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5章 ドラマ撮影開始まで

ポカリ⚪︎エットのCM 1

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 桃ちゃんとの写真集が発売された数日後。
 以前、俺と美奈が撮影したCMが放送される日となる。

「いよいよ放送されるんだね!お兄ちゃんと美奈ちゃんがイチャイチャしてるCMが!」
「違うわ。ポカリ⚪︎エットのCMだ」

 変なことを言っている寧々にすぐさま訂正を入れる。
 今回、俺と美奈が撮影したCMがポカリ⚪︎エットの製造•販売会社である大⚪︎製薬のSNSで先行配信されることとなっており、12時からの先行配信を見るため、俺は寧々と時間を潰していた。
 しばらく寧々と他愛のない話をしていると時計の針が12時を示し、大⚪︎製薬のSNSに1つの動画が投稿された。

「きたっ!」

 寧々が無駄のない動きで投稿された動画をタップし、俺たちはポカリ⚪︎エットのCMを視聴する。

『~~~🎶』

 すると可愛いらしい音楽と共に、体育館でバスケのシュート練習を行う俺が画面に現れる。

「あ、のぞみ坂47の新曲だ!」

 今回起用されたCMソングは美奈が所属しているアイドルグループ『のぞみ坂47』の新曲で、一所懸命スポーツに取り組む人たちに向けた応援ソングとなっている。

『はぁ…はぁ…あと1本』

 無数のバスケットボールが転がっている中、額に滲む汗を拭いつつ、俺がフリースローを打つために構える。

『はっ!』

 という掛け声と共にシュートを放つと、ボールが綺麗な放物線を描いてゴールに吸い込まれる。
 その様子を確認した俺が『ふぅ』と一息つきながら額の汗を拭う。

『よしっ、少し休憩するか』

 そして休憩のためその場に腰掛けると、ブレザー姿の美奈が駆け寄ってきた。

『凛先輩っ!お疲れ様です!』

 そう言って美奈が満面の笑みで俺にタオルとポカリ⚪︎エットを手渡す。
 美奈のブレザー姿はとても似合っており、可愛らしい笑顔と相まって画面越しにも関わらず見惚れてしまう。

『ありがとう。美奈』

 俺は美奈からタオルとポカリ⚪︎エットを受け取り、汗を拭って一口飲む。
 その瞬間、美奈の顔が緩み、嬉しそうな顔を浮かべた。

「おぉー!美奈ちゃんのブレザー姿、めっちゃ似合ってるね!しかもお兄ちゃんのことを先輩って呼んでるよ!先輩後輩って設定なの?」
「あぁ。俺の後輩でバスケ部のマネージャー役だ。実際、年齢も1歳違いだからな」
「確かにっ!」

 そんな会話をしていると、画面内の美奈が俺に話しかけていた。

『凛先輩はまだ帰らないのですか?』
『あぁ。もう少し練習しようと思う』

 そう言って俺はタオルとポカリ⚪︎エットを近くに置いてあるバックの上に置く。

『タオルは明日、洗濯して返すよ。だから美奈は先に帰っていいぞ』
『いえ、私も先輩の自主練に付き合います!だって私はバスケをする先輩を見るのが好きですから!』

 そう言って美奈が眩しい笑顔を見せる。

「美奈ちゃん可愛いっ!何あの笑顔!」
「そうだな。あの笑顔は反則級の可愛さだと思う。おかげで次のセリフが一瞬、飛んでしまったからな」

 美奈の眩しい笑顔を間近で見た俺は見惚れてしまい、セリフが一瞬飛んでしまった。
 それくらい魅力的な笑顔が画面に映っており、寧々が騒がしくなる気持ちも分かる。

『そ、そこまで言われたら断ることはできないな』

 美奈の笑顔を間近で見た俺が、頬を少し染めながら立ち上がり、ボールを持つ。

『なら今日は一緒に帰るぞ。可愛い美奈を暗い夜道の中、帰らせるわけにはいかないからな』
『~~っ!はいっ!』

 俺の言葉に美奈が頬を染めながら笑顔で頷く。

「きゃぁっ!そのセリフはイケメンだよ!美奈ちゃんを堕としにきてるよ!」
「い、言っとくけど俺は準備されたセリフを言っただけだからな!」

 隣で騒がしい寧々に、俺がセリフを考えたと思われないよう釘を刺す。

 そのタイミングで…

――今年の夏はポ⚪︎リを飲んで恋しよ?

 という美奈の声が聞こえ、CMが終了した。

「おぉー!とても良いCMだったよ!」

 手を叩きながら視聴したCMを絶賛する寧々。

「そうだな。ストーリーは簡潔にまとめられ、編集も素晴らしい。それに俺や美奈の演技に違和感はなかった。それどころか美奈の演技は女優として活躍している人並みの演技力だぞ」
「だね!美奈ちゃんの演技はすごく良かったよ!もちろん、お兄ちゃんもね!」
「いやいや、俺の演技よりも美奈の方がすごいぞ。監督の要望で俺のことが好きな後輩マネージャーを演じてるんだが、本当に俺のことが好きなんじゃないかと勘違いしてしまうくらい完璧に恋する後輩を演じてたからな」

 俺は寧々に向けて、美奈の演技をべた褒めする。

「あの笑顔や仕草は一朝一夕で身につかないはずだ。きっと俺に恋をする後輩マネージャーを家で何度も練習したんだろう。俺も美奈を見習わないとな」

 実際、美奈の笑顔や仕草に何度もドキドキした。
 演技だと知らなければ「俺に気があるのでは?」と勘違いしてしまうほどだ。
 それくらい、美奈は完璧に恋する女の子を演じていた。
 そのため俺は寧々に向けて美奈の演技を絶賛するが、何故か寧々の目がどんどんジト目になっていく。

「ど、どうした?」
「はぁ……お兄ちゃんはいつになったら彼女さんができるんだろうか……」
「え、何でそんな話になってんの?今は美奈の演技力について話してるんだよな?」

 そう問いかけるが、ジト目で俺のことを見続ける寧々を見て、俺は問いかけるのを諦めた。
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