上 下
107 / 158
6章 ドラマ撮影編

『生徒会長は告らせたい』の撮影 8

しおりを挟む
~立花香帆視点~

 可愛らしい寧々の笑顔に見送られ、私は凛のもとへ向かう。
 すると先程まで監督と話していた凛が私に気づき、手を振ってくれた。
 ちなみに真奈美は今も監督と話している。

「お疲れ様」
「あぁ。今の演技はどーだった?」

 私に向けて爽やかな笑顔で問いかける。
 そんな笑顔に見惚れそうになるが、私は思いっきり頭を下げる。

「ごめんなさいっ!」
「……えっ!?」

 突然、私が大声で謝ったことに対し、凛が慌て出す。
 周囲も私の声が聞こえたのか、スタッフが手を止めてザワザワし始める。

「私、アナタのことを勘違いしてたわ。だからごめんなさいっ!」

 頭を上げることなく私は再び謝る。
 そんな私を見て何に対して謝っているかを察したのだろう。

「気にしなくていいよ。だから顔をあげて」

 そう優しい声で言ってくれた。
 その言葉を聞き顔を上げると凛が優しそうな笑みを浮かべており、本当に気にしてなさそうな顔をしていた。

「寧々に何か聞いたんだろ?」
「えぇ。凛が影で努力していたことと引退した理由を聞いたわ」
「ったく、そんなことしなくていいのに」

 そう言いながら寧々を見て凛が笑う。

「昨日の私はどうかしてたわ。凛が引退した理由を聞きもせず勝手に怒ってしまった。だから私……」
「いや、昨日の件なら俺も悪かった」
「……え?」

 まさかの発言に私は発言を途中で辞めて固まる。

「凛も悪かった?どの辺が?」
「そりゃ、引退した理由を隠してたことだ。俺が昨日言ってたらここまで拗れた話にはなってなかったのだろ?」
「ううん、そんなことないわ。きっと昨日聞いても拗れてた……いや、昨日聞いていた方がもっと拗れてたと思うわ」

 昨日の私は冷静に物事を考えることができてなかった。
 だから凛に出会った瞬間、宣戦布告を行ってしまった。
 そんな状態で凛から引退した理由を聞けば、「言い訳だ!」と騒いでた可能性がある。

「だから私が悪いわ。昨日の無礼を許してほしいとは言わないけど、謝らせてほしい。ほんと、ごめんなさいっ!」

 全面的に私が悪いため、誠心誠意謝る。

 そんな私に再び…

「全く気にしてないからこれ以上謝らないで。とりあえず顔あげよ?」

 と優しい声で言ってくれた。

「ダメよ!凛が気にしてなくても私は昨日の自分を許せない!何なら私に怒ってくれた方がスッキリするわ!」

 そう本心で伝えると「困ったなぁ……」と本気で困った表情をされる。
 しばらく私たちの間に静寂が訪れると「あ、そうだ!」と凛が声を上げる。

「なら俺と友達にならないか?」
「……友達?」

 まるで小学生のような打開案を提示された。

「あぁ。今日会った時に言っただろ?俺は立花さんに興味があるって」
「っ!」

 こんなめんどくさい私に対して今も興味を持ってくれる。
 その言葉を聞いて、とても嬉しい気持ちとなる。

「だから友達になってくれると嬉しいな」

 そう言って凛が微笑む。

「なによそれ……カッコいいじゃない……」
「ん?何だって?」
「な、なんでもないわ!」

 先ほどの呟きが聞かれてなかったことに安堵しつつ私は問いかける。

「私と友達になると面倒なことばかり起こるわよ?」
「大丈夫だ。昨日みたいなことが起こっても問題ない。今日みたいに仲直りできたんだからな」
「……そう。なら友達になってあげるわ」

 なぜか素直になれず上から目線となってしまったが、凛は全く気にしてないようで嬉しそうに笑う。
 こうして私は長年の勘違いを解消し、凛と友達になった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

[完結済み]男女比1対99の貞操観念が逆転した世界での日常が狂いまくっている件

森 拓也
キャラ文芸
俺、緒方 悟(おがた さとる)は意識を取り戻したら男女比1対99の貞操観念が逆転した世界にいた。そこでは男が稀少であり、何よりも尊重されていて、俺も例外ではなかった。 学校の中も、男子生徒が数人しかいないからまるで雰囲気が違う。廊下を歩いてても、女子たちの声だけが聞こえてくる。まるで別の世界みたいに。 そんな中でも俺の周りには優しいな女子たちがたくさんいる。特に、幼馴染の美羽はずっと俺のことを気にかけてくれているみたいで……

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

勝負に勝ったので委員長におっぱいを見せてもらった

矢木羽研
青春
優等生の委員長と「勝ったほうが言うことを聞く」という賭けをしたので、「おっぱい見せて」と頼んでみたら……青春寸止めストーリー。

まさか、、お兄ちゃんが私の主治医なんて、、

ならくま。くん
キャラ文芸
おはこんばんにちは!どうも!私は女子中学生の泪川沙織(るいかわさおり)です!私こんなに元気そうに見えるけど実は貧血や喘息、、いっぱい持ってるんだ、、まあ私の主治医はさすがに知人だと思わなかったんだけどそしたら血のつながっていないお兄ちゃんだったんだ、、流石にちょっとこれはおかしいよね!?でもお兄ちゃんが医者なことは事実だし、、 私のおにいちゃんは↓ 泪川亮(るいかわりょう)お兄ちゃん、イケメンだし高身長だしもう何もかも完璧って感じなの!お兄ちゃんとは一緒に住んでるんだけどなんでもてきぱきこなすんだよね、、そんな二人の日常をお送りします!

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

生贄にされた先は、エロエロ神世界

雑煮
恋愛
村の習慣で50年に一度の生贄にされた少女。だが、少女を待っていたのはしではなくどエロい使命だった。

後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~

菱沼あゆ
キャラ文芸
 突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。  洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。  天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。  洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。  中華後宮ラブコメディ。

処理中です...