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6章 ドラマ撮影編

喫茶店へ 2

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~愛甲真奈美視点~

 凛くんがお手洗いに行ってる間、私は浜崎さんに話しかける。

「ちょっと涼菜ちゃん!凛くんとくっ付きすぎだよ!」
「そうね。羨ましい……とは全く思わないけど、撮影現場でイチャイチャするのは辞めた方がいいわよ」

 機会さえあれば凛くんとイチャイチャしている私たちを全力で棚に上げて、涼菜ちゃんに注意する。

「うぅ……すみません。憧れだった夏目さんと出会えたのでつい積極的になってしまいました」

 自分の行為が撮影現場に相応しくないことは理解していたようで素直に認める。

(良心が痛むよぉ!)

 涼菜ちゃんに言った言葉は自分たちにも言えることなので心が痛い。

「あ、いや……ほどほどにした方がいいよって注意しただけだから……」
「え、えぇ。全くしたらダメというわけではないわ」

 そのため、先ほどの発言を一瞬で撤回する私たち。

「やっぱり涼菜ちゃんも凛くんのことが好きなんだよね?」
「そうですね。今日初めてお会いしましたが、想像以上にカッコよかったです。それに共演中はウチの演技力が足りずに何度も撮り直しましたが、全く嫌な顔せず付き合ってくれました」

 自分の演技で撮り直しが発生した場合、共演者の方には申し訳ない気持ちを抱いてしまう。
 だが凛くんは一切態度に出さず、優しく声をかけてサポートしてくれた。

 それだけで涼菜ちゃんの心は救われたのだろう。

(しかも涼菜ちゃんは今日が女優として初めての撮影だからね。そんなことをされたら凛くんに惚れちゃうのも仕方ないよ)

 初めての撮影ということで緊張していた涼菜ちゃんは凛くんに色々とサポートしてもらった。
 その行動全てが涼菜ちゃんの好感度アップに繋がったらしい。

「今日の演技は森野監督から褒められたんです。夏目さんが共演者でなければ絶対、褒められることなんてありませんでした。それくらい夏目さんはウチのことを助けてくれました」

 つまり要約すると、凛くんに優しくされて恋に堕ちちゃったらしい。

(凛くんの天然女たらし!どれだけライバルを増やせば気が済むの!?)

 そう思ってるのは私だけではないようで、隣に座っている香帆ちゃんからは謎の圧が発せられていた。

「夏目さんはカッコいいのでライバルが多いことは理解しています。なので何度も夏目さんと交流し、積極的にアプローチしなければいけませんが、今のところウチが夏目さんと共演する予定はありません」
「だから少しでも涼菜ちゃんのことを覚えてもらうよう、積極的にアプローチしてたんだね」

 私の言葉に涼菜ちゃんが頷く。

(ホント、凛くんは女の子を堕とす天才だよ。だってこれで私を含め5人目だよ?さすがに多すぎ……いや、凛くんのルックスとスペックで5人しかいないのは少ない方じゃないかな?)

 むしろ今まで恋に堕とした人が5人しかいないことが救いなのかもしれない。

(……いや、それは軽率な考えだね。だってこれからもっと増えるもん。私を含め雨宮さんや小鳥遊さん、それに香帆ちゃんと、共演した人全員をメロメロにしてるからね)

 共演した女の子を100%の確率でメロメロにしているという事実に頭を抱えたくなる。
 しかも5人目というのは私が把握している人数だ。
 絶対、私の知らない内に惚れさせてる人がいる。

「というわけで今日のウチは夏目さんにウチのことを覚えてもらうことが目標です!こればかりは大先輩であるお2人にも譲れません!可能であれば今すぐ帰っていただきたいくらいです!」

 その言葉に「「ピクっ!」」と反応する。

「へぇ、涼菜ちゃんは私たちに向けて帰ってほしいとか言えるんだ」
「ちょっと凛と仲良くなったくらいで調子に乗ってるんじゃない?」

 “ゴゴゴーーッ!”という効果音が付きそうなほど、私たちはバチバチに睨み合う。
 その後、凛くんが戻ってくるまで喫茶店であることを忘れるくらい私たちは盛り上がった。
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