上 下
148 / 163
7章 凛くん争奪戦

立花香帆との撮影 3

しおりを挟む
 親切なお婆ちゃんのご厚意に甘え、案内してもらう。
 その間、俺と立花さんはお婆ちゃんとの会話に花を咲かせた。

「昔はこの辺りも子供がたくさんいて賑わってたの。でも最近は都会化が進み、この辺りは観光客で賑わうようになった。それに伴い住む人は減り、廃校になったわ。最近は少子化も進んでるからね」

 俺や立花さんの母校は今も健在なので、お婆ちゃんの気持ちを完全に理解はできないが、寂しそうに語るお婆ちゃんを見て心境は理解できる。

「そういえば凛さんと香帆さんは今何歳なの?」
「私は19歳です」
「俺は18歳です。来月には19歳になりますが」

 俺の誕生日は10月。
 今が9月上旬なので、もうすぐで俺は19歳となる。

「ならもうすぐで結婚を考える時期ね。最近の若い人は皆んな結婚が遅いけど、可能ならはやく結婚した方がいいと私は思うよ。凛さんは気になる人とかいないの?」

 “ピクっ”

 何故か立花さんが反応する。
 そのことを不思議に思いつつも俺は素直に答える。

「気になる人ですか?今のところいませんね」
「そ、そうなんだ……」

 立花さんがボソッと何かを呟く。

「あら。カッコいいから女の子なんて選び放題なのに」
「選び放題というわけではありませんよ。容姿を褒めてくれる人はいますが、俺に告白する人なんていませんからね」

 サイン会の時、小学生の女の子から求婚されたことは黙っておく。

「世の女の子たちは勿体ないことしてるねぇ。なら私の孫娘はどう?今、高校生だけどすごく良い子で家事もできるわ。それに香帆さんに負けないくらい可愛い子よ?」

 “ピクっ!”

 またしても立花さんが反応するが、俺はスルーしてお婆ちゃんに返答する。

「お会いしたことはありませんが、立花さんのように可愛い子となれば、かなりの美少女だと思います」
「わ、私のように可愛い……っ!」

 何故か立花さんが顔を赤くしているが、今は立花さんに反応してる場合でないので再びスルーする。

「それにお婆ちゃんのお墨付きがあるくらい良い子で家事上手となればきっと素晴らしい奥さんになれると思います。ですが俺よりも良い男は山ほどいます。なので申し訳ありませんが断らせていただきます」

 俺は頭を下げて断らせてもらう。

「そこまで謝らなくてもいいよ。出会ったこともない孫娘を薦めた私の方が間違ってるのだから。それに……」

 そこまで言って立花さんを見るお婆ちゃん。
 そこには安堵の表情をした立花さんがいた。

「ふふっ」

 そんな立花さんを見て笑みを浮かべたお婆ちゃんが俺の背中を軽く叩く。

「凛さんには私の孫娘より相応しい女性がいるみたいだからね」
「……?そ、そうですか?」
「えぇ。ね、香帆さん」
「わっ、私!?」

 急に話を振られ、立花さんが慌て出す。

「えぇ。香帆さんもそう思うでしょ?」

 そう言って何故か立花さんへウインクをする。
 70代とは思えないほど綺麗なウインクを受けた立花さんが何かを感じ取る。

「え、えーっと……そっ、そうですね。貴女の孫娘とはお会いしたことがないのでは相応しくないとは言えませんが、家事ができて家庭的な女の子はたくさんいます。例えばその……わ、私とか?」
「……え?立花さん?」
「な、なによ。私だって家事くらいできるわ。料理なんて趣味って言えるくらい得意だし。それに……さ、さっき私のこと可愛いって褒めてくれたから、凛から可愛いって思われてるみたいだし……」

 段々と顔を赤くしながら立花さんが言う。
 一瞬、立花さんが何を言ってるか分からなかったが、先ほどの発言を振り返り、俺が立花さんの容姿を褒めていたことを理解する。
 その発言に満足したのか、お婆ちゃんが嬉しそうな顔をして口を開く。

