113 / 159
6章 ドラマ撮影編
『生徒会長は告らせたい』の撮影 9
しおりを挟む
内山社長との話が終わり、矢上さんの車で撮影現場に向かう。
「いよいよ明日が1話の放送日ですね」
「そうですね。1ヶ月があっという間に経ちましたよ」
6月初めから撮影していた『生徒会長は告らせたい』が、ついに明日放送スタートとなる。
「前評判はとてもいいみたいですね」
「寧々も言ってました。7月から放送されるドラマの中では1番注目度が高いと」
「漫画が原作のドラマはヒットしにくいという話は良く聞きますが、今回はヒットしそうな予感がしますね」
「監督がこの業界で有名な森野さんに加え、真奈美や立花さんといった凄腕女優が出演してます。そりゃ注目されますよ」
「それに凛さんの俳優としての復帰作でもありますからね!」
そういった理由で放送開始前にも関わらず、かなり注目されている。
そんな会話をしているといつの間にか撮影現場に到着していた。
俺はいつも通り監督やスタッフたちに挨拶をしながら撮影現場に入る。
「今日は原作第2巻に掲載されている黒川くんが告白される話を撮影するぞ」
とのことで監督が俺たちに指示を出す。
この話は黒川くんが1つ年下の女の子から告白され、その現場を目撃した二宮さんと藤崎さんが、黒川くん攻略に向け作戦会議を行う話だ。
俺は監督が指示を出している間、1人の女の子に話しかける。
「おはよ、浜崎さん。今日はよろしくね」
「は、はいっ!お、おはようございます!きょ、今日はよろしくお願いします!」
俺の挨拶にガチガチに緊張しながら返事をする浜崎さん。
この娘は浜崎涼菜さん。
女優としての実績がなく、この作品では俺に告白するだけの役となっており、浜崎さんにとってはデビュー作となる。
実年齢は俺の2つ年下の高校2年生で金髪をポニーテールにしており、真奈美や立花さんに負けず劣らず可愛らしい容姿をしている。
「緊張してるな。もっとリラックスした方がいいよ」
「そ、そうなのですが……」
初めての演技ということで緊張しまくっており、なかなかリラックスできないようだ。
「うーん……あ、そうだ!緊張してる時は手のひらに『人』という字を3回書いて飲み込むと緊張がほぐれるらしいよ」
「そ、そうですね!やってみます!」
ぎこちない動きで浜崎さんが手のひらに『人』という字を3回書いて飲み込む。
「ごくっ」
「どうかな?少しはほぐれた?」
「……ダメです。まだまだ人を飲み込まないとダメみたいですね」
「人喰い狼みたいなこと言ってるな」
そんな感じでガチガチに緊張している浜崎さんの側で、少しでも緊張がほぐれるよう話しかけること数分。
「よしっ、準備ができたから撮影を始めるぞ」
との言葉が聞こえてきた俺たちは森野監督から指示をもらい配置につく。
そして監督が「よーい……アクションっ!」との声を発する。
そのタイミングで体育館裏に呼び出された黒川くんが告白されるシーンの撮影が始まった。
『あの……お忙しい中、来ていただきありがとうございます』
弱弱しい声で浜崎さんが話し始める。
『それは構わないけど……何か用か?』
『え、えーっと……わ、私、黒川会長のことが好きです!付き合ってくださいっ!』
顔を赤くして浜崎さんが告白する。
浜崎さんの仕草や表情から精一杯勇気を振り絞った告白だということが伝わってくる。
(演技ではなく本気で俺に告白したんじゃないかと勘違いしそうになるくらい良い演技だ)
浜崎さんの迫真の演技に内心驚きつつ、俺はセリフを言う。
『……ごめん。俺は君と付き合うことができない』
『っ!』
俺の返答に浜崎さんが泣きそうな表情となる。
『そう……ですよね。ぐすんっ。お時間いただきありがとうございました』
浜崎さんが一筋の涙を溢しながら俺の前から走り去る。
『本当にごめん。俺には好きな人がいるんだ。生徒会室で駄弁るだけで想いを伝えることはできてないけど』
走り去る背中を見つめながら誰も聞かれていないと思い、申し訳なさそうに呟いた。
「カットぉぉーっ!」
そのタイミングで森野監督の声が響き渡る。
「浜崎さん」
「は、はいっ!」
「黒川くんへ告白する時だけど……」
そう言って監督が浜崎さんへ要望を出す。
「この点に注意してもう一度やってくれ」
「はいっ!」
元気よく返事をした浜崎さんと共に、俺は撮影の撮り直しを行った。
「いよいよ明日が1話の放送日ですね」
「そうですね。1ヶ月があっという間に経ちましたよ」
