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3 ハガユイ旅
3_③
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事件が起こったのは、更に北上した隣町のムームー。聞き込みなんかする間もなく、急いで宿に駆け込んだ。猛る吹雪は僕達を雪だるまにして、宿の暖房であっという間に水に変わった。抱え込んで運んだカガミは無事だったが、防寒具や髪はびしょ濡れだ。
そこそこ裕福な町であるためか、部屋ごとに小さなストーブが置かれていた。年季が入っているのは、造りがいい証拠だと思う。ただ、手入れは少々おざなりで、薪を入れるドアには隙間がある。物は、使う人次第で寿命や機能が変わるんだな。
薪の方は良質だから、長い時間もちそうだ。濡れた防寒具は、朝までに乾くだろう。
荷物をおろしたら、もう夕飯時だった。いつも通り、僕はひとりで食堂へ行く。
「いってらっしゃい。わたし、かわかしてるね」
手袋を染みて、手まで濡れたらしいユッポが、笑うように小首をかしげて見送ってくれる。
食堂で、連れはどうしたと聞かれたから、適当に取り繕った。調子が悪いとか、疲れて眠ったとか。嘘を、もう何回も重ねた。そのことを、ユッポは知らない。
後から思うと、この日の僕はやたらと呑気だった。温かい食事がなんと有難いものかと噛み締めながら、ユッポも食べられたらいいのに、なんて考えていた。
熱さも寒さもわからないなら、味もわからない。もちろん、空腹だって。生き物の根本的な欲求が欠けているのは、なんだか淋しい。
つい、ありえない未来を願う。そんなものは、現実の前で打ち砕かれてしまうだろうけど。ユッポのために、僕に出来ることはあるのかな。
僕はこの旅で変わったと思う。突然、似たような毎日が終わりになって、驚きと戸惑いが押し寄せてきた。自分の心の動きがわかって、面倒や辛さもあるけど、生きていることを実感している。旅が、楽しい……のだろう。
一方で、忘れかけた事柄を思い出してしまったが、今のところ気付かない振りをしている。
もう、他人との関わりを避け、殻にこもった生活をしていた僕ではない。ユッポのお陰で変われたんだ。ならば、手助けをしたいと思うのは当然だろう。
最後のひとくちを頬張るころ、急に物音が気になり始める。客の出入りが多い夕飯時、食べ終わって席を立つ人、片付いたテーブルに案内される人によって、たくさんの椅子が音を立てる。靴音も多い。
ただ、それ以上に何か……ほら、また聞こえた。ガタガタ、パタタ、トントン。
上からだ。二階の客が、探し物でもしているんだろうか。
いや、違う。食事を飲み下すと同時に気づいた。ちょうど、僕達の部屋が食堂の真上だ。
「ごちそうさま」
食器を下げにきた食堂の店員に一言かけて、席を立つ。
部屋の近くまで戻った時、まだガタガタと音がした。最初はネズミでも出たのかと思ったけど、それにしては慌てた様子で音が続く。
「ユッポ?」
「あ、おかえりなさい! ごちそうさま?」
ドアを開けて部屋に入ると、いつもと同じような言葉が返ってきた。ユッポは手を後ろに回して、何か隠している……というより、つい隠した感じ。少し煙たかったから、およそのことはわかった。
「手を見せてごらん」
ドアを閉めて、ユッポの手を指差す。どうしていいかわからなかったのか、ユッポの目はあさっての方向を向いた。
「ちゃんと乾いた……よ?」
「いいから見せてごらん。焦がしたんだろう……そりゃ、乾いたのに違いはないけれど、隠すのはいけないことだな」
ずるい言い方をして促した。行き当たりばったりの隠し事は、すぐに公になった。
「はい……ごめんなさい。ストーブの火で、焦がしちゃったの」
手袋をはずし、かざしていたようだ。薪を入れるドアの隙間から出た火の粉が、親指の付け根を焦がしていた。気付くまでに間があったと見える。うたた寝でもしていたんだろう。ちょっとした過失だ。
「少し削ってニスを塗れば、大丈夫そうだね」
ユッポの素手を見るのは、初めてだった。細い指に布張りをするのは難しかったためか、足と同じく木のまま。布よりは燃えにくい。それで、燃え広がらずに済んだんだ。
修理は簡単だと示して、安心して欲しかったけど、ユッポは沈んだ様子でうつむいていた。だいぶ気に病んでいる。
「今、やすりを出すから。……すぐに直るよ」
「なおしてくれるの?」
そんなに驚いて言うことないのに。
「もちろん。放っておいたら、後が大変だよ」
「ありがとう。……ごめんなさい」
弱々しい声。迷惑をかけてしまうと、反省しているんだろう。相変わらず、ユッポの声は僕に表情の錯覚を見せた。自分を責めてうつむいたきり、動かないでいる。
一瞬、感情が肩を震わせた気がした。
「ユッポ……」
泣いているのか、と聞こうとして、やめた。荷物から、道具の詰まった皮袋を取り出す。
「痛くないかい?」
代わりにつないだ言葉も、下手な問いかけだったらしい。
こくり、頷くユッポにほっとしたのは、間違いだった。
「イタいって、どんなことか……わからないから」
ああそうか、痛覚もないんだ。僕も焦がしたと言ったじゃないか。これは火傷ではない。
気まずくなった時、火の具合を見に宿の者が来た。ノックに応える前に、ユッポの手を見られないよう、ドアに背を向けさせた。ついでだからストーブを消す用意をお願いし、器具の不具合を伝えて気を逸らすことができた。
ただ、誤算もあった。ストーブに隙間があったことで空気が悪いから、換気が必要なのだそうだ。余熱があっても、部屋の温度はだんだん下がっていく。
窓際に椅子を持っていき、向かい合って座る。細かく区切った皮袋に並んでいるやすりは、ペンほどの長さの金属製。それぞれ、先端の太さや形状が異なる。あまり厚みのない、先端が丸いものを選び取る。すると、ユッポはごく小さく、また「ごめんなさい」と言った。
「わざとやったんじゃないだろ」
「うん。いねむり、してたの」
「なら、そんなに気にするな。窓を開けるのだって、ストーブのせいだ」
木。焦げた木。やすりの摩擦がストーブで温まった熱を保つので、僕は切なくなってきた。ユッポは、この手が温かくなったら、人間になったら、教えて欲しいと言っていた。
「……こんなものかな」
払う煤は、ゴミ箱に落ちていく。木の匂いがする。乾いた布で拭うと、元通り木目が見えるようになった。キレイになったとはしゃぐユッポは、空元気だ。無理に明るい声を出したのがわかる。
ニスを取りに席を立つとき、ユッポに笑いかけてみたけど、うまくできたかな。
保護のためにニスを塗りながら、少しユッポの様子を見た。くすぐったいかな? そんなわけないか。ハケの角度を使い分けて、隙間なく塗りつつ思うことは、やはり切ない。
薄く均等に。木目にニスを重ねていく自分の手が、恨めしかった。心の中ではユッポを生き物だとしながら、手は職人として正確な作業を求めて動く。
寒い場所で作業をしていると、手先が冷えて来る。ぎくしゃくした動きを見て、ユッポは僕の手が冷たくなっていることを察した。
「セコ、サムいでしょ? ごめんね、窓は開けておかないと、だめなんだよね」
窓を開けたのは換気のためで、たまたまニス塗りにも好都合なだけだ。むしろ、閉めたら具合が悪くなってしまう。ユッポが謝ることじゃないのにな。どうして、この世の終わりみたいな声を出すんだろう。
「まだ、そんなに寒くないよ。今日はこれで終わりにしよう。必要があったら、また今度重ねて塗ればいい」
