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4章 ゴールデンウィーク編
帰省 1
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写真撮影を終えた翌日。
俺と寧々は田舎に住んでいる母方の婆ちゃん家に電車で向かっていた。
「お父さんも来ることができればよかったのに」
「こればかりは仕方ないよ。ゴールデンウィーク中も仕事らしいからな」
「可哀想に……」
寧々が父さんのいる方角を向いて手を合わせる。
「寧々も父さんと一緒に家に残ってて良かったんだぞ?俺が婆ちゃんから指導を受けるところなんて見ても面白くないだろ?」
「そんなことないよ!久しぶりにお兄ちゃんの演技が見れるからね!それに、お婆ちゃんが付きっきりで指導するんだから、家事をする人は必要になるでしょ!?」
今回、俺は元有名女優である婆ちゃんからゴールデンウィーク最終日まで指導を受ける予定だ。
そのため寧々には来なくても良いことを伝えたが、俺のサポートをするため付いてくることを選択した。
ゴールデンウィークということで自分のやりたい事や友達と遊ぶ時間があったにも関わらず、俺のサポートという形で同行してくれた寧々に感謝しかない。
そんな寧々の優しさを嬉しく思い、俺は隣に座っている寧々の頭に手を置いて優しく撫でる。
「ありがと、寧々。ほんと、寧々は最高の妹だよ」
「えへへ~、私もお兄ちゃんのこと、最高のお兄ちゃんだって思ってるよ!」
俺のナデナデに目を細めながら寧々が言う。
その後、周囲の人たちから優しい目で見られていることに気づくまで、俺は寧々の頭を撫で続けた。
電車の乗り継ぎを3回行い、約5時間ほど電車に揺られた俺たちは母方の婆ちゃん家に着く。
移動に5時間もかかってしまったが朝はやくに家を出たため、現時刻は昼過ぎとなっている。
「相変わらず遠いなぁ」
「できるだけ人のいないところで余生を過ごしたいって言ってたからね」
昔から有名人だった婆ちゃんは余生をゆっくり過ごすため人口500人程度しかいない集落に住んでおり、集落には小さなスーパーと診療所しかない。
そのため大きなスーパーに用事がある時は、タクシーで1時間ほどかけて向かっているとのこと。
(仕方ないか。婆ちゃんのことを知らない人なんていないくらい、婆ちゃんは有名女優だからな)
婆ちゃんは数々のドラマに出演しており、代表作の『渡る世間は龍ばかり』では約30年もの間、主人公の娘役として活躍してきた。
「婆ちゃん、来たよー」
「お婆ちゃーん!」
俺たちは玄関から大きな声を出しながら“ピンポーン”とインターホンを鳴らす。
すると玄関の扉が開き、俺の婆ちゃんである山﨑律子が現れる。
「よく来たね、遠かったでしょ?はやく入ってゆっくりしなさい」
開口一番、俺たちの姿を見た婆ちゃんが笑みを見せて俺たちを家の中に促す。
演技指導以外は優しい婆ちゃんなので、今の婆ちゃんは俺たち孫の帰省を喜ぶ普通の婆ちゃんだ。
「2人に会うのは爺さんが亡くなって以来かい?」
「そうだな。その日以来になるな」
爺ちゃんが亡くなったのは去年なので、約1年ぶりに婆ちゃんと会うことになる。
「もうそんなに経つのかい。つい最近、葬儀をやった気がするんだけどねぇ」
婆ちゃんが天井を見ながらしみじみと呟く。
「あ、そうだ。2人とも長旅で疲れたでしょ。お風呂沸いてるから入ってきなさい」
「わー!ありがとー、お婆ちゃん!」
お風呂という言葉を聞いてテンションを上げる寧々。
「凛はお風呂から出たら早速指導を始めるよ。しっかりお風呂で長旅の疲労を回復しとくんだよ。遠慮なくビシバシと指導するから」
「あぁ。よろしく頼む」
先ほどまで孫の帰省を喜ぶ顔をしていたが、指導の話となった途端、キリッとした表情となる。
(婆ちゃんも気合い入ってるな。これは付いていくためにしっかり休まないと)
