上 下
23 / 135
1章 リブロ編

帰還

しおりを挟む
 俺たち2人はダンジョンを出る。

「まさか生きて外に出られるなんて……」

 涙を浮かべながらソラさんが呟く。

「俺も無事に生きて帰れた。ホント、ソラさんを助けることができてよかったよ」
「私、カミトくんが助けてくれる瞬間、本当に死を覚悟してたんだ。でも、カミトくんが颯爽と駆けつけて助けてくれた。その時、私はカミトくんのことがヒーローに見えたんだよ」
「そ、それは大袈裟だ」
「ううん、大袈裟なんかじゃないよ。本当にヒーローに見えたんだ。だって私を助けた時、『俺は君を守るために来たんだ』って言ってくれた。その時のカミトくんはその……えーっと……と、とてもカッコよかったよ」

 若干頬を染め、照れながら言うソラさん。

「そ、そうか。ありがとう」
「い、いえいえ」
「「………」」

 そして2人の間に沈黙が訪れる。

「じゃ、じゃあ換金しに行くか!」
「そ、そうだね!」

 俺の声かけにソラさんが同意し、リブロ支部を目指して歩く。
 しばらく無言で歩いていると、「あ、そういえば聞きたいことがあったんだ」と言ってソラさんが沈黙を破る。

「カミトくんは私がブラックドラゴンと戦ってるのを知ってるような感じがしたんだ。ブラックドラゴンを見ても驚かなかったし、私がピンチなのも知ってるようだった。どうしてなの?」
「あぁ。それは俺のスキルで知ることができたんだ。ソラさんがピンチだったのは偶然知ったんだけどね」
「そうなんだ。ならその偶然に感謝しなきゃね」

 そう思うとあの時、賢者さんに隠し通路のことを詳しく聞いて良かったと思う。

「じゃあ次に俺も質問していいか?」
「うん!何でも聞いていいよ!全部答えるから!」

 そう言われると聞いてはいけないことを聞きたくなるが、俺は煩悩を振り払い質問をする。

「ソラさんは普段、王都で活動してるって言ってたよね?何でリブロに来たの?」
「あ、それは私がある人の護衛を引き受けたからね!王都からリブロまでの道中を!」
「なるほど、それでその人が王都に帰るまでリブロでやることがないからダンジョンに潜ってたと」
「だいたい合ってるけど私はやる事がなくてダンジョンに潜ってたわけじゃないんだ」
「レベル上げとか?」
「ううん、実は私のリーダーが私のせいで探索中に重い病気を患ったから、その治療薬を作るための素材を探してたんだ。見つからなかったけど」

 とても悔しそうな表情で語るソラさん。

 「私のせいで」とソラさんは言ってるため、リーダーが重い病気になったことを後悔してるはず。

(ここまで聞いたからには手助けしたい。何より、これ以上ソラさんの悔しそうな表情を見たくない)

 そう思い、俺はソラさんに話しかける。

「ソラさん。俺も素材探しを手伝っていいか?俺、ソラさんの手助けがしたいんだ」

 俺はソラさんに自分の想いを伝える。

「カミトくんは優しいね。でも、私のお手伝いはしなくていいよ。私が探してる素材はレア素材だから簡単に見つからないの。だから私の手伝いをするとカミトくんの時間を無駄にしてしまう」

 ソラさんは猫の手も借りたいほど人手が欲しいにも関わらず、俺のことを考えて断ってくる。
 そんなソラさんを見て余計助けたいと思った。

「そんなことないぞ!」
「っ!」

 大きな声で否定したため、その声にびっくりしたソラさんが可愛い顔で驚く。

「俺はソラさんを手伝う事が無駄な時間だとは思わない!リーダーを救おうと頑張るソラさんの気持ちを聞いて手伝いたいと思った!それだけじゃダメなのか!?」

 俺は真っ直ぐな瞳でソラさんを見つめ、自分の想いを伝える。
 すると俺の気持ちが伝わったのか、ソラさんが話し始める。

「正直、私1人じゃ見つけることなんかできないと思ってた。だから、カミトくんの申し出はとても嬉しいよ」

 そう言ってソラさんは微笑む。

「カミトくん、私の探してる素材を一緒に探してください!」
「あぁ!俺でよければいつまでも手伝ってやる!」
「ありがと!」

 ソラさんが眩しい笑顔で感謝を伝えてくれる。
 その笑顔に見惚れつつ、俺たちは明日、一緒にダンジョンへ潜ることを約束し、リブロ支部を目指した。



 ソラさんと一緒にリブロ支部に到着する。

「お、おい。あれって王都で活動するA級冒険者のソラちゃんじゃね?」
「やばっ!めっちゃ可愛いっ!」
「なんでリブロに来てんだ?」

 俺たちがリブロ支部に入ると同時に、周りにいた冒険者たちがソラさんを見て驚く。

「ソ、ソラさんって有名人だったんだ」
「ゆ、有名人ってほどではないけど、A級冒険者になれば勝手に広まるからね。冒険者なら大抵の人が私のことを知ってると思うよ」
「な、なるほど」

