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幼少期編
35 残念なイケメン
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今日はお兄様が学校をお休みして帰ってくる日だ。
私はお兄様の大好きなマカロンを作ってフロントでその知らせを待った。
今日はリバートがそばにいるので、領地に入ったら時点で知らせを受けた、時間的にはそろそろではないだろうか。
「お嬢様、タファ様がお帰りになられましたわ」
チェニーがフロントの端でくつろいでいる私に声をかけた。
私は待ってましたとばかりにバッと立ち上がり、玄関へと向かった。
「にいにっ!お帰りなさいませ!!!」
玄関ではお兄様とニーファとイソクがいた。
二人ともお兄様について学園へ出張だったので、会うのは久しぶりである。
「ただいま、サァラ」
十五になってますます身長が伸びたお兄様は、現在百六十五センチほど。
私も延びてはいるが、あっという間に差をつけられてしまった。
可愛かったお兄様が可愛さの片鱗を見せつけない、男性になった。
「ああ、サァラ。見ない間に更に可愛らしくなってしまって……。にいには心配だよぉ」
「ありがと、にいに。じゃあ、お仕事しよっか?」
帰ってきて早々で悪いが、こちらだって仕事があるのだ。
タファがいないとできない仕事は既に粗方終わっている。
そう言われたお兄様の顔は少し歪んでいる。
「えー、僕としては可愛い妹と久しぶりの再開だからゆっくりしたいんだけど……」
「大丈夫ですわ、にいに。私と楽しくお仕事しましょう」
お兄様の表情はさらに複雑になる、もう一押しかな。
「では、お仕事が終わりましたら二人でデート致しましょーーー」
「やる!よし、今すぐ仕事しようっ!」
即答でした。
ポイントはお出かけでなく、デートと言うことである。
兄妹でデートなのに喜ぶとか、お兄様は案外モテないのだろうか?
……いや、パーティーなんかでは確実に女の子たちが沸き立っているので、モテていないなんてことあるはずはない。
もしかして、重度のシスコンだから、みんな引いて話しかけられないとか?
ーーーありうるなぁ……。
私はアデルと初めてあったときのことを思い出した。
それに、パーティー中のお兄様は妙に静かで怖い。
本当に二重人格者かもと思うほどいつもと違うから、余計に話しづらいかもしれない。
うちは公爵家だけど、お父様とお母様が恋愛結婚だったから、婚約者とかいないしね。
寂しいお兄様、まさに残念なイケメンである。
私は張り切って私の書斎に向かうお兄様の背を見ながらそう思った。
「チェニー、私たちも行くわよ。バベットとカーシェリーを呼んできてちょうだい」
「畏まりました、ルイ頼んだわよ」
新米メイドルイちゃんは先輩メイドチェニーに声をかけられてガチガチになりながら二人を呼びにいった。
ルイは私が十歳になったプレゼントにと、お母様から譲り受けた、もとい押し付けられた新米メイドで、人見知りのある十歳だ。
彼女は伯爵令嬢らしいのだが、三女であまりの人見知りに社交界に出せないため(本人が行きたがらない)これは結婚も難しいだろうと早々にうちでメイド修行をしているのである。
ーーー言っておくがこれでも大分ましになった方で、出会いたては何かの後ろに隠れていないと会話ができなかったのだ、成長している。
人見知りも仮面を着けてだが、対処できるようになったのだし、最近もっといい仕事があるんじゃない?とか、やりたいことないの?とか遠回しに聞いてみたが、彼女の意思で私の専属メイドとしてここに留まることとなった。
人見知りさえなければとても有能な子なのでこちらとしては嬉しいが、本当に良いのだろうかという気持ちはなかなか消えない。
ーーーうん、しばらくしたらもう一度聞いてみよ。
そして、私はルイに「そんなに私は要らないですか?」とうるうるとした目で泣かれて二度とすることはないのだった。
私はお兄様の大好きなマカロンを作ってフロントでその知らせを待った。
今日はリバートがそばにいるので、領地に入ったら時点で知らせを受けた、時間的にはそろそろではないだろうか。
「お嬢様、タファ様がお帰りになられましたわ」
チェニーがフロントの端でくつろいでいる私に声をかけた。
私は待ってましたとばかりにバッと立ち上がり、玄関へと向かった。
「にいにっ!お帰りなさいませ!!!」
玄関ではお兄様とニーファとイソクがいた。
二人ともお兄様について学園へ出張だったので、会うのは久しぶりである。
「ただいま、サァラ」
十五になってますます身長が伸びたお兄様は、現在百六十五センチほど。
私も延びてはいるが、あっという間に差をつけられてしまった。
可愛かったお兄様が可愛さの片鱗を見せつけない、男性になった。
「ああ、サァラ。見ない間に更に可愛らしくなってしまって……。にいには心配だよぉ」
「ありがと、にいに。じゃあ、お仕事しよっか?」
帰ってきて早々で悪いが、こちらだって仕事があるのだ。
タファがいないとできない仕事は既に粗方終わっている。
そう言われたお兄様の顔は少し歪んでいる。
「えー、僕としては可愛い妹と久しぶりの再開だからゆっくりしたいんだけど……」
「大丈夫ですわ、にいに。私と楽しくお仕事しましょう」
お兄様の表情はさらに複雑になる、もう一押しかな。
「では、お仕事が終わりましたら二人でデート致しましょーーー」
「やる!よし、今すぐ仕事しようっ!」
即答でした。
ポイントはお出かけでなく、デートと言うことである。
兄妹でデートなのに喜ぶとか、お兄様は案外モテないのだろうか?
……いや、パーティーなんかでは確実に女の子たちが沸き立っているので、モテていないなんてことあるはずはない。
もしかして、重度のシスコンだから、みんな引いて話しかけられないとか?
ーーーありうるなぁ……。
私はアデルと初めてあったときのことを思い出した。
それに、パーティー中のお兄様は妙に静かで怖い。
本当に二重人格者かもと思うほどいつもと違うから、余計に話しづらいかもしれない。
うちは公爵家だけど、お父様とお母様が恋愛結婚だったから、婚約者とかいないしね。
寂しいお兄様、まさに残念なイケメンである。
私は張り切って私の書斎に向かうお兄様の背を見ながらそう思った。
「チェニー、私たちも行くわよ。バベットとカーシェリーを呼んできてちょうだい」
「畏まりました、ルイ頼んだわよ」
新米メイドルイちゃんは先輩メイドチェニーに声をかけられてガチガチになりながら二人を呼びにいった。
ルイは私が十歳になったプレゼントにと、お母様から譲り受けた、もとい押し付けられた新米メイドで、人見知りのある十歳だ。
彼女は伯爵令嬢らしいのだが、三女であまりの人見知りに社交界に出せないため(本人が行きたがらない)これは結婚も難しいだろうと早々にうちでメイド修行をしているのである。
ーーー言っておくがこれでも大分ましになった方で、出会いたては何かの後ろに隠れていないと会話ができなかったのだ、成長している。
人見知りも仮面を着けてだが、対処できるようになったのだし、最近もっといい仕事があるんじゃない?とか、やりたいことないの?とか遠回しに聞いてみたが、彼女の意思で私の専属メイドとしてここに留まることとなった。
人見知りさえなければとても有能な子なのでこちらとしては嬉しいが、本当に良いのだろうかという気持ちはなかなか消えない。
ーーーうん、しばらくしたらもう一度聞いてみよ。
そして、私はルイに「そんなに私は要らないですか?」とうるうるとした目で泣かれて二度とすることはないのだった。
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