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5章 ドラマ撮影開始まで
『鷲尾の家族に乾杯』の放送 7
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――夏目さんが氷鶴さんと翔太くんの実家である着付け屋を訪れてから数日後、スタッフが再訪問してみました。
そして、俺が訪れた数日後の氷鶴さんたちが放送される。
『ごめんくださーい』
『はーい!いらっしゃいませ!』
スタッフが着付け屋に入店すると、看板娘である氷鶴さんが着物姿で登場した。
前回放送時は可愛らしいピンク色の着物を着ていたが、今回は水色の着物を着ており、こちらの着物姿もとても似合っている。
『以前、この番組の収録で夏目さんが来店されましたが、その後、反響とかはありますか?』
『そうですね。リン様が来られてから、3倍近くお客様が増えましたね』
『3倍ですか!?かなりの反響をいただいてますね!』
『おかげで学校が終わったら急いで家に帰る日々を繰り返してます』
そう言って氷鶴さんが笑う。
『リン様が着物を着て街を歩いてくださったので、普段着物を着ない方々が着物を着てみたいと思うようになったらしく……』
「お兄ちゃん効果すごっ!」
「た、確かに着物を着て街を歩いたけど、宣伝なんかしてないぞ?」
着物を着て街を30分程度歩いたが、店の宣伝は一切行っていない。
ただ、この辺りの着付け屋は氷鶴さんの実家しかないため、俺の姿を見て着物に興味を持った人たちが氷鶴さんの店に駆け込んだのだろう。
「それだけお兄ちゃんの着物姿が魅力的だったってことだよ!」
「俺が着物を着たことで氷鶴さんの店が繁盛したのなら良かったよ。氷鶴さんと翔太にはお世話になったからな」
俺のおかげで繁盛しているのなら嬉しい限りなので、俺は笑みを溢す。
すると、スタッフが店の中に置かれているショーケースに視線を向ける。
その中には紺色の着物が飾られており、俺が着た紺色の着物にとても良く似ていた。
『あれ?前回夏目さんと来店した時は着物を飾っていなかったと思いますが、あの着物は珍しい着物ですか?』
『はいっ!リン様が着た着物です!』
氷鶴さんが満面の笑みで答える。
「あははっ!お兄ちゃんが着た着物、飾られてるよ!」
「そんなことしないでぇぇぇーっ!」
俺はテレビ画面に向けて叫ぶ。
しかしテレビに向けて叫んでも氷鶴さんには伝わらない。
『本当はリン様が着た着物を洗濯せずに飾りたかったのですが親に怒られたので、洗濯する前にしっかり匂いを堪能して……とかせずに丁寧に洗って飾りました』
「洗濯する前にしっかり匂いを堪能したんだね」
「匂いなんて嗅いでほしくないんだけど!」
氷鶴さんは誤魔化したようだが全く誤魔化しきれておらず、洗濯前に堪能したことが伝わってくる。
4月に収録を行ったため汗はかいてないと思うが、匂いを堪能されるのは恥ずかしい。
『ここ最近はショーケースの写真を撮る方が多く、リン様が着た着物目当てで来店される方もいらっしゃるくらいです』
「お兄ちゃんの着た着物が京都の観光名所になりそうな勢いだね」
「観光案内のパンフレットに『夏目凛が着た着物っ!』とか記載されたくないんだが……まぁ、氷鶴さんたちの店が繁盛するなら気にしないでいいか」
そんなことを話しながら氷鶴さんとスタッフの話を聞く。
『では、最後に夏目さんへ一言お願いします』
『リン様ーっ!京都に寄った時は店まで来てくださいっ!私や翔太が盛大におもてなしをしますので!』
そう言って氷鶴さんが満面の笑みを浮かべる。
「私、氷鶴さんとは仲良くなれそうだよ!氷鶴さんたちに会いに行く時は私も連れてってね!」
「そうだな。氷鶴さんと翔太にはお世話になったから、京都に行った時はお礼の品でも持って訪れるか」
そんな会話をしながらテレビを視聴した。
その後、画面が切り替わり、俺の旅が放送される。
映像は俺が氷鶴さんと翔太の2人と別れ、紺色の着物を着込んで街を歩いている映像だ。
『見て!リン様が着物を着てるよ!』
『カッコよすぎっ!めっちゃ似合ってる!』
『着物が似合う男性って素敵ー!』
『テレビや写真で見るよりもカッコいいよっ!』
そして再び、黄色い声援をたくさんもらう。
『あはは……ありがとう』
その声に苦笑いしながら鷲尾さんとの集合場所へ向かう。
「確かに氷鶴さんたちの店を宣伝してはないけど、これは歩くだけで宣伝してるようなものだよ」
「……そうだな」
歩いている俺のことをすれ違う人たちが振り返って見ている。
どれだけ注目を集めるかが宣伝効果へと直結するため、歩いているだけで注目を集めている俺は知らず知らずのうちに氷鶴さんたちの店を宣伝したようだ。
そんな会話をしていると、画面内の俺が鷲尾さんと合流する。
『お、着物を着たんだ。とても似合ってるよ』
『ありがとうございます』
鷲尾さんが再会と同時に俺の着物姿を褒めてくれる。
『京都の街はどうだった?』
『そうですね、とても面白かったです』
『うんうん、それなら良かったよ。この旅で夏目くんにどんな出会いがあったかは放送されるまで聞かないようにするから。楽しみにしてるよ』
『とても良い出会いがありましたので、楽しみにしてください!』
そんな会話をした後、鷲尾さんが締めの言葉を言う。
そしてスタジオへと画面が切り替わり、鷲尾さんが俺の旅の感想を言ってくれる。
『さすが夏目さん。女の子にモテモテだね』
『あはは……ありがとうございます』
苦笑いしながら鷲尾さんの言葉に返答する。
その後も鷲尾さんと俺が軽快なトークを繰り広げ…
『また来週もこの時間にお会いしましょう』
『ありがとうございましたー!』
『鷲尾の家族に乾杯』の放送が終了した。
【次話は寧々視点となります】
そして、俺が訪れた数日後の氷鶴さんたちが放送される。
『ごめんくださーい』
『はーい!いらっしゃいませ!』
スタッフが着付け屋に入店すると、看板娘である氷鶴さんが着物姿で登場した。
前回放送時は可愛らしいピンク色の着物を着ていたが、今回は水色の着物を着ており、こちらの着物姿もとても似合っている。
『以前、この番組の収録で夏目さんが来店されましたが、その後、反響とかはありますか?』
『そうですね。リン様が来られてから、3倍近くお客様が増えましたね』
『3倍ですか!?かなりの反響をいただいてますね!』
『おかげで学校が終わったら急いで家に帰る日々を繰り返してます』
そう言って氷鶴さんが笑う。
『リン様が着物を着て街を歩いてくださったので、普段着物を着ない方々が着物を着てみたいと思うようになったらしく……』
「お兄ちゃん効果すごっ!」
「た、確かに着物を着て街を歩いたけど、宣伝なんかしてないぞ?」
着物を着て街を30分程度歩いたが、店の宣伝は一切行っていない。
ただ、この辺りの着付け屋は氷鶴さんの実家しかないため、俺の姿を見て着物に興味を持った人たちが氷鶴さんの店に駆け込んだのだろう。
「それだけお兄ちゃんの着物姿が魅力的だったってことだよ!」
「俺が着物を着たことで氷鶴さんの店が繁盛したのなら良かったよ。氷鶴さんと翔太にはお世話になったからな」
俺のおかげで繁盛しているのなら嬉しい限りなので、俺は笑みを溢す。
すると、スタッフが店の中に置かれているショーケースに視線を向ける。
その中には紺色の着物が飾られており、俺が着た紺色の着物にとても良く似ていた。
『あれ?前回夏目さんと来店した時は着物を飾っていなかったと思いますが、あの着物は珍しい着物ですか?』
