髪を切った俺が『読者モデル』の表紙を飾った結果がコチラです。

昼寝部

文字の大きさ
上 下
7 / 169
2章 芸能界復帰編

契約

しおりを挟む
 矢上さんから電話がきたため、俺は電話に出る。

『お疲れ様です、凛さん。今、お時間よろしいでしょうか?』
『お疲れ様です。今は大丈夫ですよ』
『ありがとうございます。では、さっそく要件をお話しさせていただきます』

 矢上さんがそう言って一拍置く。

『本日発売の読者モデルが完売続出となっており、我々は表紙を飾っていただいた凛さんのおかげだと思っております』
『あ、ありがとうございます』

 矢上さんの口から「俺のおかげ」と言われてしまい、照れながらの返答となる。

『そこで我が社は凛さんと契約を結びたいと思っております。凛さんさえ良ければ、我が社と契約を結んで芸能界で活動していただきたいのですが、どこかの事務所と契約されているとかはありませんか?』
『どの事務所とも契約はしてませんから大丈夫です』

 芸能界を引退した時に所属していた事務所は退所したため、現在はフリーとなっている。

『なので、矢上さんの事務所と契約させていただきたいです!』

 俺は矢上さんの事務所しか契約しないという意思を伝えるため、しっかりと言い切る。

『ありがとうございます!』

 俺の発言を聞いて、嬉しそうに矢上さんが感謝の言葉を言う。

『では、さっそく契約を結びにお家へお邪魔させていただきます!お時間よろしい時はありますか!?できれば親御さんのいらっしゃる時間帯で!』

 よほど俺の返答が嬉しかったのか、矢上さんの声が先ほどよりも弾んでいる。

『それなら今日の夜はいかがですか?18時にもなれば父さんがいると思います』
『分かりました!18時頃にお伺いさせていただきます!』

 とのやり取りをして電話を終了する。

「18時に矢上さんが契約をするためにウチに来てくれるって!無事、芸能界に復帰できそうだ!」
「やったー!」

 俺の側にいた寧々が、手を広げて喜ぶ。

「契約には父さんもいるらしいから、父さんに一言連絡しとくよ」

 父さんには昨夜、俺が芸能界へ復帰する意向を話しており、「応援するぞ」との言葉をもらっていた。
 俺は父さんへ矢上さんが来ることをメッセージで伝え、18時まで家でのんびり過ごした。



 18時前となる。
 俺は仕事から帰宅した父さんに、18時からのことを詳しく説明する。

「凛が復帰すると決めたんだ。俺は反対なんかしない。できる限りのことは手伝ってやるから、また子役の時みたいに頑張ってくれよ」

 俺の父さんである夏目武司が“キラッ”と綺麗な歯を見せながら笑う。

 俺の父さんは、母さんが亡くなってから再婚せずに1人で俺たちを育ててくれた。
 そんな父さんを俺たち尊敬している。

 俺と父さんが話をしていると“ピンポーン”と玄関のチャイムが鳴る。
 いつの間にか18時になっていたため、矢上さんが来たと思い、俺は急いで玄関に向かう。

「お疲れ様です!今日は急な訪問となってしまい、申し訳ありません!」
「いえいえ、こんな時間に来ていただきありがとうございます」

 俺は矢上さんを家に招きながら感謝を伝える。
 そしてリビングへ矢上さんを誘導すると、父さんと寧々が出迎え、簡単に矢上さんへ挨拶をする。

「では!さっそく契約をさせていただきます」

 そう言って矢上さんが、書類を取り出して色々と説明をしてくれる。
 その話を真剣に聞き、最後に父さんが書類にサインをする。

「ありがとうございます!これで、今日から凛さんは我が事務所『ソレイユ』に所属となります!」

 無事に契約が終了したことに安堵する。
 すると、矢上さんから…

「それと一点、お聞きしたいことがあります」

 と、真剣な顔で言われる。

「な、なんでしょうか?」

 その迫力に俺は身構える。

「今日、事務所に『夏目凛は昔、子役として活躍してた夏目レンなのか?』という電話が数件ありました」
「あ、やっぱり気付く人はいたんですね」
「……ということは、以前、夏目レンとして活躍されてたんですか?」
「はい。俺は昔、夏目レンとして活動してました」

 いずれ話す予定だったので、誤魔化すことなく素直に伝える。

「やはり私たちの予想は当たってましたね」
「驚かないんですね」

 自分で言うのも可笑しな話だが、正体をバラすことで驚かれると思っていた。
 だが、矢上さんは驚かずに納得した表情をされる。

「もちろん、驚いてますよ。ですが、それ以上に嬉しく思います」
「嬉しい……ですか?」
「はい。私、夏目レンのファンでしたので、再び夏目レンの芸能活動を応援できることが嬉しいです」

 そう言って矢上さんが微笑む。

(そうか。俺の復帰を待ってた人は寧々だけじゃなかったんだな)

 そう思い、嬉しい気持ちとなる。

「これから一緒に頑張りましょうね!」
「はい!よろしくお願いします!」

 俺は矢上さんへ元気に応えた。
しおりを挟む
感想 20

あなたにおすすめの小説

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

高身長お姉さん達に囲まれてると思ったらここは貞操逆転世界でした。〜どうやら元の世界には帰れないので、今を謳歌しようと思います〜

水国 水
恋愛
ある日、阿宮 海(あみや かい)はバイト先から自転車で家へ帰っていた。 その時、快晴で雲一つ無い空が急変し、突如、周囲に濃い霧に包まれる。 危険を感じた阿宮は自転車を押して帰ることにした。そして徒歩で歩き、喉も乾いてきた時、運良く喫茶店の看板を発見する。 彼は霧が晴れるまでそこで休憩しようと思い、扉を開く。そこには女性の店員が一人居るだけだった。 初めは男装だと考えていた女性の店員、阿宮と会話していくうちに彼が男性だということに気がついた。そして同時に阿宮も世界の常識がおかしいことに気がつく。 そして話していくうちに貞操逆転世界へ転移してしまったことを知る。 警察へ連れて行かれ、戸籍がないことも発覚し、家もない状況。先が不安ではあるが、戻れないだろうと考え新たな世界で生きていくことを決意した。 これはひょんなことから貞操逆転世界に転移してしまった阿宮が高身長女子と関わり、関係を深めながら貞操逆転世界を謳歌する話。

髪を切った俺が芸能界デビューした結果がコチラです。

昼寝部
キャラ文芸
 妹の策略で『読者モデル』の表紙を飾った主人公が、昔諦めた夢を叶えるため、髪を切って芸能界で頑張るお話。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる

十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!

ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく  高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。  高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。  しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。  召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。 ※カクヨムでも連載しています

処理中です...