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6章 ドラマ撮影編

『生徒会長は告らせたい』の撮影 11

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 真奈美と立花さんが監督に呼ばれる。

 今からの撮影は黒川くんが後輩の女の子から告白されている場面を目撃した二宮さんと藤崎さんが、作戦会議を行うシーン。

「どんな演技を披露されるのでしょうか?」

 女優としてデビューしたばかりの浜崎さんが俺に話しかける。

「浜崎さんはどんな演技を披露すると思う?」
「え、ウチですか?」
「あぁ。役者というのは、いつ如何なるシーンでも想像することを忘れてはいけない」
「想像することを忘れてはいけない……ですか?」
「あぁ。俺の師匠が口酸っぱく言ってたんだ。だから浜崎さんは真奈美や立花さんの演技を何も考えず見るのでなく、自分ならどう演技するかを考えながら見て。そうすることで新たな発見が生まれるから」
「分かりました!」

 そう返事をして浜崎さんが頭を悩ませる。

 その様子を隣で見守っていると、真奈美と立花さんの演技が始まった。



『会長、告白されてましたね』
『そうね。頭も良くて顔もカッコいいから告白されて当然だと思うわ』

 先ほど、俺が告白されたところを目撃した真奈美と立花さんが目撃した場所である体育館裏で話し始める。

『会長が告白を断ってよかったわね』
『そうですね。まぁ、私という美少女が近くにいながら他の女の子と付き合うなんてあり得ないとは思ってましたので、告白を断ることは分かってましたよ』
『その割にはホッとしてそうね』
『そ、そんなことありません』

 立花さんの指摘に若干頬を染め、そっぽを向きながら返答する真奈美。

『そ、それより……先程、会長は好きな人がいるって呟いてました!これ、絶対私のことですよね!?』
『落ち着いて、二宮さん。嬉しすぎていつものクールキャラが崩壊してるわよ』

 突然、キャラ崩壊したかのようなテンションで発言する真奈美に立花さんが呆れながら返答する。

――この女、先ほど黒川が呟いた『本当にごめん。俺には好きな人がいるんだ。生徒会室で駄弁るだけで想いを伝えることはできてないけど』という言葉を聞き、黒川の好きな人を自分だと思い込み、舞い上がってる!そのため、普段のクールキャラが崩壊する!

「さすが愛甲さんです。クールな二宮さんと嬉しさのあまり舞い上がってる二宮さんを使い分けてますね」

 隣で2人の演技を見ている浜崎さんが呟く。

 今回、真奈美が演じる二宮さんはクールなお嬢様なので普段の真奈美からは想像できないようなクール美少女を演じていたが、今は嬉しさのあまりクールなキャラが完全に崩壊しており、キラキラした目をしている。

「そうだな。クールな二宮さんとのギャップに違和感を感じるかと思ったが全く感じさせない。さすが真奈美だ」

 藤崎さんは二宮さんの親友で二宮さんが唯一フランクに話すことができる女の子。

 そのため、このようにクールなキャラを作る必要はない。

『私は長い時間、会長へアプローチをしてきました!やはり私の攻めは会長に効いていたようです!』
『肝心の告白には至ってないけどね』

 立花さんがボソッと呟くが、そんな言葉など聞こえないかのように真奈美が振る舞う。

『会長からの告白までもうひと押しです!この調子でアプローチを続ければきっと会長と付き合うことができます!』
『……はぁ。そんなに会長と付き合いたいのなら二宮さんから告白すればいいのに。相思相愛なんだから絶対付き合えるわよ』

 ため息をつき、若干呆れながら立花さんが呟く。

『た、確かに会長は私のことが大好きなので告白したら付き合えると思いますが100%付き合えるわけではありません。私の告白の仕方が悪く、幻滅して断られる可能性もありますから』
『どんな告白をすれば幻滅されるのよ……』

 頭がいいのか悪いのか分からない真奈美の発言に立花さんが頭を抱える。

「立花さんの演技もすごいです。二宮さんに対して思っている感情を上手く表現してます。ヘタレ過ぎて告白しない二宮さんに呆れてる藤崎さんを完璧に演じ切ってますね」
「あぁ。さすが人気女優だ」

 浜崎さんの発言に俺も同意し、続きを見学する。

『で、会長から告白してもらうために具体的にどんなアプローチをするのよ?』
『それはもちろん身体的接触です!』

 真奈美が大きな胸を“ぷるんっ!”と揺らしながら胸を張る。

 二宮さんは巨乳キャラということもあり、巨乳である真奈美はパッドで胸を盛る必要がない。

 その辺りも真奈美がキャスティングされた理由の一つだろう。

『ふーん、身体的接触ねぇ』

 そんな真奈美を、程よい膨らみを持つ立花さんがジト目で見る。

『それ、以前も聞いたことがあるのだけど?』
『うっ……ぜ、前回は恥ずかしくて会長にその……む、胸を押し当てる……なんてできなかっただけです!今回は以前の私とは違いますから大丈夫です!』
『その自信はどこから来るのよ……』

 またしても立花さんが「はぁ…」とため息をつく。

 そんな立花さんを他所に真奈美が『まずは会長の腕に抱きついても問題ないシチュエーションを作る必要がありますね!』等々、1人で騒いでる。

『あ、そういえば二宮さん。気づいてるとは思うけど、会長の好きな人って私かもしれないわよ?』
『……へ?』

 立花さんの発言に真奈美の動きが止まる。

――藤崎の言う通り、会長は『生徒会室で駄弁るだけで想いを伝えることはできてないけど』と呟いていた。そのため生徒会メンバーである藤崎のことが好きという可能性も存在する!

『会長って生徒会メンバーの誰かが好きらしいね。ってなると私が告白したらOKしてくれるかもしれないわね』
『っ!そ、それはダメです!っというより、藤崎さんは会長のことが好きじゃないと言ってませんでしたか!?』
『えぇ、会長のことは好きじゃないわ。でも、ヘタレなこと以外は優良物件だと思ってるわ。イケメンで頭も良い。そして何より優しい所とかね。だから付き合ってる内に会長のことが好きになる可能性もあるわ』
『え、えーっと……つまり……』
『会長に告白しようかなー』
『~~っ!そ、それはダメです!好きでもないのに告白なんて絶対ダメです!少なくとも私以上に会長のことが好きになってもらわないと!』
『だったら早く告白しなさいよ』
『………はい』

――と返事をしたものの、結局二宮は黒川に告白できず、藤崎が頭を抱えるだけとなった。



「カットぉぉーっ!」

 そのタイミングで監督の声が響き渡った。
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