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6章 ドラマ撮影編
『生徒会長は告らせたい』の撮影 5
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~立花香帆視点~
凛との演技を終えた私は、凛と真奈美の演技を見学するため、少し離れた場所に移動する。
「あのぉ、隣いいですか?」
すると私の隣に凛の妹である寧々さんが現れた。
「えぇ、構わないわ」
「ありがとうございます!」
そう言って嬉しそうに寧々さんが笑う。
(すごく綺麗な女性ね)
遠目からしか見てなかったが、近くで見るとより一層可愛く見える。
なぜ芸能界で活動してないかが謎なくらいの美少女だ。
「知ってるとは思いますが私は夏目凛の妹の寧々です」
そう言って寧々さんが自己紹介を始める。
その流れで私も自己紹介を行い、お互いに同い年ということで敬語など使わない約束をする。
その後、簡単に雑談をした後、寧々が私に聞きたかったであろう内容へと話題が移る。
「やっぱり香帆ちゃんはお兄ちゃんの事が嫌いなの?」
「えぇ。凛のことは嫌いよ」
私が昨日凛に話したことは全て寧々の耳に入っていると思い、嫌いな理由は説明しない。
「でも役者としては尊敬してるわ。6年間のブランクがあるにも関わらず、休業せずに頑張ってきた私や真奈美と同等以上の演技力を披露してるのだから。やっぱ凛は天才だと改めて思ったわ」
「天才……かぁ」
私が凛のことを天才と言うと、寧々が微妙な顔をする。
「私、お兄ちゃんは天才じゃないと思ってるんだ」
「どうして?小学5年生にして優秀主演男優賞を受賞し、今日も6年間のブランクなんか感じさせないほど、素晴らしい演技を披露したわ。これを天才と呼ばずなんて呼ぶのよ?」
私が仮に6年間休業し、6年ぶりに役者として演技を披露したら、絶対凛のような演技を披露できない。
だから凛のことを天才だと評価した。
でも寧々は違うらしく首を横に振る。
「ううん、お兄ちゃんは天才じゃないよ。私……というかお兄ちゃんもだけど、私たちは天才じゃなく才能のある人、『才人』だと思ってるんだ」
「才人?」
「うん。才能のある人。お兄ちゃんは並々ならぬ努力と才能で優秀主演男優賞を受賞したんだ」
そう寧々は言うが、凛が努力している所なんて見たことない。
特に『マルモのおきてだよ』の撮影時は私がストーカーの如く凛の行く先々について行ったため、凛が私たちの目の前で努力してないことは確認済み。
もちろん、影で努力している可能性はあるが、凛はドラマの撮影に加え、バラエティー番組の収録等々もあり多忙な日々を送っていた。
そのため、私よりも影での練習時間は圧倒的に少ないはず。
にも関わらず子役時代は私以上の演技を披露し、優秀主演男優賞を受賞した。
もはや『天才』としか言い表せないだろう。
そう思い、私は思っていたことを寧々に告げる。
すると「香帆ちゃんはお兄ちゃんを甘く見てるね」と笑いながら言われた。
「確かに当時のお兄ちゃんは『マルモのおきてだよ』の撮影に加え、バラエティー番組の出演等々で大忙しだった。でも、お兄ちゃんはそれ以外の時間を全て演技の練習に当ててたよ。それこそ『真奈美が頑張ってるんだ。俺が怠けるわけにはいかない』って言いながらね」
「そ、そうだったんだ……」
ある程度は努力してるとは思っていたが、私が想像していた何倍も凛は頑張っていたようだ。
「それに香帆ちゃんはお兄ちゃんが天才だから簡単に6年間のブランクを埋めたって思ってるみたいだけど、全然そんなことないよ。見てる私が心配しそうになるくらい6年間を埋めるために頑張ってた。多分、本心では6年間の引退を後悔してると思う」
そう言って寧々が凛のハードスケジュールを語る。
寧々の語った内容はまるで部活生ではないかと勘違いするほどの内容で、ものすごい時間を演技の練習に費やしていたことが分かる。
それに加え、私や真奈美が出演するドラマのチェックや原作の読み直し等々、演技の練習以外にも時間を費やしていた。
「お兄ちゃん、最近は大学を休んでまで今回のドラマ撮影に向けて頑張ってた。だからお兄ちゃんが天才に見えるのは努力の賜物なんだ」
「………」
どうやら私は凛という男を少し勘違いしていたようだ。
(天才だからと思い込み、凛が私以上に影で努力しているとは考えなかった。いや、考えたくもなかった。でも彼が6年間のブランクなんか感じさせないくらいの演技を披露できたのは天才だからではなく影で頑張ったから)
そう思った時、私はとあることを口にしていた。
「人は自分が理解できないほどの才能を目の当たりにすると、その人間に対して『天才』という言葉で片付けようとする。なぜなら桁違いの才能には必ず桁違いの努力が潜んでいることを想像できないから」
これは私が昔思ったこと。
もしかして凛は天才ではなく、私以上の努力家なのではないかと思った時、ふと脳裏をよぎった時の言葉だ。
「寧々は葛飾北斎という天才浮世絵師は知ってるよね?」
「うん」
「彼はね。生涯を通して約3万点もの作品を世に残しているわ」
「さ、3万も!?」
寧々が驚きの声を上げる。
「えぇ。彼は約90年間で3万点もの作品を世に残した。でもこれは確認された枚数の話よ。実際はその何倍、何十倍も描き続けたと思うわ。つまり、天才と呼ばれた人間も影ではかなりの努力をしている。そのことに気づいた時期もあったわ。でも私は頑なに認めなかった。凛は努力なんてほとんどしない天才であると思い続けた」
そう思い込んだからこそ凛への幻滅が強くなり、大好きから大嫌いへと変わってしまった。
「ほんとバカな話よね。凛の努力を否定し、『天才』という言葉で片付けたのだから」
ポツリと呟きながら私は肩を落とした。
凛との演技を終えた私は、凛と真奈美の演技を見学するため、少し離れた場所に移動する。
「あのぉ、隣いいですか?」
すると私の隣に凛の妹である寧々さんが現れた。
「えぇ、構わないわ」
「ありがとうございます!」
そう言って嬉しそうに寧々さんが笑う。
(すごく綺麗な女性ね)
遠目からしか見てなかったが、近くで見るとより一層可愛く見える。
なぜ芸能界で活動してないかが謎なくらいの美少女だ。
「知ってるとは思いますが私は夏目凛の妹の寧々です」
そう言って寧々さんが自己紹介を始める。
その流れで私も自己紹介を行い、お互いに同い年ということで敬語など使わない約束をする。
その後、簡単に雑談をした後、寧々が私に聞きたかったであろう内容へと話題が移る。
「やっぱり香帆ちゃんはお兄ちゃんの事が嫌いなの?」
「えぇ。凛のことは嫌いよ」
私が昨日凛に話したことは全て寧々の耳に入っていると思い、嫌いな理由は説明しない。
「でも役者としては尊敬してるわ。6年間のブランクがあるにも関わらず、休業せずに頑張ってきた私や真奈美と同等以上の演技力を披露してるのだから。やっぱ凛は天才だと改めて思ったわ」
「天才……かぁ」
私が凛のことを天才と言うと、寧々が微妙な顔をする。
「私、お兄ちゃんは天才じゃないと思ってるんだ」
「どうして?小学5年生にして優秀主演男優賞を受賞し、今日も6年間のブランクなんか感じさせないほど、素晴らしい演技を披露したわ。これを天才と呼ばずなんて呼ぶのよ?」
私が仮に6年間休業し、6年ぶりに役者として演技を披露したら、絶対凛のような演技を披露できない。
だから凛のことを天才だと評価した。
でも寧々は違うらしく首を横に振る。
