髪を切った俺が『読者モデル』の表紙を飾った結果がコチラです。

昼寝部

文字の大きさ
上 下
93 / 169
6章 ドラマ撮影編

立花香帆との出会い 2

しおりを挟む
 立花さんを連れて自分の控え室に入る。

「誰もいない部屋に連れて来られたわ。もしかして私を襲うつもりなの?」
「アホかっ!」

 襲われるかもしれないと思ってるような素振りを全く見せない立花さんへ、すぐさま否定の言葉を言う。

「それで、なぜ俺が俳優業を舐めていると思ったんだ?」

 これから一緒に仕事をする立花さんとは仲良くしなければならないため、俺に怒っている原因を取り除く必要がある。
 そのため、まずは俺が俳優業を舐めていると思った理由を尋ねる。

「それは優秀主演男優賞を受賞した翌年に芸能界を引退したからよ」

 そう言って立花さんが話を続ける。

「私、子役として活動してる時から夢があったの。その夢を叶えるため、小さい頃から頑張ってきた。それが日本アカデミー賞で優秀主演女優賞を受賞することだった」

 その言葉を聞いて、俺に怒っている理由を概ね理解する。

「私みたいな凡人が一生かけても手に入らない賞を受賞したアナタのことを本気で尊敬したわ。私も夏目凛に近づけば受賞できるんじゃないかって希望も抱いた。でも、アナタは受賞した翌年に引退した。それを知った時、私はアナタに夢を馬鹿にされたと思ったわ。こんな賞なんか価値がない、受賞しても無駄だと言われてるような気がして」

 引退するということは受賞した栄光をも捨てることになるため、価値がない、受賞しても無駄だと言っていることになる。

(そりゃ俳優業を舐めているって言われても否定できないわ)

 そう思い、立花さんの言葉に何も反論できない。

「だから私はアナタに怒りが湧いたの。それと同時に絶対、夏目凛には負けたくないと思った。引退したアナタと比べるのは間違ってると思ったけど、私は夏目凛なんかに負けないという執念で今日まで頑張ってきたわ」

 きっと俺に負けないという気持ちだけで人気女優になったのだろう。

(その気持ちが立花さんを奮い立たせ、ここまで上達させたのか)

 どうやら引退した俺が立花さんの役に立ったらしく、嬉しさのあまり笑みをこぼす。

「な、なに笑ってるのよ!」
「あ、いや。立花さんは凄いよ。俺なんかよりずっと凄い女優だ」
「そ、そんなことないわよ!だってアナタは天才なんだから!」
「……天才かぁ」

 確かに昔、天才だの神童だのと呼ばれていたが、俺は1度たりとも自分のことを天才だと思ったことはない。
 だが、立花さんは俺のことを頑なに天才だと思い込んでいるようだ。

「そうよ。アナタは天才なの。だから私はアナタに勝つことがどれだけ難しいことか理解している。でも私は夢を馬鹿にした夏目凛には負けたくない。その気持ちが私を奮い立たせ、挫けそうな時も頑張れた。全てはアナタを超えるために!」

 立花さんの言葉から『絶対負けない』という強い意志を感じる。

(確かに俺は神童と呼ばれ、俳優としての才能があることも理解している。そうでなければ小5で優秀主演男優賞の受賞などあり得ない)

 何十年も俳優として活躍されている大人たちを押し退けて優秀主演男優賞を受賞できた理由は日々の努力に加え、演技の才能があったから。
 さすがの俺でも才能なんかないと謙遜することはできない。

「引退してたから6年のブランクがあるけど、かつて神童と呼ばれたアナタには関係ないよね?それとも、『二十歳過ぎれば只の人』という言葉通り、今は才能の無い只の人になり下がったの?」
「そんなわけないだろ」

 俺は堂々と答える。

「それは楽しみね。天才の演技を間近で見られるのだから。私、アナタの演技を見るのは好きだったの。だからガッカリさせないでよね」

 俺の発言を聞き、笑みを浮かべる立花さん。

「それと最後に一言。復帰してくれてありがとう。これで私はアナタを超えたことを証明できるわ」

 今まで引退した俺を超えるために頑張ってきたんだ。
 目標としていた人が復帰し、比べることができる状況となったため、俺の復帰を聞いて1番嬉しかったのは立花さんかもしれない。
 そんなことを思った。
しおりを挟む
感想 20

あなたにおすすめの小説

髪を切った俺が芸能界デビューした結果がコチラです。

昼寝部
キャラ文芸
 妹の策略で『読者モデル』の表紙を飾った主人公が、昔諦めた夢を叶えるため、髪を切って芸能界で頑張るお話。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

高身長お姉さん達に囲まれてると思ったらここは貞操逆転世界でした。〜どうやら元の世界には帰れないので、今を謳歌しようと思います〜

水国 水
恋愛
ある日、阿宮 海(あみや かい)はバイト先から自転車で家へ帰っていた。 その時、快晴で雲一つ無い空が急変し、突如、周囲に濃い霧に包まれる。 危険を感じた阿宮は自転車を押して帰ることにした。そして徒歩で歩き、喉も乾いてきた時、運良く喫茶店の看板を発見する。 彼は霧が晴れるまでそこで休憩しようと思い、扉を開く。そこには女性の店員が一人居るだけだった。 初めは男装だと考えていた女性の店員、阿宮と会話していくうちに彼が男性だということに気がついた。そして同時に阿宮も世界の常識がおかしいことに気がつく。 そして話していくうちに貞操逆転世界へ転移してしまったことを知る。 警察へ連れて行かれ、戸籍がないことも発覚し、家もない状況。先が不安ではあるが、戻れないだろうと考え新たな世界で生きていくことを決意した。 これはひょんなことから貞操逆転世界に転移してしまった阿宮が高身長女子と関わり、関係を深めながら貞操逆転世界を謳歌する話。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

処理中です...