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1章 プロローグ

『読者モデル』の撮影 2

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 雑談をしながら3人で歩くと、1つの建物に到着する。

「着きました!さぁ、入りましょう!」

 とのことで、俺たちは矢上さんに連れられて一つの建物に入る。

「ここは『読者モデル』や、その他雑誌の撮影を行う専用の建物となっております」

 そう言われて辺りを見渡す。
 確かに、撮影に使うであろう道具がチラホラと見えた。

「ここで撮影をします」

 矢上さんがそう言って扉を開ける。
 そこには、大きな照明やカメラなど、撮影に必要な道具がたくさん置かれていた。

「おー!すごいよ!お兄ちゃん!」

 初めて見る道具たちに寧々が声を上げ、キョロキョロし始める。
 俺は何度か見たことがあるため、寧々のような反応はしないが、最初に見た時は寧々のような反応をしていたので、寧々の行動を馬鹿にできない。
 幸い、スタッフたちはバタバタと忙しなく動き回っているため、俺たちが入室したことに気づいていない。

 そんな寧々を見守っていると、矢上さんと一緒に1人の女性が俺の前に来た。
 長い黒髪を腰まで伸ばした30歳くらいの綺麗な女性で、キリッとした目つきをした美女だ。

「君が矢上が連れて来た凛くんだな」
「あ、はい!」

 そう言って俺を見る。

「よし、合格だ」
「ありがとうございます!」

 女性の言葉に矢上さんがものすごく喜んでいる。

「あの、こちらの方は?」
「あぁ、すまん。挨拶が遅れた。私は芸能プロダクション『ソレイユ』の代表取締役社長の内山うちやまルナだ。今日は急な代役をありがとう」

 そう言って右手を俺の前に出してきたため、俺は慌てて握手をする。

「君は夏目くんの妹さんと聞いている。寧々さんも今日は凛くんを貸してくれてありがとう」
「いえいえ!良い写真を撮ってくださいね!」
「あぁ。さっそくだが撮影に移るぞ。矢上からは1枚だけと言われてるから、1枚だけ雑誌に使わせてもらう。その際、何枚か撮らせてもらうが、雑誌に使うのは1枚だけだから安心してくれ」
「分かりました」

 そう言って内山社長は他のスタッフのもとへと向かい、話し始める。

「すみません、社長の言葉遣いに慣れないかとは思いますが……」
「いえ。歳上の方ですし、社長ですので俺は気にしませんよ」
「それなら良かったです!」

 そんな話をしつつ、内山社長から声がかかるの待つ。

「凛くん。コチラに来てこの服に着替えてくれ」

 との声をかけられ、俺は指定された服に着替えるため、試着室へ移動する。

「えーっと、白のTシャツに黒のテーラードジャケット。それと青のデニムか」

 芸能界にいたこともあり、今でも服にはこだわっている。
 そのため、今の流行りのファッションもチェックしており、内山社長から渡された服がどんなものか、どんなファッションになるかは理解できる。

「なるほど。キレイめなカジュアルファッションか」

 そんな分析を行いつつ、服を着る。
 そして試着室のカーテンを開け、目の前にいる寧々へ問いかける。

「どうだ?似合ってるか?」
「……カ、カッコ良すぎるよ!」

 寧々が手を叩きながら俺のことを褒める。

「そうだな。アタシも似合ってると思うぞ。想像通り……いや、想像以上に似合ってる」
「そ、そうですか?」

 内山社長は自信があったようで、褒めちぎってくれる。

「あぁ。だって、周り見てみろよ」
「………?」

 そう言われて俺は周りを見てみる。

「凛くんを見て、ここにいる女性スタッフ全員が見惚れてるからな。矢上含めて」

 その言葉通り、ここにいる女性スタッフ全員が俺の方を向いて固まり、中には倒れてる人までいる。

「カ、カッコいい……」
「イケメン過ぎる……」
「いま活躍してるアイドルよりもカッコいいわ……」
「はぅ~っ」

 そして、周りから様々な声が聞こえてくる。

「あそこで倒れてる人は凛くんのカッコ良さに鼻血を出して倒れたんだ。だから自信持っていいぞ」
「あはは……ありがとうございます」

 その言葉にどう返答すれば良いか分からず、苦笑いで返事をする。

「じゃあ、早速撮影に移るから、この椅子に座ってくれ」
「分かりました」
「お兄ちゃん、頑張って!」
「あぁ!サクッと終わらせてくるよ!」

 俺は寧々に声をかけて指示された椅子に座る。

 そして10枚ほど撮られると…

「よし、これでいこう」

 内山社長からOKが出たので、俺は「ありがとうございました」と言って立ち上がる。
 そのタイミングで、矢上さんから声をかけられる。

「もう少しだけお時間をいただいてもよろしいでしょうか?」
「はい、なんでしょうか?」
「完成した『読者モデル』を家まで発送させていただきますので、記入していただきたい書類がありまして……」

 俺は矢上さんが持ってきた書類に住所や連絡先を記入する。

「ありがとうございます。発売日は4/1となりますので、その日までにはご自宅に郵送させていただきます。それと、今着ている服は凛さんに差し上げます。今日はお忙しい中、代役を引き受けていただき、ありがとうございました」
「いえいえ。こちらこそ良い経験になりました」

 俺は矢上さんに頭を下げ、内山社長に礼を言ってから寧々と一緒に家に帰った。



 撮影日から約1ヶ月が経ち、3月31日となる。
 数日後には大学生となる俺は、家で残りの春休み期間をゆっくり過ごしていると、俺宛に一冊の雑誌が届く。

「お、『読モ』が完成したんだ。そういえば明日が発売日って言ってたな」
 
 俺は送り主からそう判断して開封する。
 そして、その表紙を見て固まる。

「んぁ?なんか見たことあるヤツが表紙を飾ってるぞ?」

 俺は見間違いかと思い、何度も確認する。

「………え?なんで俺が『読モ』の表紙を飾ってんだ?」

 しばらくの間、俺は表紙を見ながら固まった。
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