そんなことを思いつつ仏壇の前で爺さんに挨拶した俺は、寧々に1番風呂を譲り、リビングでゆっくり過ごした。
俺と寧々は田舎に住んでいる母方の婆ちゃん家に電車で向かっていた。
「お父さんも来ることができればよかったのに」
「こればかりは仕方ないよ。ゴールデンウィーク中も仕事らしいからな」
「可哀想に……」
寧々が父さんのいる方角を向いて手を合わせる。
「寧々も父さんと一緒に家に残ってて良かったんだぞ?俺が婆ちゃんから指導を受けるところなんて見ても面白くないだろ?」
「そんなことないよ!久しぶりにお兄ちゃんの演技が見れるからね!それに、お婆ちゃんが付きっきりで指導するんだから、家事をする人は必要になるでしょ!?」
今回、俺は元有名女優である婆ちゃんからゴールデンウィーク最終日まで指導を受ける予定だ。
そのため寧々には来なくても良いことを伝えたが、俺のサポートをするため付いてくることを選択した。
ゴールデンウィークということで自分のやりたい事や友達と遊ぶ時間があったにも関わらず、俺のサポートという形で同行してくれた寧々に感謝しかない。
そんな寧々の優しさを嬉しく思い、俺は隣に座っている寧々の頭に手を置いて優しく撫でる。
「ありがと、寧々。ほんと、寧々は最高の妹だよ」
「えへへ~、私もお兄ちゃんのこと、最高のお兄ちゃんだって思ってるよ!」
俺のナデナデに目を細めながら寧々が言う。
その後、周囲の人たちから優しい目で見られていることに気づくまで、俺は寧々の頭を撫で続けた。
電車の乗り継ぎを3回行い、約5時間ほど電車に揺られた俺たちは母方の婆ちゃん家に着く。
移動に5時間もかかってしまったが朝はやくに家を出たため、現時刻は昼過ぎとなっている。
「相変わらず遠いなぁ」
「できるだけ人のいないところで余生を過ごしたいって言ってたからね」
昔から有名人だった婆ちゃんは余生をゆっくり過ごすため人口500人程度しかいない集落に住んでおり、集落には小さなスーパーと診療所しかない。
そのため大きなスーパーに用事がある時は、タクシーで1時間ほどかけて向かっているとのこと。
(仕方ないか。婆ちゃんのことを知らない人なんていないくらい、婆ちゃんは有名女優だからな)
婆ちゃんは数々のドラマに出演しており、代表作の『渡る世間は龍ばかり』では約30年もの間、主人公の娘役として活躍してきた。
「婆ちゃん、来たよー」
「お婆ちゃーん!」
俺たちは玄関から大きな声を出しながら“ピンポーン”とインターホンを鳴らす。
すると玄関の扉が開き、俺の婆ちゃんである山﨑律子が現れる。
「よく来たね、遠かったでしょ?はやく入ってゆっくりしなさい」
開口一番、俺たちの姿を見た婆ちゃんが笑みを見せて俺たちを家の中に促す。
演技指導以外は優しい婆ちゃんなので、今の婆ちゃんは俺たち孫の帰省を喜ぶ普通の婆ちゃんだ。
「2人に会うのは爺さんが亡くなって以来かい?」
「そうだな。その日以来になるな」
爺ちゃんが亡くなったのは去年なので、約1年ぶりに婆ちゃんと会うことになる。
「もうそんなに経つのかい。つい最近、葬儀をやった気がするんだけどねぇ」
婆ちゃんが天井を見ながらしみじみと呟く。
「あ、そうだ。2人とも長旅で疲れたでしょ。お風呂沸いてるから入ってきなさい」
「わー!ありがとー、お婆ちゃん!」
お風呂という言葉を聞いてテンションを上げる寧々。
「凛はお風呂から出たら早速指導を始めるよ。しっかりお風呂で長旅の疲労を回復しとくんだよ。遠慮なくビシバシと指導するから」
「あぁ。よろしく頼む」
先ほどまで孫の帰省を喜ぶ顔をしていたが、指導の話となった途端、キリッとした表情となる。
(婆ちゃんも気合い入ってるな。これは付いていくためにしっかり休まないと)
そんなことを思いつつ仏壇の前で爺さんに挨拶した俺は、寧々に1番風呂を譲り、リビングでゆっくり過ごした。
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