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1章 リブロ編

ノワール親子によるイジメ

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 俺はたくさんの魔石をバッグに詰め込み、リブロ支部へ帰還する。

「バッグがパンパンになったからゴブリンたちの魔石を捨てることになってしまった。もう少し大きいバッグを買おうかな」

 そんなことを思いつつ、ルーリエさんへ話しかける。

「ルーリエさん!ただ今帰りました!それと換金お願いします!」
「はーい……って!これはオーガの魔石!しかも大量に!どうしたんですか!?」

 ルーリエさんの驚いた声が支部内に響き、支部の中にいた人たちが俺たちの方を向く。

「おい、アイツが持ってる魔石ってオーガじゃね?」
「マジだ。ってことはアイツ1人でオーガを倒してきたってことか?魔石の数からして1体だけ討伐したってわけじゃなさそうだぞ?」
「誰かからもらったんだろ。それを自分の手柄にしてるだけだ」
「でもオーガを倒せる奴なんてこの支部には3人くらいしかいないはずだ。しかもオーガの魔石を譲る人なんて聞いたことねぇよ」

 周囲は俺の持ってきた魔石を見て様々な話をしている。

「えーっと、今日スキルが覚醒してステータスが上昇したので8階層のオーガを倒してきました」

 俺は未だに驚いた顔をしているルーリエさんへ説明する。

「あの方が言ってたことは本当だったんだ……」
「ん?」

 俺の説明を聞いてルーリエさんが何かを呟く。

「なにか言いましたか?」
「あ、いえ。何でもありませんよ」

 ルーリエさんの発言は気になるが、そう言われたので気にしないようにする。

「こほんっ!信じられませんが、私はカミトさんが嘘をつくような人だとは思ってません。だからカミトさんが1人で8階層まで行き、オーガをたくさん討伐したことを信じますよ!」
「ありがとうございます、ルーリエさん」

 3年間スライムしか倒してなかった男が突然オーガの魔石を大量に持ってきたら普通は疑う。
 でもルーリエさんは俺の言うことを信じてくれた。

(ホント、ルーリエさんには頭が上がらないな)

 そんなことを思いつつ、ルーリエさんが換金する様子を見る。

 すると…

「きっとオーガの魔石を持っていた奴を襲って奪ったんだ!」

 ラジハルが支部内に響き渡る声で騒ぎだす。

「スライムしか倒せない奴が1日でオーガを倒すことなんてできるはずがねぇ!きっと誰かから奪い取ったんだ!」

 そして俺に詰め寄ってくる。

「言えよ。誰から奪ったんだ?」
「俺は奪ってなんかいない。実力でオーガを倒してきたんだ」
「はっ!そんな言葉信じられるかよ!お前が俺よりもオーガを倒せるはずがねぇ!」

 ラジハルは俺を睨んで威圧してくるが、引いてしまうと認めたことになってしまうため、1歩も引かずにラジハルを睨む。
 するとラジハルが突然笑顔になる。

「あ、そうだ。お前、今換金したお金を自分の物にしようとしてるだろ?」
「当たり前だ。俺が討伐してゲットした魔石なんだから」
「それは違うな。お前はその魔石を奪ったんだ。だから俺が魔石を奪った奴にお金を渡してやるよ」
「………は?」
「お、ルーリエちゃんの換金も終わったようだな。じゃ、俺がそのお金を渡してくるわ。えーっと、金貨2枚か。結構な額だな」

 そう言って無理やりルーリエさんからお金を取る。

「おいっ!ちょっと待て!」

 俺は無意識のうちに力強くラジハルの左手首を掴む。

「痛っ!」

 軽く掴んだだけでラジハルが痛がる。

「っ!痛ってーな!なんか用か!」
「それは俺の金だ!」
「だからこれはお前のじゃなくてオーガを倒した奴の金だろ?」
「違う!それは俺が……」
「むしろお前は俺に感謝すべきだ。魔石を奪う行為は立派な犯罪だ。それを俺が揉み消してやるんだから感謝くらいしてもいいんじゃないか?」
「だからそれは……」
「ごちゃごちゃうるせぇな!」

 そう言ってラジハルは俺が掴んでいない右手で俺の顔を殴ろうとする。
 しかし、ステータスの上がった俺はラジハルの攻撃が見えているため“パシっ!”とラジハルの拳を左手で掴む。

「!?」

 俺に防がれると思わなかったラジハルが驚いた顔をする。

(ラジハルの拳が普通に見えた。それに左手で拳を防いでも全く痛くない。ラジハルって思ってたより弱くね?)

 俺は疑問に思いラジハルを鑑定する。


*****

名前:ラジハル•ノワール
年齢:18
レベル:361
筋力:1149
器用:1006
耐久:1147
俊敏:1133
魔力:1001
知力:985

スキル:【身体強化 Lv.Max】
    【剣術 Lv.4】

称号:なし

装備:高級な剣(筋力:100上昇)
   高級な服(耐久:100上昇)
   高級な靴(俊敏:100上昇)

*****


(なるほど。身体強化と装備、それと【剣術 Lv.4】のスキルでオーガと戦えてるのか。だが、俺は全ステータスが12,000超えだ。ラジハルの数値が弱く見える)

 俺と比べるとラジハルの数値は弱く感じるが、この支部で2番目に強いと自慢してるだけの数値はあり、冒険者の中では勝ち組と言ってもいい数値だろう。

「チッ!離せよ!」
「嫌だ。金を返してくれるまでは離さない」

 俺はラジハルの拳を掴んだまま睨み合っていると、「そこまでだ!」という声が聞こえてくる。
 声がした方を向くとラジハルの父さんである支部長がいた。

「話は聞かせてもらった。カミト、ラジハルにお金を渡せ」
「はぁ!?なんでですか!?」
「それは君が不正な行為で稼いだお金だからだ」
「違う!俺はホントに自分で……」
「いつまで言ってるんだ。スライムしか倒せない君がオーガを大量に討伐できるわけがないだろ。ラジハルは君の不正を帳消しにしようとしてるんだ。だからラジハルに感謝しながらお金を渡せ」
「ほら、支部長もそう言ってるんだ。はやく俺に金を渡せよ。ちゃんとオーガを狩った奴に渡してやるからさ。まっ、見つからなかったら探した手間代として全額貰うけどな」
「オーガは俺が討伐したんです!だからそれは俺のお金です!」

 俺は一歩も引かずにラジハルに言い切る。

「ふむ。そこまで言うならオーガを倒せる実力があるか確認させてもらおう。そうだな……ウチのラジハルとの決闘はどうだ?オーガを討伐できるラジハルに勝つことができたら認めてやろう」

 顎に手を置き、支部長が提案する。

「お、いいね。俺は問題ないぞ」

 その言葉を聞き、ラジハルが不敵な笑みを浮かべながら同意する。

「カミトはどうする?」

 そう問われたが俺の答えは決まっている。

「もちろんやります!」
「分かった。なら決闘の場となる訓練場に案内しよう。それまで金貨2枚は私が預かる」

 そう言って支部長が歩き出す。

「ニ度と冒険者ができないくらいボコボコにしてやるよ」
「それは無理な話だ。俺はオーガを倒せるほど強くなったからな。俺がオーガを倒せる実力を持ってること、証明してやる」

 こうして急遽、ラジハルとの決闘が決まった。
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