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登録者突破記念 おまけ
50人お気に入り登録ありがとう お兄様との休日の過ごし方2
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いつも通り、一人で服を脱ぎ着替え、顔を洗う、メイドの手も借りずに公爵令嬢としてはあり得ないらしい私は扉に近づき小さくコンコンとノックした。
「準備が出来ました、にいに。入ってもよろしいですよ」
やはり扉にくっついていたらしい兄は、静かに扉を開けてこちらの様子を窺った。
そして、一通り確認すると私の顔色を見ながら入ってくる。
「………終わったのか」
こころなしかしょんぼりとしているのだが、そんなに妹の着替えが見たかったのだろうか。
ふざけるな、犯罪者一歩手前である。
「とりあえず、朝食の時間までは大人しくしていましょう。皆が混乱します。にいにはここで静かに私と遊びましょう。いいですよね?」
「ああ、もちろんだ。サァラは優しいなぁ。お姫様はなにをして遊びたいのかな?」
このげろ甘な台詞もいつかはちゃんと兄を支えてくれる誰かに言うのだろうか。
正直可哀想………、いややめよう。
「そうですね……、本でも読みましょうか?いえ、ゲームでもしましょうか?」
「ゲーム……、チェスか?」
お兄様はゲームという単語に食いついてきた。
仕方がないだろう、この世界なぜか娯楽がチェスしかない。
子供からしたら少し難しいゲーム、チェスは貴族のボンボンでもなければ手に入れられない高価な品。
もちろんうちは公爵家だからあるにはあるが、それでも父の書斎に一つだけだ。
木で作るという選択肢はないのか、魔法で量産すればいいのにと日々感じている。
「チェスではありません。私が考えた遊びです」
本当は前世の知識だが、言い訳が思い付かないので私が考えたことにしちゃう。
ーーー申し訳ないけどね。
お兄様は興味津々で私の話を聞いている。
「これを使います」
私は机のなかに放置していた小箱を取り出して開けた。
中には何枚もの数字が刻まれている画用紙のカードが入っている。
その一枚をお兄様に渡してみると、面白いものを見るように観察を始めた。
「初めて見るな。これをサラが……、それで、どうやって遊ぶんだ?」
「うーん、とりあえずやってみませんか?」
口頭のみの説明が面倒だった私はジャックを一枚抜いて、カードを切り半分に分けた。
そのの片方を兄に手渡す。
「ババ抜きというゲームです。同じ数のカードが二枚揃うと捨てられます。自分のターンになったら相手の持っているカードを一枚抜いて下さい。そうやってジャック………、ババが手元に残った方が負けです」
兄は私の指示通りに揃ったカードを捨てていく。
そこでふとあることを私に聞いてきた。
「これは、二人でやるにはつまらないのでは?同じ数は四枚ずつあるのだろう?」
私は驚いてお兄様をじっと見た。
まだゲームが始まってすらいないのにそれに気づくのか。
この兄は頭の出来が良いらしい。
「はい、そうです。本来ならば複数人で遊ぶ予定で作ったものです。今日は私とにいにだけなのでつまらないでしょうが……、次はメイドやお父様たちと遊びましょう」
しかし、兄の疑問はまだあるらしく、質問攻めは止まらない。
「うん、それは面白そうだね。しかし、これはサラが作ったのだろう?外出は許したことはないが、そうやって作った?」
「ああ、それなら。魔法ですよ?外出していないし、使用人にも頼んでいません」
「魔法か………」
兄は白い目で遠くを見つめている、どうしたんだろうか。
手を動かしながら会話を進めていると、手元には十枚程度しか残っていなかった。
そうしてやっとゲームが始まった。
抜いては捨てて、抜いては捨てての作業のようなつまらないゲームだ。
「しかし、サァラはすごいなぁ。こんな真新しい娯楽を思い付くなんて」
あっという間にカードは無くなって私の手元だけにジャックが残る。
ちゃっかりしている兄だ。
