68 / 169
4章 ゴールデンウィーク編
桃ちゃん家へ 4
しおりを挟む
「い、今は私のあだ名よりも先に話すことがあると思います!」
顔を赤くした桃ちゃんが話題をもとに戻す。
「ははっ、そうだな」
桃ちゃんの態度に総一郎さんが笑った後、再び顔を引き締める。
「昔の桃華を覚えているなら桃華の様子が普通の子とは違った所を覚えているだろう。夏目くんと出会うまでの桃華は雨宮財閥の長女という肩書きのせいで、家族以外誰も信用せず、毎日を楽しくなさそうに過ごしていた。それこそ、この屋敷にいる使用人たちのことも信用しなかったんだ」
俺と出会う前の桃ちゃんは総一郎さんの言う通り、桃ちゃんのお母さんである東條さんから離れようとしなかった。
それに加え、スタッフたちに怯えている所も見られた。
「だが、ある日を境に桃華は変わった。使用人には自ら話しかけ、学校でも友人ができ、なんでもないことで笑顔を見せるようになった。そんな桃華を見て、僕と亡き妻は盛大に喜んだ」
雨宮グループ会長という顔ではなく、桃ちゃんのことを心の底から大切に想う親の顔で総一郎さんが話す。
「僕は気になって桃華に変わった理由を聞いたんだ。そしたら君のおかげだと言った。君が雨宮財閥の長女ではなく、雨宮桃華という女の子として接してくれたおかげだとね」
「そ、そうだったのか……」
当時の俺は雨宮財閥のことなど知らず、桃ちゃんを遊びに誘った。
今、思えば恐れ多いことをしているとは思うが、当時俺と一緒に撮影現場に来ていた俺のお母さんが…
『あの女の子を誘ったら?きっと凛と友達になってくれると思うよ』
『めっちゃ俺のことを見て怯えてるけど……分かった!誘ってくるよ!』
と言って背中を押してくれた。
(俺のお母さんアホだから雨宮財閥とか知らなかった説あるな……)
美貌と家事スキルにステータスを全振りしたようなお母さんだったため、雨宮財閥を知らなかった可能性はある。
「今の桃華がいるのは夏目くんのおかげだ。だから一度、夏目くんには会って感謝の気持ちを伝えたかったんだ。ありがとう、夏目くん」
そう言って再び頭を下げる総一郎さん。
すると、前に座っていた美柑さんも頭を下げる。
「元気いっぱいなお姉ちゃんになったのはリン様のおかげです。ありがとうございました」
「美柑さん……」
桃ちゃんのことで頭を下げることができる美柑さん。
きっと、すごく優しくてお姉ちゃん想いの子なんだろう。
「私は夏目様のおかげで変わることができました。夏目様と出会ってから何気ないことで笑えるようになり、毎日が楽しくなりました」
「そうだったのか……」
俺がやったことは桃ちゃんと遊んだだけだが、きっと俺は桃ちゃんに変わるきっかけを与えたのだろう。
そのことをとても嬉しく思う。
「私、夏目様と過ごした日々は片時も忘れたことがありません」
「俺も桃ちゃんと遊んだ日々は忘れたことがないよ」
9年ぶりに再開した時に桃ちゃんだと気付かなかったが、桃ちゃんと遊んだ日々は鮮明に覚えている。
「あの時、私を誘っていただきありがとうございました」
「いえいえ。俺のおかげで桃ちゃんが変わったのなら嬉しい限りだよ」
昔の俺が何をして桃ちゃんを変えさせたのかは分からないが、桃ちゃんからの言葉はとても嬉しく思う。
すると突然、桃ちゃんがモジモジし始める。
「そ、それでその……こ、これからも昔のように私と仲良くしていただけますか?」
桃ちゃんが不安そうな顔で問いかけてくる。
その質問に対して俺の答えは決まっているため…
「あぁ、もちろんだ!これからもよろしくな!桃ちゃん!」
俺は桃ちゃんに元気よく答えた。
「今日は来てくれてありがとう。帰りも使用人に送ってもらうよう手配したから、もうしばらく桃華たちとゆっくり過ごすと良いよ」
そう言って総一郎さんが食堂から去り、俺と桃ちゃん、美柑さんの3人となる。
「あ、そうだ」
そのタイミングで俺は、桃ちゃんたちに聞かなければいけないことを思い出す。
