1 / 169
1章 プロローグ
プロローグ
しおりを挟む
とあるイベントに参加した俺は、たくさんの声援を耳にしながらステージに上がっていた。
「きゃーっ!リン様よ!」
「国宝級イケメンランキングで堂々の1位を獲得したリン様!カッコ良すぎるっ!」
「はぅ~」
「おいっ!女性が倒れたぞ!誰か担架を持ってこいっ!」
そんな騒ぎが起きている中、俺はステージに置いてある椅子に座る。
(なんでこんなことになったんだろう……やっぱり髪を切ったからだろうなぁ)
そんなことを思いつつ、俺は髪を切った春休みのことを思い出した。
♦︎
「お兄ちゃん!今日は予定入れてないよね!?」
「あぁ。寧々に言われた通り、今日は予定を入れてないぞ」
高校を卒業し、来月の4月から大学生となる俺、夏目凛は、双子の妹である夏目寧々から事前に予定を入れるなと言われていたため、一日暇していた。
夏目寧々は茶髪をツーサイドアップに結んだ双子の妹で、俺と同じく来月から大学生となる。
街中を歩けば10人中10人が振り返るほどの美少女で、高校では校内1の美少女と呼ばれていた。
「それで、今日は何かあるのか?」
「うん!今日は超有名な美容師さんにお兄ちゃんの髪を切ってもらうんだ!」
「………は?」
「予約しても施術は半年後になるくらい有名な美容師さんだからね!切っても絶対、後悔しないから!」
そう言って俺の手を引っ張って外に連れ出す。
寧々からは常々、目元まで伸ばしている前髪を切れと言われていた。
そんな寧々の言葉を無視し続けていたら、強硬手段に出られたようだ。
「お兄ちゃんが何で髪を伸ばしてるかは理解してるよ。昔、天才子役って呼ばれて有名だったから、それがバレないように髪で目元を隠してるんだよね?」
俺は小学生の頃、『夏目レン』という名前でたくさんのテレビに出演していた。
しかし、母さんの死後、俺は芸能活動を辞めた。
理由は芸能界で活動していた俺のことを1番応援してくれていた母さんが亡くなったから。
その日以降、俺は芸能界で活動する意味を失い、芸能界を引退した。
突然の引退だったことでメディアに追われて大変だった俺は、気がつけば髪で正体を隠すようになっていた。
「でも、お兄ちゃんが芸能界で活動してたのは小学生6年生までの話!あれから6年経ってるんだから、お兄ちゃんの顔を見て夏目レンを思い出す人なんていないよ!しかも、お兄ちゃんは本名で活動してなかったんだから尚更だよ!」
「そう……だな」
寧々の言う通り、忘れてる人は多いと思う。
それに、今の髪を鬱陶しいと思っている自分もいた。
(この髪のせいで中学、高校の頃は「根暗」だの「陰キャ」だの言われたからなぁ。そのおかげで友達はゼロだし)
幸い、中学と高校は寧々が同じ学校だったので、独りぼっちということはなかったが。
「だから大学生デビューのためにも絶対、髪を切ろ!」
「だ、大学生デビューだと!?」
「うんっ!お兄ちゃんはカッコいいから、きっとモテモテ生活だよ!」
とても魅力的な提案に俺の心が揺らぐ。
(寧々の言った通り、活動してた時から6年も経ってる。それに髪を伸ばして生活するのもうんざりしていた)
「そう……だな。バレないとは言い切れないが、6年も経てば誤魔化せるか。それに寧々が予約した美容師は半年待つくらいの凄腕。いい機会だから切ってもらうか」
「うんっ!じゃあ、美容室へレッツゴー!」
俺は寧々と一緒に美容室を目指し、外出した。
美容室に到着した俺は、寧々に紹介された凄腕美容師に髪を切ってもらった。
凄腕と呼ばれるだけあって見事な手際で、今の俺は前髪を短めに切り、両サイドにはブロックを入れている。
そして髪の毛をワックスなどで整えおり、爽やかなイケメンに仕上がっている。
ちなみに、俺が髪を切った姿を目にした寧々は「ま、待って!直視できないくらいカッコいいから5分だけ待って!」とか言って、10分くらい俺の顔を見ては逸らすことを繰り返した。
「ねっ!誰もお兄ちゃんが昔、芸能界で活躍してた夏目レンって気づかなかったでしょ!?」
「そうだな。美容室でいろんな人から注目を浴びたけど、誰1人として夏目レンの名前を出さなかったな。それに今も街中を歩いてるけど、誰も声をかけて来ない。やっぱり、みんな俺が夏目レンってことに気づかないんだな」
「通り過ぎる女性たちが5度見くらいしてるけどね」
そんなことを話しながら家を目指して歩いた。
「きゃーっ!リン様よ!」
「国宝級イケメンランキングで堂々の1位を獲得したリン様!カッコ良すぎるっ!」
「はぅ~」
「おいっ!女性が倒れたぞ!誰か担架を持ってこいっ!」
そんな騒ぎが起きている中、俺はステージに置いてある椅子に座る。
(なんでこんなことになったんだろう……やっぱり髪を切ったからだろうなぁ)
そんなことを思いつつ、俺は髪を切った春休みのことを思い出した。
♦︎
「お兄ちゃん!今日は予定入れてないよね!?」
