56 / 165
幼少期編
26 フラグ
しおりを挟む
お母様に叱られるであろう(今は社交なので睨まれる程度)お兄様をほって、私は特に必要もなく歩いていた。
壁の花になるのもいいだろうが、それじゃあ誰かに話しかけられる可能性がある。
しかも、多数で攻められたら逃げられない。
子供の相手も早熟した貴族らしい子供ばかりとはいえ、面倒だし。
ふらふらと、ただ行ったり来たりを繰り返し、私はお父様を見つけた。
話し相手になっているのは豪華な冠を被った、いかにも国王です的なイケメンおじ様。
なにやら話し込んでいるが、仕事のはなしなのだろうか。
こんなところに来てまでご苦労なこって。
私は近寄ることもせず、お父様は無視してまた会場を歩き始めた。
しばらく歩き続けると、なにやらふらりと会場から外に出る少年を見かけた。
銀髪で同い年くらいの男の子の雰囲気は、なにやら異様に引かれるものがあった。
ーーー悲しんでる?
私は引かれるままに、男の子の後をついて庭には降りた。
夜でも香る花は月光に照らされて、美しい庭。
さすが、お城の庭。
私は花を楽しみながら先程の男の子の後を静かに追った。
「……っえぅ、ひぐっ……」
追って来てしばらくして、草むらで男の子の泣き声が聞こえてきた。
なるほど、これだけ広い庭なら森もついているのねなどと思っていた私は、心を改めて男の子を見る。
茂みに身を隠して存在感を消せば、大抵バレない。
存在感を消すのは前世での修行の成果なので、こういうときにしか使いはしないが。
ーーーさて、どうしようか。
このまま放っておくのもアリだし、親切に話を聞いてあげるもよし。
しかし、よく見回りの兵士に捕まらずにここまで来れたなぁと関心した。
私は気配が近くに来るたびに『透明化』を使ったというのに、運のいいやつだ。
「ひぅっ……、……」
男の子の泣き声はだんだんと小さくなっていく。
私の出番必要ないかな、これ。
そう思ってその場から立ち去ろうとすると、サーチに引っ掛かるものが三、人?
迷ったのはその魔力が、普通の人間と比べて違和感のあるものだったから。
二人は確実に人間じゃないと断言できた。
ーーーこの世界で人間じゃない、人間と似た生物。
それに私は心当たりがあった。
最近、エイブルに教えてもらって本で調べた生物、魔物だ。
彼らは動物に近しいものから、人間に近しいものまでいろいろと種類がある。
それらの多くが人と名前がつきながら、人間ではないとされているものたち、魔族であるとされ、人間からはイミ嫌われているらしい。
とにかく、喧嘩っ早いものたちが多く、人間を恨んでいることもあることから、出会ったら戦闘になる場合が多い。
所謂、危険生物だとか。
私は前世での敵たちを思い出した。
あれらもそうだった、でも、中には話し合いで解決できたこともあった。
彼らはちゃんと頭がいい。
人間並みに考えて、学ぶことができて、共存もできる。
比較的戦闘を避けていた魚人や獣人とは実際共存して一緒に働いていたしね。
そんなわけで、目の前まで差し迫る魔族たちともどうにかして話し合えないだろうかと思った。
が。
「う、わぁぁぁーーー!ま、魔族……、誰か!誰かぁ助けてぇーーー!」
少年が怯えて騒ぎ出してしまった。
相手は真っ黒フードを被った私より少し小さな魔族。
奥から後二人来る。
しかも、場所を見失っていたみたいなのに、銀髪の男の子のせいで、こちらに真っ直ぐ向かってきているみたいだ。
そちらはかなりの殺気付きなので、戦闘になることだろう。
一方、目の前の小さな魔族は殺気はなく、オドオドとしていた。
これ、あれか。
やっぱ、人間が勝手に魔族への固定概念を作っているに違いない。
ちょっとした溝を付け込まれて、今もなおそういう風になっているのだろう。
まあ、目の前の魔族が異質なだけかもしれないが。
身長は人間的に子供なのだし、世の中の闇に当てられていない、純粋な子なのかもしれない。