以前よりは、優しく言葉をかけられているかな。旅に出た当初は、ろくに話もしなかった。あのころ、ユッポはバランス感覚が変化したばかりで、歩き慣れていなかった。にもかかわらず、どんどん先へ行った僕は嫌なやつだ。
そこそこ裕福な町であるためか、部屋ごとに小さなストーブが置かれていた。年季が入っているのは、造りがいい証拠だと思う。ただ、手入れは少々おざなりで、薪を入れるドアには隙間がある。物は、使う人次第で寿命や機能が変わるんだな。
薪の方は良質だから、長い時間もちそうだ。濡れた防寒具は、朝までに乾くだろう。
荷物をおろしたら、もう夕飯時だった。いつも通り、僕はひとりで食堂へ行く。
「いってらっしゃい。わたし、かわかしてるね」
手袋を染みて、手まで濡れたらしいユッポが、笑うように小首をかしげて見送ってくれる。
食堂で、連れはどうしたと聞かれたから、適当に取り繕った。調子が悪いとか、疲れて眠ったとか。嘘を、もう何回も重ねた。そのことを、ユッポは知らない。
後から思うと、この日の僕はやたらと呑気だった。温かい食事がなんと有難いものかと噛み締めながら、ユッポも食べられたらいいのに、なんて考えていた。
熱さも寒さもわからないなら、味もわからない。もちろん、空腹だって。生き物の根本的な欲求が欠けているのは、なんだか淋しい。
つい、ありえない未来を願う。そんなものは、現実の前で打ち砕かれてしまうだろうけど。ユッポのために、僕に出来ることはあるのかな。
僕はこの旅で変わったと思う。突然、似たような毎日が終わりになって、驚きと戸惑いが押し寄せてきた。自分の心の動きがわかって、面倒や辛さもあるけど、生きていることを実感している。旅が、楽しい……のだろう。
一方で、忘れかけた事柄を思い出してしまったが、今のところ気付かない振りをしている。
もう、他人との関わりを避け、殻にこもった生活をしていた僕ではない。ユッポのお陰で変われたんだ。ならば、手助けをしたいと思うのは当然だろう。
最後のひとくちを頬張るころ、急に物音が気になり始める。客の出入りが多い夕飯時、食べ終わって席を立つ人、片付いたテーブルに案内される人によって、たくさんの椅子が音を立てる。靴音も多い。
ただ、それ以上に何か……ほら、また聞こえた。ガタガタ、パタタ、トントン。
上からだ。二階の客が、探し物でもしているんだろうか。
いや、違う。食事を飲み下すと同時に気づいた。ちょうど、僕達の部屋が食堂の真上だ。
「ごちそうさま」
食器を下げにきた食堂の店員に一言かけて、席を立つ。
部屋の近くまで戻った時、まだガタガタと音がした。最初はネズミでも出たのかと思ったけど、それにしては慌てた様子で音が続く。
「ユッポ?」
「あ、おかえりなさい! ごちそうさま?」
ドアを開けて部屋に入ると、いつもと同じような言葉が返ってきた。ユッポは手を後ろに回して、何か隠している……というより、つい隠した感じ。少し煙たかったから、およそのことはわかった。
「手を見せてごらん」
ドアを閉めて、ユッポの手を指差す。どうしていいかわからなかったのか、ユッポの目はあさっての方向を向いた。
「ちゃんと乾いた……よ?」
「いいから見せてごらん。焦がしたんだろう……そりゃ、乾いたのに違いはないけれど、隠すのはいけないことだな」
ずるい言い方をして促した。行き当たりばったりの隠し事は、すぐに公になった。
「はい……ごめんなさい。ストーブの火で、焦がしちゃったの」
手袋をはずし、かざしていたようだ。薪を入れるドアの隙間から出た火の粉が、親指の付け根を焦がしていた。気付くまでに間があったと見える。うたた寝でもしていたんだろう。ちょっとした過失だ。
「少し削ってニスを塗れば、大丈夫そうだね」
ユッポの素手を見るのは、初めてだった。細い指に布張りをするのは難しかったためか、足と同じく木のまま。布よりは燃えにくい。それで、燃え広がらずに済んだんだ。
修理は簡単だと示して、安心して欲しかったけど、ユッポは沈んだ様子でうつむいていた。だいぶ気に病んでいる。
「今、やすりを出すから。……すぐに直るよ」
「なおしてくれるの?」
そんなに驚いて言うことないのに。
「もちろん。放っておいたら、後が大変だよ」
「ありがとう。……ごめんなさい」
弱々しい声。迷惑をかけてしまうと、反省しているんだろう。相変わらず、ユッポの声は僕に表情の錯覚を見せた。自分を責めてうつむいたきり、動かないでいる。
一瞬、感情が肩を震わせた気がした。
「ユッポ……」
泣いているのか、と聞こうとして、やめた。荷物から、道具の詰まった皮袋を取り出す。
「痛くないかい?」
代わりにつないだ言葉も、下手な問いかけだったらしい。
こくり、頷くユッポにほっとしたのは、間違いだった。
「イタいって、どんなことか……わからないから」
ああそうか、痛覚もないんだ。僕も焦がしたと言ったじゃないか。これは火傷ではない。
気まずくなった時、火の具合を見に宿の者が来た。ノックに応える前に、ユッポの手を見られないよう、ドアに背を向けさせた。ついでだからストーブを消す用意をお願いし、器具の不具合を伝えて気を逸らすことができた。
ただ、誤算もあった。ストーブに隙間があったことで空気が悪いから、換気が必要なのだそうだ。余熱があっても、部屋の温度はだんだん下がっていく。
窓際に椅子を持っていき、向かい合って座る。細かく区切った皮袋に並んでいるやすりは、ペンほどの長さの金属製。それぞれ、先端の太さや形状が異なる。あまり厚みのない、先端が丸いものを選び取る。すると、ユッポはごく小さく、また「ごめんなさい」と言った。
「わざとやったんじゃないだろ」
「うん。いねむり、してたの」
「なら、そんなに気にするな。窓を開けるのだって、ストーブのせいだ」
木。焦げた木。やすりの摩擦がストーブで温まった熱を保つので、僕は切なくなってきた。ユッポは、この手が温かくなったら、人間になったら、教えて欲しいと言っていた。
「……こんなものかな」
払う煤は、ゴミ箱に落ちていく。木の匂いがする。乾いた布で拭うと、元通り木目が見えるようになった。キレイになったとはしゃぐユッポは、空元気だ。無理に明るい声を出したのがわかる。
ニスを取りに席を立つとき、ユッポに笑いかけてみたけど、うまくできたかな。
保護のためにニスを塗りながら、少しユッポの様子を見た。くすぐったいかな? そんなわけないか。ハケの角度を使い分けて、隙間なく塗りつつ思うことは、やはり切ない。
薄く均等に。木目にニスを重ねていく自分の手が、恨めしかった。心の中ではユッポを生き物だとしながら、手は職人として正確な作業を求めて動く。
寒い場所で作業をしていると、手先が冷えて来る。ぎくしゃくした動きを見て、ユッポは僕の手が冷たくなっていることを察した。
「セコ、サムいでしょ? ごめんね、窓は開けておかないと、だめなんだよね」
窓を開けたのは換気のためで、たまたまニス塗りにも好都合なだけだ。むしろ、閉めたら具合が悪くなってしまう。ユッポが謝ることじゃないのにな。どうして、この世の終わりみたいな声を出すんだろう。
「まだ、そんなに寒くないよ。今日はこれで終わりにしよう。必要があったら、また今度重ねて塗ればいい」
以前よりは、優しく言葉をかけられているかな。旅に出た当初は、ろくに話もしなかった。あのころ、ユッポはバランス感覚が変化したばかりで、歩き慣れていなかった。にもかかわらず、どんどん先へ行った僕は嫌なやつだ。
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