「あぁ。寧々に言われた通り、今日は予定を入れてないぞ」
高校を卒業し、来月の4月から大学生となる俺、夏目凛は、双子の妹である夏目寧々から事前に予定を入れるなと言われていたため、一日暇していた。
夏目寧々は茶髪をツーサイドアップに結んだ双子の妹で、俺と同じく来月から大学生となる。
街中を歩けば10人中10人が振り返るほどの美少女で、高校では校内1の美少女と呼ばれていた。
「それで、今日は何かあるのか?」
「うん!今日は超有名な美容師さんにお兄ちゃんの髪を切ってもらうんだ!」
「………は?」
「予約しても施術は半年後になるくらい有名な美容師さんだからね!切っても絶対、後悔しないから!」
そう言って俺の手を引っ張って外に連れ出す。
寧々からは常々、目元まで伸ばしている前髪を切れと言われていた。
そんな寧々の言葉を無視し続けていたら、強硬手段に出られたようだ。
「お兄ちゃんが何で髪を伸ばしてるかは理解してるよ。昔、天才子役って呼ばれて有名だったから、それがバレないように髪で目元を隠してるんだよね?」
俺は小学生の頃、『夏目レン』という名前でたくさんのテレビに出演していた。
しかし、母さんの死後、俺は芸能活動を辞めた。
理由は芸能界で活動していた俺のことを1番応援してくれていた母さんが亡くなったから。
その日以降、俺は芸能界で活動する意味を失い、芸能界を引退した。
突然の引退だったことでメディアに追われて大変だった俺は、気がつけば髪で正体を隠すようになっていた。
「でも、お兄ちゃんが芸能界で活動してたのは小学生6年生までの話!あれから6年経ってるんだから、お兄ちゃんの顔を見て夏目レンを思い出す人なんていないよ!しかも、お兄ちゃんは本名で活動してなかったんだから尚更だよ!」
「そう……だな」
寧々の言う通り、忘れてる人は多いと思う。
それに、今の髪を鬱陶しいと思っている自分もいた。
(この髪のせいで中学、高校の頃は「根暗」だの「陰キャ」だの言われたからなぁ。そのおかげで友達はゼロだし)
幸い、中学と高校は寧々が同じ学校だったので、独りぼっちということはなかったが。
「だから大学生デビューのためにも絶対、髪を切ろ!」
「だ、大学生デビューだと!?」
「うんっ!お兄ちゃんはカッコいいから、きっとモテモテ生活だよ!」
とても魅力的な提案に俺の心が揺らぐ。
(寧々の言った通り、活動してた時から6年も経ってる。それに髪を伸ばして生活するのもうんざりしていた)
「そう……だな。バレないとは言い切れないが、6年も経てば誤魔化せるか。それに寧々が予約した美容師は半年待つくらいの凄腕。いい機会だから切ってもらうか」
「うんっ!じゃあ、美容室へレッツゴー!」
俺は寧々と一緒に美容室を目指し、外出した。
美容室に到着した俺は、寧々に紹介された凄腕美容師に髪を切ってもらった。
凄腕と呼ばれるだけあって見事な手際で、今の俺は前髪を短めに切り、両サイドにはブロックを入れている。
そして髪の毛をワックスなどで整えおり、爽やかなイケメンに仕上がっている。
ちなみに、俺が髪を切った姿を目にした寧々は「ま、待って!直視できないくらいカッコいいから5分だけ待って!」とか言って、10分くらい俺の顔を見ては逸らすことを繰り返した。
「ねっ!誰もお兄ちゃんが昔、芸能界で活躍してた夏目レンって気づかなかったでしょ!?」
「そうだな。美容室でいろんな人から注目を浴びたけど、誰1人として夏目レンの名前を出さなかったな。それに今も街中を歩いてるけど、誰も声をかけて来ない。やっぱり、みんな俺が夏目レンってことに気づかないんだな」
「通り過ぎる女性たちが5度見くらいしてるけどね」
そんなことを話しながら家を目指して歩いた。
126
お気に入りに追加
1,301
あなたにおすすめの小説
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった
ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます!
僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか?
『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

恐喝されている女の子を助けたら学校で有名な学園三大姫の一人でした
恋狸
青春
特殊な家系にある俺、こと狭山渚《さやまなぎさ》はある日、黒服の男に恐喝されていた白海花《しらみはな》を助ける。
しかし、白海は学園三大姫と呼ばれる有名美少女だった!?
さらには他の学園三大姫とも仲良くなり……?
主人公とヒロイン達が織り成すラブコメディ!
小説家になろう、カクヨムでも投稿しています。
カクヨムにて、月間3位
後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる