スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部

文字の大きさ
上 下
110 / 146
3章 7人の婚約者編

勇者リリィの記憶 3

しおりを挟む
~リリィ視点~

「天翔一閃!」

 私は黒い塊を一刀両断する。
 全身の魔力をかき集めた一撃を放った私は力尽き、空中で落下する。

「リリィっ!」

(あぁ。カインが私を呼んでる)

 意識が遠のく中、大好きな人の声が聞こえることに嬉しさを感じる。

「スパイダーネット!」

 落下する私をヨルカが魔法でキャッチしてくれる。

「ありが……と……」
「もう喋らないで!ラティファちゃん!」
「はいっ!聖なる癒し」

 ラティファが魔力をかき集めてスキルを使うが、私の身体を回復することはできず、意識が遠のきそうになる。

「魔力回復薬があればラティファちゃんが治せるのにっ!」
「うぅ……聖なる癒しっ!」

 何度も何度もラティファがスキルを使うが私の体は一向に回復せず、みんなが私の死期を悟る。

「最後に……はぁはぁ……みんなに伝えたいことがあるんだ」
「ぐすっ……うん……」

 私のお願いにヨルカとラティファが地面に倒れて動けないカインを、肩を貸して連れてくる。

「リリィ……」
「皆んな、泣きそうな顔……しないで……」

 と笑顔を浮かべて伝えるが全員の顔は晴れず、ヨルカやラティファは涙を流している。

(本当はみんなを元気づける言葉を伝えたいけど、それ以上に伝えなきゃいけないことがあるんだよね)

 そう思い、私は最後の力を振り絞って口を開く。

「時間がないから……はぁはぁ……さっき起こった出来事を話すね」

 そう前置きした私は先程の出来事を話す。
 魔王を封印しようとしたが、邪神と名乗った男が封印の邪魔をしたこと。
 その結果、数百年後に魔王の封印が解けることを要約して伝える。

「ごめん……ね、魔王を封印しきれなくて……」
「そんなことで謝るな。謝りたいのは俺の方だから。俺が魔王より強ければ良かっただけなんだから」

 そう言うカインは両手を力強く握り込んでおり、悔しさを滲ませる。

「ウチもカインと一緒。もっと力があれば」
「私もです」

 ヨルカやラティファに至っては泣きながら悔しそうな顔をするので、私は3人に向けて1つお願いをする。

「皆んなとの旅はとても楽しかった……笑いの絶えない旅で、人生で1番幸せな時間だった……」

 私は今までの旅を振り返りながら皆んなに語りかける。

「だから最後は笑ってほしいな」

 意識が遠のきそうな中、かろうじて見える3人にお願いをする。

「そうだな。リリィ、俺もお前らとの旅は楽しかった」
「ウチも楽しかった!毎日が楽しくてずっと4人で旅をしたいって思ったくらい!」
「そうですね。私もこの4人での旅は大好きでした。ヨルカさんの言った通り、ずっと旅をしたいと思ったくらいに。だから――」

「「「勇者パーティーに誘ってくれてありがとう」」」

 ヨルカとラティファは涙でグジャグジャになりながら笑い、カインも見惚れてしまうくらいカッコいい笑顔を見せてくれる。

(みんな、勇者パーティーに加わったことを幸せだって思ってたんだ……)

 時々思うことがあった。
 3人とも勇者パーティーに加わったことを後悔しているのではないかと。

(でも3人とも幸せと言ってくれた。私と同じ気持ちだったんだ)

 そのことに嬉しさが込み上げる。

「ありがと…みんな……大好きだよ……」

 そう言って私は力尽きた。



(あれ、ここは……?)