間もなく、他の二人が到着した。
「めhどjるろkをqへげ?」
「hうぃqねへう……」
「jそqじぇうrltbげ!!!」
そして、訳のわからない外国語。
よく聞いてみると妖精たちが話す言語に似ている気がした。
それなら、と。
私はまた滅茶苦茶なことをしてみた。
『翻訳』
前世で一回使ってみたかった魔法トップテンに入る、解読魔法だ。
対応は全言語。
我ながら随分ファンタジーな魔法だと思う。
先程の会話、翻訳したらこうだ。
「ここにいらっしゃったか、探しましたぞ」
「あ、見つかっちゃった……」
「それよりも、この人間が先程の悲鳴を?始末しましょう!」
というもの。
やべぇ、銀髪の子ピンチじゃん。
「ま、待って、ゲルウブ」
「待ちませぬ」
小さい魔族は大きな角の生えた牛のような魔族を止めようとするが聞き入れられなかった。
大分、興奮しているようだ。
牛の魔族は背中のバカでかい斧を手に持ち、銀髪の子に切りかかる。
それを見たら、体は思考よりも速く動いてくれた。
『シールド』
なるべく短時間でできる防御魔法の中でも最高に固くする。
それは難なく牛の魔族の斧を弾いた
「なっ……!!」
それを見たもう一人の魔族は的確に攻撃を仕掛けてきた。
『アイススピア!』
氷の槍が無数に私たちを襲う。
『ファイアウォール』
私の魔法が相手の槍を溶かしていった。
もちろん、森のなかなので、シールドの周りに薄く熱が籠るようにしたが。
「なに?!上級魔法だぞっ、人間ごときが……!?」
はい、人間ごときです、カチン。
ちょっと怒った私は反撃することにした。
『身体強化』
魔法でドーピングして、まずは牛の魔族に殴りかかった。
「はっ!?こいつ、魔族の俺に殴りっ…、うわぁっっ!?」
「ゲルウブっ!?」
さらにぃ?
『アイスフィールド』
氷に侵食された土草がもう一人の魔族の足元までたどり着くと同時に魔族が氷に飲み込まれた。
「う、うわっ……!」
大丈夫、ちゃんと死なない程度に暖めてあるから。
目茶苦茶魔法をまた作ってしまった。
壁の花になるのもいいだろうが、それじゃあ誰かに話しかけられる可能性がある。
しかも、多数で攻められたら逃げられない。
子供の相手も早熟した貴族らしい子供ばかりとはいえ、面倒だし。
ふらふらと、ただ行ったり来たりを繰り返し、私はお父様を見つけた。
話し相手になっているのは豪華な冠を被った、いかにも国王です的なイケメンおじ様。
なにやら話し込んでいるが、仕事のはなしなのだろうか。
こんなところに来てまでご苦労なこって。
私は近寄ることもせず、お父様は無視してまた会場を歩き始めた。
しばらく歩き続けると、なにやらふらりと会場から外に出る少年を見かけた。
銀髪で同い年くらいの男の子の雰囲気は、なにやら異様に引かれるものがあった。
ーーー悲しんでる?
私は引かれるままに、男の子の後をついて庭には降りた。
夜でも香る花は月光に照らされて、美しい庭。
さすが、お城の庭。
私は花を楽しみながら先程の男の子の後を静かに追った。
「……っえぅ、ひぐっ……」
追って来てしばらくして、草むらで男の子の泣き声が聞こえてきた。
なるほど、これだけ広い庭なら森もついているのねなどと思っていた私は、心を改めて男の子を見る。
茂みに身を隠して存在感を消せば、大抵バレない。
存在感を消すのは前世での修行の成果なので、こういうときにしか使いはしないが。
ーーーさて、どうしようか。
このまま放っておくのもアリだし、親切に話を聞いてあげるもよし。
しかし、よく見回りの兵士に捕まらずにここまで来れたなぁと関心した。
私は気配が近くに来るたびに『透明化』を使ったというのに、運のいいやつだ。
「ひぅっ……、……」
男の子の泣き声はだんだんと小さくなっていく。
私の出番必要ないかな、これ。
そう思ってその場から立ち去ろうとすると、サーチに引っ掛かるものが三、人?
