髪を切った俺が『読者モデル』の表紙を飾った結果がコチラです。

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6章 ドラマ撮影編

立花香帆の過去 2

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~立花香帆視点~

 真奈美と話したことで私は引退を撤回し、今まで以上に努力するようになった。

 それから数ヶ月が経過し『マルモのおきてだよ』の収録、放送が終わり、凛が優秀主演男優賞を手に入れた。
 その時は凛のことを本気で尊敬した。
 それと同時に凛に追いつけば、私の夢である優秀主演女優賞を受賞できるかもしれないと希望を抱くようになった。

 その日以降、天才である凛に追いつくなんて簡単ではないことを理解していた私は、友達と遊ぶ時間を削ってまで演技の練習に取り組んだ。
 そんな私の唯一の楽しみは凛が出演するドラマやバラエティー番組を見ること。
 凛の演技が大好きで凛を目標に頑張っていた私は、いつの間にか凛自身に恋をしていた。



 そんな日々を過ごしているうちに小学6年生となったある日のこと。
 夏目凛の芸能界引退が世間を騒がせた。

 私はその事実を知った時、目標としていた人が引退したことと、大好きな凛を2度とテレビで見られないことにショックを受けた。
 しかしそれは一瞬のことで、徐々に怒りが湧いてきた。

「私の夢は日本アカデミー賞で優秀主演女優賞を受賞すること。なのに夏目くんは受賞した翌年に引退を決断した。まるでその賞を受賞する価値なんてないと言ってるように」

 凛の行動からそう理解した私は凛に幻滅し、凛のことが大好きから大嫌いへ変わった。
 そして大好きだった人を超える女優になることを心に決めた。

 その日以降、天才である凛に追いつくだけでなく越えなければならなくなり、今までよりもさらに努力を重ねた。
 辛い練習も『夏目凛なんかに負けない!』という気持ちだけで乗り切った。
 それくらい私は『打倒夏目凛!』を掲げて頑張ってきた。



 あれから時が過ぎ、2ヶ月前の4/1。
 凛が表紙を飾った『読者モデル』がSNSで話題となった。

「見て、お母さん。夏目凛が芸能界に復帰したらしいわ」

 そう言って先ほど10時開店のTSU⚪︎AYAで手に入れた『読モ』をお母さんに見せる。

「言われてみれば夏目くんの面影を感じるわ。でも本当に天才子役と呼ばれていた夏目くんなの?」

 表紙を飾る凛のすぐ側に『夏目凛』と書かれているが、お母さんは同姓同名だと思ったのだろう。
 だが私は確信している。
 『読モ』の表紙を飾る夏目凛が、昔大好きだった夏目凛であることを。

「絶対あの夏目凛よ。復帰してくれるなんてとても嬉しいわ。これで私は夏目凛を超えることができたか、確認できるのだから」

 そう思い、凛を超えるために努力していた私は笑みを浮かべる。

「嬉しそうね。大好きな夏目くんが復帰してくれて」
「は、はぁ!?わ、私はあんな奴好きじゃないわよ!」

 私はお母さんの発言に対して驚きつつも力強く否定する。
 しかし私の言葉が照れ隠しに聞こえたのか、お母さんが「ふふっ」と笑い出す。

「その割には自分の部屋に子役時代の夏目くんの写真をずっと貼ってるじゃない。今も夏目くんのことが大好きだから貼ってるのでしょ?」
「あ、あれは打倒夏目凛を掲げているからよ!」
「そんなこと言って、やってることは夏目くんのことが大好きな女の子よ。毎日毎日夏目くんの写真を眺めてるんだから。それにわざわざ夏目くんが表紙の『読モ』まで買っちゃって」
「ど、読モを買ったのはこの写真を部屋に飾るためよ!子役の頃の写真より、今の凛を飾った方が燃えるから!」
「……香帆。今時ツンデレは需要ないって知ってた?」
「だから私はあんな奴好きじゃないわよ!」

 全くデレてないのにツンデレ認定されてしまう。

「ほんとにそうかしら?」
「も、もちろんよ!」

 そう力強く返答するが、お母さんは納得しておらず話を広げ出す。

「昔は『夏目くんが出るからチャンネル変えないで!』って一所懸命お願いするくらい夏目くんのことが好きだったのに」
「む、昔のことは忘れてよ!」

 お母さんに自分の気持ちを言った覚えはないが、お母さんが言う通り昔は凛のことが好きだった。
 好きと自覚した時には『マルモのおきてだよ』の撮影は終わり、凛との接点がなくなったため、凛と会話することはなかったが。

「あ、やっぱり夏目くんのことが好きだったんだ」
「む、昔のことよ!今はこれっぽっちも好きじゃないわ!むしろ超えるべき人としか見てないもの!だから凛の復帰を聞いて嬉しかったのは好きだからじゃないわ!」
「……はぁ、私の娘がものすごく面倒な方向に拗らせてるわ」

 そんなことをお母さんが呆れながら言っていた。



 あれから約1ヶ月後。
 私は『生徒会長は告らせたい』というドラマの出演依頼を受けた。
 どうやらそのドラマには夏目凛も出演するらしい。

「この時を待ってたわ。ついに私は夏目凛を超えたことを証明できる」

 そう思い、その場を設けてくれた森野監督には頭が上がらない。

「絶対、夏目凛に勝つ!そして凡人でも努力すれば天才を超えることができると証明してみせるわ!」

 そう誓って私は撮影に臨んだ。
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