 他の冒険者のことに興味が一切なかった俺はソラさんを見ても全く分からなかったが。
 そんな会話をしつつ、俺はルーリエさんに話しかける。

「おかえりなさい、カミトくん!それとソラさんも!2人とも『希望の花』は見つかりましたか?」
「はい、見つけてきました!」
「それが見つからなくて……」

 ルーリエさんの質問に俺とソラさんが同時に答える。

「「………え?」」

 そしてお互いの顔を見る。

(ソラさんが探してた素材って『希望の花』かよ!)

 そう叫びたかった。
しおりを挟む
感想 12

あなたにおすすめの小説

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

異世界帰りの底辺配信者のオッサンが、超人気配信者の美女達を助けたら、セレブ美女たちから大国の諜報機関まであらゆる人々から追われることになる話

kaizi
ファンタジー
※しばらくは毎日(17時)更新します。 ※この小説はカクヨム様、小説家になろう様にも掲載しております。 ※カクヨム週間総合ランキング2位、ジャンル別週間ランキング1位獲得 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 異世界帰りのオッサン冒険者。 二見敬三。 彼は異世界で英雄とまで言われた男であるが、数ヶ月前に現実世界に帰還した。 彼が異世界に行っている間に現実世界にも世界中にダンジョンが出現していた。 彼は、現実世界で生きていくために、ダンジョン配信をはじめるも、その配信は見た目が冴えないオッサンということもあり、全くバズらない。 そんなある日、超人気配信者のS級冒険者パーティを助けたことから、彼の生活は一変する。 S級冒険者の美女たちから迫られて、さらには大国の諜報機関まで彼の存在を危険視する始末……。 オッサンが無自覚に世界中を大騒ぎさせる!?

誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!

ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく  高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。  高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。  しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。  召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。 ※カクヨムでも連載しています

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

異世界召喚されたら無能と言われ追い出されました。~この世界は俺にとってイージーモードでした~

WING/空埼 裕@書籍発売中
ファンタジー
 1~8巻好評発売中です!  ※2022年7月12日に本編は完結しました。  ◇ ◇ ◇  ある日突然、クラスまるごと異世界に勇者召喚された高校生、結城晴人。  ステータスを確認したところ、勇者に与えられる特典のギフトどころか、勇者の称号すらも無いことが判明する。  晴人たちを召喚した王女は「無能がいては足手纏いになる」と、彼のことを追い出してしまった。  しかも街を出て早々、王女が差し向けた騎士によって、晴人は殺されかける。  胸を刺され意識を失った彼は、気がつくと神様の前にいた。  そしてギフトを与え忘れたお詫びとして、望むスキルを作れるスキルをはじめとしたチート能力を手に入れるのであった──  ハードモードな異世界生活も、やりすぎなくらいスキルを作って一発逆転イージーモード!?  前代未聞の難易度激甘ファンタジー、開幕!

スマートシステムで異世界革命

小川悟
ファンタジー
/// 毎日19時に投稿する予定です。 /// ★☆★ システム開発の天才!異世界転移して魔法陣構築で生産チート! ★☆★ 新道亘《シンドウアタル》は、自分でも気が付かないうちにボッチ人生を歩み始めていた。 それならボッチ卒業の為に、現実世界のしがらみを全て捨て、新たな人生を歩もうとしたら、異世界女神と事故で現実世界のすべてを捨て、やり直すことになってしまった。 異世界に行くために、新たなスキルを神々と作ったら、とんでもなく生産チートなスキルが出来上がる。 スマフォのような便利なスキルで異世界に生産革命を起こします! 序章(全5話)異世界転移までの神々とのお話しです 第1章(全12話+1話)転生した場所での検証と訓練 第2章(全13話+1話)滞在先の街と出会い 第3章(全44話+4話)遺産活用と結婚 第4章(全17話)ダンジョン探索 第5章(執筆中)公的ギルド? ※第3章以降は少し内容が過激になってきます。 上記はあくまで予定です。 カクヨムでも投稿しています。

【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた

きなこもちこ
ファンタジー
🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました! 「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」 魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。 魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。 信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。 悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。 かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。 ※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。 ※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です

異世界転生してしまったがさすがにこれはおかしい

増月ヒラナ
ファンタジー
不慮の事故により死んだ主人公 神田玲。 目覚めたら見知らぬ光景が広がっていた 3歳になるころ、母に催促されステータスを確認したところ いくらなんでもこれはおかしいだろ!

処理中です...