迷ったのはその魔力が、普通の人間と比べて違和感のあるものだったから。
二人は確実に人間じゃないと断言できた。
ーーーこの世界で人間じゃない、人間と似た生物。
それに私は心当たりがあった。
最近、エイブルに教えてもらって本で調べた生物、魔物だ。
彼らは動物に近しいものから、人間に近しいものまでいろいろと種類がある。
それらの多くが人と名前がつきながら、人間ではないとされているものたち、魔族であるとされ、人間からはイミ嫌われているらしい。
とにかく、喧嘩っ早いものたちが多く、人間を恨んでいることもあることから、出会ったら戦闘になる場合が多い。
所謂、危険生物だとか。
私は前世での敵たちを思い出した。
あれらもそうだった、でも、中には話し合いで解決できたこともあった。
彼らはちゃんと頭がいい。
人間並みに考えて、学ぶことができて、共存もできる。
比較的戦闘を避けていた魚人や獣人とは実際共存して一緒に働いていたしね。
そんなわけで、目の前まで差し迫る魔族たちともどうにかして話し合えないだろうかと思った。
が。
「う、わぁぁぁーーー!ま、魔族……、誰か!誰かぁ助けてぇーーー!」
少年が怯えて騒ぎ出してしまった。
相手は真っ黒フードを被った私より少し小さな魔族。
奥から後二人来る。
しかも、場所を見失っていたみたいなのに、銀髪の男の子のせいで、こちらに真っ直ぐ向かってきているみたいだ。
そちらはかなりの殺気付きなので、戦闘になることだろう。
一方、目の前の小さな魔族は殺気はなく、オドオドとしていた。
これ、あれか。
やっぱ、人間が勝手に魔族への固定概念を作っているに違いない。
ちょっとした溝を付け込まれて、今もなおそういう風になっているのだろう。
まあ、目の前の魔族が異質なだけかもしれないが。
身長は人間的に子供なのだし、世の中の闇に当てられていない、純粋な子なのかもしれない。
間もなく、他の二人が到着した。
「めhどjるろkをqへげ?」
「hうぃqねへう……」
「jそqじぇうrltbげ!!!」
そして、訳のわからない外国語。
よく聞いてみると妖精たちが話す言語に似ている気がした。
それなら、と。
私はまた滅茶苦茶なことをしてみた。
『翻訳』
前世で一回使ってみたかった魔法トップテンに入る、解読魔法だ。
対応は全言語。
我ながら随分ファンタジーな魔法だと思う。
先程の会話、翻訳したらこうだ。
「ここにいらっしゃったか、探しましたぞ」
「あ、見つかっちゃった……」
「それよりも、この人間が先程の悲鳴を?始末しましょう!」
というもの。
やべぇ、銀髪の子ピンチじゃん。
「ま、待って、ゲルウブ」
「待ちませぬ」
小さい魔族は大きな角の生えた牛のような魔族を止めようとするが聞き入れられなかった。
大分、興奮しているようだ。
牛の魔族は背中のバカでかい斧を手に持ち、銀髪の子に切りかかる。
それを見たら、体は思考よりも速く動いてくれた。
『シールド』
なるべく短時間でできる防御魔法の中でも最高に固くする。
それは難なく牛の魔族の斧を弾いた
「なっ……!!」
それを見たもう一人の魔族は的確に攻撃を仕掛けてきた。
『アイススピア!』
氷の槍が無数に私たちを襲う。
『ファイアウォール』
私の魔法が相手の槍を溶かしていった。
もちろん、森のなかなので、シールドの周りに薄く熱が籠るようにしたが。
「なに?!上級魔法だぞっ、人間ごときが……!?」
はい、人間ごときです、カチン。
ちょっと怒った私は反撃することにした。
『身体強化』
魔法でドーピングして、まずは牛の魔族に殴りかかった。
「はっ!?こいつ、魔族の俺に殴りっ…、うわぁっっ!?」
「ゲルウブっ!?」
さらにぃ?
『アイスフィールド』
氷に侵食された土草がもう一人の魔族の足元までたどり着くと同時に魔族が氷に飲み込まれた。
「う、うわっ……!」
大丈夫、ちゃんと死なない程度に暖めてあるから。
目茶苦茶魔法をまた作ってしまった。
0
お気に入りに追加
376
あなたにおすすめの小説
「お前を妻だと思ったことはない」と言ってくる旦那様と離婚した私は、幼馴染の侯爵から溺愛されています。
木山楽斗
恋愛
第二王女のエリームは、かつて王家と敵対していたオルバディオン公爵家に嫁がされた。
因縁を解消するための結婚であったが、現当主であるジグールは彼女のことを冷遇した。長きに渡る因縁は、簡単に解消できるものではなかったのである。
そんな暮らしは、エリームにとって息苦しいものだった。それを重く見た彼女の兄アルベルドと幼馴染カルディアスは、二人の結婚を解消させることを決意する。
彼らの働きかけによって、エリームは苦しい生活から解放されるのだった。
晴れて自由の身になったエリームに、一人の男性が婚約を申し込んできた。
それは、彼女の幼馴染であるカルディアスである。彼は以前からエリームに好意を寄せていたようなのだ。
幼い頃から彼の人となりを知っているエリームは、喜んでその婚約を受け入れた。二人は、晴れて夫婦となったのである。
二度目の結婚を果たしたエリームは、以前とは異なる生活を送っていた。
カルディアスは以前の夫とは違い、彼女のことを愛して尊重してくれたのである。
こうして、エリームは幸せな生活を送るのだった。
私が愛する王子様は、幼馴染を側妃に迎えるそうです
こことっと
恋愛
それは奇跡のような告白でした。
まさか王子様が、社交会から逃げ出した私を探しだし妃に選んでくれたのです。
幸せな結婚生活を迎え3年、私は幸せなのに不安から逃れられずにいました。
「子供が欲しいの」
「ごめんね。 もう少しだけ待って。 今は仕事が凄く楽しいんだ」
それから間もなく……彼は、彼の幼馴染を側妃に迎えると告げたのです。
【完結】今夜さよならをします
たろ
恋愛
愛していた。でも愛されることはなかった。
あなたが好きなのは、守るのはリーリエ様。
だったら婚約解消いたしましょう。
シエルに頬を叩かれた時、わたしの恋心は消えた。
よくある婚約解消の話です。
そして新しい恋を見つける話。
なんだけど……あなたには最後しっかりとざまあくらわせてやります!!
