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学園編

120 ちっちゃい吸血鬼

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『出来たわ。さあガキ、これを机に運んでちょうだい』
『指図しないで!』

反抗的に言ってくるが、ちっちゃいのは私の手から皿を奪い取り、机に運んだ。
うんうん、仲良くなるためにはコミュニケーションだよね。

『シチューか?』
『そうよ』

私も自分の分を机に運び、座る。
どうやらこちらにもシチューはあるらしい。

『じゃあ、頂きます』
私が手を合わせるのを不思議そうに見ている。

『ーーー?なんだその動きは?』
『感謝しているのよ。』
『なにに?』
『そうね……、みんなによ。ご飯は一人だけの力で食べられるものじゃないわ。栽培してくれる人、運んでくれる人、売ってくれる人、作ってくれる人。色々な人が頑張ってるから食べられるの。だから感謝するのよ。わかったかしら?』
『……本人の目の前で言うわけでもないのにか?』
『ふふっ、そうよ。感謝することが大事なの。感謝すればその人の事、思いやれるでしょ?いつか巡りめぐってきっとその人の役に立ってくれるわ。さあ、冷めないうちにどうぞ』

少年は訳がわからないという顔をしながらも、小さく『頂きます』と呟いた。
私も笑いつつ、シチューを口にする。

暖かいシチューは心のそこを温めてくれた。

『……ねぇ、なんでこの森に住んでるの?』
シチューを早々に食べ終えた少年がポツリと言った。

『うーん、たまたま目についたかしらね?』
『……ここ、魔竜の森っていう超危険な森なんだけど』
少年はスプーンを口に加えたまま話す。

『あら、危険なの?それは知らなかったわ。確かに魔獣とか沢山いるけれど、魔族が通りかからないと聞いたからここにしたのよ』
『っだから危険なんだよ!いっぱいいるだけじゃなくて、レベルが高い魔獣ばかりだ。危険すぎて、誰も近寄らないんだよ!』

一生懸命な様子の少年にくすりと笑ってしまう。
『そーんな危険な森になんで一人で入るのかしらね?』
『……、今吸血鬼が暴動を起こしているって噂になっているでしょ?そのせいで孤児院から追い出されたんだ。シスターは庇ってくれたんだけど、院長が無理やりオレを外に連れ出して、帰ってこれないようにってこの森に置いていった』

ーーー孤児院が置いていった……?

とんでもないことである。
行き場の無い子供たちが集まるところ、それが孤児院だというのに、噂を恐れて子供を捨てるなんて……。
それでこそ噂になるというもの、なぜそんな馬鹿なことをするのか、訳がわからない。

『あなた、吸血鬼事件のことについて知っているのね』
捨てられる心当たりがあるということはそういうことなのだろうと鎌をかけてみる。

『……お前もオレのこと追い出すのか?』
『あら、追い出すに決まっているでしょ?』
『えっ!?』

『ガキんちょ、不法侵入したこと忘れてない?ここは私の家なのよ』
至極真っ当なことである。
少年ははっとして、私を睨み付けた。

『オレ、ガキじゃなくてアルフィーって名前があるの。ガキって呼ばないで!』
先程のことの恥ずかしさからか、アルフィーは叫び散らす。

『じゃあアルフィーね。……ねぇ、あなたお家に帰りたい?』
『ーーー帰りたくない。あの院長がいるなら帰ってもまた同じことの繰り返しだと思うし』
アルフィーは悲しげな表情で言う。
本当は帰りたいのだろう。

『なら、今日はうちに泊めてあげるわ。行く宛はないのでしょう?』
『いいの!?』
『ええ。だから大人しくしているのよ?』
『うん、ありがとう!』

私はベッドを片付けて、布団を二つ敷くのであった。
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