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7章 凛くん争奪戦

浜崎涼菜との撮影 3

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 お寿司を数個食べ、浜崎さんとの課題をクリアする。

「では昼休憩にしましょう。夏目さんと夏目ガール5人はこのままお寿司を食べてください。寧々さんは……」
「あ、寧々の分は俺が払うので、皆んなで一緒にお寿司を食べてもいいですか?」

 急遽、撮影に同行した寧々の分の昼飯代は無いと思ったため、寧々の分は俺が出す。

「分かりました。では1時間ほど休憩にします」

 そう言って川端さんがスタッフのもとへ移動する。
 俺と浜崎さんも皆んなと食べるため、カウンター席からテーブル席へ移動する。

「夏目さんの隣もらいましたっ!」

 そんな可愛いことを言いながら浜崎さんが俺の隣に腰掛ける。
 そのタイミングで寧々と夏目ガール候補4人が現れた。

「ありがとっ!お兄ちゃんっ!」
「遠慮なく食べていいからな」
「うんっ!」

 寧々が満面の笑みで頷く。

「真奈美たちも一緒に……」
「「「「じーっ」」」」
「またその目かよ」

 本日4度目となれば皆んなからの視線に慣れが生まれてくる。
 なぜそのような目を向けるかは分からないが。

「と、とりあえず皆んな座ろうか」
「そうだね。当たり前のように凛くんの隣に座ってる涼菜ちゃんには一言言いたいけど」
「ウチは皆さんが座りやすくなるよう夏目さんの隣に座っただけですよ?」
「なんで凛の隣に座ると私たちが座りやすくなるのよ!」

(同じ女優なんだから仲良くしてぇぇぇ!)

 心の中で叫ぶ。

「ほ、ほら早く座って食べないと1時間なんかあっという間に過ぎるぞ」
「むぅ」

 不服そうな顔をする真奈美たちだが撮影時間に影響を与えるわけにはいかないので、渋々テーブル席に座る。
 その結果、俺の隣に浜崎さんで浜崎さんの隣に寧々が座る。
 そして対面に残りの4人が座る形となった。

 各々が寿司を注文し、寿司が届くまで話しながら待つ。
 ちなみに先程、寿司を食べた俺と浜崎さんも一つづつ注文する。

「凛くん。涼菜ちゃんとのデート楽しかった?」
「だからデートじゃないって」

 じとーっとした目で問いかける真奈美にツッコみを入れた後、感想を告げる。

「デートではないが楽しかったぞ」
「ホントですか!?」

 隣に座る浜崎さんがパーっと笑顔になる。

「あぁ。ここに辿り着くまでいろんな話をしたけど、どれも楽しかったからな」
「ありがとうございますっ!」

 嬉しそうな声で浜崎さんが言う。

「涼菜ちゃんから抱きつかれたからね」
「そうね。しかもその時の凛は鼻の下が伸びまくってたわ」
「私も浜崎さんみたいにつまづけばよかったです」
「そうですね。そうすればもっと夏目様を籠絡できました。私も失敗しましたね」
「…………」

(確かに転びそうになった浜崎さんを助けた後もずっと支えてたので何も言い返せない)

 鼻の下を伸ばしてはいないと思うが、ずっと浜崎さんの密着していたことは事実なので弁明ができない。
 そのため4人からの視線が痛くなり、俺は誤魔化すように寧々を頼る。

「こほんっ。寧々、ティッシュを取ってくれ」
「はーい」

 俺は寧々からティッシュを受け取り、意味もなく口元を拭く。
 そのタイミングで「あ、そうでした!」と浜崎さんが口を開く。

「夏目さん!ウチのことは涼菜と呼んでいいですよ!」
「え?」
「立花さんのことを名前で呼び始めたのでウチだけが仲間外れになってしまいました」

 このメンバーの中で苗字呼びをしているのは浜崎さんだけ。
 確かに1人だけ仲間外れだと思い、浜崎さんの希望通り名前で呼ぶことにする。

「涼菜。これでいいか?」
「はいっ!ウチもこれからは凛さんって呼びますね!」

 そう言って隣に座る涼菜が可愛い笑顔を向ける。

「っ!あ、あぁ。好きに呼んでいいぞ」

 涼菜の顔を直視できなかった俺は、視線を逸らしながら肯定する。

「「「「じーっ」」」」
「な、なんだよ?」
「ううん。何でもないよ。私たちの目の前でイチャイチャしないでほしいなーっとか一ミリも思ってないよ」

 そう言う真奈美だが“じとーっ”とした視線は変わらない。
 他の3人からも真奈美と同様の視線を向けられるので、俺は誤魔化すように寧々を頼る。

「……寧々。ティッシュを取ってくれ」
「はーい」

 素直にティッシュをくれた寧々に感謝しながら、意味もなく口元を拭く。
 そのタイミングで板前さんが注文した寿司を持ってきた。

「さすが凛さんだ。6人の美女とイチャイチャするとは」
「だからイチャイチャはしてませんよ!」

 しかも6人のうち1人は妹の寧々だし。

「ははっ。もしかしたらこの6人の中から凛さんのお嫁さんが現れるかもしれないな」
「「「「「ピクっ!」」」」」

 その言葉に寧々を除く5人が反応する。

「まぁゆっくりしてくれ」

 側から見るのがとても面白いのか、注文した寿司を置いた板前さんが笑いながら立ち去る。

「凛くんのお嫁さん……っ!」

 “バチバチっ!”という音が聞こえてきそうなほど、5人の間で火花が散る。

「お、おい。寿司が届いたから皆んな食べるぞ……」

 と言っても聞く耳を持たない5人。

「………寧々。ティッシュを取ってくれ」
「もう自分で取ってよ!」
「………はい」

 寧々からも見放された俺は、1人寂しく意味もなく口元を拭いた。
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