★すみません。
長編へと変更させていただきます。
書いているとつい面白くて……長くなってしまいました。
いつも読んでいただきありがとうございます!
逃した番は他国に嫁ぐ
基本二度寝
恋愛
「番が現れたら、婚約を解消してほしい」
婚約者との茶会。
和やかな会話が落ち着いた所で、改まって座を正した王太子ヴェロージオは婚約者の公爵令嬢グリシアにそう願った。
獣人の血が交じるこの国で、番というものの存在の大きさは誰しも理解している。
だから、グリシアも頷いた。
「はい。わかりました。お互いどちらかが番と出会えたら円満に婚約解消をしましょう!」
グリシアに答えに満足したはずなのだが、ヴェロージオの心に沸き上がる感情。
こちらの希望を受け入れられたはずのに…、何故か、もやっとした気持ちになった。
【完結】愛も信頼も壊れて消えた
miniko
恋愛
「悪女だって噂はどうやら本当だったようね」
王女殿下は私の婚約者の腕にベッタリと絡み付き、嘲笑を浮かべながら私を貶めた。
無表情で吊り目がちな私は、子供の頃から他人に誤解される事が多かった。
だからと言って、悪女呼ばわりされる筋合いなどないのだが・・・。
婚約者は私を庇う事も、王女殿下を振り払うこともせず、困った様な顔をしている。
私は彼の事が好きだった。
優しい人だと思っていた。
だけど───。
彼の態度を見ている内に、私の心の奥で何か大切な物が音を立てて壊れた気がした。
※感想欄はネタバレ配慮しておりません。ご注意下さい。
酔って幼馴染とやっちゃいました。すごく気持ち良かったのでそのままなし崩しで付き合います。…ヤンデレ?なにそれ?
下菊みこと
恋愛
酔って幼馴染とやっちゃいました。気付いたら幼馴染の家にいて、気付いたら幼馴染に流されていて、朝起きたら…昨日の気持ち良さが!忘れられない!
…え?手錠?監禁?ジョークだよね?
んん?幼馴染がヤンデレ?なにそれ?まさかー。
小説家になろう様、ムーンライトノベルズ様でも投稿しています。
もう彼女でいいじゃないですか
キムラましゅろう
恋愛
ある日わたしは婚約者に婚約解消を申し出た。
常にわたし以外の女を腕に絡ませている事に耐えられなくなったからだ。
幼い頃からわたしを溺愛する婚約者は婚約解消を絶対に認めないが、わたしの心は限界だった。
だからわたしは行動する。
わたしから婚約者を自由にするために。
わたしが自由を手にするために。
残酷な表現はありませんが、
性的なワードが幾つが出てきます。
苦手な方は回れ右をお願いします。
小説家になろうさんの方では
ifストーリーを投稿しております。
【完結】悪役令嬢エヴァンジェリンは静かに死にたい
小達出みかん
恋愛
私は、悪役令嬢。ヒロインの代わりに死ぬ役どころ。
エヴァンジェリンはそうわきまえて、冷たい婚約者のどんな扱いにも耐え、死ぬ日のためにもくもくとやるべき事をこなしていた。
しかし、ヒロインを虐めたと濡れ衣を着せられ、「やっていません」と初めて婚約者に歯向かったその日から、物語の歯車が狂いだす。
――ヒロインの身代わりに死ぬ予定の悪役令嬢だったのに、愛されキャラにジョブチェンしちゃったみたい(無自覚)でなかなか死ねない! 幸薄令嬢のお話です。
安心してください、ハピエンです――
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる