呼んで起き上がる動作は、僕が今まで生きてきた中で、一番早かったと思う。駆け寄る一歩ごとに、ついさっきの光景がページ送りに浮かぶ。
雫の合間に聞こえた、不穏な音。
根が剥き出しになった木が、傾いてきていた。
転がってくる石。
倒れる木。支えを失った土と共に、押し寄せてくる。
避けられないと知り、足がすくんだ。
「あぶない!」
声と一緒に、背中を押されたのを覚えている。手袋に包まれた、木製の小さな手に。
木が倒れると同時に、土砂崩れが起きていた。
痛みを知ってから、ユッポの行動には、わずかにためらいが出てきていた。子どもにしては力が強いけど、重いものを長い間持っていれば手が痛くなるし、ずっと立ったままでいれば足も痛くなる。そんなの、辛いから誰だって嫌だ、当たり前だ。
それでも、とっさに僕を庇って突き飛ばした。
「ユッポ!」
僕が元いた辺りに倒れたユッポは、動かない。ひざから下が木の枝や石で埋まっている。やっぱり、逃げ切れなかったんだ。
「うぅ……」
声が聞こえた。よかった、生きている。
「セコ……大丈夫?」
他人の心配をしている場合か? 無理に笑った声を出すなよ……そうだ、この大きさの石なら僕でも動かせる。早く、ユッポを助け出さないと。
「僕は大丈夫だよ。ありがとう」
言いながら、石を拾っては捨てていった。怖くなかったかとか、足は痛むかとか、わかりきったことでも語りかけた。
半分は、ユッポの気が紛れればと思って。あとの半分は、自分の動揺を抑えるためだった。
頭の中では、繰り返し土砂崩れの光景が浮かんでくる。ああ、僕はなんで、あの場所で足を止めたんだ。くそっ
石や枝が減って、泥にまみれたブーツが見えてきた。
「あと少しだ」
だが、気を抜くには早い。足はどうなっているだろう。
固まってしまった自分に腹が立つ。僕が危機に気付いて早く逃げれば、こんな無茶をさせることもなかったんだ。旅を手伝うつもりで、いつも助けられてばかりだなんて。本当に情けない。
泣きたいような気持ちだけど、それは石と一緒に投げ捨てた。ユッポが黙って耐えているのに、ただ悔やんでなんかいられるか? ごちゃごちゃ考える暇があるなら、手を動かすんだよ!
僕は、まだ混乱しているんだろう。頬を伝った血が落ちて初めて、自分もあちこちに細かい傷を負っていると気が付いた。痛みも疲れも忘れて、次々に石をどける。
残りが小石と泥くらいになった。ここまで軽くなれば。
「ユッポ、つかまって。引っ張り出すよ」
声をかけてから、ユッポの両脇を抱えて持ち上げる。僕の袖を掴む手には、しっかり力が入っているのでほっとした。自分の膝に座らせて、挟めていた足を見るが、泥に汚れてよくわからない。ブーツがクッションになって、折れてはいないようだけど。
「痛む?」
「うん……でも、へいきだよ。セコが、助けてくれたもん。ありがとう」
掠れた声は苦しげだ。自分で立とうとまでするから、「無理はするな」と慌てて止めた。
素直に頷いたユッポを片腕に抱えて、立ち上がる。腕に座って襟首を掴んでいてもらえば、落ちはしないだろう。空いた手で地面に落ちた荷物を集めながら、周囲を見回した。
確か、川が近かったはずだ。流れが激しいかもしれないけど、泥だらけでは手当ても出来ない。水は冷たいだろうが、傷を洗えるのはそこだけだ。
僕はここまで力持ちだったっけ。ふたり分の荷物と、全部のカガミと、抱えたユッポを一度に運べるなんて。泥が染みていくことやら何やら、考えたらひとつも置いていけなかった。
追い込まれると思いがけない程の力を発揮できるものだ。自分を傍観する目線があるから、少しは冷静さが戻ってきたみたいだ。足を滑らせぬように気をつけつつ、急いで川辺へ歩く。
川の増水は、さほどじゃない。どうやら、上流では雨が降らなかったようだ。川辺に平らな岩を見つけて荷物を置き、その傍にユッポを座らせた。
「どこが痛む?」
聞きながら、自分の手を見て驚いた。手袋が破けて、指も掌もすりむいている。割れて血のにじんだ爪もあった。とりあえず、ボロきれと化した手袋を外す。
「ここ……」
ユッポが指差したのは足首だった。すると、布張りをしていない所だな。直せる望みはある。
「靴、自分で脱げるかな」
「うん」
頷くのを確かめてから、僕は川へ手を洗いに行った。泥を落として、作業用に持ち歩いている、薄手の布手袋をはめる。自分の手指を手当てはできないから、ユッポの応急処置が済むまでは、これでいい。
素足になったユッポと目を合わせて、僕は自信を持ってこう言った。
「すぐに直るよ。心配しないで」
ユッポの足首は、僕の工房に来た時と同じく、関節を成す球状の部品が、ずれた状態だった。足首より上と足先との間を、つっかえ棒する形になっている。土砂の重みで間隔が広がり、球状の部品が飛び出してしまったのだろう。たぶん、人間に例えたら脱臼に近いと思う。工具やニスはいらない、すぐに直せるのは本当だけど、この前とは違う。両足とも関節がずれているし、何より、今のユッポは痛みがわかるんだ。瞬間、直すことをためらった。
「痛いかもしれないけど、大丈夫かい?」
「うん」
今だって十分痛い。迷っている余裕はないな。足先を引っ張って、関節を広げる。球状の部品は、中を通る糸に引かれて元の位置に収まった。
「ひゃあっ」
「ご、ごめん」
悲鳴が上がったので、慌てて手を離す。ユッポの足には力が入っていなくて、振り子のようにぶらんと下がる。勢いで、座っている岩に踵をぶつけてしまった。
「だ……だいじょうぶ……」
震える声は、全然、大丈夫じゃなさそうだ。ちらっと顔を見ると、固く目を閉じていた。
とにかく、直さなくちゃしょうがない。
「あっ!」
ふと思いついて、驚いた振りをして明後日の方向を指差してみた。僕が珍しく大声を出したから、ユッポは「え?」と首を回して虚空に気をとられる。
その隙に、もう一方の足先を引っ張って、関節を戻した。球が元通り収まる。
「わわっ」
部品が収まる音より、何倍も大きな悲鳴が上がった。
ごめん。少しは感覚をごまかせるかと期待したが、だめだったみたいだ。
痛みの余韻で、ユッポはしばらくうなだれて沈黙したが、そのうち顔を上げた。
「……セコ、ありがとう! もう、イタくないよ!」
無理をした笑い声ではなくなっていた。それで、やっと肩から力が抜ける。
ほっとしたのも束の間、ユッポの表情はすぐに曇った。目が、真っ直ぐに僕の頬を見ていた。
その目線が染みたかな。緊張が解けたせいかな。にわかに傷が痛み始めた。
「いや、こんなの大した傷じゃない……」
言って、手で頬を拭ったのがまずかった。
「わわわ」
ユッポが、おろおろしている。作業用の手袋は薄くて、早くも手の傷からにじんだ血が、顔に赤い筋を作っていた。
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