上 下
16 / 159
2章 芸能界復帰編

復帰後初仕事 1

しおりを挟む
 俺は急いで自分の楽屋へ戻る。
 そして矢上さんと本日の収録の最終確認を行う。

「今日は復帰後初仕事です!頑張ってください!」
「はいっ!」

 俺は元気に応え、楽屋を出る。
 そして、スタッフへ挨拶をしつつ用意された席に座る。

「凛くん!今日はよろしくね!」
「あぁ!迷惑かけるとは思うが、よろしく頼む!」

 俺は隣に座っている真奈美へ伝え、司会を務める下田さんを見る。
 この場にはゲストである俺と真奈美、そして司会の下田さんしかおらず、今回は3人でひたすら話すだけの収録となっている。

「さぁ、始まりました!『おっしゃれ~イズム』のお時間です!」

 戸坂監督から収録開始の合図を受け取り、下田さんが話し出す。

「ではさっそく、ゲストの方々を紹介します!」

 ゲストは俺と真奈美の2人で、下田さんが俺たちを丁寧に紹介する。

「4月から放送中のドラマ『逃げることは恥ですが役に立ちます』でヒロイン役に抜擢され、現在大活躍中の女優、愛甲真奈美さんです!」
「はーい!よろしくお願いしまーす!」

 真奈美が挨拶すると、スタッフたちから拍手が沸き起こる。

「そしてもう1人ご紹介します。先日発売された『読者モデル』で表紙を飾り、発売初日で売り切れ続出という誰も成し遂げたことのない偉業を達成した立役者、夏目凛さんにお越しいただいております!」
「よろしくお願いします!」

 俺も真奈美に倣って挨拶をすると、スタッフたちから拍手をもらう。

「では、さっそくトークに移ろうと思いますが、なんとここで夏目さんから重大発表があります!」

 との前振りから、下田さんが俺に話を振る。

「じゅ、重大発表と前置きされると言いにくくはなりますが、皆さまに俺から一言お伝えしたいことがあります」

 俺が夏目レンであることを知っているのは監督と下田さん、そして一部のスタッフのみ。
 そのためスタッフのほとんどが、ワクワクしながら俺からの重大発表を待っている。

 その様子を確認し、俺は一拍置いた後、高らかに言う。

「実は俺、6年前まで子役として芸能界で活動してました!」
「えっ!そうなんですか!?」

 全てを知ってる下田さんがオーバーリアクションで場を盛り上げる。
 スタッフも驚いている人が多く、ここまで声は聞こえないが、コソコソと話し出す人までいる。

「子役時代の芸名を聞いてもいいですか!?」
「もちろんです!俺、昔は夏目レンって芸名で活動してました!」
「「「「えぇぇぇぇっ!!」」」」

 俺の発言を聞いて、スタッフたちの驚きの声が聞こえてくる。

「カットーっ!」

 入ってはいけない声がスタジオ内に響き渡り、戸坂監督が撮影を止める。

「君たち、驚きすぎだよ」
「いやいや!監督!夏目レンですよ!そんなビッグネームが出て来たら驚きますよ!」
「夏目レンって小学5年生にして日本アカデミー賞の優秀主演男優賞を取った人ですよ!そんな名前が出てくるとか思いませんて!」
「ってことは、夏目レンが夏目凛に改名して芸能界に復帰したんですか!?」

 そんなことを言いながら、スタッフたちが監督に問い詰める。

「皆さん驚きすぎですよ。そんなに驚くことですか?」
「いや、俺と監督も君が夏目レンって愛甲さんから聞いた時は、あんな反応してたからな」

 そんなことを下田さんが呟いていた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

[完結済み]男女比1対99の貞操観念が逆転した世界での日常が狂いまくっている件

森 拓也
キャラ文芸
俺、緒方 悟(おがた さとる)は意識を取り戻したら男女比1対99の貞操観念が逆転した世界にいた。そこでは男が稀少であり、何よりも尊重されていて、俺も例外ではなかった。 学校の中も、男子生徒が数人しかいないからまるで雰囲気が違う。廊下を歩いてても、女子たちの声だけが聞こえてくる。まるで別の世界みたいに。 そんな中でも俺の周りには優しいな女子たちがたくさんいる。特に、幼馴染の美羽はずっと俺のことを気にかけてくれているみたいで……

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

生贄にされた先は、エロエロ神世界

雑煮
恋愛
村の習慣で50年に一度の生贄にされた少女。だが、少女を待っていたのはしではなくどエロい使命だった。

イケメン歯科医の日常

moa
キャラ文芸
堺 大雅(さかい たいが)28歳。 親の医院、堺歯科医院で歯科医として働いている。 イケメンで笑顔が素敵な歯科医として近所では有名。 しかし彼には裏の顔が… 歯科医のリアルな日常を超短編小説で書いてみました。 ※治療の描写や痛い描写もあるので苦手な方はご遠慮頂きますようよろしくお願いします。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

勝負に勝ったので委員長におっぱいを見せてもらった

矢木羽研
青春
優等生の委員長と「勝ったほうが言うことを聞く」という賭けをしたので、「おっぱい見せて」と頼んでみたら……青春寸止めストーリー。

後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~

菱沼あゆ
キャラ文芸
 突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。  洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。  天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。  洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。  中華後宮ラブコメディ。

処理中です...