 気がつくと真っ白な世界にいた。
 どこを見ても白一面で自分がどこにいるかも分からない。

「ようやく目覚めたのね」

 すると何処からか声が響き渡ると同時に綺麗な女性が目の前に現れた。
 キラキラと光る金髪を腰まで伸ばし、胸元を大胆に開いた絶世の美女。
 私は現れた瞬間、彼女に見惚れてしまった。

「……貴女は?」
「私?私は神よ」

 大きな胸が“ぷるんっ”と揺れるくらい胸を張って言い切る女性。

「……神様?」
「あ、信じてないわね」

 頭の理解が追いついてないことで疑問系で返答してしまい、神様と名乗る女性が頬を膨らませる。

「い、いえ。少し混乱していただけです。死後の世界ということは理解してますので、神様が現れても信じます」

 人間は死んだ後、神様と会って前世での生き方を評価してもらい、幸せな世界か苦しい世界のどちらかに転生するらしい。
 そうラティファが得意げに言っていた。

「さすが勇者ちゃんね。すぐに信じてくれて嬉しいわ。まぁ信じてくれなかったらピカーっ!て神々しいオーラでも放とうと思ってたけど」

 そもそも何もない空間から何の前触れもなく目の前に現れた時点で只者ではない。

「それで私の前世はどうでしたか?」
「そうね。それを話す前に私から話をさせてほしいの。邪神について」
「邪神……」

 元破壊神と名乗った邪神に邪魔をされ、数百年後に魔王が復活してしまう。

「邪神とは何ですか?元破壊神と名乗ってましたけど……」
「そうね。本題に入る前に邪神の説明をするわ」

 そう前置きした後、神様が話し始める。

「邪神は一言で言うなら神の力を持つ狂人ね」

 おおよそは想像していたが、想像通りの返答が返ってきた。

「勇者が生きていた世界はまだ滅びる時期じゃないの。でも元破壊神は滅ぼそうとした」

 そう言って神様が詳しく説明する。

 元々破壊神は神様からの指示を受けて世界を破壊する神様で、本来なら誰も住んでいない世界や争いによって取り返しのつかないほど醜い世界になった時に破壊神が降臨して世界を滅ぼすらしい。
 だが破壊神は神様からの指示を無視して平和な世界を破壊し始めた。
 今回、私の世界は尋常じゃないほど魔王を強化したようで、本来なら私たち勇者パーティーに滅ぼされ、平和な世界が訪れる予定だったそうだ。

「神様が直接、邪神の行動を止めることはできないのですか?」
「そうしたいのは山々だけど邪神は勇者ちゃんがいた世界に逃げ込んで普通に暮らしているの。だから神の力を使って行動を止める……つまり殺すことはできないわ」

 神々の世界なら直接手を下すことはできるらしいが、何処かの世界に逃げ込まれると直接手を下せないらしい。

「なので幾つかの制約をかけてるわ。例えば『神の力を使って直接攻撃することはできない』などね」
「なるほど。だから邪神は『直接お前たちを殺したいがそれは出来ないよう神に細工されててな』と言ってたんですね」
「えぇ。でも攻撃以外はできるの。鎖で勇者ちゃんの身体を縛ったり、魔王に力を与えたりね」
「そうだったんですね」

 今ので邪神の行動理由は分かった。

「さて、邪神の説明はこれくらいにするわ。本題はここからよ」

 そう言って神様が本題を語り出した。
しおりを挟む
感想 12

あなたにおすすめの小説

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!

ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく  高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。  高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。  しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。  召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。 ※カクヨムでも連載しています

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第三章フェレスト王国エルフ編

最弱引き出しの逆襲 ― クラス転移したのはいいけど裏切られたけど実は最強だった件

ワールド
ファンタジー
俺、晴人は普通の高校生。だけど、ある日突然、クラス全員と一緒に異世界に飛ばされた。 そこで、みんなは凄い能力を手に入れた。炎を操ったり、風を呼んだり。でも、俺だけが"引き出し"なんていう、見た目にも無様な能力を授かった。戦いになんの役にも立たない。当然、俺はクラスの笑い者になった。 だけど、この"引き出し"、実はただの引き出しではなかった。この中に物を入れると、時間が経つにつれて、その物が成長する。最初は、その可能性に気づかなかった。 でも、いつしか、この能力がどれほどの力を秘めているのかを知ることになる。 クラスメイトたちからは裏切られ、孤立無援。でも、俺の"引き出し"が、みんなが見落としていた大きな脅威に立ち向かう唯一の鍵だったんだ。知恵と工夫で困難を乗り越えて、俺は最弱から最強へと変貌する。 工夫次第で幾らでも強くなれる引き出し能力で俺は成りあがっていこう。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います

しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。

処理中です...