「実はババ抜き以外にもゲームを考えていまして………聞きますか?」
「聞こう、教えてくれ」
兄はこのおもちゃをお気に召したらしく、私の説明をキラキラした目で興味深そうに聞いた。
「準備が出来ました、にいに。入ってもよろしいですよ」
やはり扉にくっついていたらしい兄は、静かに扉を開けてこちらの様子を窺った。
そして、一通り確認すると私の顔色を見ながら入ってくる。
「………終わったのか」
こころなしかしょんぼりとしているのだが、そんなに妹の着替えが見たかったのだろうか。
ふざけるな、犯罪者一歩手前である。
「とりあえず、朝食の時間までは大人しくしていましょう。皆が混乱します。にいにはここで静かに私と遊びましょう。いいですよね?」
「ああ、もちろんだ。サァラは優しいなぁ。お姫様はなにをして遊びたいのかな?」
このげろ甘な台詞もいつかはちゃんと兄を支えてくれる誰かに言うのだろうか。
正直可哀想………、いややめよう。
「そうですね……、本でも読みましょうか?いえ、ゲームでもしましょうか?」
「ゲーム……、チェスか?」
お兄様はゲームという単語に食いついてきた。
仕方がないだろう、この世界なぜか娯楽がチェスしかない。
子供からしたら少し難しいゲーム、チェスは貴族のボンボンでもなければ手に入れられない高価な品。
もちろんうちは公爵家だからあるにはあるが、それでも父の書斎に一つだけだ。
木で作るという選択肢はないのか、魔法で量産すればいいのにと日々感じている。
「チェスではありません。私が考えた遊びです」
本当は前世の知識だが、言い訳が思い付かないので私が考えたことにしちゃう。
ーーー申し訳ないけどね。
お兄様は興味津々で私の話を聞いている。
「これを使います」
私は机のなかに放置していた小箱を取り出して開けた。
中には何枚もの数字が刻まれている画用紙のカードが入っている。
その一枚をお兄様に渡してみると、面白いものを見るように観察を始めた。
「初めて見るな。これをサラが……、それで、どうやって遊ぶんだ?」
「うーん、とりあえずやってみませんか?」
口頭のみの説明が面倒だった私はジャックを一枚抜いて、カードを切り半分に分けた。
そのの片方を兄に手渡す。
「ババ抜きというゲームです。同じ数のカードが二枚揃うと捨てられます。自分のターンになったら相手の持っているカードを一枚抜いて下さい。そうやってジャック………、ババが手元に残った方が負けです」
兄は私の指示通りに揃ったカードを捨てていく。
そこでふとあることを私に聞いてきた。
「これは、二人でやるにはつまらないのでは?同じ数は四枚ずつあるのだろう?」
私は驚いてお兄様をじっと見た。
まだゲームが始まってすらいないのにそれに気づくのか。
この兄は頭の出来が良いらしい。
「はい、そうです。本来ならば複数人で遊ぶ予定で作ったものです。今日は私とにいにだけなのでつまらないでしょうが……、次はメイドやお父様たちと遊びましょう」
しかし、兄の疑問はまだあるらしく、質問攻めは止まらない。
「うん、それは面白そうだね。しかし、これはサラが作ったのだろう?外出は許したことはないが、そうやって作った?」
「ああ、それなら。魔法ですよ?外出していないし、使用人にも頼んでいません」
「魔法か………」
兄は白い目で遠くを見つめている、どうしたんだろうか。
手を動かしながら会話を進めていると、手元には十枚程度しか残っていなかった。
そうしてやっとゲームが始まった。
抜いては捨てて、抜いては捨てての作業のようなつまらないゲームだ。
「しかし、サァラはすごいなぁ。こんな真新しい娯楽を思い付くなんて」
あっという間にカードは無くなって私の手元だけにジャックが残る。
ちゃっかりしている兄だ。
「実はババ抜き以外にもゲームを考えていまして………聞きますか?」
「聞こう、教えてくれ」
兄はこのおもちゃをお気に召したらしく、私の説明をキラキラした目で興味深そうに聞いた。
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