「ううん、お兄ちゃんは天才じゃないよ。私……というかお兄ちゃんもだけど、私たちは天才じゃなく才能のある人、『才人』だと思ってるんだ」
「才人?」
「うん。才能のある人。お兄ちゃんは並々ならぬ努力と才能で優秀主演男優賞を受賞したんだ」
そう寧々は言うが、凛が努力している所なんて見たことない。
特に『マルモのおきてだよ』の撮影時は私がストーカーの如く凛の行く先々について行ったため、凛が私たちの目の前で努力してないことは確認済み。
もちろん、影で努力している可能性はあるが、凛はドラマの撮影に加え、バラエティー番組の収録等々もあり多忙な日々を送っていた。
そのため、私よりも影での練習時間は圧倒的に少ないはず。
にも関わらず子役時代は私以上の演技を披露し、優秀主演男優賞を受賞した。
もはや『天才』としか言い表せないだろう。
そう思い、私は思っていたことを寧々に告げる。
すると「香帆ちゃんはお兄ちゃんを甘く見てるね」と笑いながら言われた。
「確かに当時のお兄ちゃんは『マルモのおきてだよ』の撮影に加え、バラエティー番組の出演等々で大忙しだった。でも、お兄ちゃんはそれ以外の時間を全て演技の練習に当ててたよ。それこそ『真奈美が頑張ってるんだ。俺が怠けるわけにはいかない』って言いながらね」
「そ、そうだったんだ……」
ある程度は努力してるとは思っていたが、私が想像していた何倍も凛は頑張っていたようだ。
「それに香帆ちゃんはお兄ちゃんが天才だから簡単に6年間のブランクを埋めたって思ってるみたいだけど、全然そんなことないよ。見てる私が心配しそうになるくらい6年間を埋めるために頑張ってた。多分、本心では6年間の引退を後悔してると思う」
そう言って寧々が凛のハードスケジュールを語る。
寧々の語った内容はまるで部活生ではないかと勘違いするほどの内容で、ものすごい時間を演技の練習に費やしていたことが分かる。
それに加え、私や真奈美が出演するドラマのチェックや原作の読み直し等々、演技の練習以外にも時間を費やしていた。
「お兄ちゃん、最近は大学を休んでまで今回のドラマ撮影に向けて頑張ってた。だからお兄ちゃんが天才に見えるのは努力の賜物なんだ」
「………」
どうやら私は凛という男を少し勘違いしていたようだ。
(天才だからと思い込み、凛が私以上に影で努力しているとは考えなかった。いや、考えたくもなかった。でも彼が6年間のブランクなんか感じさせないくらいの演技を披露できたのは天才だからではなく影で頑張ったから)
そう思った時、私はとあることを口にしていた。
「人は自分が理解できないほどの才能を目の当たりにすると、その人間に対して『天才』という言葉で片付けようとする。なぜなら桁違いの才能には必ず桁違いの努力が潜んでいることを想像できないから」
これは私が昔思ったこと。
もしかして凛は天才ではなく、私以上の努力家なのではないかと思った時、ふと脳裏をよぎった時の言葉だ。
「寧々は葛飾北斎という天才浮世絵師は知ってるよね?」
「うん」
「彼はね。生涯を通して約3万点もの作品を世に残しているわ」
「さ、3万も!?」
寧々が驚きの声を上げる。
「えぇ。彼は約90年間で3万点もの作品を世に残した。でもこれは確認された枚数の話よ。実際はその何倍、何十倍も描き続けたと思うわ。つまり、天才と呼ばれた人間も影ではかなりの努力をしている。そのことに気づいた時期もあったわ。でも私は頑なに認めなかった。凛は努力なんてほとんどしない天才であると思い続けた」
そう思い込んだからこそ凛への幻滅が強くなり、大好きから大嫌いへと変わってしまった。
「ほんとバカな話よね。凛の努力を否定し、『天才』という言葉で片付けたのだから」
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