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幼少期編

26 フラグ

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お母様に叱られるであろう(今は社交なので睨まれる程度)お兄様をほって、私は特に必要もなく歩いていた。
壁の花になるのもいいだろうが、それじゃあ誰かに話しかけられる可能性がある。
しかも、多数で攻められたら逃げられない。
子供の相手も早熟した貴族らしい子供ばかりとはいえ、面倒だし。

ふらふらと、ただ行ったり来たりを繰り返し、私はお父様を見つけた。
話し相手になっているのは豪華な冠を被った、いかにも国王です的なイケメンおじ様。
なにやら話し込んでいるが、仕事のはなしなのだろうか。
こんなところに来てまでご苦労なこって。

私は近寄ることもせず、お父様は無視してまた会場を歩き始めた。

しばらく歩き続けると、なにやらふらりと会場から外に出る少年を見かけた。
銀髪で同い年くらいの男の子の雰囲気は、なにやら異様に引かれるものがあった。

ーーー悲しんでる?

私は引かれるままに、男の子の後をついて庭には降りた。
夜でも香る花は月光に照らされて、美しい庭。
さすが、お城の庭。
私は花を楽しみながら先程の男の子の後を静かに追った。

「……っえぅ、ひぐっ……」
追って来てしばらくして、草むらで男の子の泣き声が聞こえてきた。
なるほど、これだけ広い庭なら森もついているのねなどと思っていた私は、心を改めて男の子を見る。
茂みに身を隠して存在感を消せば、大抵バレない。
存在感を消すのは前世での修行の成果なので、こういうときにしか使いはしないが。

ーーーさて、どうしようか。
このまま放っておくのもアリだし、親切に話を聞いてあげるもよし。
しかし、よく見回りの兵士に捕まらずにここまで来れたなぁと関心した。
私は気配が近くに来るたびに『透明化トランス』を使ったというのに、運のいいやつだ。

「ひぅっ……、……」

男の子の泣き声はだんだんと小さくなっていく。
私の出番必要ないかな、これ。
そう思ってその場から立ち去ろうとすると、サーチレーダーに引っ掛かるものが三、人?
迷ったのはその魔力が、普通の人間と比べて違和感のあるものだったから。
二人は確実に人間じゃないと断言できた。

ーーーこの世界で人間じゃない、人間と似た生物。
それに私は心当たりがあった。
最近、エイブルに教えてもらって本で調べた生物、魔物だ。
彼らは動物に近しいものから、人間に近しいものまでいろいろと種類がある。
それらの多くが人と名前がつきながら、人間ではないとされているものたち、魔族であるとされ、人間からはイミ嫌われているらしい。

とにかく、喧嘩っ早いものたちが多く、人間を恨んでいることもあることから、出会ったら戦闘になる場合が多い。
所謂、危険生物だとか。

私は前世での敵たちを思い出した。
あれらもそうだった、でも、中には話し合いで解決できたこともあった。
彼らはちゃんと頭がいい。
人間並みに考えて、学ぶことができて、共存もできる。
比較的戦闘を避けていた魚人や獣人とは実際共存して一緒に働いていたしね。

そんなわけで、目の前まで差し迫る魔族たちともどうにかして話し合えないだろうかと思った。
が。

「う、わぁぁぁーーー!ま、魔族……、誰か!誰かぁ助けてぇーーー!」

少年が怯えて騒ぎ出してしまった。
相手は真っ黒フードを被った私より少し小さな魔族。
奥から後二人来る。
しかも、場所を見失っていたみたいなのに、銀髪の男の子のせいで、こちらに真っ直ぐ向かってきているみたいだ。
そちらはかなりの殺気付きなので、戦闘になることだろう。

一方、目の前の小さな魔族は殺気はなく、オドオドとしていた。

これ、あれか。
やっぱ、人間が勝手に魔族への固定概念を作っているに違いない。
ちょっとした溝を付け込まれて、今もなおそういう風になっているのだろう。
まあ、目の前の魔族が異質なだけかもしれないが。
身長は人間的に子供なのだし、世の中の闇に当てられていない、純粋な子なのかもしれない。

間もなく、他の二人が到着した。
「めhどjるろkをqへげ?」
「hうぃqねへう……」
「jそqじぇうrltbげ!!!」

そして、訳のわからない外国語。
よく聞いてみると妖精たちが話す言語に似ている気がした。

それなら、と。
私はまた滅茶苦茶なことをしてみた。
翻訳ディサイフル

前世で一回使ってみたかった魔法トップテンに入る、解読魔法だ。
対応は全言語。
我ながら随分ファンタジーな魔法だと思う。

先程の会話、翻訳したらこうだ。
「ここにいらっしゃったか、探しましたぞ」
「あ、見つかっちゃった……」
「それよりも、この人間が先程の悲鳴を?始末しましょう!」
というもの。

やべぇ、銀髪の子ピンチじゃん。

「ま、待って、ゲルウブ」
「待ちませぬ」
小さい魔族は大きな角の生えた牛のような魔族を止めようとするが聞き入れられなかった。
大分、興奮しているようだ。
牛の魔族は背中のバカでかい斧を手に持ち、銀髪の子に切りかかる。
それを見たら、体は思考よりも速く動いてくれた。

『シールド』

なるべく短時間でできる防御魔法の中でも最高に固くする。
それは難なく牛の魔族の斧を弾いた

「なっ……!!」
それを見たもう一人の魔族は的確に攻撃を仕掛けてきた。

『アイススピア!』
氷の槍が無数に私たちを襲う。

『ファイアウォール』
私の魔法が相手の槍を溶かしていった。
もちろん、森のなかなので、シールドの周りに薄く熱が籠るようにしたが。

「なに?!上級魔法だぞっ、人間ごときが……!?」
はい、人間ごときです、カチン。

ちょっと怒った私は反撃することにした。
身体強化フィジカルアップ

魔法でドーピングして、まずは牛の魔族に殴りかかった。
「はっ!?こいつ、魔族の俺に殴りっ…、うわぁっっ!?」
「ゲルウブっ!?」

さらにぃ?
『アイスフィールド』

氷に侵食された土草がもう一人の魔族の足元までたどり着くと同時に魔族が氷に飲み込まれた。
「う、うわっ……!」
大丈夫、ちゃんと死なない程度に暖めてあるから。

目茶苦茶魔法をまた作ってしまった。
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