『はいっ!リン様が着た着物です!』
氷鶴さんが満面の笑みで答える。
「あははっ!お兄ちゃんが着た着物、飾られてるよ!」
「そんなことしないでぇぇぇーっ!」
俺はテレビ画面に向けて叫ぶ。
しかしテレビに向けて叫んでも氷鶴さんには伝わらない。
『本当はリン様が着た着物を洗濯せずに飾りたかったのですが親に怒られたので、洗濯する前にしっかり匂いを堪能して……とかせずに丁寧に洗って飾りました』
「洗濯する前にしっかり匂いを堪能したんだね」
「匂いなんて嗅いでほしくないんだけど!」
氷鶴さんは誤魔化したようだが全く誤魔化しきれておらず、洗濯前に堪能したことが伝わってくる。
4月に収録を行ったため汗はかいてないと思うが、匂いを堪能されるのは恥ずかしい。
『ここ最近はショーケースの写真を撮る方が多く、リン様が着た着物目当てで来店される方もいらっしゃるくらいです』
「お兄ちゃんの着た着物が京都の観光名所になりそうな勢いだね」
「観光案内のパンフレットに『夏目凛が着た着物っ!』とか記載されたくないんだが……まぁ、氷鶴さんたちの店が繁盛するなら気にしないでいいか」
そんなことを話しながら氷鶴さんとスタッフの話を聞く。
『では、最後に夏目さんへ一言お願いします』
『リン様ーっ!京都に寄った時は店まで来てくださいっ!私や翔太が盛大におもてなしをしますので!』
そう言って氷鶴さんが満面の笑みを浮かべる。
「私、氷鶴さんとは仲良くなれそうだよ!氷鶴さんたちに会いに行く時は私も連れてってね!」
「そうだな。氷鶴さんと翔太にはお世話になったから、京都に行った時はお礼の品でも持って訪れるか」
そんな会話をしながらテレビを視聴した。
その後、画面が切り替わり、俺の旅が放送される。
映像は俺が氷鶴さんと翔太の2人と別れ、紺色の着物を着込んで街を歩いている映像だ。
『見て!リン様が着物を着てるよ!』
『カッコよすぎっ!めっちゃ似合ってる!』
『着物が似合う男性って素敵ー!』
『テレビや写真で見るよりもカッコいいよっ!』
そして再び、黄色い声援をたくさんもらう。
『あはは……ありがとう』
その声に苦笑いしながら鷲尾さんとの集合場所へ向かう。
「確かに氷鶴さんたちの店を宣伝してはないけど、これは歩くだけで宣伝してるようなものだよ」
「……そうだな」
歩いている俺のことをすれ違う人たちが振り返って見ている。
どれだけ注目を集めるかが宣伝効果へと直結するため、歩いているだけで注目を集めている俺は知らず知らずのうちに氷鶴さんたちの店を宣伝したようだ。
そんな会話をしていると、画面内の俺が鷲尾さんと合流する。
『お、着物を着たんだ。とても似合ってるよ』
『ありがとうございます』
鷲尾さんが再会と同時に俺の着物姿を褒めてくれる。
『京都の街はどうだった?』
『そうですね、とても面白かったです』
『うんうん、それなら良かったよ。この旅で夏目くんにどんな出会いがあったかは放送されるまで聞かないようにするから。楽しみにしてるよ』
『とても良い出会いがありましたので、楽しみにしてください!』
そんな会話をした後、鷲尾さんが締めの言葉を言う。
そしてスタジオへと画面が切り替わり、鷲尾さんが俺の旅の感想を言ってくれる。
『さすが夏目さん。女の子にモテモテだね』
『あはは……ありがとうございます』
苦笑いしながら鷲尾さんの言葉に返答する。
その後も鷲尾さんと俺が軽快なトークを繰り広げ…
『また来週もこの時間にお会いしましょう』
『ありがとうございましたー!』
『鷲尾の家族に乾杯』の放送が終了した。
【次話は寧々視点となります】
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