6月初めから撮影していた『生徒会長は告らせたい』が、ついに明日放送スタートとなる。
「前評判はとてもいいみたいですね」
「寧々も言ってました。7月から放送されるドラマの中では1番注目度が高いと」
「漫画が原作のドラマはヒットしにくいという話は良く聞きますが、今回はヒットしそうな予感がしますね」
「監督がこの業界で有名な森野さんに加え、真奈美や立花さんといった凄腕女優が出演してます。そりゃ注目されますよ」
「それに凛さんの俳優としての復帰作でもありますからね!」
そういった理由で放送開始前にも関わらず、かなり注目されている。
そんな会話をしているといつの間にか撮影現場に到着していた。
俺はいつも通り監督やスタッフたちに挨拶をしながら撮影現場に入る。
「今日は原作第2巻に掲載されている黒川くんが告白される話を撮影するぞ」
とのことで監督が俺たちに指示を出す。
この話は黒川くんが1つ年下の女の子から告白され、その現場を目撃した二宮さんと藤崎さんが、黒川くん攻略に向け作戦会議を行う話だ。
俺は監督が指示を出している間、1人の女の子に話しかける。
「おはよ、浜崎さん。今日はよろしくね」
「は、はいっ!お、おはようございます!きょ、今日はよろしくお願いします!」
俺の挨拶にガチガチに緊張しながら返事をする浜崎さん。
この娘は浜崎涼菜さん。
女優としての実績がなく、この作品では俺に告白するだけの役となっており、浜崎さんにとってはデビュー作となる。
実年齢は俺の2つ年下の高校2年生で金髪をポニーテールにしており、真奈美や立花さんに負けず劣らず可愛らしい容姿をしている。
「緊張してるな。もっとリラックスした方がいいよ」
「そ、そうなのですが……」
初めての演技ということで緊張しまくっており、なかなかリラックスできないようだ。
「うーん……あ、そうだ!緊張してる時は手のひらに『人』という字を3回書いて飲み込むと緊張がほぐれるらしいよ」
「そ、そうですね!やってみます!」
ぎこちない動きで浜崎さんが手のひらに『人』という字を3回書いて飲み込む。
「ごくっ」
「どうかな?少しはほぐれた?」
「……ダメです。まだまだ人を飲み込まないとダメみたいですね」
「人喰い狼みたいなこと言ってるな」
そんな感じでガチガチに緊張している浜崎さんの側で、少しでも緊張がほぐれるよう話しかけること数分。
「よしっ、準備ができたから撮影を始めるぞ」
との言葉が聞こえてきた俺たちは森野監督から指示をもらい配置につく。
そして監督が「よーい……アクションっ!」との声を発する。
そのタイミングで体育館裏に呼び出された黒川くんが告白されるシーンの撮影が始まった。
『あの……お忙しい中、来ていただきありがとうございます』
弱弱しい声で浜崎さんが話し始める。
『それは構わないけど……何か用か?』
『え、えーっと……わ、私、黒川会長のことが好きです!付き合ってくださいっ!』
顔を赤くして浜崎さんが告白する。
浜崎さんの仕草や表情から精一杯勇気を振り絞った告白だということが伝わってくる。
(演技ではなく本気で俺に告白したんじゃないかと勘違いしそうになるくらい良い演技だ)
浜崎さんの迫真の演技に内心驚きつつ、俺はセリフを言う。
『……ごめん。俺は君と付き合うことができない』
『っ!』
俺の返答に浜崎さんが泣きそうな表情となる。
『そう……ですよね。ぐすんっ。お時間いただきありがとうございました』
浜崎さんが一筋の涙を溢しながら俺の前から走り去る。
『本当にごめん。俺には好きな人がいるんだ。生徒会室で駄弁るだけで想いを伝えることはできてないけど』
走り去る背中を見つめながら誰も聞かれていないと思い、申し訳なさそうに呟いた。
「カットぉぉーっ!」
そのタイミングで森野監督の声が響き渡る。
「浜崎さん」
「は、はいっ!」
「黒川くんへ告白する時だけど……」
そう言って監督が浜崎さんへ要望を出す。
「この点に注意してもう一度やってくれ」
「はいっ!」
元気よく返事をした浜崎さんと共に、俺は撮影の撮り直しを行った。
15
お気に入りに追加
1,261
あなたにおすすめの小説
[完結済み]男女比1対99の貞操観念が逆転した世界での日常が狂いまくっている件
森 拓也
キャラ文芸
俺、緒方 悟(おがた さとる)は意識を取り戻したら男女比1対99の貞操観念が逆転した世界にいた。そこでは男が稀少であり、何よりも尊重されていて、俺も例外ではなかった。
