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6章 ドラマ撮影編
『生徒会長は告らせたい』の撮影 2
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~立花香帆視点~
「カットぉぉーっ!」
そこで森野監督の声が響き渡る。
「とても良いぞ、2人とも!アドリブも入ってたが作品の雰囲気を崩してなかった!」
「「ありがとうございます!」」
森野監督からの絶賛に2人が嬉しそうに応える。
(さすがね、2人とも。監督が絶賛するのも分かるわ)
アドリブが入っているにも関わらず文句のないほど完璧な演技に息のあったやり取り。
おそらく修正などしないだろう。
そんなことを思いながら私は凛の演技を振り返る。
(やはりアナタは天才よ。今の演技が修正する必要のないくらい素晴らしいものになったのは凛の演技力のおかげだもの)
今の演技だけで凛が天才だということを改めて理解した。
なぜなら並みの俳優では難しいことをサラッとやっているから。
それはセリフ自体のスピードや行動、体の動くスピードなどに緩急をつけ、上手く間を取ることで真奈美の演技を引き立てるというテクニックだ。
このテクニックにより真奈美の素の反応をしっかりと作品に昇華できていた。
(言葉で言うのは簡単だけど簡単にはできないテクニックよ。私が凛の立場だったら凛ほど真奈美の素の反応を作品に昇華できなかった)
それを可能にするため、真奈美が出演したドラマはしっかりチェックしたのだろうが、真奈美のドラマをチェックしただけで真奈美の演技を活かすことはできない。
「昔の凛は共演者の演技を活かすことに特化しており、共演者が上手くなったと錯覚してしまうほど上手に共演者の演技を引き出していた。この技術は6年経っても健在のようね」
これが凛のことを天才だと思う理由の1つだ。
「十で神童、十五で才子、二十歳過ぎれば只の人。歳をとるに連れて平々凡々になる元天才が多い中、そんな気配を感じさせない。さすが夏目凛ね」
だから神童と呼ばれ、小5にして優秀主演男優賞を受賞できたのだろう。
ただ、凛の演技が凄いことは百も承知。
そんな演技を見せられたくらいで私は驚かない。
「私は夏目凛を超えると誓ったのよ。凛が子役から遠ざかった6年間、必死に努力してきたわ。絶対、驚かせてやるんだから」
そう改めて心に誓う。
すると、私のもとへ凛と真奈美がやって来る。
どうやら森野監督との話しは終わったようで、森野監督は撮影スタッフたちと話をしている。
「凛くん凛くん!私の演技はどーだった!?」
「あぁ。完璧だったよ。さすが真奈美だ」
「えへへ~」
凛の言葉にクールな二宮さんを演じた役者とは思えないほど嬉しそうな顔をする。
さらにそれだけでは満足できなかったのか、さりげなく凛に頭を差し出す。
「もっと褒めてほしいなぁ~」
「えっ!えーっと……こ、これでいいか?」
「うんっ!」
恐る恐るといった様子で凛が真奈美の頭に手を置き、優しく撫で始める。
(この2人、目の前でイチャつき始めたんだけど……)
全く羨ましいとは思わないが、何故か見ててイライラするので私は凛をひと睨みする。
「ひぃっ!ま、真奈美?も、もういいよな?」
「んー、もうちょっとかな~」
気持ちよさそうに目を細めながら真奈美が返答する。
それを聞いた凛が「う、嘘だろ……」と絶望的な顔となり私の方を向く。
「え、えーっと……もうちょっとらしいんだ。だからそんな目で見ないでほしいなぁ」
「そんな目ってどんな目よ」
「……人を殺せそうなほど冷たい目だ」
「あら、良かったじゃない。女の子から冷たい目で見られることなんて、凛にとってはご褒美でしょ?」
「だから俺はドMじゃねぇよ!」
何やら騒いでいるが、真奈美の頭を撫でながらなので聞く耳を持たない。
(それにしてもこの娘、私たちが話してるのに全く聞こえてなさそうね。他人に見られたらいけないくらい幸せそうな顔をしてるわ。はやく告白すればいいのに)
真奈美が凛に告白していないことは昨日聞いているが、頭ナデナデを催促したことに加え、こんな顔をしていれば凛のことが好きだと言っているようなもの。
ただ、真奈美にも何かしら事情があるらしく「今は告白できない」と言っていた。
そんなことを思い出していると「ありがと、凛くん!」とご満悦な表情で真奈美が言う。
そして私の方を向いて口を開く。
「香帆ちゃん!久々の凛くんの演技はどーだった!?」
「……そうね。やはり天才だと思ったわ」
「だよね!私もだよ!」
「そ、そんなに褒めても何も出ないぞ」
私たちのストレートな褒め言葉に頬を掻きながら凛が照れる。
凛は6年経っても変わらず素晴らしい演技を披露してくれた。
そんな演技を目の当たりにした私は、再び凛の演技の虜になりかける。
(っ!凛は超えるべき人なの!虜になったら超えることなんてできないわ!)
そう心の中で呟いた私は凛に向けて口を開く。
「アナタがこれくらいできるのは百も承知よ。次は私との演技だから度肝を抜かれないよう注意することね」
「ははっ、それは楽しみだな」
私の演技に負けるつもりがないのか、それとも私の宣戦布告が嬉しいのかは知らないが、笑いながら返事をする。
そのタイミングで…
「よし。じゃあ次は夏目くんと立花さんのやり取りを撮影しようか」
との言葉が聞こえてくる。
(ついにこの時が来たわ。今まで努力した成果を全て見せつけてやる!)
