上 下
76 / 159
5章 ドラマ撮影開始まで

『鷲尾の家族に乾杯』の放送 3

しおりを挟む
「あははっ!お兄ちゃん、初っ端から飛ばすねー!」

 女子高生2人が気絶した様子を見た寧々が大爆笑している。

「いや、笑い事じゃないから。俺、突然目の前で倒れそうになってめっちゃ焦ったからな」

 そんな寧々にジト目でツッコミを入れる。
 そのタイミングで画面が切り替わり、今度は気絶から復活した女子高生2人が画面に映し出される。
 この映像は俺と別れた後にスタッフが撮影したもので、後日談のようなものにあたる。

――では夏目さんと会話したことで気絶された女子高生2人へ、インタビューをしてみたいと思います。

 とのナレーションの後、女子高生2人へスタッフが質問をする。

『夏目さんと直接お会いしてどうでしたか?』
『ヤバ過ぎです!チョーイケメンでした!今も心臓がバクバクしてますよ!』
『話しかけられてめっちゃ嬉しかったです!早速、友達に自慢したいと思います!』

 気絶から復活したばかりだというのに興奮気味で語る女子高生2人。
 そんな2人にスタッフが話しかける。

『実はお2人に夏目さんから伝言を預かっております』

 そう言ってスタッフが俺からの伝言を話し始める。

『ごめんなさい。俺が話しかけたせいで観光する時間が無くなっちゃって。そのお詫びといってはなんですが、これを受け取ってください』

 伝言を伝えたスタッフが俺からの贈り物である黄色い花を2人にプレゼントする。

『えっ!リン様から花を!?』
『も、もらって良いんですか!?』
『はい。夏目さんがお詫びの品として2人に購入された物です。夏目さんからのメッセージも付属しておりますので読んでみてください』

 スタッフに促された女子高生2人が、花に付属しているメッセージカードを読む。

『この花の名前は福寿草といって、花言葉は【幸せを招く】【永久の幸福】です。2人に永遠の幸せが訪れるようにという願いを込めて贈りました。気に入ってくれると嬉しいです』

 メッセージを読み終えた2人が“ボッ”と顔を真っ赤にする。

『うぅ……こんなの惚れちゃいますよ……』
『私、リン様のこと大好きになっちゃいました……』

 2人の女子高生がトロンとした目で呟く。

『開花時期は4月までなのでもうすぐ枯れると思いますが、この花は枯れても1月頃には再び咲き誇るらしいです』

 俺が伝えたことをスタッフが2人に伝える。

『大切に育ててくださいね』
『はい……大切に育てます……』
『私、この花を宝物にします……』

 2人が蕩けたような顔でスタッフの話に頷く。
 そこで画面が切り替わり、スタジオ内へと場面が移る。
 そのタイミングで隣に座っている寧々が声を上げる。

「ちょっ!お兄ちゃん!それは女子高生2人を殺しにきてるよ!オーバーキルだよ!」
「オ、オーバーキルなんてしてないぞ。俺はただ純粋に、2人に申し訳ないことをしたと思って贈り物をしただけだ」
「なんで福寿草なんて送ったの!あんなの惚れちゃうに決まってるでしょ!お兄ちゃんは女子高生2人を口説きたかったの!?」
「そ、そんなつもりで送ってねぇよ!」

 女子高生2人を口説くために福寿草を送ったわけじゃない。
 本当に申し訳ないことをしたので、2人に幸せが訪れるようにという願いを込めてプレゼントしただけだ。

「てか、お兄ちゃん。いつの間に花言葉なんて覚えたの?」
「ふっ、俺を甘く見るなよ。大抵の花なら花言葉はバッチリだ」

 子役の頃、花に関連するドラマに出演したことをキッカケに花に興味を持った俺は、花言葉について勉強をした。
 そのため、大抵の花ならすぐに花言葉を言える自信がある。

「……はぁ。お兄ちゃんって女の子にモテることに関しては天才的だよね。そうやって真奈美ちゃんや桃華さん、美奈ちゃんを口説いてきたんだね」
「おい、妹よ。俺は3人とも口説いてなんかないからな」

 妹がバカなことを言っていたため、ジト目でツッコむ。

「鈍いことに加え無自覚女たらしまで兼ね備えてるなんて。私、将来お兄ちゃんが女の子から刺されないか心配だよ」
「だから俺の話を聞けよ」

 物騒なことを言われたが、俺の話に聞く耳を持たない寧々を見て弁明を諦め、テレビへと視線を戻した。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

[完結済み]男女比1対99の貞操観念が逆転した世界での日常が狂いまくっている件

森 拓也
キャラ文芸
俺、緒方 悟(おがた さとる)は意識を取り戻したら男女比1対99の貞操観念が逆転した世界にいた。そこでは男が稀少であり、何よりも尊重されていて、俺も例外ではなかった。 学校の中も、男子生徒が数人しかいないからまるで雰囲気が違う。廊下を歩いてても、女子たちの声だけが聞こえてくる。まるで別の世界みたいに。 そんな中でも俺の周りには優しいな女子たちがたくさんいる。特に、幼馴染の美羽はずっと俺のことを気にかけてくれているみたいで……

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

勝負に勝ったので委員長におっぱいを見せてもらった

矢木羽研
青春
優等生の委員長と「勝ったほうが言うことを聞く」という賭けをしたので、「おっぱい見せて」と頼んでみたら……青春寸止めストーリー。

まさか、、お兄ちゃんが私の主治医なんて、、

ならくま。くん
キャラ文芸
おはこんばんにちは!どうも!私は女子中学生の泪川沙織(るいかわさおり)です!私こんなに元気そうに見えるけど実は貧血や喘息、、いっぱい持ってるんだ、、まあ私の主治医はさすがに知人だと思わなかったんだけどそしたら血のつながっていないお兄ちゃんだったんだ、、流石にちょっとこれはおかしいよね!?でもお兄ちゃんが医者なことは事実だし、、 私のおにいちゃんは↓ 泪川亮(るいかわりょう)お兄ちゃん、イケメンだし高身長だしもう何もかも完璧って感じなの!お兄ちゃんとは一緒に住んでるんだけどなんでもてきぱきこなすんだよね、、そんな二人の日常をお送りします!

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~

菱沼あゆ
キャラ文芸
 突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。  洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。  天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。  洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。  中華後宮ラブコメディ。

漫画の寝取り竿役に転生して真面目に生きようとしたのに、なぜかエッチな巨乳ヒロインがぐいぐい攻めてくるんだけど?

みずがめ
恋愛
目が覚めたら読んだことのあるエロ漫画の最低寝取り野郎になっていた。 なんでよりによってこんな悪役に転生してしまったんだ。最初はそう落ち込んだが、よく考えれば若いチートボディを手に入れて学生時代をやり直せる。 身体の持ち主が悪人なら意識を乗っ取ったことに心を痛める必要はない。俺がヒロインを寝取りさえしなければ、主人公は精神崩壊することなくハッピーエンドを迎えるだろう。 一時の快楽に身を委ねて他人の人生を狂わせるだなんて、そんな責任を負いたくはない。ここが現実である以上、NTRする気にはなれなかった。メインヒロインとは適切な距離を保っていこう。俺自身がお天道様の下で青春を送るために、そう固く決意した。 ……なのになぜ、俺はヒロインに誘惑されているんだ? ※他サイトでも掲載しています。 ※表紙や作中イラストは、AIイラストレーターのおしつじさん(https://twitter.com/your_shitsuji)に外注契約を通して作成していただきました。おしつじさんのAIイラストはすべて商用利用が認められたものを使用しており、また「小説活動に関する利用許諾」を許可していただいています。

処理中です...