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5章 ドラマ撮影開始まで

夏目凛の写真集発売 2

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~内山社長視点~

 時は少し遡り、凛くんの写真集が発売される6/1の深夜0時ごろ。
 アタシは事務所の社長室でSNSを眺めていた。

「ついに来た。写真集の発売日が。完売はしなくていいが、できるだけ多くの人に買ってもらわないと困るぞ」

 アタシはマジトーンで呟く。
 なぜなら凛くんの1st写真集を15万部も用意したから。
 写真集が15万部売れる芸能人は滅多におらず、15万部以上売り上げている芸能人は誰もが知っている有名人しかいない。
 そのことを理解しつつもアタシは凛くんの人気に賭け、15万部も準備した。

「さぁ、どうなる。頼むから売れてくれよ」

 アタシは切に願った。



 0時15分となり、アタシはSNSで写真集の売れ行きを調べる。
 そして発売開始してから15分で完売続出のコメントと買えなかった人のコメントを確認する。

「よしっ!さすが凛くんだ!」

 アタシは数々のコメントを見てガッツポーズをする。

「0時から発売しているコンビニだけの売り上げだが、飛ぶように売れているようだな」

 コンビニ以外にもTSU⚪︎AYAなど、10時開店の店もあるため、全て完売するかは分からないが、上々の滑り出しをしているようだ。

「正直、15万部は準備しすぎたと思ってたが足りなくなるんじゃないか?」

 そう思ってしまうくらいの勢いで凛くんの写真集が売れているようだ。

「これは社員たちにはまだまだ忙しい日々を過ごしてもらうことになりそうだな」

 ゴールデンウィーク初日に撮影した凛くんの写真集を翌月に発売するというハイペースな作業を社員にお願いしたことに加え、今回の売れ行きでまだまだ忙しくなることが確定した。
 今回も落ち着いたらボーナスを支給しようと心に誓う。

 その後もSNSを漁ったアタシは仮眠室へ移動し、朝まで眠りについた。



 始業開始の9時となる。

 すると一斉に固定電話が鳴り始め…

「社長ーっ!またしても増刷依頼です!」
「こちらも増刷依頼です!」
「分かった!矢上、増刷依頼の数をしっかり記録しておけ!」
「分かりました!」

 等々、朝から対応に追われる。

「さすが凛くんだ。次のVi⚪︎i国宝級イケメンランキングで確実に1位を獲れると言われてるだけあるな」

 Vi⚪︎iでは年に2回、上半期と下半期に国宝級イケメンを決める投票が行われ、上半期の投票が5月中旬から6月中旬まで行われる。
 この投票結果と本年度の上半期の話題性・活躍度を考慮してポイント化、ランキングを決め1位を発表するが、現在、投票期間中にも関わらず凛くんが1位で確定だろうと言う声が多々聞こえている。

(イケメン俳優や男性アイドルが霞んでしまうほどのルックスに加え、性格もイケメンということが世間に広まっているからな。それに話題性も文句なしだ。上半期は凛くんで決まりだろう。何なら下半期も1位を獲得して殿堂入りしそうな勢いだ)

 それを踏まえて15万部も用意したが、この勢いだと今日中にも15万部が完売しそうだ。

(1人で何冊も買ってる人がアタシの想定より遥かに多いからな)

 15万部もあれば当日に完売することはないと思い、事務所は忙しくならないと思っていたが、嬉しい誤算によって大忙しだ。
 その後、休む暇なく動き回る時間が続き、夜の21時ごろ、15万部全てが売り切れたことを確認した。

「相変わらず凛くんは凄いなぁ。多めに準備した15万部が全て完売するなんて」
「そうですね。規格外としか言いようがありません」

 アタシの言葉に21時まで残って残業してくれた矢上が答える。

「でも納得の結果ですね。凛さんほどのイケメンの写真集なら誰もが欲しがると思いますので。実際、買えなかった人たちは大勢いるらしいですよ」

 矢上の言葉通り、手に入らなかった人たちの嘆きの声が多数SNSで確認されており、15万部では足りなかったらしい。

「そうだな。これは増刷して発売しなければならないが……アタシに良い考えがあるんだ」
「……?何でしょうか?」

 アタシの言葉に矢上が首を傾げつつ聞いてくる。

「増刷した写真集を店で売るだけじゃ勿体無いと思うんだ。だからアタシは凛くんのサイン付きを販売するか、サイン会をしながらの販売を考えてる」
「おぉー!それは素晴らしいアイデアです!それなら今日写真集を購入した方も買おうと思いますよ!」
「だろ?まだまだ凛くんには稼いでもらわないといけないからな。ってなわけで矢上。サイン会を開催する、もしくは写真集にサインを書いてもらう予定だということを凛くんへ伝えてくれ。寧々さんにも話を通せば断ったりはしないだろう」
「分かりました!」

 そう返事をして矢上が部屋から飛び出した。



 その後、寧々さんからのお願いに負けた凛くんがサイン会を開きたいと言ってきた。

「凛くんは寧々さんに激甘だからな。まぁ、寧々さんみたいな美少女が妹だったら激甘なお兄ちゃんになるのも分かるけど」

 きっと寧々さんが「サイン会開こうよ!」とでも言って凛くんを説得したんだろう。
 その様子が容易に想像できたアタシは笑みを浮かべる。

「これで写真集の増刷と並行してサイン会の準備も行うこととなった。忙しくなりそうだな」

 そんなことを思いながらアタシは仕事を再開した。


【5章完結】
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