そう心に誓って森野監督のもとへ向かった。
「カットぉぉーっ!」
そこで森野監督の声が響き渡る。
「とても良いぞ、2人とも!アドリブも入ってたが作品の雰囲気を崩してなかった!」
「「ありがとうございます!」」
森野監督からの絶賛に2人が嬉しそうに応える。
(さすがね、2人とも。監督が絶賛するのも分かるわ)
アドリブが入っているにも関わらず文句のないほど完璧な演技に息のあったやり取り。
おそらく修正などしないだろう。
そんなことを思いながら私は凛の演技を振り返る。
(やはりアナタは天才よ。今の演技が修正する必要のないくらい素晴らしいものになったのは凛の演技力のおかげだもの)
今の演技だけで凛が天才だということを改めて理解した。
なぜなら並みの俳優では難しいことをサラッとやっているから。
それはセリフ自体のスピードや行動、体の動くスピードなどに緩急をつけ、上手く間を取ることで真奈美の演技を引き立てるというテクニックだ。
このテクニックにより真奈美の素の反応をしっかりと作品に昇華できていた。
(言葉で言うのは簡単だけど簡単にはできないテクニックよ。私が凛の立場だったら凛ほど真奈美の素の反応を作品に昇華できなかった)
それを可能にするため、真奈美が出演したドラマはしっかりチェックしたのだろうが、真奈美のドラマをチェックしただけで真奈美の演技を活かすことはできない。
「昔の凛は共演者の演技を活かすことに特化しており、共演者が上手くなったと錯覚してしまうほど上手に共演者の演技を引き出していた。この技術は6年経っても健在のようね」
これが凛のことを天才だと思う理由の1つだ。
「十で神童、十五で才子、二十歳過ぎれば只の人。歳をとるに連れて平々凡々になる元天才が多い中、そんな気配を感じさせない。さすが夏目凛ね」
だから神童と呼ばれ、小5にして優秀主演男優賞を受賞できたのだろう。
ただ、凛の演技が凄いことは百も承知。
そんな演技を見せられたくらいで私は驚かない。
「私は夏目凛を超えると誓ったのよ。凛が子役から遠ざかった6年間、必死に努力してきたわ。絶対、驚かせてやるんだから」
そう改めて心に誓う。
すると、私のもとへ凛と真奈美がやって来る。
どうやら森野監督との話しは終わったようで、森野監督は撮影スタッフたちと話をしている。
「凛くん凛くん!私の演技はどーだった!?」
「あぁ。完璧だったよ。さすが真奈美だ」
「えへへ~」
凛の言葉にクールな二宮さんを演じた役者とは思えないほど嬉しそうな顔をする。
さらにそれだけでは満足できなかったのか、さりげなく凛に頭を差し出す。
「もっと褒めてほしいなぁ~」
「えっ!えーっと……こ、これでいいか?」
「うんっ!」
恐る恐るといった様子で凛が真奈美の頭に手を置き、優しく撫で始める。
(この2人、目の前でイチャつき始めたんだけど……)
全く羨ましいとは思わないが、何故か見ててイライラするので私は凛をひと睨みする。
「ひぃっ!ま、真奈美?も、もういいよな?」
「んー、もうちょっとかな~」
気持ちよさそうに目を細めながら真奈美が返答する。
それを聞いた凛が「う、嘘だろ……」と絶望的な顔となり私の方を向く。
「え、えーっと……もうちょっとらしいんだ。だからそんな目で見ないでほしいなぁ」
「そんな目ってどんな目よ」
「……人を殺せそうなほど冷たい目だ」
「あら、良かったじゃない。女の子から冷たい目で見られることなんて、凛にとってはご褒美でしょ?」
「だから俺はドMじゃねぇよ!」
何やら騒いでいるが、真奈美の頭を撫でながらなので聞く耳を持たない。
(それにしてもこの娘、私たちが話してるのに全く聞こえてなさそうね。他人に見られたらいけないくらい幸せそうな顔をしてるわ。はやく告白すればいいのに)
真奈美が凛に告白していないことは昨日聞いているが、頭ナデナデを催促したことに加え、こんな顔をしていれば凛のことが好きだと言っているようなもの。
ただ、真奈美にも何かしら事情があるらしく「今は告白できない」と言っていた。
そんなことを思い出していると「ありがと、凛くん!」とご満悦な表情で真奈美が言う。
そして私の方を向いて口を開く。
「香帆ちゃん!久々の凛くんの演技はどーだった!?」
「……そうね。やはり天才だと思ったわ」
「だよね!私もだよ!」
「そ、そんなに褒めても何も出ないぞ」
私たちのストレートな褒め言葉に頬を掻きながら凛が照れる。
凛は6年経っても変わらず素晴らしい演技を披露してくれた。
そんな演技を目の当たりにした私は、再び凛の演技の虜になりかける。
(っ!凛は超えるべき人なの!虜になったら超えることなんてできないわ!)
そう心の中で呟いた私は凛に向けて口を開く。
「アナタがこれくらいできるのは百も承知よ。次は私との演技だから度肝を抜かれないよう注意することね」
「ははっ、それは楽しみだな」
私の演技に負けるつもりがないのか、それとも私の宣戦布告が嬉しいのかは知らないが、笑いながら返事をする。
そのタイミングで…
「よし。じゃあ次は夏目くんと立花さんのやり取りを撮影しようか」
との言葉が聞こえてくる。
(ついにこの時が来たわ。今まで努力した成果を全て見せつけてやる!)
そう心に誓って森野監督のもとへ向かった。
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