学校の中も、男子生徒が数人しかいないからまるで雰囲気が違う。廊下を歩いてても、女子たちの声だけが聞こえてくる。まるで別の世界みたいに。
そんな中でも俺の周りには優しいな女子たちがたくさんいる。特に、幼馴染の美羽はずっと俺のことを気にかけてくれているみたいで……
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
イケメン歯科医の日常
moa
キャラ文芸
堺 大雅(さかい たいが)28歳。
親の医院、堺歯科医院で歯科医として働いている。
イケメンで笑顔が素敵な歯科医として近所では有名。
しかし彼には裏の顔が…
歯科医のリアルな日常を超短編小説で書いてみました。
※治療の描写や痛い描写もあるので苦手な方はご遠慮頂きますようよろしくお願いします。
死んだら男女比1:99の異世界に来ていた。SSスキル持ちの僕を冒険者や王女、騎士が奪い合おうとして困っているんですけど!?
わんた
ファンタジー
DVの父から母を守って死ぬと、異世界の住民であるイオディプスの体に乗り移って目覚めた。
ここは、男女比率が1対99に偏っている世界だ。
しかもスキルという特殊能力も存在し、イオディプスは最高ランクSSのスキルブースターをもっている。
他人が持っているスキルの効果を上昇させる効果があり、ブースト対象との仲が良ければ上昇率は高まるうえに、スキルが別物に進化することもある。
本来であれば上位貴族の夫(種馬)として過ごせるほどの能力を持っているのだが、当の本人は自らの価値に気づいていない。
贅沢な暮らしなんてどうでもよく、近くにいる女性を幸せにしたいと願っているのだ。
そんな隙だらけの男を、知り合った女性は見逃さない。
家で監禁しようとする危険な女性や子作りにしか興味のない女性などと、表面上は穏やかな生活をしつつ、一緒に冒険者として活躍する日々が始まった。
美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった
ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます!
僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか?
『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』
俺の幼馴染がエロ可愛すぎてヤバい。
ゆきゆめ
キャラ文芸
「お〇ん〇ん様、今日もお元気ですね♡」
俺・浅間紘(あさまひろ)の朝は幼馴染の藤咲雪(ふじさきゆき)が俺の朝〇ちしたムスコとお喋りをしているのを目撃することから始まる。
何を言っているか分からないと思うが安心してくれ。俺も全くもってわからない。
わかることと言えばただひとつ。
それは、俺の幼馴染は最高にエロ可愛いってこと。
毎日毎日、雪(ゆき)にあれやこれやと弄られまくるのは疲れるけれど、なんやかんや楽しくもあって。
そしてやっぱり思うことは、俺の幼馴染は最高にエロ可愛いということ。
これはたぶん、ツッコミ待ちで弄りたがりやの幼馴染と、そんな彼女に振り回されまくりでツッコミまくりな俺の、青春やラブがあったりなかったりもする感じの日常コメディだ。(ツッコミはえっちな言葉ではないです)
異世界で勇者をやって帰ってきましたが、隣の四姉妹の様子がおかしいんですけど?
レオナール D
ファンタジー
異世界に召喚されて魔王を倒す……そんなありふれた冒険を終えた主人公・八雲勇治は日本へと帰還した。
異世界に残って英雄として暮らし、お姫様と結婚したり、ハーレムを築くことだってできたというのに、あえて日本に帰ることを選択した。その理由は家族同然に付き合っている隣の四姉妹と再会するためである。
隣に住んでいる日下部家の四姉妹には子供の頃から世話になっており、恩返しがしたい、これからも見守ってあげたいと思っていたのだ。
だが……帰還した勇治に次々と襲いかかってくるのは四姉妹のハニートラップ? 奇跡としか思えないようなラッキースケベの連続だった。
おまけに、四姉妹は勇治と同じようにおかしな事情を抱えているようで……? はたして、勇治と四姉妹はこれからも平穏な日常を送ることができるのだろうか!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる