髪を切った俺が『読者モデル』の表紙を飾った結果がコチラです。

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2章 芸能界復帰編

契約

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 矢上さんから電話がきたため、俺は電話に出る。

『お疲れ様です、凛さん。今、お時間よろしいでしょうか?』
『お疲れ様です。今は大丈夫ですよ』
『ありがとうございます。では、さっそく要件をお話しさせていただきます』

 矢上さんがそう言って一拍置く。

『本日発売の読者モデルが完売続出となっており、我々は表紙を飾っていただいた凛さんのおかげだと思っております』
『あ、ありがとうございます』

 矢上さんの口から「俺のおかげ」と言われてしまい、照れながらの返答となる。

『そこで我が社は凛さんと契約を結びたいと思っております。凛さんさえ良ければ、我が社と契約を結んで芸能界で活動していただきたいのですが、どこかの事務所と契約されているとかはありませんか?』
『どの事務所とも契約はしてませんから大丈夫です』

 芸能界を引退した時に所属していた事務所は退所したため、現在はフリーとなっている。

『なので、矢上さんの事務所と契約させていただきたいです!』

 俺は矢上さんの事務所しか契約しないという意思を伝えるため、しっかりと言い切る。

『ありがとうございます!』

 俺の発言を聞いて、嬉しそうに矢上さんが感謝の言葉を言う。

『では、さっそく契約を結びにお家へお邪魔させていただきます!お時間よろしい時はありますか!?できれば親御さんのいらっしゃる時間帯で!』

 よほど俺の返答が嬉しかったのか、矢上さんの声が先ほどよりも弾んでいる。

『それなら今日の夜はいかがですか?18時にもなれば父さんがいると思います』
『分かりました!18時頃にお伺いさせていただきます!』

 とのやり取りをして電話を終了する。

「18時に矢上さんが契約をするためにウチに来てくれるって!無事、芸能界に復帰できそうだ!」
「やったー!」

 俺の側にいた寧々が、手を広げて喜ぶ。

「契約には父さんもいるらしいから、父さんに一言連絡しとくよ」

 父さんには昨夜、俺が芸能界へ復帰する意向を話しており、「応援するぞ」との言葉をもらっていた。
 俺は父さんへ矢上さんが来ることをメッセージで伝え、18時まで家でのんびり過ごした。



 18時前となる。
 俺は仕事から帰宅した父さんに、18時からのことを詳しく説明する。

「凛が復帰すると決めたんだ。俺は反対なんかしない。できる限りのことは手伝ってやるから、また子役の時みたいに頑張ってくれよ」

 俺の父さんである夏目武司が“キラッ”と綺麗な歯を見せながら笑う。

 俺の父さんは、母さんが亡くなってから再婚せずに1人で俺たちを育ててくれた。
 そんな父さんを俺たち尊敬している。

 俺と父さんが話をしていると“ピンポーン”と玄関のチャイムが鳴る。
 いつの間にか18時になっていたため、矢上さんが来たと思い、俺は急いで玄関に向かう。

「お疲れ様です!今日は急な訪問となってしまい、申し訳ありません!」
「いえいえ、こんな時間に来ていただきありがとうございます」

 俺は矢上さんを家に招きながら感謝を伝える。
 そしてリビングへ矢上さんを誘導すると、父さんと寧々が出迎え、簡単に矢上さんへ挨拶をする。

「では!さっそく契約をさせていただきます」

 そう言って矢上さんが、書類を取り出して色々と説明をしてくれる。
 その話を真剣に聞き、最後に父さんが書類にサインをする。

「ありがとうございます!これで、今日から凛さんは我が事務所『ソレイユ』に所属となります!」

 無事に契約が終了したことに安堵する。
 すると、矢上さんから…

「それと一点、お聞きしたいことがあります」

 と、真剣な顔で言われる。

「な、なんでしょうか?」

 その迫力に俺は身構える。

「今日、事務所に『夏目凛は昔、子役として活躍してた夏目レンなのか?』という電話が数件ありました」
「あ、やっぱり気付く人はいたんですね」
「……ということは、以前、夏目レンとして活躍されてたんですか?」
「はい。俺は昔、夏目レンとして活動してました」

 いずれ話す予定だったので、誤魔化すことなく素直に伝える。

「やはり私たちの予想は当たってましたね」
「驚かないんですね」

 自分で言うのも可笑しな話だが、正体をバラすことで驚かれると思っていた。
 だが、矢上さんは驚かずに納得した表情をされる。

「もちろん、驚いてますよ。ですが、それ以上に嬉しく思います」
「嬉しい……ですか?」
「はい。私、夏目レンのファンでしたので、再び夏目レンの芸能活動を応援できることが嬉しいです」

 そう言って矢上さんが微笑む。

(そうか。俺の復帰を待ってた人は寧々だけじゃなかったんだな)

 そう思い、嬉しい気持ちとなる。

「これから一緒に頑張りましょうね!」
「はい!よろしくお願いします!」

 俺は矢上さんへ元気に応えた。
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