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4章 ゴールデンウィーク編

桃ちゃん家へ 2

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 桃ちゃんの使用人が運転する車で桃ちゃんの家に向かう。

「なぁ、この車ってリムジンだよな?」
「はい、そうですよ。あ、飲み物は要りますか?」
「……じゃあ遠慮なく頂こうか」

 俺の返事を聞いた桃ちゃんが、車に備え付けられている冷蔵庫からお茶を取ってくれる。

 今の俺たちは電車内のように向かい合って座っており、車に乗った時は広々とした空間や座り心地抜群のソファーに驚いた。
 ちなみに俺の隣に寧々が座り、桃ちゃんと美柑さんが俺たちの前に座っている。

「何度も言うが、今日はここまできてくれてありがとう。遠かっただろ?」
「そうですね。車で4時間くらいかかりましたので遠かったと思います。でも、遠いとかは全く思いませんでしたよ」
「……そうなのか?」
「はい。だって……」
「9年間会えなかったことに比べたら、4時間なんてあっという間だからね!」

 桃ちゃんの言葉を遮りながら美柑さんが言う。

「み、美柑っ!」

 その言葉を聞いて、桃ちゃんが顔を赤くしながら隣に座る美柑さんを“ポカポカ”と叩く。

「そ、そうだな。確かに9年と比べれば4時間はあっという間か」
「そうだよ!しかもお姉ちゃん、リン様に会うのが楽しみすぎて……」
「美柑っ!」
「んーーっ!」

 何かを言いかけていた美柑さんの口を、桃ちゃんが勢いよく塞ぐ。

「な、仲が良いな」
「そ、そんなことありませんよ。見ての通り、私のことをイジメてくる可愛くない妹です」

 顔の赤みが収まっていない状態の桃ちゃんが俺たちに向けて言う。
 そして「こほんっ!」と咳払いを挟んで話を変える。

「今回はお父様と会うために来ていただきありがとうございます」
「気にしなくていいよ。何の話をされるか分からず、内心ビクビクしているが」

 雨宮財閥の会長である桃ちゃんパパからの話だ。
 怯えない人なんていないだろう。

「2人は俺にどんな話をするか聞いてるのか?」
「もちろんです。私も夏目様に言いたかったことですから」
「……え、桃ちゃんも俺に言いたかったの?」
「はい。再会した時からずっと言いたかったことです」

(なんだろ?再会してからずっと言いたかったことって……)

 そう思い考えるが一向に思いつかないので、俺は桃ちゃんに問いかける。

「どんな話か見当がつかないから聞いても良いか?」
「ふふっ、ダメですよ。それは夜のお楽しみです」

 そう言って桃ちゃんが妖艶に笑う。
 その言葉と笑みに俺は“ドキっ”としてしまう。

「そ、そうか。ちなみに悪い話ではないんだよな?」
「はい。悪い話ではありませんので安心してください」
「お父さんもリン様のことを応援してるからね。それこそ、リン様が夏目レンとして活躍してた時から」
「そうなんだ。それなら安心だ」

 悪い話ではないと聞き、ホッと息をつく。

 その後も4人で他愛のない話をしていると…

「えっ!寧々さん、彼氏いないの!?」
「そうだよー」
「意外ですね。誰かとお付き合いされてると思ってました」
「それを言うなら桃華さんと美柑さんもです!2人とも彼氏がいないなんて驚きました!」

 話題が恋バナへと移る。

(やはり女子が3人も集まれば恋バナに発展するのが世の常なのだろう)

 そんなことを思いながら3人の会話に参加する。

「俺も彼氏がいると思ってた。許嫁や婚約者はいないのか?」

 大手財閥の娘ともなれば政略結婚は当たり前だと思っていたため、2人とも許嫁や婚約者がいると思っていた。

「あー、確かに雨宮財閥の娘ともなれば小さい頃から許嫁や婚約者がいて、将来は政略結婚の駒として使われると思ってる人が多いね」
「……違うのか?」
「はい。私たちは政略結婚の駒ではありません。自由に恋愛をして良いとお父様から言われておりますので」
「ということは、一般人と結婚してもいいのか?」
「そうだよー。もちろん、結婚相手はお父様が徹底的に調べ上げると思うけどね」

 徹底的に調べる理由は分かるのでツッコミはしないが、日本で最も大きい財閥の娘が政略結婚の駒でないことにかなり驚いている。

「理由はあるのか?」
「はい。お父様と亡き母であるお母様が政略結婚ではなく恋愛結婚だからです」
「……そういえば桃ちゃんのお母さんって女優だったな」

 桃ちゃんと美柑さんのお母さんは東條林檎さんという名前で活躍していた女優で、子役の頃、俺は1度だけ共演したことがある。
 その時に桃ちゃんと出会った。

「女優である東條さんと結婚してる時点で政略結婚じゃないな」
「はい。なので私たちに許嫁や婚約者はいません」

 ちなみに桃ちゃんと美柑さんにはお兄さんが1人おり、そのお兄さんが会長の後を継ぐことが決定しているため、恋愛自由になっているらしい。
 もしお兄さんがおらず桃ちゃんと美柑さんしか子供がいなければ、桃ちゃんたちが自由に恋愛できていたかは怪しいとのこと。

「だからはやく運命の人と出会って恋愛ドラマみたいな恋がしたいんだー!」
「ふふっ、美柑ならきっと見つかりますよ。とても可愛い女の子ですから」
「私もお兄ちゃんよりカッコいい男性とはやく出会いたいよ!」
「そ、それは……無理だと思うのでハードルを下げた方が良いと思います」
「桃華さんから現実的なアドバイスをもらっちゃったよ!」

 そんな会話をしながら俺たちは車に揺られた。
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