「だから凛さんに孫娘を紹介するのは、孫娘が香帆さん以上の家事スキルと容姿を兼ね備えたらにするよ」
「わ、分かりました……」
「紹介した時は検討してね」

 そう言ってお婆ちゃんが俺たちの前を歩く。

「やっぱり恋愛は面白いねぇ。ふふっ」

 とか呟きながら。

「意外と言ったら悪いが、立花さんって料理が得意だったんだな」
「そ、そうよ。何か文句でもある?」
「いや文句なんかないよ。ただ立花さんは良いお嫁さんになれると思っただけで」
「おっ、お嫁さん……っ!」
「あぁ。家事ができて料理が得意。しかも可愛いとなれば良いお嫁さんになれるよ」

 改めて容姿を褒めることに恥ずかしさを感じたが、先程伝えてしまったため、俺は恥ずかし気なく口にする。

「~~~っ!か、勘違いしないでよね!べ、別に凛のお嫁さんになるために料理の勉強をしてるわけじゃないんだから!凛に美味しい手料理を食べさせるために頑張ってるわけじゃないんだからね!」

 そう言ってお婆ちゃんの後を追う立花さん。

「………」

(『俺と結婚するために料理の勉強してるの?』とか一言も言ってないんだが……)

「何故か立花さんに振られた気分だ。プロポーズなんかしてないのに」

 そう思い、気分が沈む俺だった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

[完結済み]男女比1対99の貞操観念が逆転した世界での日常が狂いまくっている件

森 拓也
キャラ文芸
俺、緒方 悟(おがた さとる)は意識を取り戻したら男女比1対99の貞操観念が逆転した世界にいた。そこでは男が稀少であり、何よりも尊重されていて、俺も例外ではなかった。 学校の中も、男子生徒が数人しかいないからまるで雰囲気が違う。廊下を歩いてても、女子たちの声だけが聞こえてくる。まるで別の世界みたいに。 そんな中でも俺の周りには優しいな女子たちがたくさんいる。特に、幼馴染の美羽はずっと俺のことを気にかけてくれているみたいで……

恐喝されている女の子を助けたら学校で有名な学園三大姫の一人でした

恋狸
青春
 特殊な家系にある俺、こと狭山渚《さやまなぎさ》はある日、黒服の男に恐喝されていた白海花《しらみはな》を助ける。 しかし、白海は学園三大姫と呼ばれる有名美少女だった!?  さらには他の学園三大姫とも仲良くなり……?  主人公とヒロイン達が織り成すラブコメディ!  小説家になろう、カクヨムでも投稿しています。  カクヨムにて、月間3位

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

こども病院の日常

moa
キャラ文芸
ここの病院は、こども病院です。 18歳以下の子供が通う病院、 診療科はたくさんあります。 内科、外科、耳鼻科、歯科、皮膚科etc… ただただ医者目線で色々な病気を治療していくだけの小説です。 恋愛要素などは一切ありません。 密着病院24時!的な感じです。 人物像などは表記していない為、読者様のご想像にお任せします。 ※泣く表現、痛い表現など嫌いな方は読むのをお控えください。 歯科以外の医療知識はそこまで詳しくないのですみませんがご了承ください。

男がほとんどいない世界に転生したんですけど…………どうすればいいですか?

かえるの歌🐸
恋愛
部活帰りに事故で死んでしまった主人公。 主人公は神様に転生させてもらうことになった。そして転生してみたらなんとそこは男が1度は想像したことがあるだろう圧倒的ハーレムな世界だった。 ここでの男女比は狂っている。 そんなおかしな世界で主人公は部活のやりすぎでしていなかった青春をこの世界でしていこうと決意する。次々に現れるヒロイン達や怪しい人、頭のおかしい人など色んな人達に主人公は振り回させながらも純粋に恋を楽しんだり、学校生活を楽しんでいく。 この話はその転生した世界で主人公がどう生きていくかのお話です。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ この作品はカクヨムや小説家になろうで連載している物の改訂版です。 投稿は書き終わったらすぐに投稿するので不定期です。 必ず1週間に1回は投稿したいとは思ってはいます。 1話約3000文字以上くらいで書いています。 誤字脱字や表現が子供っぽいことが多々あると思います。それでも良ければ読んでくださるとありがたいです。

処理中です...