「今日はお迎えと晩御飯をありがとう。大した物は返せないけど、2人には何かお礼をしたいと思ってるんだ。何か欲しい物とかあるか?」
色々考えたがお嬢様である2人の喜ぶ物が分からなかったため、俺は寧々の案を採用して直接聞くことにする。
「お、お礼なんて気にしなくてもいいのですが……な、何でも良いのですか?」
「あぁ。俺に買える物なら何でもいいぞ」
最近の俺は仕事のおかげで稼いでいるため、大抵の物なら買えると思っている。
「そうですね。なら……」
「ちょっと待って!」
桃ちゃんが何か言おうとした時、美柑さんが勢いよく遮る。
「お礼は物じゃなくてもいいんだよね?」
「そうだな。欲しい物とか無ければ物じゃなくてもいいが……物以外となると何もお礼できないぞ?」
美柑さんの発言に俺は首を傾げる。
「それなら大丈夫だよ!リン様の身体があればできるお礼だから!」
そう言って美柑さんがニヤリと笑った。
顔を赤くした桃ちゃんが話題をもとに戻す。
「ははっ、そうだな」
桃ちゃんの態度に総一郎さんが笑った後、再び顔を引き締める。
「昔の桃華を覚えているなら桃華の様子が普通の子とは違った所を覚えているだろう。夏目くんと出会うまでの桃華は雨宮財閥の長女という肩書きのせいで、家族以外誰も信用せず、毎日を楽しくなさそうに過ごしていた。それこそ、この屋敷にいる使用人たちのことも信用しなかったんだ」
俺と出会う前の桃ちゃんは総一郎さんの言う通り、桃ちゃんのお母さんである東條さんから離れようとしなかった。
それに加え、スタッフたちに怯えている所も見られた。
「だが、ある日を境に桃華は変わった。使用人には自ら話しかけ、学校でも友人ができ、なんでもないことで笑顔を見せるようになった。そんな桃華を見て、僕と亡き妻は盛大に喜んだ」
雨宮グループ会長という顔ではなく、桃ちゃんのことを心の底から大切に想う親の顔で総一郎さんが話す。
「僕は気になって桃華に変わった理由を聞いたんだ。そしたら君のおかげだと言った。君が雨宮財閥の長女ではなく、雨宮桃華という女の子として接してくれたおかげだとね」
「そ、そうだったのか……」
当時の俺は雨宮財閥のことなど知らず、桃ちゃんを遊びに誘った。
今、思えば恐れ多いことをしているとは思うが、当時俺と一緒に撮影現場に来ていた俺のお母さんが…
『あの女の子を誘ったら?きっと凛と友達になってくれると思うよ』
『めっちゃ俺のことを見て怯えてるけど……分かった!誘ってくるよ!』
と言って背中を押してくれた。
(俺のお母さんアホだから雨宮財閥とか知らなかった説あるな……)
美貌と家事スキルにステータスを全振りしたようなお母さんだったため、雨宮財閥を知らなかった可能性はある。
「今の桃華がいるのは夏目くんのおかげだ。だから一度、夏目くんには会って感謝の気持ちを伝えたかったんだ。ありがとう、夏目くん」
そう言って再び頭を下げる総一郎さん。
すると、前に座っていた美柑さんも頭を下げる。
「元気いっぱいなお姉ちゃんになったのはリン様のおかげです。ありがとうございました」
「美柑さん……」
桃ちゃんのことで頭を下げることができる美柑さん。
きっと、すごく優しくてお姉ちゃん想いの子なんだろう。
「私は夏目様のおかげで変わることができました。夏目様と出会ってから何気ないことで笑えるようになり、毎日が楽しくなりました」
「そうだったのか……」
俺がやったことは桃ちゃんと遊んだだけだが、きっと俺は桃ちゃんに変わるきっかけを与えたのだろう。
そのことをとても嬉しく思う。
「私、夏目様と過ごした日々は片時も忘れたことがありません」
「俺も桃ちゃんと遊んだ日々は忘れたことがないよ」
9年ぶりに再開した時に桃ちゃんだと気付かなかったが、桃ちゃんと遊んだ日々は鮮明に覚えている。
「あの時、私を誘っていただきありがとうございました」
「いえいえ。俺のおかげで桃ちゃんが変わったのなら嬉しい限りだよ」
昔の俺が何をして桃ちゃんを変えさせたのかは分からないが、桃ちゃんからの言葉はとても嬉しく思う。
すると突然、桃ちゃんがモジモジし始める。
「そ、それでその……こ、これからも昔のように私と仲良くしていただけますか?」
桃ちゃんが不安そうな顔で問いかけてくる。
その質問に対して俺の答えは決まっているため…
「あぁ、もちろんだ!これからもよろしくな!桃ちゃん!」
俺は桃ちゃんに元気よく答えた。
「今日は来てくれてありがとう。帰りも使用人に送ってもらうよう手配したから、もうしばらく桃華たちとゆっくり過ごすと良いよ」
そう言って総一郎さんが食堂から去り、俺と桃ちゃん、美柑さんの3人となる。
「あ、そうだ」
そのタイミングで俺は、桃ちゃんたちに聞かなければいけないことを思い出す。
「今日はお迎えと晩御飯をありがとう。大した物は返せないけど、2人には何かお礼をしたいと思ってるんだ。何か欲しい物とかあるか?」
色々考えたがお嬢様である2人の喜ぶ物が分からなかったため、俺は寧々の案を採用して直接聞くことにする。
「お、お礼なんて気にしなくてもいいのですが……な、何でも良いのですか?」
「あぁ。俺に買える物なら何でもいいぞ」
最近の俺は仕事のおかげで稼いでいるため、大抵の物なら買えると思っている。
「そうですね。なら……」
「ちょっと待って!」
桃ちゃんが何か言おうとした時、美柑さんが勢いよく遮る。
「お礼は物じゃなくてもいいんだよね?」
「そうだな。欲しい物とか無ければ物じゃなくてもいいが……物以外となると何もお礼できないぞ?」
美柑さんの発言に俺は首を傾げる。
「それなら大丈夫だよ!リン様の身体があればできるお礼だから!」
そう言って美柑さんがニヤリと笑った。
31
お気に入りに追加
1,297
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった
ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます!
僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか?
『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!
仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。
しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。
そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。
一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった!
これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!

貞操観念逆転世界におけるニートの日常
猫丸
恋愛
男女比1:100。
女性の価値が著しく低下した世界へやってきた【大鳥奏】という一人の少年。
夢のような世界で彼が望んだのは、ラブコメでも、ハーレムでもなく、男の希少性を利用した引き籠り生活だった。
ネトゲは楽しいし、一人は気楽だし、学校行かなくてもいいとか最高だし。
しかし、男女の比率が大きく偏った逆転世界は、そんな彼を放っておくはずもなく……
『カナデさんってもしかして男なんじゃ……?』
『ないでしょw』
『ないと思うけど……え、マジ?』
これは貞操観念逆転世界にやってきた大鳥奏という少年が世界との関わりを断ち自宅からほとんど出ない物語。
貞操観念逆転世界のハーレム主人公を拒んだ一人のネットゲーマーの引き籠り譚である。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる